脇役として頑張るだけ   作:ラン乱

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黒き竜影《ランシーン》、動く

一方その頃、レジェンズを掌握する企業――「ダークウィズカンパニー」本社では、空気が張り詰めていた。

 

「……はぁ!? 吹き飛ばされた!?ゴブリンごと!? あの子供相手に!?」

 

広々とした執務室に怒号が響く。

机を両手で叩いているのは、ダークウィズカンパニー社長。

椅子に座るのも忘れるほど、怒りで頬を紅潮させていた。

 

社長「BB!JJ!お前らは何のために現地に派遣されてた!?タリスポッドを回収するためだろうが!」

 

BB「す、すみません社長ぉ……!だって、あの子供たちに加えて、妙な青年が現れて……。あたしの手元から、いつの間にかタリスポッドを……!」

 

JJ1「マジで、マジで目が追いつかなかったんスよ!まるで……ドラゴンより速かったっていうか……」

 

JJ2「気付いたら、タリスポッドがなくなってて……あれはもう、魔法ですよ、魔法……」

 

社長「うるさいっ!お前らの無能は耳が腐るわ!上層部への言い訳、どうしてくれるんだ!」

 

その瞬間、執務室の内線電話がチリリと鳴った。

 

受付「社長、失礼いたします。総務課から伝言です」

 

社長「今はそれどころじゃ……誰からだ」

 

受付「ランシーン様から……“至急、携帯型扇風機を持ってこい”とのことです」

 

社長「……な、なんだと……!?ラ、ランシーン様が……っ!」

 

さっきまで怒鳴っていた社長の顔が見る間に青ざめ、声も震え始めた。

冷や汗を拭う暇もなく、社長は扇風機を両手で持ち、階段を駆け上がっていく。

 

***

 

最上階――特別執務室。

 

分厚いドアを開けると、そこにいたのは、全身を黒銀の衣に包んだ竜の姿をした男――ランシーン。

その姿はシロンと瓜二つ……だが、その気配と威圧感は、まるで別格だった。

 

ランシーンは、窓際にある重厚な椅子に座っていた。

表情ひとつ動かさず、ただ一言も発せずに、社長に手を伸ばす。

 

社長「は、はい……。扇風機……こちらでございます……!」

 

扇風機を差し出すと、その大きな指が、カチ、とスイッチを押した。

 

ゴォォォ……と微かな風音が吹き出し、ランシーンはそれを顔近くまで持ち上げる。

 

左を向く。

右を向く。

そして、目を細める。

 

……静寂。

 

その一瞬に、社長は既に背中に冷たい汗を感じていた。

 

ダモン「そ、それで、例の件ですが……その、子供たちの手に渡っていたタリスポッド……そこに、“妙な青年”が現れまして……」

 

ランシーン「……もういい。下がりなさい」

 

低く、冷たい声。

 

それを聞いた瞬間、社長は即座に深く頭を下げて退室した。

 

すると、静かだったランシーンの手が、スッと動いた。

風を浴びていた扇風機を、そのまま片手で……ぐしゃりと、握り潰す。

 

金属音が鳴った。

 

ランシーン「……この目で、直接確かめますか」

 

窓を開け放ち、黒い翼を広げる。

次の瞬間――静寂を切り裂く一閃の風とともに、ランシーンは空へと舞い上がった。

 

***

 

一方その頃――

 

フウトは、シュウたちと共に空を飛びながら、のどかな町並みを見下ろしていた。

舞空術の感覚は研ぎ澄まされているが、ふと、その背後に漂う――異質な気配に気づいた。

 

フウト「……ん?」

 

首を巡らせ、空の後方を見やると、そこに――いた。

 

黒い翼、どこか見覚えのあるシルエット。

だが、それはシロンではなかった。

より冷たく、より禍々しく――そして、強烈な威圧感を放つ存在だった。

 

ランシーン「貴方が……例の“青年”ですね」

 

その声は静かに響くが、圧倒的な存在感に満ちていた。

 

フウト「……誰、あんた? ていうか、シロンに似てるね?でも帽子は被ってないし、服着てるし……ってことは、兄弟か?」

 

シロン「なっ!? 俺はコイツのことなんか知らねえぞ!!」

 

フウト「おいおい、シロン。お前、服すら着てねえじゃん。まさかの裸族!?変態かよ!!」

 

シロン「お前、一旦黙れ!!!!」

 

そのやり取りの間も、黒き竜はまったく表情を変えず、ただ冷静に言った。

 

ランシーン「用があるのは、貴方です。私はランシーン、お名前を伺っても?」

 

フウト「フウトだけど何か?

じゃ、名前言ったから行くね」

 

次の瞬間――!

 

ゴォッ!!!

 

黒い竜の翼から生み出された旋風が、咆哮のようにフウトへと迫る!

 

フウト「うおわっ!?なんでいきなり!?」

 

大袈裟に宙返りしながら、衝撃波を紙一重で回避する。

爆風が木々をなぎ払い、建物のガラスを震わせる。

 

フウト「ちょっ……待てよ!?先に話をしようぜ、な!?」

 

ランシーン「……くっふふふ。いやはや素晴らしいですねえ。その反応速度、…ただの人間でないことは確かのようですね」

 

フウト(やべえ……避けずに喰らっておけば“ただの人間”で通ったかもしれねえ……)

 

密かに後悔していた。

 

シロン「おい!アイツやべえって!お前、マジで何者なんだよ!?」

 

フウト「いや、ちょっと待て、俺なんもしてない!」

 

ランシーン「フウトさん。近いうちに、あなたとゆっくり話をする機会を設けたい。……その時まで、心と体を“整えて”おいてください」

 

そう言い残し、ランシーンは黒い旋風と共に空高く飛び立ち、姿を消した。

 

残されたのは、竜巻でぐちゃぐちゃになった街路樹と、呆然とするシュウたち。

 

シュウ「……あ、あれ、もしかしてまた敵?」

 

マック「たぶん敵なんだな……」

 

メグ「……怖かったわよ、もう……」

 

フウト「ま、まあ、今回は見逃してくれたっぽいし。うん、大丈夫、大丈夫……(たぶん)」

 

シュウ「おーい、家こっちだぞー!気を取り直して帰ろー!」

 

フウト「……うん、まずは一息つこう。色々話すのは、その後だな」

 

風の吹く空を背に、彼らは歩き出す――嵐の前の、静けさのような夕暮れの中を。

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