『近藤信竹の憑依物語』   作:零戦

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第八話

 

 

 

 

 

 

 1939年5月から同年9月頃にまでかけての、満州国とモンゴル人民共和国との間で国境線を巡っての戦いである『ノモンハン事件』は史実と同じく発生したのである。

 第一次ノモンハン事件は史実と同じく関東軍の敗北となる。そしてその敗北を取り返そうと関東軍ーー第23師団は躍起になり増援を受け関東軍によるタムスク爆撃敢行を皮切りに反撃を開始したのだ。

 『第二次ノモンハン事件』の始まりであった。

 

「今度は新型中戦車を含む部隊も多く投入するぞ!!」

 

 この時、投入された新型中戦車は制式採用されたばかりの九七式中戦車であった。

 

 

 

 97式中戦車(チハ)

 

 全長 6.4m

 全幅 2.5m

 全高 2.45m

 全備自重 18t

 エンジン 統制型97式4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル

 最大出力 240hp/2,000rpm

 速度 42km/h

 武装 57口径57ミリ戦車砲×1

    97式車載7.7ミリ機関銃×1

    97式13.2ミリ重機関銃×1

 装甲 最大60ミリ(車体前面傾斜60°等々)

 

 

【概要】

 

 日本陸軍が開発した本格的な対戦車戦闘を意識した中戦車である。95式軽戦車の開発に成功した陸軍は89式中戦車に後継中戦車の開発に乗り込む。当初は歩兵派閥からの要望で89式と同じく短砲身57ミリ砲を搭載した中戦車の予定だった。しかし、近藤からもたらされた『S情報』により戦車砲は大きく変更せざるを得なかった。短砲身から戦車砲を変更するのは誰もが見解一致をしたがどの砲にするかは頭を悩ませる事になった。

 協議の結果、取り敢えずは長砲身にした57ミリ戦車砲、四一式山砲の砲身を流用した短砲身75ミリ砲、八八式野戦高射砲の砲身(42.8口径)の三つに絞られた。三両の試作車両が製造され実験を重ねた結果、最初に除外されたのが短砲身75ミリ砲であった。

 『S情報』で装甲が75ミリ以上の戦車を開発中というのがあり75ミリ以上又は75ミリ級の戦車砲搭載という形になったのだ。しかし、八八式野戦高射砲の砲身を搭載した試作車両は25トンという重量であり、25トン以上の車両運用は日本内地は元より外地でも運用しずらいのではという声が大きく、代わりに長砲身にした57ミリ砲(48.5口径)は距離1000mで装甲60ミリ貫通という性能であったのだ。これでは到底撃ち抜けないのだが、それでも開発陣達は48.5口径から57口径へ長砲身とし57口径で漸く距離1000mで装甲82ミリ貫通となったのである。

 また、陸軍は海軍に頭を下げて徹甲弾開発の助言を貰ったりしておりそれを元に開発した一式徹甲弾では距離1000mで装甲89ミリ貫通という成績を収めたのである。

 しかしながら陸軍もこれは(57ミリ長砲身)はあくまでも代替案とし改良型は75ミリ戦車砲で決定されチハも砲塔周りも大口径用に耐えれるよう変更されるのである。(これが功を奏する事になる)

 

 

 

 

 

 このチハが戦車第三連隊と戦車第四連隊にそれぞれ12両ずつ配備されノモンハンで実戦を迎えたのである。

 

「チハを先頭に突撃する!!」

 

 戦車第三連隊長の吉丸大佐はチハを先頭にして突撃した。他の戦車も八九式中戦車や九五式軽戦車はいたが追加装甲で速度が低下したりしている(50ミリの追加装甲が成されていた)のでどうしてもチハとは統制が取れなかった。しかし、チハは吉丸大佐らが考えている以上の戦果収める事になる。

 チハは長距離からの砲撃で接近してくるソ連軍戦車ーーBT-7やT-26軽戦車を次々と叩き潰すのである。無論、ソ連軍戦車も黙ってはおらずに砲撃するがチハの装甲は傾斜装甲で60ミリもあるので彼等が砲撃する45ミリ戦車砲弾では貫通する事が出来ずに跳ね返させるという有り様であった。

 

「このまま押し込めェ!!」

 

 吉丸大佐は叫ぶ。少なくともこの瞬間、日本戦車は栄光に満ちていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ局地的に勝ててもなぁ……」

 

 9月20日、近藤は自宅にいた。今はハンナに耳掻きをされておりハンナの膝に頭を置いていた。

 

「ノブ、耳掻きの最中だから今は仕事は忘れた方がいい」

「ま、それもそうだな」

 

 ハンナに耳掻き棒で耳の中をほじられ近藤もそうする事にした。

 

「Mutter(ムッター)、次は私にしてもして」

「ム。良いぞエリカ」

 

 長女であるエリカの言葉にハンナは笑みを浮かべ近藤の耳掻きを続行する。

 

「ふ~っ……ふ~っ……ふ~っ……」

 

 細かい耳垢にハンナは風圧が低い息を拭いて飛ばし耳掻きを終える。しかし、まだ終わってはいなかった。そのままハンナはパクッと近藤の耳を咥えて舌で耳を舐めるのである。

 

「ちゅるっ……ちゅるるっ……ちゅるっ……はい、終わりだな」

「ん、ありがとうハンナ」

「Mutter、次は私、私」

「はいはい」

 

 急かすエリカに微笑むハンナであった。そしてその日の夜、近藤や子ども達が寝静まった0100頃にハンナ、グレイス、零夢は茶の間で酒の会をしていた。

 

「最近、ノブは元気無いな。やはりノモンハンの事が効いているのやもしれんな」

「ウム」

 

 度数が低い日本酒を飲むハンナ、それに同調するようにラム酒を飲むグレイスである。

 

「そうかもしれないけど……私達がどうこう出来る範囲では無いけどね」

「それもそうだがな」

「零夢……何か知ってるのか?」

「……さーて、其処までは分からないわねー」

 

 ハンナの指摘に零夢は片言になりながらそう告げる。無論、ハンナとグレイスは納得していない。零夢の能力の事は近藤からも聞いているので信頼はしている。

 

「ま、良いさ。余達はノッブを支えるのみだ」

「あぁ」

「それもそうね。グレイス、瓶が空よ」

「ん、今日はもう遠慮しとこう」

「珍しいな?」

「お腹にも影響するから少しは控えないとな」

「ッまさかグレイス……」

「あぁ、三人目が出来てな」

 

 驚くハンナにグレイスはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「三人目で漸く勝ったぞクラウツ?」

「クッ、フィッシュアンドチップスがマズイ国が……ッ。こうなればノブに今から夜戦突入で孕ませてもらう!!」

「寝てるんだからやめなさいっての」

 

 近藤が寝る寝室に突入しようとするハンナを零夢が抑えるのであった。

 

 

 

 

 

「ほぅ、あれが十二試艦戦か」

「はい、あれは『栄』を搭載した試作三号機になります」

 

 数日後、近藤は各務原で十二試艦戦の飛行を見学していた。案内役として堀越技師が同行している。

 

「それで発動機は『栄』で決まりですか?」

「はい。『栄』も水メタノール噴射装置付の三一型が出てきてますからね。改良型としても何とか1400馬力級まで上げる予定ですが……」

「恐らく『栄』も三一型で頭打ち……か」

「はい。元は1000馬力級ですので希望的観測になります」

「となると改良型は『金星』ですか」

「航本の人達は『護』にさせようとしていますが……」

「……俺がいなくなったらこれか。堀越さん、改良型は何としても『金星』で手を打たせようとするので改良型は『金星』を元に作成して下さい」

「わ、分かりました。宜しくお願いします」

 

 近藤の言葉に堀越は頭を下げるのである。なお、東京に戻った近藤は直ぐに航本に突撃し十二試艦戦の改良型が搭載する発動機は『金星』で決定する事になる。

 また、18気筒級発動機として『ハ42』『ハ43』『ハ44』『誉』の開発を急がせるのであった。特に『ハ42』と『誉』は至急である。『誉』に関しては完成しつつあったが近藤からの「始動は一発くらいで掛かるようにしろ」との厳命であった。『誉』は史実でも中々掛からない整備員泣かせであり(但し、整備教育に関しては海軍のやり方が悪い。むしろ陸軍の教育のが良かったりする)近藤はその点を気に掛けていたのだ。

 

(まぁ『栄』も三一型が昭和14年で完成しているから何とかなる……かもしれんわな……)

 

 そう思う近藤であった。

 

 

 

 

 

 




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