『近藤信竹の憑依物語』   作:零戦

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第七話

 

 

 

 

 

「成る程。③計画の一部追加か」

「はい。それがこれになります」

 

 後日、総長室を訪れた近藤は宮様に書類を渡す。

 

 

 

『③計画 一部追加』

 

 ・工作艦の建造追加

 ・艦隊型給油艦の整備

 ・量産型中型正規空母の整備

 ・海軍工廠の増設

 ・海防艦の増強

 

「フム、工作艦は②計画で承認された工作艦かね?」

「はい。少なくとも後2隻の建造は必要になると思います」

「……理由はあるのかね?」

「1隻だけで艦艇の修理は間に合わないと判断しています」

「……………成る程」

 

 宮様は近藤の答えにある事が脳裏に浮かんだがそれは直ぐに揉み消した。恐らく目の前にいる少将はそこまでの事態を考えているのだろう。

 

「艦隊型給油艦となると……『知床』型かね?」

「はい。少なくとも20ノットは出せる給油艦の整備が必要かと」

「確かにな。艦隊速度も昔よりは向上しているから必要な事だな。それで量産型空母とは?」

「駆逐艦のような30隻以上の量産とまではいきませんが、少なくとも10隻前後の中型空母の整備をと……」

「中型空母となると……『蒼龍』と『飛龍』か」

「はい。『飛龍』の図面を流用して建造したいと思います」

「フム……それで戦艦はどうするかね?」

「……少なくとも『扶桑』型の退役は免れません。そう国外には欺く必要があるかと」

「欺く……か……それは『一号艦』を?」

「4隻は欲しいですが、資材や工員等の影響はあるでしょう」

「成る程な……。となると海軍工廠の増設も大型艦艇の建造数を増やすためかね?」

「はい。我が国は少なくとも横須賀、呉、佐世保等に集中してしまうので」

「む、確かに……」

「それと海防艦の増強は戦時になった際、外地から内地へ資源物資を輸送する輸送船団の護衛艦艇となります。先の大戦でもドイツのUボートがイギリスの船団を雷撃し多大な損害を与えているのは記憶に残っていると思います」

「ウム、東郷閣下等からそれは聞いている。やはり必要かね?」

「はい。我が国は四方を海に囲まれ石油等の資源は外から頼る事になります。その資源を守る護衛艦艇は必要です」

「ムゥ……分かった。一先ずはその方向で何とかやってみよう」

 

 近藤の言葉に宮様はそう頷くのである。その後、③計画は一部増加される事になる。航空母艦は『飛龍』の設計図を流用した量産型中型正規空母(後の『雲龍』型)が計画され③計画には3隻が増加された。

 工作艦も『明石』型の同型艦2隻が計上され、これにより日本海軍は『明石』型工作艦を3隻保有する事になる。また、新たな海軍工廠の建設として大分県日出町の大神の土地約25ヘクタールを買収して海軍工廠の建設が昭和12年から開始される事になった。

 海防艦も4隻から16隻へと増加し大量生産を目的とした『御蔵』型海防艦が起工されるのである。(後に大量生産として『日振』型海防艦が建造される)

 

 

 

 

 

 

 

「液冷発動機は当面の間、研究目的の使用のみとする」

 

 近藤は発動機でも空冷発動機を主に開発製造をした。これは史実でも液冷発動機の調子が今一つだった事や三式戦闘機『飛燕』が首無し機体から空冷発動機を搭載しての五式戦闘機としての復活を成し遂げた事や彗星が空冷発動機を搭載した事で稼働率が大幅に向上した事例もあったのだ。

 無論、三菱や川崎等は液冷発動機を望んだ。しかし近藤はそれを一蹴した。

 

「なら空冷発動機を完璧にやりこなせ!! 話を聞けば空冷発動機でさえもオイル漏れ等が続出していると聞くぞ!! 話を聞くのはそれからだ!!」

 

 近藤からしてみたら空冷発動機で落ちるのなら液冷発動機でも落ちるのは当たり前であり速度云々よりもそこだった。液冷発動機の搭載を望む三菱や川崎の代表らを無理矢理退出させると塩を撒く近藤であった。

 結果、その後の戦争(支那事変)でも液冷発動機を搭載した航空機(九八式軽爆撃機)が活躍した事例は無く、むしろ発動機不調で出撃出来ない機が多々ある現象が起こってしまうのである。しかし、液冷発動機が活躍するのは航空機ではなく戦車になるのは仕方ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「上海で日中両軍が激突か……」

 

 昭和12年8月13日、まだ第一課長の近藤は上海からもたらされた報告に顔をしかめる。史実通りに上海にて日中両軍は激突したのだ。そして史実では九六式陸攻による渡洋爆撃が行われ指揮官機を含む多数の機を喪失しているのだ。誰だって顔はしかめる。

 近藤は渡洋爆撃の反対に回ったが居留民支援の声に押さえきれずの爆撃であり余りの喪失被害に多くの者は口を閉ざすしかなかった。

 

「だから護衛の戦闘機無しで飛ばすなって言っただろ。せめて空母の近海到着を待てっての……」

 

 報告を聞いた近藤は溜め息を吐いた。反対の立場だった近藤は「せめて空母が近海に到着し護衛戦闘機を飛ばしてから合流すべき」と主張したが戦闘機無用論派もいた手前、第三艦隊司令長官長谷川中将は空母の到着を待たずの爆撃だったのだ。だがその後は長谷川中将も『加賀』の到着を待ってから爆撃を再開、『加賀』飛行隊も攻撃に参加する事で陸戦隊の負担を減らしたのである。

 

(だが何れは全面戦争になり、泥沼化となる……そこは止めなければ……)

 

 近藤はそう思う。しかし、介入を反対した高橋是清(226では助かった)が再び襲撃に襲われ(犯人は不明)暗殺される事件が発生、戦闘は継続され第二次上海事変は元よりその後の南京戦以降の戦闘も泥沼化していく事になるのである。

 

「……人生ままならんなぁ……」

 

 高橋是清の暗殺を聞いた近藤は自宅に帰宅後、グレイスからラム酒を貰い、一人そう愚痴る。それをハンナ達が影から見守る。

 

「……此方もままならんな」

「仕方あるまい。金を司る大臣が暗殺されたのだ」

「……(本当はそうじゃないけどね)」

 

 ハンナとグレイスの会話に零夢はそう思うのである。なお、嫁三人の仲は良好であった模様。

 それはさておき、近藤は11月に大本営海軍参謀兼海軍戦備考査部部員に異動し12月には海軍中将となるのである。その間も近藤は積極的に活動をし兵器の改良型(25ミリ単装機銃やM2 12.7ミリ機銃等)を量産していく。しかし、両用砲の開発だけは難航していた。

 平射砲と高角砲を兼ねるのは確かに魅力的だった。しかし、開発していた両用砲は初速が三年式よりも遅いので(790m/s)水雷屋や砲術屋が文句を言っているのだ。

 

(チッ、分からんアホどもが……)

 

 近藤はそう愚痴るが彼等が首を縦に振らなかったので仕方なく宮様の口添え等により八九式の後継となり『四十五口径九九式十二糎七高角砲』として採用される事になる。また、他の八九式も史実のB1型を元に電動機が10kwから20kwのB1改型として運用されるのである。

 

(取り敢えずは……着々と進めていかないとな……)

 

 近藤はアメリカとの戦争は避けきれないと想定しておりそれに向けての準備は着々と進みつつあるのであった。

 

 

 

 

 




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