マックの道案内に導かれ、数分も走れば学校の前にたどり着いた。
フウト「はい、着いたよ。」
その瞬間、背中に乗っていた3人の子供たちが一斉に声を上げた。
シュウ「お前すげえな!車より速かったんじゃねーか!?スッゲー!!」
メグ「は…はや…速すぎ……っ。う、うえぇ……ちょっと酔ったかも……」
マック「メグ、大丈夫なんだな?」
メグ「な、なんでアンタ達は平気なのよ……」
地に足をつけても、まだふらついてるメグ。
その様子を心配そうに見守るマックと、何も気にせずはしゃぎ続けるシュウ。三者三様の反応に思わず笑ってしまう。
フウト(若いっていいな……って、僕も一応まだ若いか。26だし)
フウト「じゃあ、機会があればまたな」
メグ「できれば……さっきのは“無かったこと”にして欲しいな……」
シュウ「なんでだよメグ! すっげー楽しかったじゃん!あの風!あのスピード!また乗りてー!」
マック「まあまあ、急いでたから仕方ないんだな」
シュウ「だろ? なあ兄ちゃん、あんたの名前は?」
フウト「風翔だ」
シュウ「オッケー!ありがとなーフウト!」
マック「助かったんだな、ありがとなんだな」
メグ「……ありがと」
彼らとのひとときは短かったが、妙に印象に残った。
特にマックの言葉遣いと、メグの真面目そうな雰囲気。
そしてトラブルメーカーのシュウ。彼らとまた再会することがあれば、その時は少しだけ“普通の出会い方”をしたい。
フウト(さて……この学校の屋上、確か柵がある構造だったはずだな。裏から回って……)
歩を進め、人気のない場所からそっと屋上へ。
フウト「ここならいいか」
軽く空を飛び上がり、屋上に静かに着地する。風が気持ち良い。
フウト「うん、やっぱ高いところはいいな……って、ん?」
視線の先で、道路を走る軽自動車が異様なスピードで蛇行していた。
フウト「暴走か。……怪我人が出る前に止めないと」
髪が逆立ち、金色に輝くオーラを纏う。スーパーサイヤ人に即変身。
フウト「よし、行くぞ」
0.5秒。暴走車の目前に立ちはだかる。
運転手「なっ……!? どっから湧いたあああ!?」
フウト「急ブレーキ踏め。……って、もう間に合わないか」
車体が迫る瞬間、片手でボンネットを受け止める。ギィッとタイヤが悲鳴を上げる。
フウト「……おい。怪我人が出たらどうすんだ?」
男「う、うるせえ! 前の車がトロトロ走ってんのが悪いんだよ! わかったらどけぇ!」
フウト「……ったく、仕方ねえな」
男「ふん! 分かりゃいいん……」
フウト「君の車を先にどかしておくよ」
男「……は?」
軽々と、片手で車を持ち上げる。
男「なあああああっ!?」
フウト「では、お一人様警察署までごあんなーい」
そのまま軽く飛び上がり、最寄りの警察署まで直行。
警官に引き渡し、「この人、道路で暴走してました。後ろの車のせいとか言ってたけど、どう考えても本人が一番危ないので」と軽く説明。
フウト「……うん、今日も社会貢献できた。俺、偉い」
だが──
フウト「あ、財布……持ってないんだった」
現代地球、いや、レジェンズの世界では紙幣文化が健在だった。
金無しじゃゲーセンも行けやしない。
フウト「めんどくせえ……働くか」
歩きながら求人票を探していると、目に入ったのは派手な格好の老婦人。手に宝石がびっしり詰まった指輪。目の前で何か探しながら叫んでいる。
マドンナ「ポメちゃーん!! 私の可愛いポメちゃーん、どこ行ったのぉ!」
周囲の人間は、見て見ぬふり。
誰も近寄ろうとしない。
フウト(これは……聞いてみるか)
フウト「どうかしましたか?」
マドンナ「あなた! ああ、聞いてくださる? 私のポメちゃんが……逃げちゃったのよぉ!」
フウト「いつ頃いなくなりましたか?」
マドンナ「ついさっきよ! 新しい可愛いお洋服を着せようとしたら、びっくりして家から飛び出していったの。ポメちゃん……お洒落が嫌いなのかしら……?」
フウト(犬からすれば服は異物だろ……)
マドンナ「お願い! 見つけてくれたら、報酬として30万円払うわ!」
フウト「やりましょう」(`・ω・´)キリッ
はい、人助けとか言って即決です。お金は偉大。
フウト「その前に……少しだけおでこ、触れてもいいですか?」
マドンナ「……? ポメちゃんのためなら構わないわ」
彼女の了承を得て、そっと手を額に添える。
ピッコロさん直伝、記憶読み取り能力──意識を集中すれば、ポメちゃんの最後にいた場所や行動が映像のように脳裏に浮かぶ。
フウト「……そこか」
地面に手を当て、【気】の感知を広げる。
微弱な、小動物特有の気配が数十メートル先の公園に反応した。
フウト「見つけた」
──次の瞬間。
マドンナが瞬きする間に、フウトはポメちゃんを抱えて戻ってきた。
フウト「はい、ポメちゃん捕獲完了」
マドンナ「ポメちゃん! 一体どこ行ってたのよぉ! ママ心配してたのよおおお!」
ポメちゃん「きゃんきゃん!!」
フウト(……ちょっと泣いてる? すまん、もう逃げんなよ)
マドンナ「ありがとう、本当にありがとう! ほら、これが約束の30万!」
フウト「ありがたく頂きます」
マドンナ「それじゃあ、お気をつけてね。さようなら〜」
──去っていくマドンナとポメちゃん。
去り際、ポメちゃんが一度だけ振り返ってフウトを睨んだ気がしたが、気のせいにしておいた。
フウト「ふう……さて、ゲームセンター行くかぁあ!!」
今度こそ遊び倒してやる。
ああ……こういう平和な時間がずっと続いてくれたらいいのにな。