風翔「はぁっ……、はぁっ……」
呼吸を整えるフウトの周囲には、風のような気の流れが走っていた。
その気は明らかに“普通”の気ではない。
柔らかく、しかし強く内側から燃えるような赤い気――
それは、神の領域に至った証。
ついに彼は、「スーパーサイヤ人ゴッド」への変身に成功していた。
風翔「……これが、神の気」
その身を包む赤いオーラが、静かに舞い、まるで炎のように揺れている。
風翔「……不思議だな、まるで心が透き通ってくみたいだ。けど……」
フウトは拳を見つめながら、独り言のように呟いた。
風翔「これに……“纏い”を重ねたら、どうなる?」
“ドラゴン纏い”――
それは、コントン都で、転生してから独自に編み出した力。
本来は自らの力を上乗せし、戦闘力を一時的に高めるもの。
単体でも極めて高い戦闘補助効果を持つこの技を、“神の気”の上に乗せたら――
風翔「やってみるか」
神のオーラを保持したまま、フウトは新たな集中を始めた。
彼の周囲に、赤い気の流れとは別に、金と蒼が混じる龍の波動が出現しはじめる。
風翔「纏え……!」
その瞬間――
――バチィィィィィッ!!
体中を雷のような光が走る。
風翔「な、なんだ……ッ!?」
神の気と“纏い”が衝突し、融合する。
赤と金のオーラが激しく共鳴し、爆発するかのように放出される。
風翔「っ……うわぁああああっ!!」
まばゆい閃光に包まれたフウトの体が、変化していく。
その光がようやく収まり、視界が戻った時――
フウトは、そっと目を開けた。
風翔「……俺の、手?」
自分の手を見下ろした瞬間、彼は息を呑んだ。
指は鋭く、爪が伸びている。
皮膚は艶やかな紅色の鱗に覆われ、筋肉の質感も明らかに変わっていた。
風翔「嘘だろ……まさか……!」
驚きに駆られた彼は、基地に戻り、棚の上に置いてある古びた鏡の前へと走る。
鏡に映ったのは、かつての自分ではない。
真紅の鱗に覆われた肉体、金の瞳、頭部には小さな角――
それはまさしく“龍人”の姿だった。
風翔「俺が……龍に?」
呆然としながらも、彼は思考を巡らせる。
風翔「“纏い”はただオーラを重ねる技のはず……なのに、こんな変化が起きるなんて。もしかして、“神の気”が、俺の纏いと……融合した?」
その時だった。
――ズズズ……ッ!
空間が揺れる。地面が震える。
そして、彼の目の前に、あの“黒い裂け目”が再び出現した。
風翔「うっ……!またかよ!?」
亀裂からは強い引力が放たれ、フウトの体を強制的に引っ張っていく。
風翔「くそっ、耐えろ……っ!」
足を地につけ、踏みとどまろうとするも、床が砕け、ついに足が離れる。
風翔「うわぁあああああっ!!」
そして――吸い込まれた。
◆
暗黒の空間を抜けたその先。
フウトが目を開けた時、目に映ったのは――
風翔「……コントン都、だと!?」
見覚えのある建物、塔、広場。
ここは、あの世界――『ドラゴンボール ゼノバース』の世界に存在する、タイムパトロール本部・コントン都だった。
周囲の人々がざわめき立つ。
「なんだあの姿……!?」「人か?それともモンスターか?」
フウトは龍人のまま、ただ立ち尽くしていた。
だがすぐに、その場に緊張が走る。
トランクス「――誰だ!?」
背後から、真っ直ぐな声が響く。
振り返ると、そこにはトランクスがいた。剣を構えた姿で。
「ここは立ち入り禁止区域だ!」
フウトは手を広げ、慌てて制止する。
「待ってくれ!僕だ!フウトだよ!」
トランクスの瞳が驚愕に染まる。
「風翔さん……!?その姿は一体……」
ようやく剣を下ろした彼に向けて、フウトは全てを語った。
スーパーサイヤ人ゴッドへの変身、その上に“纏い”を重ねた結果、姿が変化したこと。
そして再び現れた“黒い裂け目”によってこの世界へ戻ってきたこと。
全てを聞き終えたトランクスは、しばらく沈黙したのち、静かに口を開いた。
トランクス「……まさか、本当にあの“裂け目”が再び現れるとは」
風翔「トランクス、あれって一体何なんだ?」
トランクス「分かっているのは、あの現象は“時空の干渉”によるものということだけです。次元を跨ぐ力、我々にも正確には分析できない」
風翔「じゃあ、また起こる可能性も?」
トランクス「……ある。むしろ、あなたが“神の気”とあなたの纏いという技、を併せ持つようになった今、それが“鍵”となるかもしれない」
風翔「……鍵、か」
フウトは胸元に手を当てた。まだ赤い鱗のままの皮膚が、そこにある。
風翔「俺の中にある力が、また何かを呼ぶってことか……」
トランクス「フウトさん。タイムパトロールとして、あなたにお願いがあります」
風翔「なんだ?」
トランクス「“もし次に裂け目が現れた時”――その先にある世界に、調査のために入ってもらえますか?」
フウトは静かに、そしてしっかりと頷いた。
風翔「もちろん。どうせ放っておけない性分だからな」
トランクス「……ありがとう、風翔さん」