毎回非常に助かっております……
今回は春樹vsラウラ&廻
2人のペアとしてのあり方について。
「シャル!?」
「ちっ、奴の方が早かったか」
シャルルの敗北がアナウンスされた時、春樹はラウラとの戦いに必死だった。
それはシャルルが来ることを前提とした、消極的な戦いだったが。それもここまで。
シャルルの敗北が決まった以上、これからの戦いは春樹一人だ。
「貴様もペアと同じく終わると良い!」
「クッソ! 終わってたまるかよ!!」
ラウラが操る無数のワイヤーブレードに対して、春樹がスピードによる回避と黒雪での迎撃で対応する。
だがワイヤーブレードは執拗に春樹を追い込み、遂に追い付かれた。
ワイヤーブレードの一つが春樹に迫り来る。
「このっ」
黒雪で迎撃しようとするも、間に合わない。
やられる!
そう考えた春樹の目の前で、迫っていたワイヤーブレードがライフルの弾丸で弾かれた。
「は!?」
思わず驚愕の声を上げてしまう春樹。
弾丸の元を辿れば、当然そこにいるのは廻だ。
シャルルが脱落した以上、今戦っているのは春樹、ラウラ、廻の三人のみ。
何故? 実は味方? それとも何かの作戦?
混乱する春樹へ飛来した二発目のライフル弾が命中する。
「やっぱ敵じゃねえか!?」
「何を言ってるんですか、貴方は」
その軽口と共に参戦してきた廻は、両手のライフルによる弾幕で春樹を追い詰める。
またしても逃げ回ることになった春樹。
だが廻は二丁銃のメリットを活かし、春樹が今いる場所と回避先への偏差射撃で追い込んでいく。
徐々に被弾が増えていく春樹の前に、突如としてラウラが現れる。
「まじか!?」
「こいつは私の獲物だ!!」
そうして放たれたワイヤーブレード達は春樹を狙いながら、同時に春樹を偏差射撃の箇所からどかすように動かす。
また味方の攻撃を邪魔する行動に、春樹の困惑が強まる。しかし動きを止めるわけにはいかないと、回避と迎撃でひたすら体を動かす。
「クソ! 手数が足りねぇ!!」
「貴様も終わるが良い!」
またしても迫るワイヤーブレード。
先程のように一つではなく、無数に迫るそれを限界まで迎撃と回避する春樹。
それでも全ては捌けない。
「取った!」
「残念、私のです」
迫ってくるワイヤーブレードに向けて、再び廻のライフルが火を吹く。
今度はただワイヤーブレードを直接弾くだけでなく、跳弾も利用して全て弾き飛ばし、更には春樹にもダメージを与える。
春樹の困惑など知らんと言わんばかりに、廻が瞬時加速で春樹との距離を縮める。
そうして振るわれるブレードに、なんとか意識が追い付いた春樹が黒雪を合わせてガードに間に合った。
「廻さん! 何なんだよこれ!?」
「さて、何でしょう、ね!!」
廻を問いただすも、廻はどこ吹く風で答える気は無いらしい。
つばぜり合いになっていた二人だったが、廻がブレードを弾き、春樹の体を蹴り下げる事で距離が空く。
春樹は開いた距離を再び近付こうとして、自信がロックされている警告に気付く。
その警告の先は、当然ラウラ。
彼女のレールガンが、こちらを向いていた。
「やっべぇ!!」
「っと、危ないですね」
放たれたレールガンは春樹と廻の間を通り過ぎて行く。だがその隙に、急接近したラウラのビーム手刀が春樹を襲う。
これもギリギリで受け止める春樹だったが、自身のミスに気付いた。
今のビーム手刀は左手によるもの、つまり今のラウラの右手はフリーだ、ラウラの右手、それは……
「(まずい! 停止結界が来る!)」
「終わりだ! 空野春樹!!」
「いいえ、まだですよ」
ラウラの停止結界をくらう事を確信してしまい、諦めかけた春樹。
しかし、その予想は瞬時加速で突っ込んできた廻の一撃で吹っ飛ばされた事で実現しなかった。
またしても廻の謎の行動、しかしここでようやく春樹も理解が追い付く。
同時に沸いた感情は、恐怖とそれ以上の困惑。
「この二人、俺をどっちが仕留めるか競ってやがるのか!?」
「貴っ様ぁあ!!」
「おや、これが私達の関係でしょう? 貴女も同意したはずですが」
「上等だ、良いだろう」
「「空野春樹を倒すのは私だ!!(私です)」」
「くそったれ!!」
春樹は叫びながら、改めてこの戦場を理解して生き残る為に動き出す。だが、もはやどうやったら勝てるかを考えていないのを、自覚しているかは分からない。
ーーーーーーーーーーーー
「なんなんだよ……あれ」
「これが……これがタッグだと言うのか!」
「あまり気持ちの良い試合ではありませんわね」
「なるほどね、そりゃ廻の奴も「ラウラに勝つ」なんて言葉が出てくるわ」
「…………」
春樹と仲の良い面々がこの試合状況に対し思い思いの言葉をする中で、千冬は教え子二人の行動に思わず眉間に手を当てて下を向いていた。
「こんなのってねえよ、千冬姉! こんな試合早く終わらせるべきだろ!!」
「ふぅー……織斑、「いっでぇ!?」今のでタメ口が3カウントだ。公私は分けろ」
千冬に抗議した一夏に対して、スパパパンッ! と三連続出席簿を当てながら、千冬も顔を上げて話し始める。
「まず、
「しかし、これは余りにも目に余る行為です! このままでは春樹はなぶり殺しだ!!」
「そうだな、あまり気分が良いものでは無い。が、これはラウラ達の現状を考えれば悪くない選択肢、と言えるのも事実だろう」
「なっ!?」
「はいはい、落ち着きなさいあんた達。みんな気持ちは一緒よ、多分」
「一言多いですわよ、鈴さん。それで織斑先生、悪くないとはどういう意味でしょう?」
「そうだな……成長に必要なのは肯定だけではなく、ある程度のストレスも必要だ」
「それって」
千冬の言葉にメンバーは聞き覚えがあった。
それは以前のIS実技で、ラウラがISは遊びではないと叫んだ時に廻がラウラに言った言葉だ。
千冬は全員が覚えている事を表情から確認し、そのまま解説を始める。
「この言葉は事実だ。成長のためにはある程度のストレス、プレッシャー……目指すべき壁とも言える物が必要だ。それまでの練習による下積みは強大な壁を前に、それまでとは一線を課す変化、或いは進化と呼べるより大きな成長を迎える。お前達も経験があるんじゃないか?」
「……確かにこの間の無人機とか」
「あの時は普段以上の力を出してる感じはあったわ、普段なら絶対しない一夏の賭けに乗ったし」
「それなら私は、廻との戦いの中で瞬時加速を成功させた時がそうか」
「以前クラス代表を賭けて一夏さん達と戦った後、確実に今までの私とは変わっていましたわ」
それぞれが千冬が語った進化に対して、思い当たる経験を語る一夏達。
その姿に満足した千冬は、先程よりはどこかほっとしたような声で説明を続ける。
「お前達は無事に成長していて何やりだ。だがラウラにはそれが無い。お前達も薄々気付いているだろうがラウラの実力はこの学年でも上位……いや、トップだ。お前達と比べても一歩先にラウラはいる。そうだな、仮にこの学年で一体一でラウラに勝てるとしたら四組の日本代表候補生かデュノア、後はデュノアを倒した事実から繰空、この三人だろう」
「ま、待ってくれよ千冬ね……織斑先生。それならもうシャルルは退場しちまったし、廻さんはラウラのペアだ。もう四組の代表候補生しか勝てないって言う……んですか?」
「残念だが四組の候補生は今回のトーナメントは不参加だ」
「マジかよ!?」
「落ち着きなさい、一人で勝てないなら二人で勝てば良いのよ。その為のタッグでしょ」
「その通りだ。なにもお前一人でラウラに勝てなどと言わん」
「あ、ああ……そうだった。そうだよな!」
千冬の宣言に息を呑み、もはやラウラに敵はいないと宣言されて慌てる一夏と、それを宥める鈴。
自分達もそれを無意識でも分かってて、その為にタッグを組み、戦う練習をしてきたのだろう。
そう指摘され、再び闘志を燃やす一夏。
千冬が話を戻して語り続ける。
「話をラウラと繰空ペアに戻すぞ。先程も言った通り、この二人はお前達と比べて一歩先にいる、互いが相手の壁となる数少ない相手だ。故に、お互いの成長を考えれば……」
「一回しか戦えない敵よりも、優勝するまで一緒のチームで妨害し合う、ってわけですか」
「……そうだ、そちらの方が成長の可能性が高く、
千冬は言葉の最後に「もっとも、最後のは私の予想でしか無いがな」と付け足した。
その付け足しを最後に、その場にいる全員が何も言わなくなる。
……恐らく全員が抱いている、同じ感情。
それを最初に口に出すのは、やはり鈴だ。
「最っ低ね。あの二人」
「り、鈴……」
「事実でしょ。つまり何? あの二人にとって勝利と優勝は
「あくまでも私の予想だ。正しいとは限らん、落ち着け、鈴」
「それでもよ! ……ちょっとウォーミングアップしてくるわ。セシリア、付き合いなさい」
「……仕方ありませんね。今の鈴さんは頭を冷やした方が良いでしょうし、付き合いましょう」
そう言って鈴とセシリアは観戦室から出ていく。
鈴の怒りに満ちた気迫に押されながら、一夏と箒は見送る。
そして鈴が居なくなった後に、千冬は少しだけ付け加えた。
「仮にこの考えで何かを目指しているなら、それは繰空だろう」
「えっ?」
「今のラウラに成長しようという意思は薄い。ラウラの今一番の目的は……」
「俺だよな」
「そうだ
再び沈黙がその場に降り立つ。
だが、その次の瞬間に一夏は「大丈夫だ」と断言した。それに千冬と箒が反応する。
「ほう……強気だな、
「あぁ。確かにラウラは強いし、廻さんも凄いのは分かった。でも、それでも『俺達が勝つ』よ。その為にこの数週間練習してきたし作戦だって立てた。だろ? 箒」
「あ、ああ、それは勿論だが」
ただ真っ直ぐに、自らの勝利を宣言した一夏に思わず気圧される箒。
一夏の言う通りこの数週間は対ラウラを中心に考えて練習を重ね、対策と作戦だって素人二人だが考えた。
それでも廻というイレギュラーにラウラと廻のペアとしての在り方、新たな要素に動揺していた箒に対して一夏はそれでも『勝つ』と言う。
そこに不安や恐怖は感じず、ただひたすらに自身の勝利を見ている。
「あの二人が俺らよりも先に居るってんなら、これ以上ない壁だろ。いくらでも、変化だって、進化だってして、追い付いてあの二人を倒して見せるよ。俺」
「……成長する事を前提に戦うのは無謀だぞ」
「しなくてもいいさ。俺達が考えた作戦と練習は裏切らない、そうだろ? 箒」
「……ああ、その通りだ! ここで弱腰になんぞなってやる物か!!」
「そう来ないとな! 大丈夫だよ千冬姉、俺は必ずラウラに勝つ。そんであいつが変に拘ってる物もぶっ壊してみせるよ」
そう、ハッキリと千冬の目を見て言う一夏は穏やかだが確かな存在感を放っていた。
先程やトーナメントの始まった直後の情けない姿からは程遠く、怯えてもいない。
そんな弟に対して千冬は
「織斑先生だ、馬鹿者「あいたぁ! 良い感じだったじゃん! 殴るか普通!?」そもそも、お前達も勝たなければならん上に、空野の試合も終わっていないぞ……っふ」
出席簿で軽く叩きながら、一夏本人に見られないよう笑みを浮かべた。
そこでアリーナを写すモニターから、再び歓声が上がった。
この試合が終わる。
直感的にそう感じた三人はモニターから目を離さずに、箒はもう追い詰められるだけの思い人の名前を呟く。
「春樹……」
モニターの先では、ダメージを負った黒曜が最後の輝きを見せようとしていた。
ーーーーーーーーーーーー
「くっそぅ……」
春樹は現在の自分の状況に恨み言を吐きながら、息を整えている。
残りのSEは約半分。
だがそのダメージ量は、相手が互いに妨害しているから残っているのだ。本来ならとっくの昔にSEは0になっているだろう。
どうするべきか、ここから勝つことはできるのか……そんな思考を回すが……
「(無理だ、勝つイメージが湧かねぇ……俺一人じゃ、ラウラに勝てるかすら分からねえのに……)」
そこに放たれる弾丸。
瞬時に防御するも、放たれたのは二発。防御が間に合わなかった一発が黒曜のSEを削る。
更に放たれた無数の弾丸が迫り、春樹は再び高速軌道で回避、偏差射撃には黒雪の防御で受けるが全てではない。
徐々にSEが削られていく。
「(ラウラのタッグがこの人だもんなぁ!)」
「どうしました、この展開は予想外でしたか?」
「(やっぱこの人も転生者なのかな……)そうでもないぜ!」
そう空元気で叫びながら、廻に接近戦を仕掛ける春樹。春樹の持つ黒雪と、廻が高速切り替えで呼び出したブレードがぶつかり合う。
何度か打ち合いながら、春樹が廻に零落黒夜を当てる隙を探す。
が
「っち!」
「おぉっと!?」
廻がお互いの武器を弾いて急上昇する。
その意味を理解してきた春樹もまた、弾かれた衝撃のままその場を離れた。
次の瞬間、先程まで二人が居た空間にラウラのレールガンが通過する。
更に2発目、3発目と続けて撃たれたレールガンを春樹は黒曜石のスピードで回避していく。
「そろそろ終われ! 空野春樹!!」
「お断り、だ!!」
「いえ、そろそろ墜ちてもらいます」
「うぐっ!?」
ラウラの攻撃を全て回避した後に、春樹の頭上から弾丸が撃ち込まれる。
廻が春樹の頭上から放ったライフルによりまたSEが削られる。
そちらの対応の為に、黒雪を構える春樹。
「っぐぁ!?」
「ショットガンです。その刀形状では防ぎきれないでしょう?」
その
ショットガンという銃でありながら
衝撃による硬直と、刀では防ぎきれない量の弾丸で更に黒曜と春樹が削られる。
このままやられるかと思えば
「む、仕方ないですね」
廻が距離を置いて離れた。
これはつまり……
「!? あっぶねぇ!」
「読まれてるじゃないですか」
「っちぃ!」
ラウラによるレールガン攻撃。
今まで二人が居た場所と春樹の回避先に合わせて三発のレールガンが撃ち込まれたが、最初の一つは回避、二つ目は最初と同じ軌道なので問題なし、最後の一つは回避先を狙われたがギリギリで回避。
まさに紙一重と言える回避だった。
ただし、これだけでは終わらない、レールガンによる三連射が終わった後に廻が襲いかかる。
「あんたら、タッグとして最悪だな!!」
「ご自由にどうぞ、ただし」
ブレードをぶつけ合いながら春樹がぼやき、廻は余裕を持って答える。
黒雪とブレードを弾き上げ、下がりながら「銃」と宣言しつつ武器の呼び出しを始める。
春樹はとっさに踏み込んで、自らの武器の得意距離で戦おうとする。
しかし廻の宣言は
左手のブレードで黒雪を受け止め、右手のブレードを春樹に叩き込む。
その一撃で発距離を取られた春樹の目の前、一瞬前に自分が居た場所をラウラのレールガンが通過する。
「弱者の戯れ言など、強者という現実を相手には意味を持ちませんよ」
春樹の正面に立った廻が言う。
春樹は弱者、自分達は強者。
弱い者が強い者に何を言おうとも響きはしない。現実を変えられない。
そう告げた直後に「む」と呟き瞬時に自ら高度を落とす。その後ろから現れたレールガンの一撃が春樹に直撃する。
「ごっ!!??」
「なるほど、ロックできない味方である私を狙ったマニュアル射撃。相手と私の位置が重なって見えるなら、私が盾になって相手からは見えない。私が回避することが前提の攻撃」
「貴様に当たっても何も問題が無いがな」
「……良いじゃないですか」
予想外の直撃に思わず声が溢れる春樹。
ラウラの攻撃の種明かしと共に、また獰猛な笑みを浮かべている廻。
そんな言葉は耳に入っていない春樹、体勢は建て直したが今の一撃でSEは1/8まで減っている。
次が、最後。
そう理解する。
「(次で終わる、シャルももういない、この試合で勝つ可能性は0、次の、ラウラか廻さんのどっちかにやられて俺は終わる……)」
ならば、と。
春樹の腕に力が入る。
……ラウラと廻、二人という
それは勝利を目的としたものとは言えない、何故ならここから二人を倒すのは不可能だから。
だからこそこれは春樹の
強大な壁に立ち向かう時、人はそれまでの練習を下地に、大きな成長を迎える。
空野春樹が、
「……おや」
「ほう……」
ラウラと廻の二人も春樹の変化をしっかりと感じ取っていた。
これからの春樹はこれまでと違う。
そう認識して各々の武器を展開する。
廻は両手に盾とブレードを。
ラウラはワイヤーブレードをすぐに動かせるように、そしてレールガンを放てるようにスタンバイさせる。
そうして……
「行くぜ」
その発言と共に春樹は零落黒夜を起動。
SEが減り始める中で、一気に最高速まで加速。
そうして、次に瞬時加速を使い更に加速。
その目指す先は
「私か!! しかし愚かだな、これではただ停止結界の餌でしかない!」
ラウラが右手を前に付き出す。
目標は空野春樹。対象は春樹が真正面から突っ込んでいきている方向の前方。
「(速度で停止結界を振り切るつもりか? だが甘いぞ、貴様が瞬時加速でやってくる場所を事前に対象としていれば、後は貴様が入る瞬間に起動するだけだ!)」
ラウラが目の前に停止結界を作成し、後は春樹というネズミがかかるのを待つだけ。
そして瞬時加速で突っ込んできている以上、それは確実な未来。
「(本当に?)」
廻は考える。
春樹達は全員、対ラウラを意識した特訓をしていた筈だ。そのたどり着いた答えが速度で振り切る、なのか?
いや、春樹はシャルルとの協力という原作準拠の対策を考えていた。シャルルが倒れるまでの消極的な戦いからも推測できる。
なら今の春樹がしているのはなんだ? 土壇場で考えた策としての速度による振り切り? ……あり得なくは無い。
だが、停止結界相手にそんな直線的な攻撃を選ぶだろうか? 原作知識というアドバンテージもあるのに?
「あ」
うんうんと考えていた廻が、一つの可能性にたどり着く。
同時にそれなら案外ラウラにも届きうるな、と考えてどうするか更に考える。
恐らく、
だが、廻の目的を考えるとアクションを起こすのも悪くはない、しかしリスクも存在する。
「うーん」
まあ、良いでしょう。
さて、と呟きながら廻もまたタイミングを計り始める。その瞬間が来た時に動けるように、静かに息を潜めるのだった。
「さぁ、来るが良い! 貴様の終わりにな!!」
「上等!!」
ラウラは展開した停止結界に春樹が来るように煽り、春樹もまた正面から突撃している。
そしてそのまま、停止結界に触れる。
勝った!!
ラウラが勝ちを確信し、停止結界を起動する。
そして起動した停止結界の中に、空野春樹はいなかった。
驚愕と共に集中が切れたことで消える停止結界。
どこに消えたかをラウラが確認するよりも早く、上からの叫びと共に攻撃が来る。
「届けよ! 零落黒夜ァ!!!」
「な、上だと!?」
ラウラの上空から放たれた黒曜の単一能力による一撃必殺の斬撃。
当然ラウラが反応してワイヤーブレードを操作、防御を試みる。が、結果は失敗。突き進む攻撃を反らそうとしたワイヤーは切り裂かれ、斬撃はラウラ目掛けて進んでいく。
「(な、に? 負ける? 私が、叩き潰すべき織斑一夏でもない男に、奴と戦う前に……ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなよ!!)」
目の前に迫る敗北にラウラの中でとてつもない感情が蠢く。それは怒りであり、憎しみでもある。
その強すぎる感情が、機体の底にあるシステムを起動しかけてーーー
「読みきりました、貴方の負けです」
それよりも早く、繰空廻が瞬時加速でラウラと斬撃の間に入った。
そのまま手に持っていた盾を使い零落黒夜を受け止め、弾き飛ばす。
ラウラはその光景をただ見ていた。
なぜ読めたのか、その疑問を廻はラウラが問うより早く答えた。
「その機体、単一能力を使用中はスラスターの数が増えるんですよね。……構造上は二重瞬時加速だけでなく、
「な、に……?」
「……まあ、単一能力使用で機体の構造が変わるなんて無茶苦茶ですし、分からなくても無理ないでしょう。こればかりは春樹君と関わっていた私の情報有利です」
「貴様! いや、後だ! 今は空野春樹を……」
「もう終わってますよ、彼」
「何だと?」
ラウラが疑問を口にするのと同時に、試合終了のアラームがなる。
表示される「勝者:ラウラ・ボーデヴィッヒ&繰空廻ペア」の文字。
混乱するラウラへ、廻が解説を入れる。
「零落黒夜の使用によるSE切れ。零落黒夜は斬撃として遠距離攻撃にも使える関係上で元の……かは知りませんが、零落白夜よりもSEの消費量が多いですから」
「な、に……?」
「つまりはまぁ。自爆、或いは特攻ですかね」
「…………空野、春樹ィィィ!!」
ラウラが怒りのままレールガンを春樹に向けるも、それを止めたのは廻だった。
ラウラがレールガンを放つよりも先に、拳銃をラウラの頭に突きつける。
「何のつもりだ!」
「もう試合は終わりました、これ以上彼を攻撃する意味はありません。……織斑一夏と戦うより先に脱落したいなら止めませんけど、この後の貴方の待遇もね」
ギリリ、とラウラが歯を食い縛り、春樹への憎しみを隠しもせずに一瞥。
その後は怒りのオーラを撒き散らしながらアリーナの出入り口まで戻っていく。
「なんで……」
「はい?」
廻も続こうとした所で、春樹から声がかかった。
足を止めた廻に春樹が一度強ばるも、結局言葉の続きを吐いた。
「なんで廻さんはラウラを助けたんだ? ……俺は、正直やれるだけやってラウラだけでも道連れにする気だった。あのまま廻さんが割り込まなくても、俺はSE切れで負けてた。あそこでラウラを助けるのは廻さんにとってのメリットはなかった筈だろ」
「んー……別に、ラウラを守りたかったとか、そう言うのは無いですよ?」
廻は「ただ」と付け足す。
「私の目的の為には、好印象を与えたほうが良いので」
そう言いきった後に、もう話すことは無いと廻はアリーナの出口に向かう。
対する春樹はと言うと。
「……なんじゃそりゃ」
訳が分からんと呟いて、自身もまたギリギリな状態でラウラ達とは反対方向のアリーナ出口に向かっていった。
なお個別連続瞬時加速を成功させたとはいえ、土壇場で披露した春樹の体は相当な負荷がかかっており、ゲートで待ち構えていた千冬によって気絶させられた後に保健室まで連行されたのは試合とは関係ない話である。
簡単キャラ解説
繰空廻
単純に専用機欲しいだけ。
ただその為の手段は回りから見ると外道だし、その動機を持つのも廻だけなので印象が下がる罠に自分から嵌まった。とはいえ、実力は周囲に十分アピールできている。
空野春樹
今回の被害者。
今回は狙って個別瞬時加速を披露、更に成功させた。今回原作準拠を狙ったが廻の手により失敗した結果、原作通りでは足りないと感じ始めてようやく本気で世界と向き合うことになる。
ラウラ・ボーデヴィッヒ
今回ずっと叫んでた人。
次回からはラウラ回でちゃんと書くから許し亭。