それは、俺達がセシリアと戦うことが決まった次の日の出来事だった。
俺と男幼馴染の春樹は、ISのイギリス代表候補生であるセシリア・オルコットと一週間後にクラス代表の座をかけて戦うことになり、それに向けて特訓をすることにした。
そして春樹の「俺達にできることを伸ばそう」という言葉に従って、小学校まで習っていた剣道をファースト女幼馴染の箒に見て貰い、剣道を辞めた中学の3年間で腕が衰えているのを指摘され責められた。
春樹は止める必要は無かったのに、俺に付き合って新聞配達のバイトをしていたことを考えると胸が痛かった。本当なら剣道の腕が衰えるのは俺だけの筈だったのに……結局、それも春樹に見透かされ「気にするな」と言われてしまったけど。
ただそれを言われると余計に落ち込むよなぁ。
だから俺は二人に良いところを見せたかった、てのは正直あった。
だからあんなこと言ってしまったんだ。
「なあ、今晩俺の部屋で作戦会議しないか?」
我ながら良い考えだと思った。
やっぱり対策を練るっていうならただ特訓するだけじゃ足りないよな!
二人も悪くない、そうだなって同意してくれた。
言い出したのは俺だから、場として俺の部屋を使うことで二人に良いところを見せたかったんだ。
まあ、完全に裏目だったんだが……
「あの……なんでこの部屋に集まるんですか?」
「「え」」
俺の隣人で、同じ部屋を共有する
彼女の言葉に幼馴染二人は驚き、そのまま俺に向かって聞いてきた。
「……一夏、お隣さんの同意は?」
「あー……その……」
「「おい!!」」
思いっきり突っ込みを喰らった。
そして箒にみっちりと怒られ、春樹は繰空さんに謝っていた。
そうして良いところを見せようとした俺は滅茶苦茶滑った訳だ。
「……とりあえず、今日は作戦会議とやらが終わるまで私は外に居ますね。部屋は荒らしたりしなければ全然貸しますから」
「あ……待ってくれ、繰空さん! 俺達、どうしてもあのセシリアに勝ちたいんだ! 手を貸してくれないか!!」
俺は都合が良い事を言っていると自覚しながら、彼女を呼び止めた。
俺達幼馴染3人はISに詳しくない、だから他の人にそこを教えて欲しかった。
それに繰空さんは、1日しか一緒にいなくてもISの事に詳しいことがなんとなくだけど分かった。
暇さえあればISの本を読んでいるし、ちらっと見えた彼女の持ち物には俺達じゃ理解できないであろう、ISの技術についての本があった。
だから彼女の知識があれば頼もしい、と考えてたんだけど。
「はい? ……嫌ですよ、私は貴方達の味方じゃありませんし、なんなら勝つのはセシリアさんだと思っていますから」
彼女は俺の誘いをキッパリと断った。
当然と言えば当然なんだけど、それでも彼女の言い方に俺は食って掛かってしまった。
「……それはやっぱり、俺達男が勝てるわけ無い、って考えてるのか?」
自分でも言葉が強くなったのが分かった。春樹が思わず「おい」って止めようとした位には。
多分、無意識に感じてた不満が出てしまったんだと思う。ずっと今日一日、いや、俺達とセシリアの戦いが決まってから感じていたクラスメイトの、周囲の女子達の考え。
『男が女に勝てるわけが無い』
皆、直接言葉にしなかったけどその考えがあって、セシリアに挑もうとする俺達を馬鹿にしている、というか下に見てるっていうか……そういう良くないもの。
俺は千冬姉の弟なのに……って影口を叩かれる事もあったから感じ取ってしまった。
そんな疑っている俺に、繰空さんは言った。
「はい? ……いえ、違いますよ。これは男女のそれではなく、経験の差を考えての結論ですよ」
「え?」
「そもそも女が男より強いとか、無いです。仮に今私と織斑さんが殴りあったら私が負けます。明日の朝食賭けてもいいです」
「いや、そんなことしないって……」
「そうですか、私の朝食は守られましたね」
最初こそ真面目だったのに、途中から朝食を賭けるとか言い出して気が抜けた。
……気難しいイメージがあったけど、意外と気楽というか、茶目っ気があるというか、何となく元のイメージとは違う人だと思ったな。
でも、だからこそ次の真面目な言葉は、俺達に突き刺さったんだ。
「良いですか? セシリアさんのエリートという言葉は比喩でもなんでも無く、事実です。彼女はイギリスの代表候補生、国から才能を認められ努力する時間を普通よりも与えられた人なんですよ」
「努力する……時間?」
「はい。極端な話ですが、私達が普通に中学生として学んで、バイトなり部活なりをしていた時間。セシリアさんは同じように一般教養を学びながら同時にISについて学び、操作技術得ています。彼女のISに搭乗した時間は恐らく数十時間、下手したらは100時間以上。それだけ彼女にはIS操縦の経験値があります。それに対して貴方達はどうでしょう? 入試の実技が初めてISを動かした体験だったのでは?」
うっ、と声が出たのは図星だからだ。
同時にセシリアという戦う相手について、俺達は全然考えが足りていなかったと思い知った。
俺は、セシリアの奴が俺達の事を馬鹿にしてきたからケンカを買って、エリートだと鼻につく話し方や態度が気に食わない。
……その程度しか考えていなかったけれど。
その裏には俺達が知らないだけでとてつもない時間ISに関わった努力がある、それを許される才能がある。そう指摘されたのだ。
知らなかった、あるいは知ろうとしていなかった側面を突きつけられた感じがした。
「……熱くなりました。入試の実技が初めてのIS操縦なのは私も同じで普通の事です、下に見るとか馬鹿にするという意図は無くてですね……すみません。私が言いたかったのは、彼女のエリートであるという自信は、間違いなく彼女の才能と努力によって作られた事実ということです」
そう言った繰空さんは「まあ、だからと言って今の態度が良いかは別ですけど」と一言告げてから部屋を出ていった。
残された俺達の間に沈黙が降りる。
最初にそれを破ったのは、春樹だった。
「繰空さんって、あんなに熱く話すんだな……」
「ああ、俺も初めて知った」
「そら、同居人とは言えまだ二日なんだからそうだろうよ」
「お前達にとって重要なのは彼女が話していた内容だろう。私にとってもだが……」
セシリアはエリート。
その言葉の意味が重くなった気がした。そして俺達はそんな彼女と一週間後に戦うのだ。
それでもーーー
「……でも、やっぱり俺は負けたくない。セシリアが凄いのは分かった、それでもあれだけ言われて黙っとくなんて俺には無理だ!」
「同感だな。実際繰空さんも今のセシリアはあんまりって感じみたいだし、やってやろうぜ!!」
「ふっ、そう来なくてはな。お前達」
俺達はセシリアの強さを再認識した上で、対策会議を始めた。
が、やっぱり俺達は3人共ISに詳しくない以上、対策なんてろくに浮かばないまま時間がだけが過ぎていった。
「やっぱり、俺達三人だけだと無理があるというか……」
「うむ。結局今日と同じように剣道に打ち込む、という案しか出てこなかったな」
「他の人に頼るか?」
春樹が言った通り、他の人を頼るべきなのかもしれない。
しかし誰を頼るか、それを考えると俺達三人は顔をしかめるしか無かった。
「やはり、千冬さんではないか? これ以上無いだろう」
「千冬姉かぁ……ただなぁ……」
箒の提案は最もだ。
千冬姉、俺の姉で、元世界最強。春樹とも仲は良いし、最適解と言えるのは間違いないと思う。
ただ、何というべきか。ここで千冬姉を頼るのは
……俺は、千冬姉も守れるくらい強くなりたい。セシリアに挑む理由に彼女が気に食わない、馬鹿にされた怒りといった気持ちもあるけど、それと同じくらいの俺の戦う理由。
だから、今千冬姉を頼るのは……なんか違う。
だけど、それってやっぱり俺の我が儘な訳で。
千冬姉に頼るのが俺達の取れる手で最善ってのも理解できてる。
「でも、千冬さんだしなぁ……忙しそうだし、何より普通に教えてくれると思うか?」
「それは、そうだが……」
春樹の言葉に唸る箒。
確かに千冬姉は俺達の担任、学年主任、そして俺達一年生の寮の寮長の仕事を同時に行っている。
その忙しさの中で手を貸してくれ、というのは気が引ける。それに千冬姉が素直に教えてくれる姿が想像できないってのも同感。
なんとなくだけとしょっちゅう出席簿の一撃を喰らいそうだと思った。
「……俺、もう一度繰空さんにアドバイスだけでも貰えないか聞いてみる」
「え、おいおい、繰空さんにはさっき断られたばっかじゃねぇか」
「でも、今のセシリアに思うところがあるんだろ? だったら、俺達が勝つことで変わるかもしれない。それを元に話しかけて見せるさ」
「いやでもさ……」
「む、そろそろ就寝時間だ。春樹、私達の部屋に戻った方が良い」
春樹はあまり良い顔をしないまま、時間切れで箒と一緒に帰っていった。
春樹の言いたいことも分かる。それでも、俺達に対して真剣に語った彼女ならこっちも真剣なことを伝えれば、応えてくれると思ったんだ……
それからしばらく、繰空さんが戻ってくる。
「おや、まだ続いてるかと思ってましたが」
「ああ、寮長がちふ……織斑先生だからさ、余裕をもって終わらせたんだ」
「そうですか」
そう言って黙々と寝る準備を進める繰空さん。
俺はアドバイスを貰おうと、何とか話しかけようとして……
「それでは、おやすみなさい」
「あ、ああ。おやすみ」
なにも言えずに二人ともそれぞれのベッドの中に居た。……あれだけ言っておきながら、結局はこれだと我ながら情けなく思う。
明日に回すべきか、朝一番に聞いてみるか……そんな事を悶々と考えながら暫くして、俺は決心して繰空さんに声をかけた。
「……繰空さん。さっき断られたけど、もう一回だけ言わせてくれ。俺達に何かアドバイスくれないか? ……俺達の味方じゃないって言ったのは覚えてる。セシリアがどれだけ凄いかも、さっきよりは自分でも考えて分かったつもりだけどさ、それでも俺はセシリアに勝ちたいんだ。馬鹿にされたとか態度がどうとかじゃない……俺は千冬姉を守れるくらい強くなりたい、馬鹿みたいに思うだろうけど俺は本気でそう思ってる。その為に本気でセシリアに挑んで、本気で勝ちたい。だから頼む! 俺にISの事を教えてくれ!!」
俺は後半になるにつれて熱くなっていって、夜にも関わらず声が大きくなってしまった。
けれど、それくらい本気なんだと伝えたかった。
俺の言葉に対して繰空さんの反応は……
「…………」
無言だった。
やっぱり無理なのか。それとももしかしてもう寝てしまったのか。
駄目だった。
その事実に俺は力が抜けていって、ベッドの中で力無く横たわった。届かなかった悔しさが、俺の体を巡ってすぐには眠る気にはなれない。
結局、勝つためにどうするべきかを考え始める。
そんな俺の耳に小さいけど、確実な言葉が聞こえてきた。
「……ISは、他のスポーツなどと比べて三次元的な戦いで……上や下からの立体的な攻撃を対応する必要があります……わかりましたかぁ……一夏」
「……!!」
最期の方は小さくて聞き取れなかったけど、確かに俺は聞いた。
繰空さんからのアドバイス。
三次元的な動きと攻撃。
確かに、納得した。
ISの戦いは空中で浮きながら行われる。なら上下の概念は他の物より強い、それに対応するべき。
俺はすぐさまメモ……を取りたかったけど、さすがに暗闇だと無理だったから近くの携帯を探り当てて、記録する。
「ありがとうな、繰空さん」
「ぃいーぇ……なんかいもけっこんしたなかでしょう」
アドバイスを貰って、どうするかは固まった。
明日からはこれを踏まえての特訓だ、だから今日は繰空さんにお礼を言ってすぐ眠ることにする。
お礼の返事は眠気のせいか音程が不安定で聞き取れなかったけど、俺は伝えれただけで満足だ。
そうして、俺の意識も落ちていって、その日は終わった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
迎えたクラス代表決定戦。
俺は第一試合、春樹よりも先にセシリアと戦う事になった。
専用機は時間ギリギリ届き、何とか不戦敗は免れる事ができた。
そして実際に戦いを始めた後。
「この、ちょこまかと! 少しはお勉強されたようですわね!」
「ああ、良い先生に教えて貰ってな!」
繰空さんのアドバイスを元に俺と春樹と箒の三人で行った特訓の成果が出た。
上下からの攻撃への回避と防御。それはセシリアの上からスナイパーライフルで撃ってくる攻撃の対策として大成功だ!
「仕方ありません、使うとは思いませんでしたが……ビット!」
と、調子に乗っていたらセシリアのISから羽が分離、それぞれがビームを放ち、全方向から攻撃を仕掛けてくる。
最初こそ4つのの方向からの攻撃で驚いたけど……
ISは上下の概念が強い
繰空さんから貰ったアドバイス、そこから俺は
更に落ち着いて見れば、セシリア本人はビットと同時に攻撃ができないこと、ビットの攻撃は俺の死角から撃ってくる癖があること。
それが分かれば最初ほど怖くはなくなった。
「へへっ」
思わず笑みが浮かぶ。
あいつの攻撃は全部見切った、後はタイミングを見て懐に飛び込めばーーーーー
『彼女のエリートであるという自信は、間違いなく彼女の才能と努力によって作られた事実ということです』
そんな時に、繰空さんが言ったセシリアはエリートであるであるという意味を思い出した。
……そうだ、相手は俺よりも格上で何倍も努力してるんだ。
なら、
無意識に開こうとしていた左手を握り閉める。
……千冬姉から言われた俺の癖、俺は調子に乗ると左手を握ったり開いたりするらしい。
俺ですら自分の欠点を知っている。他人から指摘されれば、癖だろうが分かる物だ。
なら、セシリアは?
きっと他人から指摘される事だってたくさんあっただろう。そして、その対策を考える時間も。
「どうしました、こんな時に考え事ですの!!」
「くそっ!」
セシリアの対策はなにか、それを考えようとした所でビットからの攻撃が来る。
こうも攻撃され続ければ、回避し続けながら考えるのは無理だ!
どうする、考えようとすれば隙ができて削られる。かといって何も分からないまま飛び込んでも……いや、どうだ?
俺は自分の機体のSE残量を確認する。
被弾が少ない分、残ってるエネルギーは十分。
ここで
それが俺の考えた作戦だった。今のエネルギーなら恐らく一発は何をされても耐えられるはずだ。
「(相手の手札が分かれば、どうにかできる!)」
半ば特攻じみた考えで、俺はセシリアの懐に飛び込んで行く。
どこかでタイミングを見て、じゃない。
今この瞬間に! 全力で!!
「っ!? ビット全てを回避して突撃!?」
驚くセシリアを置いて俺の唯一の武器である刀を振るう。本気じゃないと奥の手を見せないかもしれないし、俺の想像してる奥の手が無ければ勝負を決められる。
どっちにしろ、全力でいかない理由がない!!
しかし、次の瞬間にセシリアは笑みを浮かべた。
それは俺の推測が正しかった証明。
「ですが、残念。ブルー・ティアーズのビットは6基ありましてよ!!」
セシリアのIS。
ブルー・ティアーズのスカート部分が動き、新しいビットとなってこちらを向いた。
新しい2つのビットはこれまでと違い、ビームを放つ物ではなかった。
「(ミサイル!?)」
流石に予想外。
放たれた2つのミサイルが俺に向かってくる。
予想外の事に必死で防御の体制を取る。
「(一発なら問題ないと思ったけど、これは耐えれるか!?)」
俺はミサイルに直撃して、辺りは煙に包まれた。
そうして、なんとか耐えた俺の耳に『一次形態移行 完了』という声が聞こえたのだった。
この後は原作通りに第一形態移行して、原作より残ってるSEで零落白夜を決めて、おしまい!
ぶっちゃけ上手く書けなくてカットしました(
簡単キャラ紹介
繰空廻
この日記を書いている主人公。
「くりからめぐる」と読む。ただしこれはあくまでも基本の名前であり、世界によっては別の名前にもなる。
IS世界に転生するのはもう数えるのを止めたくらい転生している。
その中でブリュンヒルデになったり、新世代IS開発の第一人者になったりした。
昔は一夏と結婚して寿命を迎えた事もある。その為後方彼女面どころか前世の嫁面を無意識にしてくる。
あまり転生者には口出ししない観測者だと自認しているが、実際は影響出しまくって物語を原作から変えていくタイプ。神々の中で人気が高いので後三千年は観測者兼転生者として活躍するだろう。
織斑一夏
原作主人公。
本来の相部屋相手である箒は春樹の元に行った為、埋め合わせとして前世の嫁面と同室になった。
実は春樹の影響で闇落ちフラグが中学で建っていたが、鈴の活躍により回避。
ただしその影響で若干疑い深くやさぐれ気味。
基本は原作通りに良い奴。
篠ノ之箒
原作ヒロイン1
基本的な性格などはそのまま、好意の矢印が春樹に向いている。
原作通りに男子から弄られていたのは春樹と一夏の二人に助けられ、それ後に特別なイベント等はなかったが、どちらかというと頼れる兄貴的な春樹に好意を寄せていった。