こちらはエピローグなのでご注意下さい。
ラストのVTシステム戦は前話になります。
学年別トーナメントと、それから始まったVTシステムの暴走事件から1日。
シャルルがシャルロットとして転入し、ラウラが一夏を嫁にすると宣言した事件から数時間。
IS学園の放課後に、繰空廻は担任の織斑千冬から呼び出されて廊下を歩いていた。
互いに積極的に会話する人間でも無い以上、このままの時間が続くかと思われた。
「あ」
「どうした?」
「いえ、外にラウラさんが」
「何? ……ふ、随分と楽しそうじゃないか」
沈黙を破ったのは廻だった。
窓の外、校庭にラウラの姿を見つけたのだ。
千冬もラウラに関しては気に掛けていたので、その名前に釣られて窓の外を見る。
そこには廻がいつものメンバーと呼ぶ、一夏、春樹、箒、セシリア、鈴、そしてシャルロット。
そこにラウラ本人を加えた7人が走り込みをしていた。恐らくはラウラからIS操縦者には体の作り込みも必要とでも言われたのだろう。
そう辺りを付け、廻は後から自分も参加しようかと考える。
そんな中で千冬が柔らかい笑みを浮かべて廻に向けて言う。
「ラウラに関しては、繰空にも迷惑をかけたな。お陰であいつも自分を見つめ直したようだ。あそこまで振りきれるとは思わなかったが」
千冬が「くっくっ」と小さく笑っている理由は朝のラウラを見たからだろうか。
それにしても穏やかな笑い方だ、普段の堅物教師の姿からは想像もできない。
なんて、思いながら廻が答える。
「お礼は受け取りますが、ラウラさんが変わったきっかけは織斑君でしょう。私はむしろ変わる前の彼女を利用しようと考えていました」
「たが、それがなければ一夏とあそこまで本気で向き合い、ぶつからなかっただろうさ……案外、お前も教師に向いているかもしれんな」
そこにどんな意味があるのか、廻は考えようとして止める。
こんな所で心理戦なんてしても特は無い。
そのまま受け取って、返事をすれば良い。
再び歩き出した千冬の後に続きながら、廻が言葉を返す。
「世界最強になってからIS学園の教師……織斑先生と同じキャリアですか、悪くないですね」
「……本気で目指すつもりなのか、世界最強を」
言葉こそ普通だったが、千冬の発言から少し空気が重くなる。
これが初代世界最強のプレッシャー、その一部だろうか。
そう想いながらも気にせず廻が返す。
「ええ、勿論。できると夢見るまで時間がかかりましたが、それでも私は世界最強を夢見ました。才能もセシリアさんや鈴さんと比べてもあると思います。どうしても挑みたいんです。それを手に入れたいと、今の私は思っています」
「……そうか」
廻のはっきりとした言葉に、千冬はプレッシャーを押さえてまた静かに歩き始める。
……廻とて、観測者としての役割を忘れた訳ではない。空野春樹が変化させる原作改変の観察、それは仕事として当然行うつもりだ。
ただ、その上で
原作……IS〈インフィニット・ストラトス〉の物語は、結局の所織斑一夏がIS学園にやってきて一年の物語だ。
それが過ぎれば観測者としての役割も終わる。
その先の人生の目標として、廻は世界最強と決めたのだ。
「無謀だと思いますか?」
「いや、お前は世界最強を最終目標にしながら、その為に必要な要素を小目標として設定している。私としては指導は必要ないと感じているさ、存分に挑むと良い」
「それはそれは……ありがとうございます」
「ああ、そしてその為のお前の一手……先のトーナメントでのアピールの結果が実を結んだ」
千冬が空き教室の鍵を開け、中の教室に廻も入る様に促す。
そして廻と千冬の二人きり、他には誰もいない教室で千冬が告げる。
「結論から伝える。繰空、お前に対して日本の倉持技研からテストパイロットのオファーが届いた。専用機も用意してあるそうだ」
千冬が放ったその言葉に、廻は自身の体が震えたのを理解した。
緊張でも、武者震いでもない。自分の建てた目標に、自分の考えた手法で、自分の手が届いた。
その事実への喜びと興奮、全てが上手くいったという全能感と高揚感。
自分の中のそれを押さえ、廻はため息一つで普段の自分に戻る。
「受けますよ、当然」
「だろうな。必要な手続きや書いて貰う書類も多いが……」
「やります」
千冬の言葉に被せ気味に答えた廻、千冬も何も言わずに書類を廻へと渡した。
数十分で全ての書類を書き終えて、今できる事を全て終えた廻に千冬が語る。
「今の時点ではこれだけだ、これから更に手続きもあるが……おめでとう。お前の望みの一つ、専用機を手に入れたな」
「ありがとうございます」
千冬の言葉に廻が礼を言い、そこから千冬が再びプレッシャーを放った。
先程の廊下の時とは比になら無い、まさしく
それを受けた廻は
「……これを受けてその表情か」
またしても、笑みを浮かべていた。
獰猛な、自分を試す挑戦者としての顔。
それで千冬を真っ先と見つめ返し、廻は言う。
「漸く見つけた私の夢です、その程度で止まる気なんて起きませんし、止まりません。私は世界最強になります、これは私から世界への挑戦であり、自己証明です」
「そこまで言い切るか……ならばやって見せろよ。繰空廻……!!」
千冬は空き教室で熱くなりながら、廻の挑戦が始まったことを間違いなく祝っていた。
それを受けた廻も、当然引き下がる気などない。
今はただ、専用機について想いを馳せるのみ。
自分が書いた書類に見た、篝火ヒカルノという名前に少しだけ注意を向けながら、廻の瞳には闘志が宿っていた。
簡単キャラ解説
繰空廻
専用機を手に入れる資格をゲット。
原作期間が終わっても人生は続く、なら原作の先だって見据えて良いじゃない。
人生だもの。
織斑千冬
ラウラが無事に謝罪と共にクラスに受け入れられたのが実は凄く嬉しい。
今回のオファーはヒカルノから千冬本人への連絡がスタートだったので倉持技研が一番早かったし、千冬も日本代表を目指した方がモチベーションになると思って準備した。
ラウラ・ボーデヴイッヒ
皆と滅茶苦茶ランニングした。
こちらの話で完結とさせて頂きます、ありがとうございました。