こっちが転校生編のラスト馬鹿、VTシステム戦となっております。
それは、ラウラの敗北から始まった。
まず、目の前にいた一夏が吹き飛ばされた。
同時に限界に達した白式は解除され、一夏本人はアリーナの地面を転がることになる。
「一夏!?」
「これは……」
何が起きたか分からず、とにかく一夏の心配をする箒とVTシステムが起動したと確信する廻。
二人が反応するのと同時に、アリーナの警告アナウンスが流れ観客席に防護用のシールドが展開されることでアリーナが隔離される。
観客席では二度目の緊急事態に生徒達は混乱し、招かれていた外部からの招待客は同じく混乱しつつも即座に入ってきた教師達により避難を開始。
そして肝心のアリーナの中。
「一夏! 無事か!!」
「お、おう……何が起きた?」
「ラウラさん……では無さそうですね」
一先ず一夏の元に集まった箒と廻。
既に試合などしている場合ではないと判断して、二人とも既にISを纏っていない一夏を守るように位置を取る。
そしてラウラ……というより、ラウラだった者に視線を向けた廻は
そこにいたのは、黒くて、ドロドロとした半液体だった。
それは蠢き続け、最終的に一つの形を目指す。
「ふむ、なるほどなるほど」
「な、なんだあれば!?」
「あの姿は……!!」
それが形作ったのは、一人の女性。
ISを纏ったその姿は、この世界で知らない人間はいないだろう。
その姿はーーー
「千冬姉!?」
「どういう事だ!? 何故ラウラが千冬さんの姿になる!?」
その姿を模したラウラとシュバルツェア・レーゲンに対して驚愕する二人を見て、廻は「(あ、これ私がシャルさんの変わりに解説しなきゃいけない奴)」とどこか的外れな感想を抱く。
「VTシステム、ですかね」
「廻?」
「廻さん、アレを知ってるのか!? 教えてくれ、あの千冬姉は何なんだよ!」
「知識だけの推測ですが、あれは恐らく『ヴァルキリー・トレース・システム』と呼ばれる物です。要約すると過去に凄い記録を出したIS操縦者の動きを再現するシステムなんですが……国際条約で使用どころか作るのも禁止されている完全にアウトな代物です。しかも今回の再現先は……」
「千冬姉か!」
「ブリュンヒルデとしての千冬さんのコピーという事か!」
「でしょうね。いやはやとんでもない爆弾を持っていたようで」
廻がVTシステムについて解説し、箒は納得と同時に警戒心を引き上げ、一夏は思うところがあるのか怒りの表情を露にする。
そんな二人に、廻が更なる解説を加える。
「それと……このシステムが禁止されている理由として、起動時にパイロット
「なっ……!!」
「……なんだよそれ」
システムからパイロットへの負荷と命の危機。
それを聞いた箒は驚愕し、一夏はやはり怒りを積もらせる。
そんな二人の反応を横目に、廻はこの状況に対してどう対応するべきか考えていた。
「(状況的にはパターン1。原則より成長した一夏が倒した訳なんですが……アレ、入ってますね。修正力)」
廻はこのVTシステムによって作られた織斑千冬のコピーから、世界の修正力を感じ取っていた。
前回のゴーレムとは違い、完全な修正力の化身ではない。恐らくは修正力によって原作よりも強化されたVTシステム。
どうした物かと廻も頭を悩ませる。
「(どうしましょうか……一夏に任せたい所ですが、修正力がどこまで影響を出しているのか、一先ずそこを調べて……おや?)」
廻が思考を回している最中に、千冬のコピーが動き始める。
目標は、織斑一夏。
瞬時加速により三人との距離を殺し、振るわれる右手の刀。その刀身は光輝いていてーーー
「っ箒さん! 一夏君を連れて下がって!!」
高速切替で武器と盾を出現させた廻が一夏を庇うように盾を割り込ませる。
その隙に箒は生身の一夏を抱えて離脱、一夏を追いかけようとするコピーに廻がブレードを振るうも僅かに体を反らした事で回避される。
廻を邪魔だと感じたのかVTシステムは一夏を追わずに廻へとビームブレードを振るい、盾を割り込ませるよりも早くブレードと接触、高出力のビームブレードにより実体剣は切り溶かされてしまい、廻に直撃。
廻がアリーナの端まで吹っ飛ばされた。
「なる、ほど……あの刀、流石に零落白夜の再現は不可能だったと。恐らくは元々あったビーム手刀、それも左右の物を一つに纏めて高出力化させて擬似的な一撃必殺を再現したと見ます」
自ら言葉に出しながら情報を整理していく廻。
訓練機のSEを見れば、今の一撃で箒と戦った直後の残量から半分減っていた。
「本物なら全部持っていかれましたね」と敵が持っているのは零落白夜ではないと結論付ける。
と、そこで箒の訓練機からの通信による音声が届いた。
『まて、一夏! 今のお前は白式すら纏っていないのだぞ!!》
『しるか、よ! それでも、あいつは俺が倒さなきゃいけないんだ!!』
『(あー、あったなぁ)急にどうしたんですか、一夏君』
『廻! 一夏が奴を倒すと言って聞かんのだ!!』
『廻さん! そいつは、どうしても俺が倒さないといけないんだ!!』
『……一旦落ち着いてくれませんかね? 彼女を一夏君が倒さなきゃいけない、その心は?』
千冬のコピーを倒すと暴れている一夏と、それを打鉄によって押さえている箒。
廻は暴れている一夏に落ち着くように促し、同時に一夏の言い分を聞くことで生身のまま特攻しかけない一夏を止めることにする。
なお、廻は吹っ飛ばされた後に倒れたままの死んだふりをしており、VTシステムは様子見なのか追撃してくる様子は今の所はない。
『ようやく分かったんだ……俺がなんであいつに苛ついてたのか、あの偽物がなんで許せないのか……こいつらは俺の中学のやつらと同じなんだ。千冬姉の力と称号だけ見て勝手に崇めて、その偶像の為ならなんでもする。……千冬姉の栄光が作った影みたいな物』
『それで? それを許せないから貴方が倒すと?』
『……それもあるさ、だけどそれだけじゃない。これは俺の挑戦で証明なんだ。俺はあいつらの言うとおり千冬姉の付属品でも出来損ないでもない。俺は織斑千冬の弟で、織斑一夏だ!!』
『一夏……』
『貴方自身のアイデンティティ、自己証明ですか。織斑一夏はここに居るという証』
『それにラウラの目も覚まさせてやる! 千冬姉はお前が思ってるみたいな力だけの人間じゃないってな!!』
『そうですか』
一夏が語った言葉の熱に、特に変わらず返す廻。
しかし、その頭の中では観測者としての経験から今回は修正拒否を行わなくても良いと判断した。
それほど一夏の技術的、精神的な成長を遂げているとした廻はこの状況からパターン1の継続を決め、最終的に一夏に全部任せることにする。
が、その為の準備は必要だ。
『まぁ……色々と語られましたが、今の一夏君は白式を使えないので戦闘は不可能ですね』
『いや、それは分かってるんだけど!』
『う、うむ。一夏の気持ちは理解したが……』
『ですので、戦えるようにしましょう』
『『えっ?』』
『箒さんの訓練機のSEを白式に譲渡すれば可能なはずです』
廻の一言に、一夏と箒の二人が声を揃える。
戦えないと直接良いながらも、それをどうにかする方法を教える廻に少々面を喰らったようだ。
それでも、一夏は直ぐに理性を取り戻し同様に箒も自らが何をするべきか廻に問う。
『ど、どうすれば良いんだ!?』
『そうですね……私は敵に気付かれたので対応します。私が時間を稼ぐので、後は任せました。デュノア君』
『え!? あ、うん。任せてね!』
『シャル! 聞いてたのか』
『あはは……今アリーナに向かってるんだ、鈴とセシリアも一緒だよ。とりあえず、SE譲渡の方法を教えるね』
一夏を再び戦わせる方法を廻が教えるより早く、VTシステムは廻がまだ戦闘不能ではないと気付き動き出す。
廻は自らが囮になることで時間を稼ぐと言い、残りをこの通信に入っていたシャルルに任せた。
そこでようやく他のメンバーも通信を聞いていたと知った一夏と箒だったが、始まったシャルルの説明を決して聞き逃さないように集中する。
「(さて……目標は一夏が参戦するまでの時間稼ぎ。観測者権限によるチートも今回は無し、と)」
やってられないですね。
そう口の中で呟きながらも廻はVTシステムから目をそらさない。相手の一挙一動を見逃さない、これから先は一瞬でも気を抜けば負けの戦い。
「(こっちは一撃貰えば即敗北、かと言って一夏へと意識を向けたら即座に狙いに行くでしょうね)」
時間稼ぎと言えば簡単に聞こえるが、その実態は相手の攻撃を全て対応しながらVTシステムの意識を一夏へと向かせないよう、廻からもある程度の攻撃が必要だろう。
もう一度、今度は声に出して「やってられないですね……」と呟いた廻。
が、次の瞬間にはそんな感情は吹き飛んだ。
来る。
そう廻が考えた瞬間にはVTシステムは瞬時加速で目の前に現れていた。
そのままVTシステムがビームブレードを振り抜く。廻は咄嗟に後ろに跳ぶことで回避。
「油断も隙も合ったものじゃ無い!」
後ろに跳んだ廻に合わせて前へ踏み込むVTシステム、今度は突きを繰り出す。
廻は盾を間に挟ませ、滑らせるように盾を傾けて防御。
更に突きから派生する一撃は、手の動きを見ることで縦切りと推測。
そこから体を横に動かすことでまたギリギリの回避。攻撃を見てからでは間に合わない、予備動作からの予測でなんとか攻防を成り立たせる。
「(いやキッツいですねこれ!!)」
悪態を口にだす暇も無く、ひたすらにギリギリの回避を続ける廻。
回避、回避、回避、回避、回避。
何度も攻防が繰り返さされるが、その全てが薄氷の上に成り立っていると理解できるものからすれば奇跡に等しいと分かるだろう。
廻自身、この数十秒の集中力は先のトーナメントでの2試合よりの合計よりも上だ。
ただ回避だけを考えればいつかやられる。
そう考えた廻がブレードを振るう。
「! なるほどそうなりますか」
VTシステムはブレードを弾き上げるような挙動で防ぐが、実際は弾かれる所かエネルギーブレードの出力が高すぎてブレードが溶け切れる。
廻が今度は高速切替で拳銃を呼び出し、両手足を狙って発砲。
これはVTシステムが大きく回避したことで全弾外れた。
「(やはりシステムですね、
廻はVTシステムによる先ほどの攻防の中で機械的な要素があるのを見逃さなかった。
先のVTシステムの防御、恐らくは千冬が接近戦で行う弾き上げ。
本来ならば実体剣の雪片で行うものだろう。
しかしVTシステムは常時エネルギーブレードの影響でブレードは溶け切れた。
実体剣とエネルギーブレードという違いにより
これにより廻は相手はあくまでもシステムであり、修正力によ自己思考などは持っていないと確信する。
「(流石に自己思考まで行かれたら一夏一人には厳しいでしょうし、他のメンバーが集まるまで踏ん張る気でしたが……大丈夫そうですね)」
一つ肩の荷が下りた気がした廻だが、それならばまだやれる事があると切り替える。
ここからは、敵の情報の抜き取りだ。
「では……もう一頑張りしますか」
廻が取り出したのは、二本のブレード。
二刀流である。
一夏と箒が息を呑む声が聞こえたが無視。
荷が下りたとは言ったが、それはそれとして極限状態なのも事実。
更に慣れない二刀流、正直に言うならばいつ一撃を貰ってもおかしくはない。
だがーーー
「す、すげえ」
繰返廻は多重転生者であり、過去にはIS世界でブリュンヒルデにも輝いた人間である。
その莫大な経験値から繰り出される攻撃と回避は決して今の世界最強のコピーにも劣らない。
尤も、ここまでの極限状態にでもならない限りは記憶の底の底に置かれているのだが。
しかしそれも長くは続かない。
およそ二分、短いようで当事者達からすれば数時間にも感じた時間は唐突な終わりを迎える。
廻の攻撃として振ったブレードが、VTシステムの防御によって切り裂かれた。
「あ」と声に出してももう遅い、攻撃を防がれた隙という最大のチャンスをVTシステム……いや、現世界最強のコピーは見逃さない。
放たれたカウンターの一撃は廻を捉え、廻の予想通りに残りのSEを全てが削り取って戦闘不能に追い込む。
「ここまでですねぇ」
戦えなくなった廻に向けて近付いてくるVTシステム。どうやら戦闘不能に追い込むだけでなく、敵の命を狙って動いている。
そう理解した廻は疲れた様にため息を一つ吐いて、告げる。
「じゃ、後はよろしくお願いしますね」
直後、VTシステムが防御の構えを取ろうとするが既に遅い。
瞬時加速で突っ込んできた織斑一夏の一撃がVTシステムへと一撃を叩き込んだ。
「ああ、ここからは選手交代だ!!」
織斑一夏の、存在証明を賭けた戦いが始まる。
ーーーーーーーー
「おぉぉ!!」
「頑張ってますね……」
一夏にバトンタッチしてから数秒。
一夏の二刀流はVTシステムと互角の戦いを見せており、廻は邪魔になら無いように箒と共にアリーナの隅に移動した。
「ああ。だが世界最強だった千冬さんのコピー相手に、一夏は勝てるのか?」
『最悪僕達が間に合うまで耐えてくれれば……』
「そうですね……このままで七分、援護が入れば確実って所でしょうか」
『そうだよね、やっぱり……って、え?』
「……ん? め、廻? 逆じゃないのか?」
「いえそのままですが。一夏君の方が有利です」
「『???』」
『言いきる根拠はあるのでしょうか?』
『んー、大体廻と同意見ね。勘だけど』
廻の一夏が勝つと宣言すると箒と通信のシャルルが信じられない、と言うように疑問符を浮かべてしまう。
解説を求めるセシリアと勘で廻に同意する鈴。
廻は解説の為に指を一本、立てながら話し出す。
「まず一つ目。あのシステムはあくまでも織斑先生の現役時代の動き、つまり結果をトレースしてるだけであって「なぜそうするか」の過程がありません。それ故に動きはパターン的です、要は剣を持った相手に対してどう動くかは最初から決まっててそれ以外できません」
『それはそうだけど……』
「それが強いからあのシステムは作られたのでは無いのか?」
廻の解説に突っ込みを入れるシャルルと箒。
対して廻は「それはその通り、だから次です」と返して二本目の指を立てながら続きを話す。
「二つ目。私は先程の時間稼ぎで一夏君の戦闘スタイルから二刀流の方がシステムに効果的だと考え、二刀流で挑みシステムの行動パターンをできるだけ引き出しました」
『なるほど、情報の有利ですわね。パターンが決まっているならそれを引き出す事はかなりのアドバンテージです』
『廻が戦った時よりは楽ってことね、確かに一夏も食い入るみたいにあんたの戦いを見てたわ』
「というか、私としては廻が二刀流できたのが驚きなんだが……」
「天才ですので」
「なる、ほど……?」
情報の有無、それは確かに一夏の有利に働くだろう。それも相手が一定の行動しかしない敵なら尚更だ。
箒からの二刀流への突っ込みには適当な答えでゴリ押しつつ、最後に三本目の指を立てて廻の解説が進む。
「最後ですが……まぁシンプルに零落白夜です」
「? 零落白夜がそこまで効くのか?」
『ああ、そういうことか!』
『……? シャルルさんは分かりましたの?』
『あー……、なんとなく分かったわ。そうね、そう言われればそうだわ』
最後のシンプルな一言に、箒とセシリアはよく分からないと疑問符を浮かべ、シャルルと鈴は理解できたのか納得したような声を上げる。
『どういう事です? 詳しい説明を求めます』
『固く考えすぎてるのよセシリア。なんて事はないわ、あれは現役時代の千冬さんの対応だけを再現するコピー、つまり……』
「そうか! 零落白夜を使う事は想定してても、
『うん。つまり零落白夜を使っていれば、自然と敵の行動パターンの想定とずれる! そしてVTシステムにはそれをどうにかするする過程を考える力は無い!』
「付け加えれば、今の一夏君は二刀流です。その片方が零落白夜だなんて想定なんてされてる筈がありません」
織斑千冬の現役時代。
即ち織斑千冬以外に零落白夜の使い手がいなかった時代だ。今でこそ同じ零落白夜を持つ一夏や、派生形と思われる零落黒夜を持つ春樹がいる。
千冬本人ならば自身の経験から対処方法を考えるだろうが、VTシステムには自己思考能力は存在しない。
更に今の一夏は二刀流であり、その片方が零落白夜というオリジナルの戦闘スタイル。
唯一無二のそれを、事前に登録された動きをトレースするVTシステムとの相性は良い。
「とは言ったものの、強敵には変わりありません。それにアレ、戦闘不能じゃなくて命を狙ってきます。なので援護は早めに来て下さい」
『上げてから落とすの止めてよぉ!』
『廻、あんたその性格直した方が良いと思うわ』
「天才ですので」
『その言葉で納得できるわけ無いでしょう!?』
援護組からの怒涛の突っ込みを無視して、廻はそのまま話すのを止めて観戦を決め込む。
「(まぁ一夏が勝つでしょう。後はラウラの変化ですがさてどうなるか……ま、うまく行くでしょ)」
VTシステムとの戦闘で疲れきった廻はかなり適当に一夏が勝つと信じて、一夏とVTシステムの戦いを見つめるのだった。
ーーーーーーーーーーーー
「おぉぉ!!」
廻がいつものメンバーと話している間も、一夏はVTシステムとの死闘を演じていた。
敵の攻撃は全て回避か零落白夜で防御。
VTシステムの動き出しの観察と廻が見せた攻撃パターンから攻撃を先読みし、攻撃と回避と防御のタイミングを測る。
「(何とか付いていけてるけど、俺が勝つにはまだ足りない! もっと、もっとだ!! こいつを倒すためにはもっと攻めないと!!)」
更に上がる一夏の集中、上がるギア、加速する白式の攻撃。
しかし、その全てをVTシステムは対応する。
カウンターの突きは一夏の顔を狙い放たれ、体勢を崩すように首の位置を下げることで何とか回避した。
そのままVTシステムが詰めてくる前に、距離を取って仕切り直す。
「(残りのSEは全部零落白夜に使う、どうせ一撃貰ったら戦えないんだ。なら敵の攻撃は全部当たらない事は大前提! 後はどうやって零落白夜を当てるか……いや、分かってるだろ、俺!)」
既に一夏の中でも自身が勝つイメージはできているし、その方法も具体的だ。
だがそれを現実にするのは非常に難しいとも理解している。
それでもーーー
「やってやるさ! お前をぶった切って、中のラウラも助け出す! そんで教えてやるよ、千冬姉は力だけじゃないってな!!」
自分を鼓舞するように再び倒すと宣言し、一夏からVTシステムへと仕掛ける。
VTシステム側も、一夏の動き出しに合わせて距離を詰める。
再び始まる攻撃の嵐。
一夏がひたすらに攻め続け、VTシステムはひたすら回避し続け、時折一撃必殺のカウンターを繰り出す。
それをギリギリで避けながら、一夏は攻勢を止めない、止めるわけにはいかない。
「(あの時、廻さんのカウンターをこいつは剣で受けた。あの防御に俺は零落白夜を当てれば良い! でも俺には廻さんみたいにずっと避け続けてカウンターを入れるなんて無理だ、だから攻め続けてこいつに防御を出させる!)」
廻が見せた相手の隙、それを突き戦いを終わらせるための零落白夜という一手もある、しかしそれを自分で再現するのは不可能。
ならば成功させるためにどうすれば良いのか。
一夏は思考を止めない、止めている暇など無い。
「(零落白夜はあと何秒持つ? 後どれくらい戦える!? 援護なんか待ってられない、こいつは俺が倒す!!)」
零落白夜もまたSEを削る諸刃の刃。
既に箒からの与えられたSEも半分を切り、SE全体で1/4しか残っていない。
実質的な制限時間、それも残り一分もない状態。
そこで再び一夏が大きく回避した事で仕切り直し、互いの距離が開く。
「(アイツに防御を……いや、あの剣を前に出させてそこを零落白夜で叩く。その為にはどうすれば良い)」
一夏は思考を止めない、ひたすら自分が勝つための方法を探し続ける。
VTシステムもこの敵にはカウンターが最適と判断したのか一夏の行動を待ち、自らは動かない。
迫る制限時間の中で、一筋の光が弾ける。
「(これなら!! ……でも失敗したらアイツの攻撃が直撃だ、そうしたら)」
死
その一文字が一夏の頭をよぎる。
一夏の考えた方法は賭けであり、ベットするのは自分の命。
その事実に、一夏の中で冷たい物が走る。
一瞬、躊躇する。
その次の瞬間にはその冷たさは消え、一夏の全身から覚悟を決めた覇気が漲る。
「それがどうした。ここに俺は居る、それを証明する為なら命だって賭けるさ。そうだーーー」
俺はここに居る。織斑一夏は、ここに居る!!
一夏が一歩、前に出る。
それだけでアリーナに居る箒は息を呑み、廻は次が最期だと確信する。
箒の機体を通じて見ていた三人も、思わず足を止めてしまう。
廻と同じく、これで決まると感じたから。
「勝ちなさい、一夏」
鈴が呟く。
既に一夏は通信に入っていない以上、届くことは無い。それでも鈴は祈るように言葉を出した。
直後に最後の戦いの火蓋を一夏が落とす。
「イグニッション」
構えた直後に瞬時加速した一夏、対してVTシステムはカウンターの為に場所を動かない。
そのまま一夏が加速の勢いを乗せて左手の太刀を振るった。
だがその一撃はVTシステムの対応範囲内、しゃがむように体勢を低くする事で回避し、カウンターの切り上げを行い始める。
届かなかった。
そう思った箒は一夏の名前を叫び、シャルルは目を逸らし、セシリアは本当に終わりなのかと目を離さず、鈴はただ一夏を信じた。
そして廻は
「お見事です、織斑一夏」
廻の呟きと同時に一夏が動く。
左手の武器を振り抜いたまま、白式の右スラスターが噴射された事で半回転、VTシステムの一撃が届くより早く零落白夜を起動している雪片弐型を敵との正面に運んだ。
そのまま振り下ろされた零落白夜は、止まらないVTシステムの切り上げと接触。
零落白夜はエネルギーを無効化するエネルギー。
VTシステムのエネルギーブレードを消し去り、その元である発生装置を破壊。これによって、VTシステムの腕から武器が消える。
「まだですよ!」
「分かってる!!」
廻の声を聞き、反射的に返した一夏。
そうだ、まだ終わっていない。
一夏が更に動く。
左手の太刀を放り、両手で雪片弐型を構える。
そして残り数秒の刹那で、中のラウラを傷付けぬように浅く太刀が入るように振るう。
まるで開かれるのを待っていたかのようにあっさりと解けるVTシステム。
そして中のラウラに一夏が触れた瞬間。
「な、なんだ!?」
『光!?』
『なんの光よ!?』
『分かりませんわ!?』
「…………」
突如として謎の光が発生して辺りを包む混む。
その場にいた箒は勿論、箒の機体を通して見ていた三人は驚きの声を上げ。
廻はこれでらうらもどうにかなると一安心、それと同時に眩しさに目を瞑った。
そのまま数秒光が溢れた後、一夏とラウラの二人を包んだ光は地上に降りてきた。
「…………」
「…………」
「二人とも気絶してますね」
「あ、ああ。体に傷なんかは……見られないな」
廻と箒が降りてきた二人の側に駆け寄り、見た目だけだが確認するも問題なし。
とは言え体の内に問題があるかもしれないと、二人を運ぼうとする。
それと同時にシャルル、鈴、セシリア到着。それから少し遅れて教師の救護班も到着し、結局一夏とラウラは保健室へ連れていかれて検査を受けることになった。
その後はアリーナに残っていた廻と箒、箒を通じて戦いを見ていた三人は事情聴取を受け、それぞれ一時間近く話をした後に無事解放。
こうして、学年別タッグトーナメント第二回戦第一試合から始まった騒動は終わり、トーナメントは中止となった。
これにて原作の金銀転校生の事件は幕を閉じる事となったのだ。
簡単キャラ解説
織斑一夏
織斑千冬の弟。
出来損ないでも、劣等品でも無い。
織斑一夏という人間はここに居る、俺はここで生きている。
故に彼の自己証明は為された。
ラウラ・ボーデヴイッヒ
憧れた人は結局人だった。
力なぞ無くても貴女はあの人だった。
なら私も力以外の自分を見付けても良いのだろうか? 貴女に言われたように、私はここに居る。
私はこの居場所で「私」になりたい。
VTシステム
二刀流の内片方だけ零落白夜なんて想定できるかアホー!!