『近藤信竹の憑依物語』   作:零戦

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第十四話

 

 

 

 

 

 

 

「『祥鳳』が撃沈され『翔鶴』が大破し、航空機も52機を喪失……か……」

 

 近藤は珊瑚海海戦の報告書を読んでいた。珊瑚海海戦は殆どが史実通りであった。しかし、その詳細は微妙に違っていた。例えばツラギ空襲は確かにフレッチャー少将の第17任務部隊から攻撃隊が発艦していた。

 だがツラギ攻略部隊の旗艦である敷設艦『沖島』駆逐艦『菊月』には対空電探である21号と13号対空電探が搭載されておりツラギ攻略部隊は十分な迎撃態勢を整える事が出来たのである。

 この攻撃で掃海艇1隻が撃沈され『沖島』『菊月』が小破という被害で抑える事に成功するのである。

 そして戦闘は終始史実通りであった。五航戦は索敵機の見間違いにより給油艦『ネオショー』を空母と誤認して攻撃、撃沈させるも翌日にはポートモレスビー攻略部隊の護衛に付き添っていた軽空母『祥鳳』が第17任務部隊からの航空攻撃により爆弾13発、魚雷7発が命中し撃沈されてしまうのである。しかし、『祥鳳』に攻撃が集中した事で輸送船団は無傷だったりする。

 その後、両機動部隊の攻撃で五航戦は『翔鶴』が1000ポンド爆弾3発が命中し大破、発着艦不能となり第17任務部隊も空母『レキシントン』が大破、後に漏れだしたガソリンが気化して引火、大爆発を起こして駆逐艦の雷撃による自沈処理となる。

 航空機は52機を喪失、但し着艦後に飛行不能と判断され投棄処分となった機体をも合わせると81機に及ぶ。また、戦死者の中に『翔鶴』飛行隊隊長高橋少佐の名は記載されていなかった。高橋少佐は単独で帰投中に史実と同じくSBDドーントレス1機とF4Fに襲われた。しかし、九九式艦爆は防弾装備を施していた事もあり何とか帰還する事に成功しており生存していたのである。

 

(まぁ高橋少佐が生存しているだけでも何とかの御の字か……)

 

 高橋少佐は負傷していたので内地で療養となったがそれでも生きている事に代わりは無い。また五航戦の航空戦力も史実の壊滅よりかは多少マシな損害ではある。

 

(そうなると……MI作戦でも使用される恐れもあるわな……)

 

 そうなればどうするべきか……。近藤は頭を悩ますしかなかった。また、少し時を戻す。

 聯合艦隊は4月28日から3日間は第一段階作戦戦訓研究会を実施しており南方作戦の指揮官であった近藤は無論出席をし報告では特にスラバヤ沖海戦での雷撃の事も報告をしていた。

 この戦訓を元に水雷戦隊の雷撃は1万以下となり魚雷も過敏に設置しない事が決定されている。また、5月4日午後からは第二期作戦に関する打ち合わせが行われている。

 

「第二期作戦を実施するのは構いませんが、どれか一つは占領、攻撃のみに絞りませんと輸送能力に限界があります」

 

 近藤はそう主張し海上護衛総隊の戦力を記載した書類を山本長官に渡す。

 

「書類に記載されています通り、海上護衛総隊の戦力は現在、旧式駆逐艦20、特設巡洋艦6隻、水雷艇4隻、海防艦12隻の計3個艦隊で運用しておりその3個艦隊は全て南方と内地を結ぶヒ船団とミ船団を護衛しています。仮に第二期作戦でMI、AL、FS作戦で重要な島の攻略占領を行い占領を維持するのであれば各補給路の防衛の為に後護衛艦隊は4個艦隊が必要となるでしょう」

「うーむ………」

 

 近藤の言葉に山本は唸る。そこへ首席参謀の黒島中佐が反論する。

 

「しかし近藤中将、MI作戦は既に決定しているのです」

「決定しているなら尚更だろ。護衛総隊の戦力を増やすまで待てないなら聯合艦隊から水雷戦隊を出して補給船団を護衛するしかないぞ」

「水雷戦隊は艦隊決戦で使用する艦艇です」

「馬鹿かお前? 艦隊決戦で使用する艦艇なわけないだろ。船団輸送にも色々使用される何でも屋だぞ。主席参謀なら少し頭を働かせろ」

「…………………」

 

 近藤の言葉に黒島は反論出来なかった。顔も真っ赤にしており茹でダコ状態である。そこへ助け船を出したのは山本だった。

 

「近藤君、早期講和の為にもハワイ攻略は必要なのだ。そこは理解してくれ」

「そこは自分も理解しています。なら軍令部と交渉してFS作戦とMO作戦は中止しなければなりません。補給路、本当に限界ですぞ? 及川長官に確認した方が宜しいと思います」

「成る程……」

「『二兎を追う者は一兎をも得ず』という言葉もあります。此処は慎重に動いた方が宜しいと思われます」

 

 言いたい事は言った、近藤はそういう表情を出して席に座る。各艦隊司令長官達も頷いていた。叩くのは良い、占領するのは良い、しかし維持が出来るのか? それが課題であったのだ。

 

「……一先ずは休憩としよう」

 

 山本は穏やかにそう言った。山本も決めかねていた。だからこそ休憩となった時にコッソリと近藤を自室に呼んだのだ。

 

「先程は済まなかった、頭が冷えたよ。どうも帝都を空襲されたせいで躍起になり過ぎていた」

「いえ、そのような……」

 

 山本の謝罪に近藤はそう言う。

 

「先程の話になるが……やはりMI作戦はやめた方が良いかね?」

「いえ、やるのは構いませんが南雲の機動部隊に負担が掛かりすぎています。基地攻撃と米機動部隊が途中で出てきた時……司令部は混乱するかと思います」

「むぅ……しかし機動部隊を分割するのは……だからと言ってAL作戦の機動部隊をMI作戦に回すのは厳しいだろう。AL作戦は陸さんも要望している」

「……少しややこしいですが案はあります」

「……それは……?」

「ーーーーー」

「なッ!?」

 

 近藤の言葉に山本は目を見開き腕を組む。

 

「むぅ……成る程な…確かにそれだと南雲の負担は減るな……」

「如何でしょうか?」

「……良かろう、その案でいこう。なに、黒島には私から言っておこう」

「ありがとうございます」

 

 休憩後、山本は開口一番に口を開いた。

 

「MI作戦の一部修正を行う」

「長官!?」

「落ち着け。『二兎を追う者は一兎をも得ず』だ。南雲の機動部隊は基本的に米機動部隊を叩く事を優先とする。しかし、ミッドウェー島の航空戦力を叩く事も必要である。そこで……」

 

 山本は指揮棒を取り、『瑞鶴』と『雲龍』の模型を第二艦隊に配備させた。

 

「攻略部隊に五航戦の『瑞鶴』と就役したばかりの『雲龍』を回しミッドウェー島航空攻撃の要とする」

「成る程。一航艦の負担を減らすというわけですね」

「そうだ。一航艦はミッドウェー島の攻撃を1回のみとし後は米機動部隊の出現に備えてもらう」

「……長官がそれで良いのであれば、我々一航艦はその方針でいきます」

 

 山本の決断に南雲中将は頷いたのである。斯くして作戦準備に移行される事になる。なお、『瑞鶴』については飛行隊が疲弊している事もあり殆どが予備パイロットと交代する事になった。飛行隊長も練習航空隊で教官をしていた関衛少佐が着任する事になる。

 また、第二艦隊に配備される予定だった軽空母『瑞鳳』を一航艦に臨時配備で提供した。

 

「防空空母で運用した方が良いだろ」

「感謝します」

 

 近藤の提供に南雲も素直に頭を下げるのであった。

 

「ま、問題は市井の者達だよなぁ……」

「何か言った信さん?」

「何もないよ零夢」

 

 出撃前の一時帰宅をしていた近藤は零夢とイチャついていた。(今日は零夢の日らしい)

 

「……ミッドウェーの事でしょ? 大分国民にも知れ渡っているわね」

「……防諜のぼの字もねぇなこの国……」

 

 零夢の言葉に近藤は溜め息を吐く。真珠湾の時は防諜にかなり気を使っていたのにこの有様は何だろうかとしか言えない。

 

「大丈夫よ信さん」

「ん?」

 

 零夢はそう言って近藤にキスをする。

 

「はい、これで負けはしないわ」

「……成る程。負けはしない……か」

 

 笑みを浮かべる零夢に近藤も釣られて笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 




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