4月27日の日間ランキングに載ってました。
ウレシイ…ウレシイ…皆様ありがとうござます!
と、書いて現在に5/4日。
大体FGOとポケポケが悪いと主張させていただく。
2026/02 追記
更新のめどが立たないので、転向編で完結とさせて頂きました。こちらはその後の話となりますが、更新は期待しないで下さい。
転生者観察日記 幕間編1
6月!日
転校生のあれやこれや。それに学年別タッグトーナメントを無事(?)終え、私達に日常が戻ってきた。次は林間学校での事件が待っているが……しばらくは休みも含めたと準備期間と言って良いだろう。
今日はこの間までと同じく、実技を含めた授業を受けて、放課後はいつものメンバー……に、新しくラウラが加わり、デュノア君もシャルロットさんとして入り直した事を一夏から教わった。そして二人から昨日は結局混ざれなかった私に改めて自己紹介と共に名前で呼ぶように言われた。
ラウラはとっくに名前で呼んでる事を突っ込んだら、「む? そういえばそうだな。よし、私も廻と呼ぼう」なんて言ってて申し訳ないがちっちゃい子供みたいでかわいかった。
特訓はラウラが加わった事でより実戦的になり、IS操縦以外の体造りも今後は行っていくようだ。
ここに居るメンバーは殆どが世界最強を目指してるし、目指していなくとも今後は暴走機やらテロリストと戦っていくから問題無いというか、寧ろ強くならねば最悪死ぬ。
他のメンバーが特訓を終えた後、春樹が残ったのが印象的だ。まぁ、彼が現実を見て何を思ったのかは知らないが、駄目そうな時はシャルさんに止めてもらう。
6月\日
本日、林間学校の発表がされた。
元々はトーナメントを頑張った一年生へのご褒美のような物だそうで、トーナメント自体は中止になったがそれへ向けた努力は事実。
その報酬というか、要は飴と鞭の飴だ。
とは言え、2泊3日の小旅行で初日は旅館に着いたら自由時間、2日目はISの後付け装備についての実技、3日目はまた自由時間の後にIS学園へと帰還。
IS学園は学園寮暮らしなのでそのガス抜きも兼ねているのだろう、外での自由時間は多めだ。
これを知った生徒達は大盛り上がり、やれ海だの水着だの騒いでいた所を織斑先生により一括。
だがみんなそわそわして、どこか浮いた空気で授業を受けていた。
今日の特訓は……まぁ、やはり浮わついた何とも言えない空気だった。ラウラも何だか変だと思ったのか問いただして、メンバーを叱責。
が、ここでラウラが「そもそも、海で何を楽しむのだ?」という一言によって、メンバー女子の年頃故の遊び心が刺激されたのか、今週末に全員で水着を買いに行くことになった。私もである。
6月》日
一晩経過して皆落ち着いたのか、生徒達も普段に近い状態で授業を受けていた。
近い、というだけで浮わついてはいるが。
それでも林間学校という目標(?)ができた為か皆、実技の成績は伸びている。それに困惑しているラウラが少し面白い。
彼女もまた、このようなイベントを通して年頃の少女らしくなっていくだろうか。
放課後はまた織斑先生に呼び出されて専用機の手続きを進めた。
今日は放課後の特訓に間に合い、メンバーに何をしていたのかと問い詰められたが、林間学校で発表するまでは秘匿するように言われた為「答えられない」で押し通した。
代表候補生の面々は何となく察したのか何も言ってこなかったが、ラウラが「なんだ、やましい事でもあるのか!?」と突っ込んできたから織斑先生の名前を出して黙らせておいた。
……春樹は今日も残って追加特訓のようだ。
遠視チートで確認したが……あれは良くない特訓だ。明確な目的が無いままがむしゃらに動いている。オーバーワークで近い内に倒れそうだ。
さてどうしたものか。
6月|日
やはりというか、春樹が今日オーバーワークで倒れた。そもそもトーナメントで無理をした後に連日の居残り特訓。
そら倒れるって話だろう。クラスメイト達は心配していたが、シャルさんによれば1日休めば大丈夫だそうだ。
ま、ここで一度折れて自分を鑑みれば林間学校にはどうにかなるだろう。
授業と特訓は普通にこなし、特訓ではシャルと箒が春樹の看病に当たるという事で早期解散。
その時に春樹の現状についてのチョロっとシャルと話しておいた。
6月◆日
春樹は無事に復活。
クラスメイトの女子達から詰め寄られていた。
本日の授業は座学、ISの後付け装備についての授業だ。林間学校での実技に向けた授業だろう。
放課後の特訓、ラウラや鈴は春樹を見学にさせようとしたが、本人の希望で半ば無理矢理参加。
しかも居残り特訓もやろうとしてるのだから、どうしようもない。鈴が殴ってでも止めようとしたが、そこにシャルさんと箒が割って入り三人で話をする事で良しとして、メンバーは解散。
林間学校の戦いまでに立て直して、ある程度は進化して欲しい物だ。私も頑張ってトーナメントで春樹のメンタルを折ったんだから、ちゃんと強くなって復活して欲しい。
6月□日
今日は授業は休み、ラウラを連れていつものメンバーで水着を買いに行く約束をしていた日だ。
……なのだが、倉持技研から私へ連絡があった。
何でも急遽予定が合ったとかで今日、倉持技研で私と専用機とその整備メンバーとで顔合わせする事になった。
仕方ないので買い物に行けなくなったと一夏に伝えて私は一人倉持技研に行くことになった。
そこで倉持技研の篝火ヒカルノ、そして……技研の技術者である西尾さん達と顔を合わせて私の専用機のデータ取りが行われた。
まさか過ぎるメンツに思わず口を開きかけた。
恐らくは神様の手回しというか、私の専用機を作るに当たって色々した結果なのだろうが……ここで西尾姉弟が来るかぁって感じだ。
私がマークアレスを使ったからか? しかしまぁ……暉が大人になった姿を見れたのは……少々くる物がある。
更に彼等が私の専用機「鉄燕」を作ったと言うのだから驚きだ。
元は機動力にステータスを振った機体「鉄烏」でコンペに出したが打鉄に敗北した機体らしい。それを改良して第三世代機に劣らないスペックを持つのが「鉄燕」であり、世代で言えば2.5世代機だそうだ。観測者としては良く見る設定だと思う。
鉄燕は、手足はより人に近い曲線的な丸みを帯びたデザイン、それに背面にはアンカーユニットが着いたウィングスラスター、腰には追加スラスター兼ニードルガン。
何というか色が濃いめの藍色に差し色は白と言うのもあって、ファフナーのマークエルフとガンダムのフリーダムを足して2で割った上でISにした様なデザインだった。後、手持ち武器にルガーランスもあった。
正直に言うとかなり気に入った。
学園の寮に帰れば、一夏が一日中セシリアや鈴、ラウラに振り回されたらしく寝っ転がっていかにもな感じで疲れていた。
その上で、次は私の買い物に付き合うと言ってきた当たりやはりこの男は織斑一夏だと思う。
6月◯日
本日も授業と特訓。
授業については特に語ることはない。後付け装備のあれやこれやを覚える座学だ。林間学校まではこれが続くだろう。
放課後の特訓では、春樹から強くなるための手伝いをして欲しいと頭を下げられた。
一人で強くなろうと焦っていたようだ。
シャルと箒の手によってそこら辺の認識を改め、更に明確な目標の言語化に成功したらしい。
と、シャルからこそっと教えて貰った。
なぜ私にだけ言うのか。
とにかく春樹はゴーレム戦の二重瞬時加速と、ラウラとの戦いで見せた個別瞬時加速を物にする事を目指すようだ。
是非とも成長して欲しい、今までの観測者的感覚からすると銀の福音も強化が入るだろう。
それまでに力を付けなければいけない、何せここから先は命の保証が無い戦いばかりなのだから。
ーーーーーーーー
「始めまして、西尾暉です。よろしくね」
「私は西尾里奈、よろしくね~」
「西尾行美だよ。ま、私はこの二人の補佐がメインさ、気にしないことだね」
その光景に、珍しくも繰空廻は目を見開いた。
今彼女の目の前にいるのは、本来なら存在しない人間。いや、いたとしても描写されていない「いたかも知れない人達」。
そこに修正力が化身を作るように、娯楽の神が力を使い別作品のキャラクターをその世界の人間として存在させる。
それ事態は良くある話だ、分かりやすい所で言えばIS世界でガン○ムの用な別の作品の機体を転生特典としてISとして持ち込めば、そのガ○ダム側のメカニックキャラが今のように現れることがある。目の前の光景もその一環だ。
そう思って受け入れる、受け入れて始めましてと言うのが正解だ。
だが、今喋っているその人は廻にとって余りにも衝撃的で始めましてと告げるのが難しい。
だから、深呼吸。
彼等は違うのだと、強く自分に言い聞かせる。
それと同時に、この「もしも」についての感謝と文句を神にしてやろうと心に決めた。
上司なんて関係無い。
「始めまして、繰空廻です。よろしくお願いします……西尾さん、達?」
「あっはっは、そら最初は戸惑うよねぇ。この人達はうちの技術屋の新星こと西尾姉弟。暉と里奈が双子でね、行美さんは二人のおばあちゃん。両親は本社の方でメカニック兼研究者をしてるよ」
「……そうなんですか」
「男女で双子とか、戸惑っちゃうよね」
「顔だけは一緒だしねー……けど性別も性格も違うし、慣れるのは早いと思うよ? なにせ暉は根が暗いし」
「は!? そんな事ないだろ」
「あんた達、そこら辺にしときな。今日はまだ、その子に紹介する奴がいるんだからね」
「はーい、お婆ちゃん」
「職場だとお婆ちゃんは禁止、西尾先生だろ」
「はいはい、全く」
倉持技研の人間であり千冬にコンタクトを取ることで最速で廻を取り込んだ人物、篝火ヒカルノ。
彼女の発言から続く会話は、本当に「彼ら」がしそうで廻は目の前の光景が酷く出来すぎな夢にも思えてくる。でも、彼らは紛れもなくここにいる。そして、あの暉と里奈では無い。
そう理解していても、感情とはどうしようもない物だろう。
せめて、この二人が離れないようにと密かに願い、祝福を祈ることしか廻にはできなかった。
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『これが、私の専用機ですか……』
「そう、この機体は鉄燕。元々は私達の両親が開発した鉄烏って機体で打鉄とコンペで並んだんだけど……」
「コンペで負けてお蔵入り、それを今回に合わせて再改造をしたのが鉄燕。気に入ってくれた?」
「第三世代機の条件こそ満たしてないけれど、出力なんかは十分。第三世代機体機にも引けを取らないはずだよ」
『凄く、動かしやすいですね』
倉持技研のモニタールーム。
そこで暉と里奈が起動実験室内で専用機となる「鉄燕」を纏った廻と話していた。
廻が纏っている鉄燕は曲線も多く人型に近い形をしており、かつ小型に分頼されるIS故に本当に体そのままに近い動かし具合だと、廻は感想を告げる。
『(打鉄も人型に近いのが売りでしたが……手足に関してはこちらの方が本物に近い。ていうかファフナーですねこれ、ただ違うのは……)』
「本当にさぁ、何で打鉄に負けたのかなぁ」
「それはもう言われてるだろ……手足が人に近いのは打鉄も一緒、その上で後付け装備が付けれないのが敗因だよ」
「でも、あのウィングスラスターはお母さんとお父さんの技術の結晶だよ!? 内部にビーム砲を搭載、その為には機体との接続は必要不可欠。しかもそのビーム技術もイギリスが「私が一番ですけど?」みたいな顔されてさ~……お前らより私たちの方が先だっての!」
「里奈、よしな」
『(まぁ、そうですよね……この羽が取れ無いですもんね。ファフナーの体にフリーダムの羽……いえ、ケーブル付きなのでザルヴァートルモデルの要素もあるんでしょうか)』
廻が鉄燕の背中に付いているウィングスラスターに意識を向ける。
彼女にとっては見覚えがある形をしていたそれに、思わずため息が出てしまう。
『(砲身のバーストモードと飛行用のウィングモードの変形機構……この羽、白式と同じように3.5世代機じゃないですか。それを第二部世代機のコンペに出したって……流石は西尾の血、ですかね)』
「とりあえず初期設定はしたから。ある程度動かして貰って、その後は武器を説明に合わせて使ってみて」
『分かりました』
暉に言われるまま、廻が鉄燕を動かし始める。
歩く、走る、飛ぶ、飛行、更に様々な飛行方法で複雑な動きを絡める。
そのまま武装の確認へ移行し、遠距離、近距離、移動しながらの攻撃。
その全てを問題なく成功させ、廻を見ている技術者全員にそれぞれの驚愕を抱かせた。
「(凄いな、始めての機体なのに難なく動かしてる。ヒカルノさんが直接見てスカウトしたのは伊達じゃない)」
「(よく動かせるわねー。私だったら速すぎて目を回すか、方向感覚無くして墜ちるかだわ)」
「(変な子だね。まるで限界以上に鍛え上げた後の達人……なのにそれにしては甘さがある。悪い言い方をしたら歪な動きだ)」
「(天才を自称は伊達じゃないわね、流石千冬の教え子。容赦ないわー)」
『次は何をしましょうか?』
「っと、じゃあ次はこの機体独自の特殊武装を説明するよ。まずは「私達の両親が作ったウィングスラスター内部のビーム砲!」ちょ、里奈!」
「羽の中にある荷電粒子砲からだ、空中で羽を使いながら撃ってみな」
「あら、いきなり難しくないですか? 西尾先生」
「いや、あの子なら恐らく問題ないね」
『分かりました』
廻の次を促す言葉に次の武装の説明をしようとする暉と、早く廻の動かすそれを見てみたい里奈。
それなりに難易度が高くなるように追加要望を出した行美、それに反応したヒカルノ。
だが廻は行美の予想通りに、何でもなさ気に返事をする。
そのまま、ウィングスラスターを展開したまま荷電粒子砲を展開して射撃。
ターゲットを破壊した後も空中で留まっている廻に全員が感心したように声を上げた。
「空中で使うのに羽は閉じるのが必須じゃなかった?
「え、ええ、その筈なんですけど……」
「理論上は可能だった。それを実践して見せたのさ、あの娘は」
「本当の本当に天才じゃん……」
『次は?』
「じゃあ、私達が追加したスラスター兼任のニードルガン! 腰に付いてる奴ね、起動したら形が変わるから!!」
『腰ですね』
里奈が興奮したように次の武器を指示すれば、そのまま腰のニードルガンを起動。
また簡単にターゲットを破壊して見せた。
更に暉が空中に出現させたターゲットも飛行、空中で動きながらの射撃で撃破。
「「お、おおぉぉー!!」」
「やるね」
「あっはっは、凄いセンス」
廻の技術に暉と里奈は勿論。何人ものIS操縦者、それこそ織斑千冬の現役時代を見ていた二人も思わず笑みを浮かべる。
そうして最後のテストに移る。暉が説明をするためにマイクに声を通した。
「最後は手持ちの武器だ。名前は「
『分かりました……(これルガーランスですね)』
廻が呼び出したのは機体の全長程もある大型の刀剣であり槍。それを振り回して突き、切り払い、両手持ちと片手持ちでそれぞれ操る。
それにもう何度目かの感心を覚えた暉が、止めるように告げて次の解説に移る。
「次は遠距離攻撃だ。持ち手にあるロックを外してみて」
『持ち手のロック、と』
暉の説明のままに手元を操作して雷撃槍の形を変える。
中央から2つに割れた刀身はまるで……というより事実として砲身だ。
「その状態だとプラズマ弾……羽のビームを纏めた弾丸みたいなのが発射できる。試してみて」
『はい』
展開された砲身から放たれるプラズマ弾で仮想のターゲットを撃ち抜いて行く廻。
空中、地上、関係なく特殊形状の雷撃槍を使い撃ち抜く。最後のターゲットを砕いた後、廻から通信が入った。
『これで全部ですか?』
「うん、お疲れ様」
「いや、悪いけど最後にもう一つだけ追加だよ」
「おばあちゃん?」
「ヒカルノ。例のあれをこの娘で試したいが、良いかい?」
「はい? ……あぁ、アレ。別に良いですけど、そこまでやります?」
「ああ。悪いね廻さん、最後のは少し準備がかかる」
『いえ、大丈夫です』
行美のことばからしばらく、廻の目の前に新しいターゲットホログラムが現れた。
ただ、その姿は……
『打鉄?』
「の、ホログラムだよ。因みにデータ元は今の日本代表候補生の一人」
『……VTシステムじゃ無いですよね?』
「あんなゲテモノと一緒にするんじゃないよ。中身なんて無い、そのシミュレーションルーム限定の特殊ホログラムさ」
『すみません……でも、良かったです』
表示されたのは打鉄を纏った誰かのデータ。
先の一件からVTシステムという言葉が廻に過ったが、行美の言葉で否定される。
そこにはあのようなシステムを認めないという、技術者としてのプライドが込められていた。
それに廻が少しだけ安堵しながら、目の前の敵を見据える。
「さぁ、始めるよ」
『はい』
その宣言と共に始まった代表候補生のデータと廻の戦い。
廻が即座にニードルガンを展開、発射して先手を取った。対してホログラムは打鉄の盾で防御。
たが既に廻は動いている、空中に飛翔しながら両手にライフルを高速切替、二丁持ちで弾丸を打ち続けるがホログラムは的確なシールドでの防御と薙刀での迎撃で防ぎきった。
『(薙刀……彼女ですか)』
『…………』
ホログラムは何も語らず、アサルトライフルの焔備の射撃を廻に向ける。
廻は銃撃を回避しながら上昇し、距離を取ってから両羽の荷電粒子砲、両手のライフル、腰のニードルガン2つ。
それら全てをホログラムへと向けてロック、フルバーストを仕掛けた。
「フルバースト! ……説明したっけ?」
「いいや、してない! しかも羽を展開したままなんて想定されてないぞ!!」
「たいした物じゃないか」
「でも、まだだね。この位じゃアレは落ちない」
ヒカルノの言葉通り、ホログラムはまだ負けていない。盾で受けきりSEはまだ残っている。
そんなホログラムに廻は上から雷撃槍による強襲を仕掛けた。だがその攻撃は薙刀に防がれて不発に終わる。
ホログラムの弾きに合わせて廻が距離を取り、そのままお互いに向かい合う。
『(凄い技術ですね、ルガーランスを防がれたときにちゃんとぶつかり合った感覚がしました。彼女の動きの再限度はまずますですが)』
廻がこのホログラムの技術に感心しながら、同時にやはりまだ足りないと思う。
自分の知っている「彼女」と比べればまだまだ。と、相手のデータ元の人物を思いながら腕に持つ雷撃槍を構えた。
「動くね」
「これで決まりかしら」
行美とヒカルノの2人が決着について呟くのと同時に廻が動き出す。
まるで地面を滑るように、機体を左右に振りながらホログラムに接近を仕掛け、ホログラムは焔備による射撃で捉えようとするも叶わない。
そして目の前までやってきた廻に対して、ホログラムは薙刀を振るった。
だが、廻は既に跳躍して空中にいる。更に、ウィングスラスターを吹かして急降下。
雷撃槍の突きを繰り出す。
対してホログラムは薙刀とは別に操作していたシールドを廻との間に挟むことで防御しようとしてーーー2枚のシールド、その隙間に雷撃槍が突き刺さった。
「流石に無理だったか……」
「むしろここまで戦えれば十分でしょ」
「まだだよ、あんた達」
「「へ?」」
廻が手元を操作して、二枚のシールドの間で雷撃槍が開く。こじ開けられた防御の先にあるのは、他の迎撃も防御もできない本体のみ。
そこに、雷撃槍のプラズマ弾が炸裂した。
直撃した一撃によってホログラムの設定されていたSEは0。
ホログラムはその役目を終えて飛散した。
それを見ていたモニタールームは。
「「いや! そんな使い方は想定してない!!」」
「ハッハッハッハ、良いね! 面白いじゃん」
「……中々のじゃじゃ馬じゃないか」
技術者達は自らが作った物を100%以上扱う人間を、驚愕と共に受け入れた。
これからは、彼女に合わせてこの機体を改良していくだろう。
そんな予感に全員が口許に笑みを浮かべながら。
ーーーーーーーーーーーー
6月◆日の放課後、アリーナにて。
転生者こと空野春樹はルームメイトのシャルロット、幼馴染な箒の二人によってアリーナの地面にて正座させられていた。
「あの……シャルロットさん?」
「何?」
「なんで俺は正座を……? もう十分以上」
「だってこれが日本の反省なんでしょ? 箒」
「う、うむ。それは間違いない、のだが……」
既に春樹が正座を初めて十数分。
何も言わず、ただ見つめているシャルロットと正座させられている春樹。そしてそれを端から見ている箒。
実に奇妙な光景である。
「これは……いつまで続けるのだ」
「うーん、春樹が私達相手に話すまで?」
「シャルロットが疑問系だと私は何も分からないのだが……」
「話すって言っても、何を話せば……」
正座したまま、話すべき事を話せというシャルロット。それに対して何を話せば良いのかと春樹が尋ねれば、シャルロットは視線だけで春樹を射抜いて問いただし始める。
「本当に、わからない?」
「いや、あの、そのですね……」
「本当は分かってるよね? なら最初に言うことがあるんじゃないかなぁ?」
「……倒れるまで練習して、すみませんでした」
「違うよね? 一人で勝手に突っ走って、勝手に自分の限界を越えて、勝手に倒れたんだよね?」
「勝手に一人で無茶して、勝手に倒れてしまい、申し訳ありませんでした……」
「ふーん……そうだね、春樹が勝手に一人でやらかしたんだもんね?」
「はい……」
シャルロットの視線は鋭いが、冷たくは無い。
それはきっと、心配や力になりたいという彼女の思いが乗っているからだ。
とは言え、それとこれは話しは別。
シャルロットの問い詰めに対して、春樹は何も反論できずにひたすら謝る事しかできない。
その様子を見て箒は「(これが尻に敷かれるという物なのだろうか……)」と遠巻きに思うしか無い。
一先ず満足したのか、シャルロットが溜め息を吐いた後に今度は目線を春樹と合わせて問う。
「それで? 春樹はなんでそんなに焦ってるのさ」
「俺は、焦ってなんて……」
「いーや、焦ってる。少なくとも私はそう思う、箒は?」
「私か? ……そうだな、確かに今の春樹はらしくない。それは確かに焦りから来る物だろうな、とは思う」
「ほら。会って1ヶ月の私だけじゃなくて箒もこう言ってる。それに他の皆だって、言葉にはしなかったけどそう思ってるよ」
「俺って、そんなに分かりやすいか……?」
「うん」
「まぁ、普段のお前なら居残りなんてしないだろうしな。その異変に気付かないのは無理がある」
「そっかー……」
自分の分かりやすさを指摘された春樹が落ち込むが、そんな事は関係ないとシャルロットが再び問いかける。
「それで? 何を焦ってるの?」
「何を、焦ってるのか……」
それは、きっと彼が転生者であるが故の。
これからの記憶。
それはある意味で転生者の利点であり、転生者故の苦しみとなる。
これから先に起こる事件、事故。
ーーー命を賭ける戦い。
それが、怖い。
「怖いんだ、多分」
「怖い?」
そう、呟いた春樹はいつもの飄々とした物ではなく。シャルロットと話した時のような、素の春樹としての言葉だとシャルロットと箒は悟る。
だからこそ、二人はこの言葉を聞き逃さないようにも意識する。
普段は煙を巻いてる春樹の数少ない本音だから。
「そう。この間のトーナメントの事故、あの時何もできなかったのは俺だけだ」
「……それは」
「たが……それはあの場に居た私もそうだ」
「私もそうだよ。結局間に合って無い」
「でも、二人はあの時戦ってたんだ。……俺は寝てただけだ」
それはシャルロットも箒も予想できた答え。
先日起きた事件で、間接的でも関わっていた二人と違い春樹はその前のラウラとの戦いで負傷して気絶したままだった。
それはきっと、春樹に影響を良くも悪くも影響を与えるだろうと。
シャルロットは特に廻からそう聞いていた。
「でも、あんな出来事は稀っていうか。あっちゃいけないことだよ」
「……そうだな。でも、もしも次があった時に今回みたいに何もできないのが、怖いんだ」
「それは……そうかもしれないが……」
「その為に春樹が傷つくのは悲しいな、私は」
「それに関しては……本当に、ごめん」
「お前を大切に思っている人間は多い。それは忘れないでくれ、春樹」
「……おう」
自らの価値を誤るな、と。
二人に言われた春樹の中には、二人への感謝と同時にやはり今後の未来への不安が渦巻いていた。
こんな事ならば原作知識なんて要らなかったのでは、という気持ちと、これがなければ今みたいに備えることもできないと告げる気持ちの板挟み。
そんな春樹に対してシャルロットが言う。
「それじゃ、これから春樹がどうやって強くなるかを考えようか。ね、箒」
「む? それは……そうだな。春樹が強くなるのを望むのなら、それを手伝うのが……幼馴染と言うものだろう」
二人の言葉を聞いた春樹が、思わず顔を上げる。
そこには先程までの様に春樹の無謀を非難していた鋭い眼光ではなく、けれども同じくらい真剣に考えているシャルロットの顔があった。
「ほら、春樹も。本人なんだからちゃんと考えてよ」
「うーむ。やはり以前の経験から考えるべきだと私は思うぞ? 私や一夏の二刀流も、元は剣道という経験から来ている発想だったからな」
「(あぁ、そっか……別に、俺一人で悩む必要は無いのか。原作知識から皆への影響を考えてたけど……)」
今更が過ぎるな。
そう考えて、春樹はどこか肩の力が抜けたのを感じて二人の会話に入っていく。
そこには先程までの焦りの色は薄い。
確かに、これからの未来への不安と恐怖はある。
だけど、自分は一人ではない。
前まではどこか現実味の無い、どこかフィクションに感じていた世界に対して。
空野春樹はここでようやく、真の意味でこの世界に存在し始めた。
この世界で生きながら戦う。
その認識と覚悟をより強くしながら自の足を踏み出して、二人の元へ向かうのだった。
簡単キャラ紹介
西尾家
原作のファフナーと違い、パイロットにならなかった為暉も里奈もIS技術者の技術屋一家。
暉と里奈の両親も健在。
暉には行きつけの喫茶店があるし、元同級生は元気に芸能人歌手と実家の寺で巫女をしている。
それに里奈へと思いを寄せる後輩も、その同級生のカップルも元気に暮らしているだろう。
繰空廻
この人達は彼らではない。
同じ姿、別の世界の同じ人でも戦って生き抜いた「彼ら」ではない。
分かっている。
けれどどうか、この世界の彼らに幸せな未来を。
空野春樹
俺はここに居る。
俺はフィクションじゃないこの世界で生きている。
たとえ未来を知っていたとしても、その通りになるかなんて誰にも分からない。
なら最後まで必死に戦って生きるよ。