そしてストックも切れます。
時間は少し戻り、廻が箒へと語り始めた頃。
既に戦いを始めていた一夏とラウラは雪片弐型とビーム手刀をお互いに弾き合い、ラウラがワイヤーブレードを使い一夏が回避と防御で対応する形となっていた。
そんな中で。
「(ワイヤーの動きが完全に読まれている。こいつ、
「(視える! この攻撃は数こそ多いけど、ビットのビームと比べたら遅い!)」
一夏は自身の新たなる力を自覚し始めていた。
自身の周囲が全て見えるような感覚。
模擬戦形式の練習で何度もビットによる攻撃を受けてきた一夏は、その中で自身と敵の動きを空間ごと感じていた。
更にクラス代表決定戦と、先程のトーナメント第一回戦でのビットを使うセシリアとの実戦。
廻が予想した通りに、一夏の中で空間把握能力の芽が開いていた。
「逃げてばかりか、織斑一夏!」
「(今はチャンスを待つ)」
挑発するラウラと、それに動じない一夏。
その言葉の最中にも無数のワイヤーブレードが放たれ、それを一夏は回避と雪片弐型による防御でしのいでいく。
「(右、左、左前、後ろに回った奴が戻ってくる、それと同時に正面、挟む気か! 左、いや右!)」
「ちいっ、ワイヤーは効果が薄いか!」
全てのワイヤーブレードがどう迫ってくるのか、どういう軌道を描くのか、後ろに回ったワイヤーさえ認識して一夏は全てのワイヤーに対処する。
当然、ワイヤーブレードの効果が薄い事に気付いたラウラが次の一手を打つ。
レールガンによる、連続射撃攻撃だ。
「はぁぁ!!」
「(来た!! ワイヤーを納めてのレールガン!)」
一夏が加速してその場から離脱し、ラウラの左手側に回り込みながら回避しつつラウラへの接近を目指す。
それを見て、ラウラはレールガンの連射を止めずに言う。
「は! 私の停止結界を警戒して左手側からか、浅はかだな織斑一夏! 軌道が分かっていればいくらでも手を打てる!」
「だろう、な!」
「更に加速した!?」
ラウラはレールガン連射の中で偏差射撃を含め放つが、更に加速した一夏が全てのレールガンを振り切った。
速度差による回避技術、予想以上な一夏の実力にラウラが驚く。
が
「だか、その速度を維持しながらこれを捌ききれるか!!」
「っ、まだだ!」
即座にその弱点を分析し、その速さでは先程のように細かく動けないと見抜いたラウラがワイヤーブレードを向ける。
たが、一夏も負けていない。
速度は維持しながらもワイヤーをくぐり抜けラウラとの距離を詰める。
ダメージは負ったが最小限でラウラの目の前にやって来た一夏の前に、右手を向けたラウラ。
停止結界が、発動する。
「終わりだ!」
「春樹、借りるぞ!」
ラウラの叫びと共に起動しようとした瞬間にラウラの視界から消えた一夏。
直前の発言から上と判断したラウラが右手を向け停止結界を起動しようとする。
「っ、しまった!?」
「こっちだ!」
「ちいっ!」
だがそこに一夏は居ない。
ハイパーセンサーを確認すれば一夏がいるのは予想の真逆であるラウラの下。
既に零落白夜を起動した白式と一夏が上昇しながらすれ違い様にラウラに一撃を与えた。
そのまま、ラウラの停止結界を作れる範囲外に移動する。
「騙し討ちとは、案外姑息だな織斑一夏」
「まあな、お前の方が強いんだ。俺が勝つ確率を上げるならどんな手でも使うさ、俺の意思でな」
「ふん。だがそこまでして破壊したかった私の停止結界は残った、残念だったな」
「……なんの事だよ」
「貴様の狙いに気付かないと思ったか? 先程の一撃は私の右手……停止結界の起点となる箇所を狙った物だ。その証拠に、零落白夜による一撃で右肩パーツに傷が付いている。私が咄嗟に右手を反らした結果できたものだ」
「全部お見通しってか」
「教官に鍛えられたのだ、この位当然だ」
零落白夜によって作られた傷を見せながら、ラウラが語った内容に一夏も感心してしまう。
ラウラの説明通り、今の攻防はラウラの力を絶対にしている停止結界の破壊が目的だったが、結局失敗に終わった。
それでもまだ策はあると、一夏は強気に出る。
「でも傷ができたなら結構ギリギリだったってことだよな?」
「舐めるな、私に同じ手は通じない」
「なら別の方法でどうにかするまでだ……!」
ラウラと一夏が再び戦闘を始めようとした直後、この二人とは別の戦闘音が鳴り響いた。
一夏は驚き、ラウラは視線だけで音源を確認すればその方向で廻と箒の戦いが始まっていた。
「箒っ!」
「なんだ、今戦闘を始めたのか。時間が空いたな、何か会話でもしていたのか?」
それぞれ相方の戦いに気を取られてしまうが、それも数秒。
先に動いたのはタッグに対した意味を見出だしていないラウラだ。
「そら! こちらも行くぞ!」
「っ、箒を気にしてる場合じゃないか!」
再び繰り出されるワイヤーブレード、一夏が同じように回避と防御で処理していく。
そんなまたしても同じーーーなんて事を許す筈はなく、ラウラがワイヤーブレードに囲まれている一夏に対してレールガンを放った。
「!? あっぶねぇ!」
「貴様にワイヤーの動きが視えているなら、それを前提にワイヤーを操作すれば良い。そうすれば貴様が勝手に射線に入ってくれる」
「っ、マジかよ……」
ラウラは一夏がワイヤーブレードを回避する事を前提に、そこからレールガンによる射撃を織り混ぜた。
ワイヤーを対処していたら、突然ロックの警告が出されるのは余りにも急であり、レールガンの速度を考えれば必中になってもおかしくない。
それを一夏がなんとか回避できたのは、やはり空間把握能力の上昇だろう。
ワイヤー郡の中にできた不自然な空白が、一夏の中で警告を鳴らした。
たがラウラもこれで慣らしは済んだ。
再びワイヤーとレールガンの操作に移る。
「行くぞ、織斑一夏!」
「やってやるさ! 何度でも!!」
繰り出されるラウラのワイヤーブレード、それをひたすら対処する一夏。
その最中にロックの警告が一夏に伝わる。
それよりも早く違和感を感じた一夏の回避によって外れたレールガン。
どうしても動作が大きくなるレールガンの回避によって生まれた隙にラウラが再びワイヤーブレードを繰り出す。
「くぅっ!」
「そら、次だ!」
ワイヤーによって動きが制限される一夏に向けて放たれたのは三発のレールガン射撃。
一つは一夏自身を狙いに、残りの二つはワイヤーで制限された一夏の回避先に。
「まだ、まだぁ!!」
回避が不可能と理解した一夏は零落白夜を起動。
正面から自身に向かってくる一撃を零落白夜のエネルギーブレードで迎え撃つ。
レールガンの勢いに耐え、声を上げながらラウラの攻撃を文字通り切り裂いた。
「ふぅっ、ふーっ……」
「レールガンの一撃を零落白夜で切り裂いたか、だがその為にどれ程SEを消費した? このままのペースでいつまで持つ?」
「お前を倒すまでた……!」
「……愚かだな」
ラウラの言葉通り、ここまでの戦いでダメージと零落白夜による消費で白式のSEは既に2/3に減っている。
対してラウラのシュバルツェア・レーゲンのSEは零落白夜の一撃を貰ったとは言え、まだ3/4は残っている。
僅かなように見えて、この大きな差を埋めることは今の一夏には不可能だとラウラは判断し、その上で挑もうとする一夏を愚かだと失望すら感じる視線を向ける。
「残念、狙いは
「しまった!?」
そんな中で、廻と箒の戦いが動く。
観客席から歓声が湧き、ラウラと一夏も意識を向ける。
「な、なんだ!?」
「あの二人か……お前のペアも中々だが、繰空には及ばん。忌々しい事にな」
「箒!」
廻の一撃で箒の太刀が一本、地に落ちる。
それを見て一夏が動いた。
箒の元に駆け寄るように、加速して近付く。
「私を相手に背中を向けるなど……馬鹿にしているのか!!」
ラウラが怒りを露にしながら一夏に向けてレールガンを連射しながら、ワイヤーブレードで一夏を囲う様に操る。
一夏はラウラの怒りには答えず、ただひたすらに高速で、地面を滑るようにレールガンを回避しながら箒の元に向かっている。
「これで終わりだ、織斑一夏! 貴様の判断を悔やみながら消えろ!!」
上空からの全方位からのワイヤーブレードによる攻撃。空中なら下という回避が可能だが、地上では不可能。
それを責め立てるラウラだったが、一夏はまだ諦めてなどいない。
回避できない、そう認識しながらも一夏はまだどうにかできると確信している。
「(よしっ! これで!!)」
「貴様の負けだ!!」
ワイヤーブレードと向き合い、一夏が
そしてワイヤーブレードを叩き落とし、弾き上げ、その全てを防ぎきる。
「なんだと!?」
「おや……?」
「よし、良いぞ一夏!」
その行動に、ラウラだけでなく廻と箒も戦いを止めて注目する。
観測者としていくつものIS世界を見てきた廻にとっても予想外の一手。
箒の元に向かったのは援護の為ではなく、落とした太刀を回収するため。
「……なるほど、あの太刀は私達がアリーナに出た時には既に展開済みでした。使用許諾は最初から出していた訳ですか、私は違和感なく太刀を落とすのに使われたと」
「ああ、そして一夏に太刀は届いた」
「つまりはさっきの問答、最初から拾うつもりなんて無かった訳じゃないですか。騙すなんてらしくないですね」
「……お前達は強い。私達が勝つ為なら私だって変わるさ。ただ負けを認めるよりは、な」
「なるほど、これは手強い」
「たが、それもこれまで! ここからは思い切りやれるというものだ!!」
「芯は揺らがす、けれども邪道を使う柔軟性もあると。嫌ですね」
言葉とは裏腹に獰猛な笑みを浮かべている廻と、ここから更にギアを上げると宣言した箒。
その後。二人の戦いはより激しくなり、もう鈴は何も言わずに呆れているだけだがこの試合には関係ない事だ。
「刀が一本増えたからどうしたというのだ!!」
「直接確かめてみろよ!」
ラウラがワイヤーブレードとレールガンの合わせ技で再び一夏に襲いかかるが、二刀流になった一夏は揺らがない。
ラウラ目掛けて真っ直ぐと、突っ込んでいく。
そして目の前に邪魔なワイヤーがあれば……ただ、切るのみ。
「うぉぉ!!」
「(速い、攻撃手段が一本増えただけでここまで変わるというか!?)」
真っ直ぐ進む一夏にラウラが気圧される。
全てのワイヤーを切り払い、生まれた範囲でレールガンを回避する。
そうやって確実に距離を詰めてくる一夏は、まさに鬼神のごとき進行だ。
たが、正面。
それはラウラの力の範囲内。
「停止結界!」
「イグニッション!」
「無駄だ、貴様が刀を振るうより停止結界の方が……なんだと!?」
ラウラが右手を向けて停止結界の為に集中しようとすれば、自然とワイヤーの操作は甘くなる。
その隙を付いて瞬時加速で距離を殺した一夏は、左手に持つ太刀で
方向を定める右手があらぬ方向に向いたことで不発に終わる停止結界。
驚愕するラウラを無視して、一夏が二刀流によるラッシュを仕掛けた。
左右の刀を振り回し、ラウラに連続でダメージ与えつつ停止結界への集中を許さない。
更にーーー
「貴様、それほど停止結界が怖いか!?」
「それをされたら負けだからな!!」
一夏は常にラウラの右手へと一撃を加える事で、必ずそれが正面の一夏以外の方向を向くように弾いていた。
それほどに停止結界の力を脅威と捉え、同時に停止結界を使えないラウラとの戦いでは、今の距離が存在しない状態ならばラウラにも負けないと一夏は考えただひたすらに二刀を振るう。
実際、ラウラはワイヤーブレードで対応しようにも展開の瞬間を潰され、レールガンは近すぎて自爆の可能性があり、ビーム手刀は零落白夜の選択肢によって実質的に使えない。手詰まりに陥っていた。
だがしかし、これで終わるのならラウラ・ボーデヴイッヒを学年で最強だと千冬は評価しない。
ここからでも巻き返せる、故に彼女の強さは証明される。
「なめる、なぁ!!」
「うおっ!?」
一夏の二刀流、驚愕こそ誘ったがやはり付け焼き刃の荒い技。
それ故に攻撃が止まる瞬間がある、そこをラウラは見逃さなかった。
レールガンによる自爆すら構わない0距離射撃。
一夏は刀二本で防御したことで、なんとか防御に成功する。
そんな中で、ラウラにとって重要なのは距離が空いたという事実。
即座に右手を一夏へと向ける。
「停止結界!!」
「っ!!」
ラウラが決め手となる停止結界を発動する。
勝った。
ラウラが勝利を確信する中、一夏が動かなくなる直前のラストアクションとして左手の刀をラウラに向けて放った。
そしてそれが、勝敗を分ける。
一夏が苦し紛れに放った刀は、ラウラへと真っ直ぐ進んでいく。
ラウラは優秀であり学年最強だ。
停止結界は発生させるだけでなく、維持にも集中が必要。
一瞬の気の緩みは致命的だった。
「しまっ」
ラウラは自分のミスに気付きながらも目の前の刀をワイヤーで弾き上げ、直ぐ様停止結界に意識を戻した。
当然、一夏はそこにいない。
きっと、普段のラウラなら刀に反応はしても対応はせずに一夏から意識はずらさなかった。
ただ一夏の猛攻が、予想以上の実力が、ラウラは普段通りではいられないほど追い詰めていた。
「どこだ!」
ラウラは先程の騙し討ちの経験からハイパーセンサーで一夏の位置を確認する。
即座に一夏は上だと判明するが、確認するその数秒は戦いにおいては十分な時間。
一夏は既に零落白夜を起動し、上からの強襲を仕掛けている。
「貰うぜ!!」
「なにを、っ貴様!?」
絶対防御の起動を防ぐため、ワイヤーブレードを放つラウラ。その予想通りに一夏はワイヤーブレードを全て回避して、一夏の
そのままラウラの正面0距離に立ち、零落白夜を起動したままの雪片弐型を横薙ぎの形で叩きつけ、シュバルツェア・レーゲンのSEを減らしていく。
「い、けぇぇえええ!!」
「ぐぅぅぅぅ! 織斑、一夏ァ!!」
ラウラがこの状況に対応するための方法を探すべく思考を加速させる。
ワイヤーブレード。
一夏を離す為には射出後に一夏の背面に回り込ませる必要があり、時間が足りない。
ビーム手刀。
零落白夜のエネルギーブレードは他のエネルギーを無効化する力がある、意味がない。
レールガン。
自爆覚悟の0距離射撃なら可能性は合ったが、既に切り裂かれて射撃は不可能。
停止結界。
既に取り付かれて切られている状態で動きを止めても意味は無い!!
考える全てが自身の思考で否定される。
どうにかしよう考えれば考える程、どうにもできないと突き付けられる。
それがラウラの中で怒りと憎悪、そして何よりも恐怖と結び付いた。
「(負ける!? 私が!? 教官の汚点であるこの男に……認めん、認めん認めん認めん認めんぞ、認められるか!!)」
だがどれだけ認めたくなくても、現実は残酷なほど進んでいく。
止まらない零落白夜、減っていくSE。
敗北の足音、自分の在り方の否定、力による証明の不可能。
その全てがラウラの憎悪と恐怖を煽っていく。
「私は認めんぞ!! 貴様が教官の弟などと!!」
「知るかよ! それでも俺は、織斑一夏だ!!」
最後の憎悪の言葉すら、目の前の
ラウラの憎悪を捩じ伏せて、断ち切る様に、一夏が雪片弐型を振り抜いた。
シュバルツェア・レーゲンのSEは……0。
ラウラの敗北で勝負は終わった。
ーーーーーーーー
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるな。
私は負けてない、私は負けられない。
負ければ私の力は証明されない。
力こそが全ての私は証明されない。
許せない、許さない、認められない!!
あいつが私より強いなど!
私があいつより弱いなど!
あの人に……必要とされるのは私ではなくあの男だと……認められない、認めたくない。
何故、私の元から消えたのですか。
何故、私を捨ててしまったのですか?
何故、私と共に戻ってくれないのですか?
ーーーそれは、きっとあの人にとってあなたも含めた未来が大事だから。ここに要る。
ーーーあなたの力がまだ足りないからだよ
ーーーあの人を向かせるにはまだ足りない
ーーーあの人自身になるくらいじゃないと
ーーーだから、さぁ
簡単キャラ解説
織斑一夏
二刀流を取得。まだまだ荒いが世界の変化としてはかなりの物。実質的に一人でラウラに勝てるくらい強化されている。
ラウラ・ボーデヴイッヒ
貴女が私の全てでした。
貴女が私にくれたのは力でした。
力が私の存在を証明してくれました。
力が私と貴女を繋げている。
だから許せない、認められない。
自らの証明の為ならば、私は貴女になりましょう。たとえ私がそこに居なくても。