土曜日。
空は澄み渡り、鳥のさえずりとやわらかな風が秘密基地の木々を揺らしていた。
今日は学校もない。
子どもたちにとっては束の間の自由な日――その昼、秘密基地にはシュウ、メグ、マック、そしてフウトが集まり、いつものように賑やかな時間が流れていた。
メグ「シュウ、今朝はまた寝坊してたでしょ?」
シュウ「バレたか!いや〜、二度寝が最高だったからさ!」
メグ「……反省は?」
シュウ「明日から頑張るっ!」
メグ「今日を頑張りなさい」
メグの冷静なツッコミに、フウトは少し離れたところで苦笑していた。
そんな光景を眺めながら、ふとある疑問が頭をよぎる。
フウト「なあ、そういえばさ――」
会話が一段落したタイミングで、彼はシュウに声をかけた。
フウト「そのタリスポッドって、どこで手に入れたんだ?ずっと気になっててさ」
シュウ「ん? ああ、これか」
シュウはポケットから白く輝くタリスポッドを取り出し、手の中でくるくると回した。
シュウ「これはね、父さんがくれたんだよ」
フウト「……父親?」
シュウ「うん。俺の父ちゃん、DWC――ダークウィズカンパニーの商品開発部に勤めてるんだってさ。だから試作品とかたまに貰ってて」
フウト「なるほど、会社経由か」
フウトは頷いた。まさかの正規ルート、というか開発内部だったとは。
シュウ「けどさ、うちの父さんも母さんも、俺がこれ使ってシロンを“リボーン”できるってこと、知らないんだよね」
フウト「え、秘密にしてんのか?」
シュウ「ん。だって説明しても、絶対信じてもらえないじゃん。でっかいドラゴンが飛び出すなんてさ」
フウト「……まあ、正論ではあるな」
意外にも、シュウの“配慮”はしっかりしていた。
メグ「珍しく考えて行動してるのね」
マック「意外なんだな、シュウ」
シュウ「お前ら失礼だな!?これでも考えて行動してんの!」
笑いが起きる中、フウトは自分が持つ“もうひとつのタリスポッド”――白く透き通った結晶体を取り出していた。
フウト「これってさ、カムバックって言えば……レジェンズがクリスタルの中に戻るんだろ?」
シュウ「そうだよー。俺がよくやるやつね!」
フウト「んじゃ、冗談半分で――」
フウトは小さく息を吸い、タリスポッドに向かって言ってみた。
フウト「シロン、カムバック」
その瞬間だった。
――ピシィィィィン……!
空間に亀裂が走るような音が響き、白い光がフウトの手元からあふれ出す。
フウト「えっ!?」
シロンの姿が、粒子となって舞い上がり――そのまま、タリスポッドの中に吸い込まれていく。
フウト「おいおいおい!?マジで戻ったぞ!?」
シュウ「ちょ、ちょっと待って!?フウト兄ちゃん、今のって本気!?」
フウト「まさか……」
3人が呆然と立ち尽くす中、フウト自身も完全に予想外の事態に固まっていた。
フウト「いや、マジで冗談のつもりだったんだけど……!? って、おいシロン!?カムバックじゃねえ、リボーンだろ!?」
慌てて、再びタリスポッドに声をかける。
「シロン、リボーン!」
次の瞬間、白い風が吹き荒れ、光の中から再びシロンが姿を現した。
シロン「ふぅぅううっ!?」
彼は驚愕と怒りにまみれた表情で叫ぶ。
シロン「なんでお前の言葉で俺がカムバックすんだよ!?おいフウト、何しやがった!」
フウト「知らねえよ!!お前に聞きたいくらいだ!」
メグ「まさか……フウトって、サーガでもないのに……」
シロン「……おい、待て。それはマジでおかしいぞ」
マック「どういうことなんだな……?」
フウト「お前が訊くな!……って言いたいとこだけど、実際、俺もわかんねぇんだよ!」
再度現れたシロンは、しばらくフウトを睨んでいたが――
「……俺を戻すなんて、本来なら“選ばれし者”――つまり“サーガ”にしかできないはずなんだよ」
フウト「選ばれし……って、何だよそれ」
シュウ「えーっと……うちの家系、昔から“風のサーガ”って呼ばれてるらしいんだけど……詳しいことは知らないんだ」
メグ「それにしても、フウトはサーガじゃない。血縁でもない」
マック「なのに、カムバックできたんだな……」
シロン「お前……マジで何者なんだ……」
フウト「だから、“別の世界”から来たって前に言ったろ?」
シロン「……冗談抜きで、普通じゃねぇな」
風が静かに吹いた。
草が揺れ、周囲の空気がひやりとした。
シュウ「ねえフウト兄ちゃんさ、さっきの……もっかいやってみてよ」
フウト「え?」
シュウ「カムバックして、リボーン!って。もう一度、ちゃんと見てみたい!」
マック「僕も気になるんだな!」
メグ「……私も。もしかしたら、何かヒントが得られるかも」
フウト「……仕方ないな」
再び、タリスポッドを手に持つ。
小さく息を整え、声を出す。
フウト「シロン、カムバック」
白い光が溢れ、シロンの姿がタリスポッドの中に吸い込まれる。
フウト「……よし、次だな、シロン、リボーン!」
光が巻き起こり、再び風の中にその白き竜が現れた。
シロン「……おい」
シュウ「やばっ、マジで出来てる……」
メグ「何度見ても信じられないわね……」
マック「サーガじゃなくてもリボーン出来る人……初めてなんだな……」
フウト「……こりゃ、面倒くさい方向に行きそうだな」
シロン「お前には、やっぱ何かがある……神の気か、それとも“異物”としての力か……」
フウト「勘弁してくれよ。まだスーパーサイヤ人ゴッドにもなれてないのに……」
そんな軽口を叩きながら、フウトはそれでも、今目の前で起きている現象をしっかりと胸に刻んだ。
(選ばれし者じゃなくても、タリスポッドを操作できた。
……となると、やっぱり俺の体、普通じゃねえな)