陽はだいぶ高くなり、空にはゆるく雲が流れていた。
秘密基地の周囲は、虫の声と遠くの町のざわめきが微かに聞こえるだけで、とても静かだ。
そんな中、突然、シュウが勢いよく立ち上がった。
シュウ「ではっ!」
手を大きく掲げてポーズを決める。
シュウ「これより、フウトが仲間に加わったことで――“レジェンズクラブ”に新たな部員として迎え入れることをここに宣言する!」
フウト「……レジェンズクラブ?」
ぽかんと呟くフウトの横で、メグが苦笑いを浮かべる。
メグ「シュウが勝手に作ったものだから、あんまり気にしないでいいわよ」
「勝手言うなよ、メグ!」とシュウが振り返る。
シュウ「これはなー、俺らの絆の証でもあり、チームの名前でもあるの!な?」
フウト「へえ……それで、僕は何担当なんだ?」
質問を投げかけると、シュウは自信満々に両手を広げる。
シュウ「よーし!フウトは“生徒会委員”だ!」
フウト「……なぜ、生徒会?」
シュウ「えーっとな、なんかフウトって俺らより年上でしっかりしてそうだから……で、生徒会!これしかない!」
メグ「なんて雑な理由……」
マック「でも、フウトならきっと頼りになるんだな」
シュウ「ってことで、今日からお前もレジェンズクラブの正式メンバーだ!」
フウト(……簡単に決めたなぁ)
内心呆れながらも、どこか温かさを感じてしまうフウト。
こういう“遊び”の感覚は、どこか懐かしい。
フウト「じゃあ、ちなみに……君たちは?」
シュウ「おう!俺は当然“部長”だ!そして、メグは“ウサギ飼育委員”で、マックは“美化委員”!」
フウト「なんで部活じゃなくて学校の委員会風なんだ?」
メグ「それも全部、シュウの命名センスよ。……あきれちゃうでしょ?」
マック「でも、役割があると楽しいんだな」
シュウ「そして、忘れちゃいけねえ!でかっちょは“副部長”だ!」
シロン「だから!でかっちょ言うなっての!!」
怒鳴るシロンをよそに、シュウは懐から何かを取り出した。
鮮やかなヒョウ柄の布がくしゃっと丸められている。
シュウ「さーて!レジェンズクラブの“部員のしるし”として、これを付けてもらう!」
手渡されたのは、なんとも派手な――ヒョウ柄のスカーフ。
フウト「……これを?」
シュウ「そう!これを首とかに巻いたり、リストに付けたり、好きなとこでいいんだけど、常に“持ち歩く”こと!これ、ルールな!」
フウト「……ねえ、メグ。これ君も付けてんの?」
メグ「いえ、カバンの奥底に放り込んであるわ。正直、使い道がなかったのよ」
マック「僕も、洗濯機の下に落ちてそのままなんだな……」
フウト「……まあ、せっかくだし、巻いとくか」
手に取ったスカーフを軽く整え、フウトはゆっくりと首に巻いた。
鏡はないが、手触りからしてちょっとだけ恥ずかしい。
フウト「――これからもよろしくな、部長」
シュウ「うおおおおおっ!!流石、生徒会委員!話が分かるじゃーん!!」
満面の笑みを浮かべて、シュウが勢いよく手を振り回して喜んでいる。
メグ「よくそれ巻けるわね、恥ずかしくないの?」
フウト「昔から変なの身に付けるの慣れてるからな。腕輪とか銀のチェーンとか……バングル、スパイク付きのリストバンドもあったし」
マック「フウトさん、昔は何してたんだな?」
フウト「んー……それはまた、いずれ話すよ」
笑ってごまかすが、その声色にはどこか懐かしさが滲んでいた。
前世――つまり、かつて生きていた“元の世界”での生活。
フウト(人間だった頃は、毎日がただ流れてたな……あの頃の俺が、こうやって子供とスカーフ巻いて笑ってるなんて、誰が予想できたか)
その思いが胸を過った瞬間。
すると、シロンが、翼をばたつかせながら小突いてきた。
シロン「おい、フウト!こいつらのノリに流されすぎだろ!ヒョウ柄だぞ?ヒョウ柄!」
フウト「お前は副部長なんだから、ちゃんとノってやれよ、でかっちょ」
シロン「俺はでかっちょじゃねぇ!!」
「でかっちょ副部長!!」と一斉に言う子供たち。
「違うううううう!!!」と天に向かって咆哮する白竜。
太陽がさらに傾き、秘密基地の中には笑い声がこだました。
どこか懐かしく、どこか温かく。
“本物”じゃなくてもいい。子供たちにとって、この時間はかけがえのない“絆”なのだ。
そしてフウトも、その中心に――確かにいた。