風翔たちが空を飛び、シュウの家が見えてきたころには、太陽はすっかり傾いていた。
夕焼けが街を茜色に染め、今日という一日の余韻を包み込むように光を投げかけていた。
フウト「……ここが、君の家か」
シュウ「そーそー!なかなかイケてるだろ!」
フウト「うん、でかいし、家の前に木があるのがまたいい味出してる」
目の前に現れたのは、二階建ての温かみある一軒家。庭付きで、白い外壁には植物の蔦が絡まっていて、どこか懐かしい匂いがした。
メグ「じゃあ、私はここで。お兄さん、またね」
マック「僕も帰るんだな。また明日会うんだな!」
フウト「うん、気をつけて帰れよ。今日はありがとな」
手を振ってそれぞれ帰っていくメグとマック。
彼らが家路へと歩いていく姿を見送った後、フウトはシュウの案内で玄関へと向かう。
シュウ「ただいま〜!」
ドアを開けると、家の中から明るい声が返ってきた。
?「おかえり〜、シュウ!あら、今日はお友達を連れてきたの?」
?「……ん?おい、誰だその兄ちゃんは」
リビングから姿を現したのは、笑顔の女性と、鋭い目つきをした男性。
彼らこそ、シュウの両親――父・サスケ、母・ヨウコだった。
シュウ「今日な、すげー助けてもらってさ!ちょっと泊まらせていい?」
サスケ「……ほう」
ヨウコ「まぁまぁ、まずは自己紹介からでしょ、あなた!」
フウト「あ……はじめまして。風翔と言います。ちょっと事情があって、今夜一晩だけ、泊めてもらえると助かります」
サスケ「……ふむ」
フウト(お父さん、ちょっと怖い系だな……)
ヨウコ「まぁ、いいじゃないの!助けてもらったんでしょ?泊めてあげましょ!」
サスケ「……わかった。息子が恩人と言うなら、信用しよう」
ヨウコ「ふふっ、そういうことだから、どうぞ上がってちょうだい!」
フウト「ありがとうございます、助かります」
***
リビングは温かな光に包まれていた。木目の家具に観葉植物、そして壁には家族写真。
あまりに“家庭的”な雰囲気に、フウトは少し戸惑いながらも、心が和らいでいくのを感じていた。
サスケ「夕飯はもう食ったか?」
フウト「あ、いえ……まだです」
ヨウコ「じゃあ、一緒に食べましょ!シュウ、手を洗ってきなさい!」
シュウ「へーい!」
その間にフウトはバッグから、さっき拾ったばかりの“自称:ねずっちょ”を取り出した。
白くて丸っこいその姿。
耳が少し大きく、ふさふさの尻尾をぴょこんと立て、どこからどう見ても――
フウト「……どう見てもネズミだよな」
シロン(カムバック中)「ガガーッ」
フウト「言葉も通じねえのか……?」
そこへ、戻ってきたシュウが豪快に笑う。
シュウ「そいつ、シロンのカムバック状態!普段はあんな感じ!」
フウト「こんな姿になるんだな……」
シュウ「ちなみに俺は“ねずっちょ”って呼んでる!」
フウト「それ本人(?)怒らねえの?」
シュウ「うーん、怒ってるかも?でも喋れないからセーフ!」
シロン(ガガガーッ!!)
フウト「すげえ不満そうな声出てるけどな……」
***
夕飯はヨウコ特製のハンバーグ定食だった。
ほくほくのご飯、味噌汁、彩り豊かなサラダ、そして肉汁溢れるハンバーグに、フウトの胃袋が素直に喜びを上げる。
フウト「……うまっ!これ、マジでうまいっす」
ヨウコ「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。シュウより反応がいいわ」
サスケ「ふっ、確かに。こいつは黙って食ってばかりだからな」
シュウ「うっせ!でも美味しいのは認める!」
一同笑い声がこぼれる中、フウトは、ふと胸の奥が温かくなるのを感じていた。
フウト(……なんだろ、この感じ。懐かしいっていうか、恋しいっていうか)
気づけば、こういう“家庭の温もり”に触れるのも久しぶりだった。
いや、もしかしたら前世でも、こうやって他人と一緒に食卓を囲んだ記憶は少なかったかもしれない。
食後、ヨウコが布団を用意してくれ、フウトは客間に案内された。
ヨウコ「枕が合わなかったら言ってね。お風呂も好きな時にどうぞ」
フウト「本当にありがとうございます……」
サスケ「……困ったことがあったら、遠慮なく言え。力にはなってやる」
その言葉に、心の奥底から何かがじんわりと溶けていく気がした。
フウト「……はい」
客間に戻ると、ねずっちょ(シロン)が布団の上でぴょこんと跳ねていた。
フウト「おい、シロン。跳ねるな。蹴るな。潰すぞ」
シロン(ガッガー!)
フウト「“潰せるもんなら潰してみろ”的な目をするな。お前その姿だと完全に無力だろ」
シロン(ピョン)
フウト(……いや、なんか馴染んできたな)
翌朝、目が覚めたとき。
フウトは静かに天井を見つめながら、こう思った。
(……この世界で、何をすべきか、少しずつ分かってきた気がする)