『近藤信竹の憑依物語』   作:零戦

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第二十六話

 

 

 

 

 

 

「見つけたぞッ」

 

 第二次攻撃隊総隊長の関少佐は眼下に見える第16任務部隊を見てそう呟く。第二機動部隊からの緊急電を受け取った第二次攻撃隊は直ちに進路を変更し第16任務部隊上空に到着したのである。

 

『敵戦闘機は此方で対処します!!』

「頼みます新郷少佐!!」

 

 新郷少佐率いる零戦27機は『エンタープライズ』隊のF4F19機と空戦を行う為に突撃を開始する。それを尻目に関少佐は『トツレ』を発信させた。

 

『隊長、思っていたよりも対空砲火は強力そうですね』

「あぁ、戦艦もいるからな……」

 

 第16任務部隊の護衛には戦艦『サウスダコタ』も随伴しておりその対空砲火は強力であった。その為、関少佐はある決断を下した。

 

「彗星隊は敵戦艦を攻撃する!! 残りは敵空母に突っ込め!!」

 

 彗星隊は500キロ爆弾を搭載していたのでこれを以て『サウスダコタ』を攻撃し対空砲火を減らす事としたのだ。彗星隊18機は『サウスダコタ』に500キロ爆弾3発を命中させた。しかし、1発は不発であり実質的に2発の命中であったがそれでも5機の喪失と引き換えに『サウスダコタ』の対空砲火を減らす事に成功するのである。

 

「艦攻隊は突撃!! 突っ込めェェェェェェ!!」

 

 艦攻隊隊長の今宿大尉は列機天山8機を指揮しつつ『エンタープライズ』の左舷から突撃を開始した。今宿隊は2機の天山を喪失しつつも『エンタープライズ』の距離800で魚雷を投下して離脱したのである。

 

『やりました!! 左舷に2本命中!!』

「よし!! このまま右舷隊が雷撃をすれば……」

 

 それは浅はかな考えだっただろう。右舷隊として突撃した『雲龍』『葛城』隊の九七式艦攻は損害を受けていた。

 

『また1機落とされました!!』

「クソッタレ!! 天山があれば……」

 

 右舷隊を指揮する『雲龍』隊の鷲見大尉はそう恨みつつ魚雷を投下する。『エンタープライズ』の右舷には到達出来なかったので護衛艦艇の攻撃を優先したのである。この攻撃で第16任務部隊は甲巡『ポートランド』駆逐艦『モーレー』『カニンガム』を撃沈されるのである。

 関少佐は攻撃の結果を報告し第三次攻撃を具申した。しかし、第二機動部隊も米攻撃隊からの攻撃を受けている真っ最中であったのだ。

 

 

 

 

 

「『熊野』上空に急降下!!」

 

 『加賀』の見張り員が叫ぶ。近藤が並走する甲巡『熊野』の上空を見れば2機のSBDが零戦隊の警戒網を突破して『熊野』に急降下していた。『熊野』は12.7サンチ連装高角砲や25ミリ機銃を駆使して阻止をしながら回避運動に移行する。2機のSBDは腹に抱えた1000ポンド爆弾を投下して離脱するも1000ポンド爆弾は『熊野』艦尾付近の海面に着弾、水柱が吹き上がる。

 しかし『熊野』は全速航行をしていたので被弾はしていないようであった。

 

「『熊野』に被弾無し!!」

「間一髪……ですな」

「油断はするな。奴等はアメリカだ」

「ですな」

 

 近藤の言葉に吉岡航空参謀は頷く。あのミッドウェーを経験した者にとって『敵機直上急降下』はトラウマであった。しかし米軍もそこまで甘くはなかった。

 

「『葛城』上空に急降下!!」

「ッ」

 

 見れば『葛城』上空に3機のSBDが急降下していた。『葛城』に並走していた護衛巡洋艦『名取』はその主兵装となった3基の45口径12.7サンチ連装両用砲と25ミリ機銃を駆使してSBDを排除しようとしていたが3機のSBDは『名取』を嘲笑うかのように『葛城』に目掛けて1000ポンド爆弾を投下したのである。

 

「『葛城』被弾炎上ォ!!」

 

 3発の1000ポンド爆弾は『葛城』の中部と後部飛行甲板に突き刺さり格納庫の中を転がり、止まってから爆発したのである。爆風は予備の機や整備員達を吹き飛ばしその爆風は後部エレベーターをも吹き飛ばして海面に叩きつける程であった。

 

「損害の報告を急がせろッ」

「『雲龍』上空にも急降下!?」

 

 『雲龍』にも4機のSBDが群がり2発が命中、前部飛行甲板に命中したので発着艦は不能であった。

 

「長官……二空母は完全に戦闘能力は喪失、これ以上の戦闘は不可能と思われます。護衛艦艇を付けてトラック諸島に退避する事を具申します」

「ん。だが、退避はこの攻撃が終わってからだな」

 

 白石参謀長は近藤にそう具申した。近藤も頷き了承されたのである。そして第二機動部隊への攻撃はこの二空母への攻撃で終了した。

 第二機動部隊は上空直掩に零戦36機も付けていたので二空母以外の被害は無く乗り切れたのである。しかし、この多く零戦を付けたのが後々に響いてしまうのである。それはさておき、二空母が使用不能となった第二機動部隊は帰還してくる攻撃隊を『加賀』『龍鳳』で受け入れる必要となるが『龍鳳』は小型空母であるため必然的に『加賀』での受け入れが多くなってしまう。

 その為、帰還した攻撃隊で損傷が酷い機体は海没処分又は解体して損傷が軽い機体の修理材料に充てる事になったのである。この一連の作業で二空母は攻撃隊を受け入れるも零戦5機、艦爆13機、艦攻17機を海没処分又は解体するのである。

 それでも二空母は零戦60機、艦爆34機、艦攻25機、艦偵8機を保有しておりもう一撃の攻撃は可能であった。  

 しかし、艦偵の偵察により関少佐の第二次攻撃隊が攻撃した第16任務部隊はそのままスコールの中に隠れて退避していた。そして村田少佐の第一次攻撃隊が攻撃した第17任務部隊も退避していたが空母とその護衛艦艇らしき数隻は第二機動部隊側に向かっていたのだ。

 

「長官、これはもしかして……」

「……恐らくは敵空母に何らかの故障が生じたのだろう。だがこれは、我々に取っては好機だな」

 

 白石参謀長の言葉に近藤はニヤリと笑みを浮かべる。

 

「前衛の第八艦隊に敵空母の位置を知らせろ。第八艦隊は敵空母の位置に急行し……敵空母を鹵獲せよとな」

「はッ!!」

 

 直ちに近藤の命令は第八艦隊に伝えられ三川中将は旗艦『鳥海』の艦橋にて通信紙を一目して笑っていた。

 

「ハッハッハ。成る程な、近藤さんならやりそうな手だな」

「しかし敵空母が至近にいるのは事実です。それに敵空母を鹵獲出来ればミッドウェー海戦の損失も補えると思われます」

 

 笑う三川中将に大西参謀長はそう具申し敵空母鹵獲に賛成していた。

 

「宜しい。では敵空母の海域に急行しようじゃないか」

 

 斯くして第八艦隊は敵空母——漂流する『ホーネット』の海域まで急行したのである。また、護衛艦艇を攻撃するために『加賀』『龍鳳』から第三次攻撃隊(零戦15機 艦爆18機 艦攻18機)が発艦した。

 1450頃に到着した第三次攻撃隊は『ホーネット』に付き添っていた駆逐艦『マスティン』『アンダーソン』を攻撃し2隻とも大破し、2隻はやむを得ずそのまま無人となっていた(総員退去が発令されていた)『ホーネット』を放棄して退避したのである。

 第八艦隊から発艦した水偵は交代交代で『ホーネット』を監視しその位置を第八艦隊に報告した事で第八艦隊は1800頃に無人となっている『ホーネット』を視認したのである。

 

「どうだ? 持って帰れそうかね?」

「『陸奥』からの報告では曳航可能なようです」

「ソイツは素敵だ。GF司令部にも良い土産が出来たな」

 

 大西参謀長の報告に三川中将も笑みを浮かべるのである。第八艦隊は『ホーネット』の曳航を開始しトラック諸島に向かうのである。

 その一方で第二機動部隊も索敵の結果、米機動部隊が撤退した事を確認すると反転しトラック諸島に帰還するのであった。

 

 

 

 

 

 

「『ホーネット』の鹵獲、見事だったな」

「いえ、運が良かっただけですよ」

 

 10月30日、トラック諸島に帰還した近藤は海戦の報告する為に停泊するGF旗艦『武蔵』にいた。

 

「航空機の損失は痛いですがパイロットは出来る限りの救助はしています。それ程の損失にはならないと思います」

「ウム。パイロットは貴重だからな」

 

 近藤の言葉に山本は満足そうに頷く。

 

「それとガダルカナルですが……」

「一応、陸さんが取り返してはくれたが……被害は大きいようだ」

「恐らく、隣のマライタ島に新しく橋頭堡を向こうは築くでしょう。そこを拠点に再度ガダルカナル島を奪回するでしょうね」

「第二師団の交代前にか?」

「交代前にですね」

「……やはりそうなるか……」

 

 近藤の言葉に山本は溜め息を吐く。どうやらGF司令部もその見解だったようだ。はてさてどうするか……二人がそう思案していた時、宇垣参謀長が慌ただしく入ってきた。

 

「た、大変です長官!!」

「どうした? まさかまた帝都に空襲が……?」

「違います!! 交代です交代!!」

 

 宇垣は近藤に視線を向ける。

 

「海軍省が本日付で第二機動部隊司令官を交代する辞令を出しました!!」

「「なッ!?」」

 

 宇垣の叫びに山本と近藤は思わず椅子から立ち上がる。

 

「何をしているんだ海軍省は!? 近藤は代えるなとあれ程言っていたのに……。宇垣、直ちに内地へ行くぞ!! 準備しろ!!」

「は、はい!!」

「……済まない近藤。今はまだ待機していてくれ」

「……分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 近藤のまさかの解任、ガダルカナル島の占領、空母『ホーネット』の鹵獲。戦争はまだまだ終わる気配を見せる事はなかったのである。

 

 

 

 

 

 




第一部完です
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