ゲームセンターに入店してから、かなりの時間が経っていた。
UFOキャッチャーに格闘ゲーム、音ゲーに至るまで一通り遊び尽くし、やっと満足してフウトは壁の時計を見上げる。
フウト「……もう15時か。遊び過ぎたな……」
入店前にスーパーサイヤ人の変身は解いていた。
ただの青年の姿に戻っていたが、ふと気になったのは――あの3人のことだ。
フウト(シュウ達、そろそろ下校時間じゃないか?)
軽く身体を伸ばしてアーケードを後にし、彼らが通っている学校の方向へ歩き出した。
その途中、騒がしい声が耳に入る。建物の陰からそっと覗いてみれば、やはり見覚えのある3人の姿。
あのときの小学生――シュウ、メグ、マックだ。
そして彼らを取り囲むように、見知らぬ大人の3人組が詰め寄っていた。
?「さあ! そのタリスポッドを寄越しなさい!」
メグ「またあなた達なの!?いい加減、しつこいわよ!」
マック「迷惑なんだな……放っておいて欲しいんだな……」
シュウ「ほんっと、おばさんも大変だねえ」
その言葉に反応したのは、グラサンに派手なスーツ姿の女。
BB「……誰がおばさんよ!!
BB部長のあたしに向かってそれは許せないわ! ゴブリン、リボーン!!」
掌のデバイスが光り、紫緑の気を纏った異形のモンスターが地面を割って出現する。
フウト(……レジェンズの召喚……!ここって本当に、あの世界だったのか)
物陰に隠れながら観察するフウト。
次に目にしたのは、シュウが取り出した“それ”だった。
シュウ「シロン、カムバック! ダボーン!!」
フウト(掛け声間違えたーー!!)
突っ込まずにはいられない。
案の定、その隙を突かれて、ゴブリンの鋭い腕がシュウの手から“タリスポッド”を弾き飛ばす。
シュウ「うわっ! あああっ!!」
ゴブリンがタリスポッドを奪うと同時に、その巨体でメグたちに襲いかかる――
フウト「もう見ていられないな」
その瞬間、フウトは物陰から姿を現す。
フウト「子供相手にやり過ぎじゃないのか?おばさん」
BB「誰がおばさんよ!!」
フウト「だから、それ。大人気ないって言ってるの。子供が大切にしてる物を奪って、何が部長だよ」
シュウ「父さんから貰った大事なタリスポッドなんだ!あいつらに盗られた!」
フウト「……だそうだ。で、どう説明するんですか?」
BB「関係ないでしょ! あなたには!」
フウト「関係あるさ。だって――僕は、あの子達の“友達”だからな」
BB「ふん、人間ごときが。レジェンズの力に勝てると思ってるの?」
そう言って高笑いするBB。
しかし次の瞬間――
フウト「……戦うつもりなんてないよ。でも、これが必要なんでしょ?」
風のような一閃。
気づけばフウトはBBの目前に立ち、タリスポッドをひらひらと掲げていた。
フウト「これ、返してもらったよ」
BB「なっ!? な、なな、な……いつの間に――!?」
自分の手元から一瞬で消えたタリスポッドに唖然とするBB。
フウト「お待たせ。取り戻しておいたよ」
そう言って、白く光るタリスポッドをシュウに手渡す。
シュウ「よっしゃああ! ありがとう、フウト兄ちゃん!」
タリスポッドを掲げ、力強く叫ぶ。
シュウ「――【シロン】、リボーン!!」
タリスポッドのクリスタル部分が閃光を放ち、風の渦が周囲に巻き起こる。
白銀の風に包まれ、そこから現れたのは、巨大な白き翼を持つドラゴン、シロン。
シロン「ふーっ、やっと暴れられる。」
シュウ「しゃー!やっちまえ、でかっちょ!!」
シロン「指示が雑!!あと、誰がでかっちょだ!」
大気を巻き上げ、シロンの巨大な翼が風を纏う。
瞬間、竜巻のような衝撃波がBBと取り巻きのJJをゴブリンごと巻き込み――
BB「ぎゃああああああああああ!?」
JJ「うわあああああっ!!」
宙を舞い、建物の向こうへと吹き飛ばされていった。
フウト「……派手だな」
一件落着――と思ったが、フウトはすぐに現実に引き戻される。
フウト「……って、帰ろうにも、そもそも“家”がねえ」
転生者。住居も、身分証もない。
しばし考えた末、フウトは素直に頼ることにした。
フウト「なあ、シュウ。悪いんだけど、今日一晩だけ泊めてくれないか?」
シュウ「おお!もちろんだとも!助けてくれたお礼ってことで、ウチ泊まってけ!」
フウト「マジで?助かる」
シュウ「よーし!でかっちょ、家まで頼むぞー!!」
シロン「……だから、でかっちょじゃねえ。シロンって名前だって言ってんだろ……毎回言ってるのに、一度だってまともに呼んでくれねえ!」
シュウ「いいじゃん、愛称だよ、愛称!」
シロン「愛称ならもっとマシなのにしろっつーの!」
シュウがシロンの背中に飛び乗ろうとするが、その手前でシロンの大きな爪がフウトを制する。
シロン「待て。あんた、俺に乗る必要あるのか?」
フウト「え、駄目なの?」
シロン「さっきの、見てたからな……あんた、一瞬だが空飛んでたろ。普通じゃねえ」
フウト「まあ、そりゃね……でも、それについては――時が来たら話すよ」
シロン「……ふん。サーガを助けてくれた礼として、今は信じてやる。けどな――」
フウト「?」
シロン「お前だけは、乗せたくねえ。つーか乗るな。いや、乗せたくない。俺の直感がそう言ってる」
フウト「えぇぇ……!? そりゃないでしょ……」
シロン「歩け。いや、お前は飛べるだろ」
フウト「……しゃーねえな。じゃ、舞空術で行くか……」
軽く膝を曲げ、空へふわりと浮かぶ。
マック「お兄さん、ほんとに何者なんだな……?」
メグ「……変な人だけど、いい人なのは分かるわ」
シュウ「いーくぞー!でかっちょ、発進だぁー!!」
シロン「だから違ぇってえの!!!」