僕の名前は、風翔《フウト》。
第一の人生は、唐突に終わりを迎えた。
近所の工場で起きた事故──燃料タンクが爆発し、巻き込まれた僕は、あっけなくこの世を去った……はずだった。
でも、人生ってのは案外しぶといらしい。
次に目を覚ましたとき、僕は見知った景色の中にいた。
……そう。僕の大好きだった、あのアニメ。
「ドラゴンボール ゼノバース」――その世界の「コントン都」に、僕は転生していた。
***
???「君……気の流れからして、どうやらサイヤ人みたいだね」
青年の声に振り向くと、そこには紫の髪を後ろで束ねた、あの有名キャラ──トランクス(青年期)の姿があった。そしてMAD動画でも有名なトランクスルー・・・おっと、この話はやめておこう。
彼によると、僕のような「前世の記憶を持った一般人」がこの世界に現れること自体、かなり稀らしい。
そんな中で、彼が僕に放った一言。
トランクス「もし良かったら修行してみない? 安全とは言い切れないけど、君のような存在は頼もしくなれるかもしれないから」
どこかで聞いた台詞だな……とか思っていたら、その後に追い打ち。
「ちなみに修行の相手は……俺の父さん、ベジータです」
\オワタ\(^o^)//
***
それから3年が経った。
……正直、地獄だった。
風翔「ちょっとずつで良いですよね?」
ベジータ「ああ、多分な(ニヤリ)」
トランクス……あの「多分」を信じた自分が愚かだった。
ベジータのスパルタは、想像を遥かに超える凄まじさだった。何度気絶しかけたことか。だが、その地獄の果てに──
スーパーサイヤ人3に変身出来るまでの力を手に入れた僕がいた。
それでもベジータの口から出る言葉は厳しく、でもどこか誇らしげで……
ベジータ「…貴様の成長ぶりは、悪くない。俺の修行に耐えたのは、貴様含めて2人だけだ」
風翔「もう1人って誰なんですか?」
ベジータ「貴様には関係ない」
相変わらずのツンデレ王子だった。
***
そんなある日の組み手。
背後を取られ、背中に激痛が走る。
風翔「……っだあああ!? いってぇぇ!!」
膝をつきかけた僕に、ベジータは腕を組んで言う。
ベジータ「貴様の気の使い方はまだ甘い。だが、確実に伸びてはいる」
──そんな矢先。
???「君、見かけない顔だねぇ」
声の主に振り返ると、目に飛び込んできたのは破壊神・ビルス。
隣には天使ウイスまで。
「ビ、ビルス様ぁっ!?」とベジータが声を裏返し、即座に最敬礼。
緊張が走る。
僕も頭を垂れ、丁寧に挨拶した。
風翔「ビルス様、初めまして。ベジータさんの教え子の風翔と申します」
ビルス「……へぇ。君、意外と礼儀正しいんだね。サイヤ人にしては珍しいよ。しかも僕に先に挨拶とは」
どうやら機嫌は良さそうだ。
そしてウイスが言った。
ウイス「ベジータさん、ブルマ様から連絡が。新しい重力室が完成したそうです」
ベジータ「なにっ!? では失礼します!!」
ベジータ、速攻で飛び去った。
あれだけ余裕ぶってたのに……ブルマには逆らえないのか。
残された僕に、ウイスが言った。
ウイス「さて、風翔さん。質問です。戦うことは、お好きですか?」
風翔「……嫌いではないですが、好きというわけでも。自分を守るために修行しただけです」
ビルスがニヤリと笑う。
ビルス「面白い答え方するねぇ。じゃあさ──僕と戦ってみない?」
さすがにびびったけど、断れるわけがない。
風翔「……承ります」
軽くストレッチしていると、ビルスが不意に訊いてきた。
ビルス「君、普段何かしてるのかい?」
風翔「ええ。本を読んだり料理したり……」
ビルス「料理!? 君サイヤ人だよね?」
風翔「ダメですか?」
ビルス「いや、驚いただけだよ。ベジータが包丁握ってるとこ、見たことないでしょ?」
言われてみれば、たこ焼き以外見た記憶ない。
ビルス様、興味津々で話してくるので、ふと思いついて言ってみた。
風翔「ビルス様、少しお腹が空いてませんか? よければ僕の手料理を……」
ビルス「!! それは……美味しいやつ?」
そこから先は早かった。
バッグから取り出した「3種のチーズ牛丼弁当」。
冷めていたので気で温め、手渡す。
一口食べたビルス様が、箸を止めた。
ビルス「風翔……君、自分でこれを作ったのかい……?」
風翔「は、はい……」
ビルス「──この料理、美味すぎるっ!!!」
肩をガシッと掴まれ、称賛されまくる。
おまけにウイスにも食べさせないという独占欲まで。
ビルス「ウイスの料理より美味い」
ウイス「ビルス様、それは少し傷つきます」
***
食事を終えたビルスが、再び構える。
ビルス「準備はできたかい?」
風翔「……全力で、行きます」
気を高め、スーパーサイヤ人3へ。
そして、僕の新技──
「スーパーサイヤ人3《×ドラゴン(纏)》!」
光が迸り、全身に龍のようなオーラを纏った僕が、破壊神へ挑む。
……30分後。
風翔「はぁ……はぁ……」
全力で叩き込んだ攻撃は、全て軽く受け止められた。
ビルスは一切の疲れも見せず、静かに言った。
ビルス「風翔、もっと強くなってみたくないか?」
風翔「……でも僕、あなた方に言っておかなければいけないことがあります」
──そう、僕は“転生者”。
その事実を、2人に語った。
ウイス「稀有な事象ですが、理解できます」
ビルス「そうか……君が此処に来たのは偶然ではないのかもね」
そして彼は微笑む。
ビルス「次に僕と会う時、敬語は不要だ。……気に入ったよ、風翔」
風翔「……え、えぇ!?」
ビルス「敬語を使ったら破壊するよ?」
ビルス様……笑顔が怖いです……!
***
そうしてビルスとウイスが帰った直後、僕は空へ飛び立とうとした。
その瞬間。
空間が裂け──目の前に黒い“穴”が現れた。
風翔「ちょっ……なにこれ!?」
吸い込まれるように引き寄せられる。
風翔「くそ……!【気】が足りない……!」
抵抗するも虚しく、ビルス戦の疲労で踏ん張りが効かず──
風翔「ふざけんなーーー!!」
そして、視界は闇に包まれた。