今日は休日――子供たちにとっては待ちに待った学校のない日。
陽射しが柔らかく、風も心地良い、絶好の外遊び日和。
「こっちこっちー!早くーっ!」
先頭を元気よく走っているのはシュウ。
後ろから、少し大人びた表情のメグと、のんびりマイペースなマック。
フウトもその後を軽く小走りでついて行く。
やがてたどり着いたのは、町はずれの林の奥――草むらを抜けた先の、廃材で囲われた木造の空間。
シュウ「ここが俺たちの秘密基地だ!!」
フウト「……へえ、なかなか味があるな」
メグ「幼稚園の頃に、みんなでよく遊んでた場所なのよ。今は中も少し整理して、物置っぽくなってるけど」
マック「ここなら大人にも見つかりにくいんだな。隠れ家としては完璧なんだな」
入口の板を開けて、中へ入ると、想像以上に整っていた。
木箱を並べたテーブル、空き缶で作ったペン立て、手作りの地図、落書き帳など――子供の“工夫”がぎゅっと詰まっている空間だ。
シュウ「ほらフウトも入れよ!」
促されて頭をかがめて中に入ると、確かに“基地”という言葉がぴったりだった。
手狭だが、壁に貼られた手書きの“秘密の約束”や、“みんなの好きなもの”ランキングが微笑ましい。
シュウ「そういえばさ、フウトって空飛べるじゃん?他にも何かできたりするの?」
フウト「……できるっちゃできるけど」
シュウ「え、なになに!?火とか出せんの!?ビーム!?分身!?」
フウト「いや、そこまでは……。でも、“変身”はできるよ。髪型だけだけどな」
メグ「髪型……?」
マック「変身って何なんだな?」
シュウ「見たい見たい見たい!やってやって!!」
フウト「……ただ、ここでやるとこの基地ぶっ壊れるかもしれないけど」
シュウ「そんなに!?じゃあ外出よう!!基地、壊されたくねえ!!」
***
基地から少し離れた、草地の広がるひらけた場所。
鳥のさえずりが聞こえ、陽の光が地面を照らしていた。
フウト「じゃ、行くぞ。ちょっと離れて見てろよ」
シュウ「ラジャー!」
メグ「ちょっとドキドキするわね……」
マック「後ろに下がるんだな」
3人が一斉に距離を取る。
その後ろには、リボーン状態のシロンも立っていた。今日はカムバック姿ではなく、堂々とした白き竜の姿をしている。
フウトは両足を肩幅に開き、静かに目を閉じる。
「――ふうっ」
身体の内側から、力が集まり始める。
気が凝縮され、周囲の空気が揺れ始めた。
「……ッ!」
金色の閃光が弾けた。
フウトの黒髪が一瞬で逆立ち、黄金に変わる。
目つきが鋭くなり、周囲の地面が風圧で砂埃を舞い上げる。
メグ「な……っ!?」
マック「髪の色が……変わったんだな……」
シュウ「すっげぇぇええ!!!マジで光ってる!!!」
スーパーサイヤ人――
怒りを基に進化した、黄金の戦士の姿。
だが、フウトの力はそこで終わらない。
フウト「……次、見せてやるよ」
さらに力を引き上げる。
空気中の気がビリビリと震え、稲妻が身体の周囲を走る。
髪はより逆立ち、金の光はより鋭く、空間すら軋むような“気圧”が発生した。
スーパーサイヤ人2――
シュウ「な、なにこれ……!空気が震えてる!」
メグ「この圧……本当に人間なの……?」
フウト「――ラストだ」
静かに言い、背筋を伸ばす。
身体全体が眩い光に包まれ、髪が一層長くなり腰まで垂れ下がる。
眉は消え、黄金のオーラは猛る龍のように身体を囲んだ。
スーパーサイヤ人3――
フウト「これが……“本気”の姿の一つだ」
その姿を目の当たりにしていたシロンが、思わず一歩後ずさる。
シロン「……お前……バケモンか!?」
フウト「まあ、この世界じゃ、こういう力持ってる人間は基本いないからな」
メグ「……ちょっと待って。『この世界じゃ』ってどういう意味?」
フウトは、ゆっくりと元の姿に戻る。
金の髪が黒へと戻り、空気がようやく静けさを取り戻す。
フウト「……僕はね、この世界の人間じゃない。別の世界から来たんだ」
その言葉に、3人は凍りついたように沈黙する。
マック「……どこから、来たんだな?」
フウト「僕にも、正確なことはわからない。けど、ある日突然、気づいたら“この世界”にいたんだ。しかも……記憶を持ったままで」
メグ「……そんなことって、本当にあるの?」
フウト「信じるかどうかは任せる。でも、今話したことは全部本当さ」
風が草をなびかせ、空はゆっくりと午後に向かって傾いていく。
シュウ「……でもさ」
フウト「ん?」
シュウ「俺は、フウト兄ちゃんがどこの人だろうと、友達だって思ってるよ」
メグ「私も。だって、助けてくれたじゃない。変な人ってのは前から思ってたけど……優しいのは本当だから」
マック「僕も一緒に居たいんだな。シロンもいるし、楽しいんだな」
シロン「ふん・・・」
フウト「……ありがとな。みんな」
――どこにいても、誰であっても。
出会いが心を繋げていく。
フウトにとって、この日が“本当の居場所”の始まりだった。