脱ニート中の元職業軍人の俺が炎の銀兵士に詰め寄られている件   作:ライハイト

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12話 出歯亀根性丸出しのプロキシは必ずや〆る。兄貴の方を

 古びたエンジン音が夜闇に消えていく。

 

 太陽を沈める帷が下りたホロウは軍が管轄するホロウということもあって、その荒れ果てた様相とは対照的になだらかな道のりが続いている。

 

 放棄され人の手はおろか生命(いのち)が近づかなくなって久しく、文字通り死んだ街はその抜き取られた魂を象徴するように色を失い、防衛軍によって後付けされた光源と虚ろの闇が蝕むまん丸の月から放たれる月光が俺達一行を照らす。

 

 ハイビームの光に当てられた景色は等速で後方へと流れ、反射するエーテル結晶の光をハイウェイの街灯のように映し出し視界を眩かせ、隣で油断なく周囲の警戒を続ける11号の顔をホロウの闇の中でもはっきりと浮かび上がらせていた。

 

「そろそろだよな」

 

「ええ、そのまま進んで……それにしても」

 

「ん?」

 

「まさかエンジンの直結が出来たなんて、流石の手腕ね」

 

「運が良かったんだよ。内部の機構がまだ完全に死んでなくて助かった。流石にナビは動かないし、燃料片道分だしなんか変な音するけど最低限動くものとなればそれなりにな」

 

「安心できる要素が一つたりともないのだけれど」

 

「こんなスクラップでも車検通っちゃうんだなぁこれが!」

 

「だから無職だったのではないかしら」

 

 別に不思議でも何でもないだろう。せめてこのクオリティは安牌と言え安牌と。

 

 経年劣化によりボロボロになった車内を見渡す11号に、思わず苦笑いが零れそうになりながらもそう答える。

 

 無論、非正規の人材ということもあって耐エーテル装甲車なんて拝借出来る筈もなく、今こうして走らせているジープモドキに乗っているのは偶然の産物と言う他ない。

 

 ホロウレイダーが伊達に態々この危険地帯であるホロウに居座る理由の一つだ。

 

 それは軍による定期的な巡回と出動によってホロウ内部のエーテリアスを間引きし、ホロウ内部のエーテル活性率を調整し安定させているのだが……こうして放棄された資材の一部が利用できる状態で放置されていることはままある。

 

 時としてもう市場に出回っていないパーツや機械の類が置いてあったりするものだから、一部の後ろ暗い手合いの人間からしてみればまさしく宝の山になったりするのだ。

 

 ……本当にただの宝の山だったら、どれだけ良かったことかと思わなくもないが。

 

「そういうわけだから感知は任せたぞ『パエトーン』」

 

『うーん?』

 

 粉々になり朽ちかけのルームミラー越しに任務前とは思えない賑やかさを放ってる荒れ果てた後部座席に視線を向ける。

 

 そこにはいつものボンプ姿になったリンちゃんが、そのちっちゃな両手で俺のお抱えボンプであるサラとエアリスと楽しそうに戯れてるのがうかがえた。

 

『りょーかい。サラとエアリスも演算の補助、よろしくねー』

 

『ンナ!(りょーかい!)』

 

『ンナ!(りょかい!)』

 

「俺の時より返事のキレが良いのは気のせい?」

 

『きっと舐められてるんだよ』

 

「もう少し歯にモノ着せようか」

 

 せめて逡巡する間くらいくれてやるのが温情じゃなかろうか。

 

 流石パエトーン、流石はクリムゾンアイズ・ハーミット。あまりの口撃力に思わず視界も滲むというもの。

 

 どうしてか、と理由を考えても皆目見当がつかない。

 軍の実験施設があるということで秘匿の意味も込めて広大な土地なだけに要する移動時間を数十分にまで縮めたのは俺の手腕あってのことだというのに。

 

 やはり普段の行いか、普段の行いが悪いのか。

 

「どうかしたかしら、『アビスイン・レッドビーンズ』

 

「こ、コーバスな。なんでもないんだほんとに……それより、何食ってるんだ」

 

「食べる? ビスケットよ」

 

「辛さは」

 

「超辛」

 

「超欲しい」

 

 いかにも軍用らしい無骨な銀の包装紙の中身を聞いて手塩をかけて育てたうちの姉妹からの扱いへの憂いなんて彼方に吹き飛んでしまった。

 

 一瞬こういうところが問題なんじゃないかという俺の冷静な部分が諫めて来た気がするが野暮だ野暮。

 

『なになに、いつも通りのバカ舌?』

 

「それだと11号と同類ってなるだろ」

 

『え? コーバスだからバカ舌なんでしょ?』

 

「はたくぞ」

 

 バカ舌認定はあくまで俺の所為と抜かすかこやつ。

 リンちゃんのあまりにも雑過ぎるくくり方に思わずそんな言葉が飛び出てくる。11号も黙り込むんじゃない。よく聞かなくてもディスられてるのに。

 

 ……まぁそんなことをぶつくさ考えつつも、口元が寂しいのは事実なので貰うには貰うのだが。

 

 だが手を差し出そうにも、手元に見知った感触が来ることはない。

 

 

 もしや差し出したタイミングで惜しくなったかと訝しんでいると――視界に銀の包装紙に包まれたやや赤いビスケットが映り込んだ。

 

 

「口を差し出しなさい」

 

 

「――――」

 

 

『わーコーバス! 白目剥かないで! 前前前!』

 

 ……あまりもの衝撃に一瞬意識が飛んでしまった。

 

 もしかしてたちの悪い夢か何かかと思ったが、経過時間は一秒すら刻んでおらず依然とビスケットを構えたままの11号の姿がそこにある。

 

「運転に集中しなさい。前方にエーテリアスが現れたら私たちは任務前に余計な傷を負うことになるわ」

 

「べ、別にそんな食べさせなくてもいいんじゃ……?」

 

「今の運転を見せられてあなたにハンドルを放せられるとでも?」

 

「………………」

 

「どうしたの、『ドレッドノート・サラマンダー』」

 

「……コーバスなんです俺……」

 

 もはや恒例となった返しにもキレがない。

 

 動揺のあまりブレーキを踏みたくなっている衝動をこらえつつ、半壊したルームミラーへと視線を向ける。

 

 するとあまりにも露骨にニヨニヨしてるボンプと目が合った。合ってしまった。

 

「……プロキシ、ちなみに今だけそっぽ向いてくれてたりとかはー……」

 

『あー、感知が鈍くなるなぁー。運転手さんには早くもとに戻って貰わないとなぁー』

 

 清々しい程の棒読みィ……! わかっちゃいたけどやっぱ後で〆る。兄貴の方を。

 

 いただきます、とどこか食べ物を口に入れるとはとても思えないぎこちなさを醸し出しつつ、一息でそこそこの大きさを誇るそのビスケットを頬張る。

 

 

 無論、味なんて感じられる筈もなく――どこかそわそわしてるような11号の反応の方がよっぽど気がかりだった。

 

「……うま」

 

「そう。よかった」

 

「なにが」

 

「なんでも」

 

 そう言い捨てて11号は窓の外へ顔を向ける。

 警戒態勢は継続中のようだが、そちらは進行ルートとは全く違う方向であることを指摘するのは野暮だろうか。

 

「停めて。そろそろ軍の哨戒範囲に入るわ」

 

「お、おおう」

 

 向けられない顔を覗きたくなる衝動と謎の気恥ずかしさからしどろもどろになってしまう。

 

 今はどんな顔をしているんだろうか、とか。

 

 出来れば自分と同じような反応をしておいて欲しいな、とか。

 

 ……こういうことを誰にでもやるのか、とか。

 

 そんな諸々のことが気になりつつ、11号に言われるがまま車を停止し車外に出ればしたり顔で表情を模った液晶をニヨニヨと歪めるボンプの姿がある。殴れるものなら殴りたい、この笑顔。

 

『まさしく火力鎮圧。丸焦げだねぇコーバス』

 

「喧しいわ……! あんまり揶揄うなよプロキシ、こう見えて繊細なんだぞ……!?」

 

『はいはい、知ってるよー』

 

「こっちよ二人とも。着いてきて」

 

 もうほんと、この仕事を始めてから調子を狂わせられっぱなしである。

 

 この有能過ぎて色んな意味で扱いに困るプロキシもそうだが、極めつけはまたしても何もわかってない顔して平常運転で作戦を遂行する11号の存在だ。もうありがたいのかもうちょっと動じてくれないかなぁなんていうしょーもない同情して欲しさとかでてんやわんやだ。

 

 だが――そのどこか浮ついた気持ちは軍施設の周辺に足を踏み入れた途端に一変した。

 

「……妙だな、人の気配がやけに少なくないか」

 

「そうね……もしかしたら、哨戒組以外の人員は他所に回してるのかもしれない」

 

『ぱぱっと周囲を調べてみたけど、ホロウ活性化の気配もない。11号の言ってる通り良いタイミングを選べたんじゃないかな……なんか出来過ぎな気もしないでもないけど』

 

 人の手が離れて久しいビル群に浮かぶ夜の闇は、影に潜む獣の唸り声のように風を吸い込んでる。

 

 それらが見下ろすように点在するのは真新しい、いかにも後付けしたような列車の車両が朽ちかけてエーテル結晶が生えたバリゲートや機械の残骸と共にところ狭しと敷き詰められている。

 

 11号とプロキシはそうは言うが、俺としては後者の意見に賛成だ。

 

 それに加えてこちらは作戦上においては一部隊にすら満たない単独行動に等しい戦力差というのが実状。

 

 物資的な後方支援も遠隔からの援護も期待できない現状では、人員の安全面を考えれば斥候としてこちらにとって都合の良い言葉を鵜呑みにするわけにはいかなかった。

 

「……サラ、生体探知の精度を念のため上げといて。エアリスは妙な信号を受け取ったらすぐに俺に報告するように」

 

「「ンナー!(異議ありー!)」」

 

「却下する。はよ」

 

 俺の放つ雰囲気が仕事モードに入ったことは察してるであろうにコレである。

 

 それに気になることはそれだけじゃないのだ。

 

 襟元にぎゅうぎゅうと詰め寄って呼吸妨害による猛抗議をしているボンプ姉妹を無視して

 

「それで11号。『モグラさん』の指示は?」

 

「資料の回収後、指定の座標で資料の引き渡し予定となっているわね」

 

 ……座標が滅茶苦茶で地図(キャロット)を定期的に更新しなきゃ歩くことすらままならない、合流なんて行為を鼻で笑うホロウで? 

 

 そんな意味を込めた俺の視線か何かが伝わったのか、応じていた11号もまるで疲れたように重い息を零した。思い出すのもはばかられる、と言った感じだ。

 

「曰く『本物の『パエトーン』ならこの程度のホロウでの合流など容易い筈だ』とのことよ」

 

「強火のファンも考えものだな」

 

「えぇ、まったく」

 

 とはいえ問題点が浮き彫りになっているのも事実。

 

 そのうちの一つは11号の扱い。

 

 これが本当によくない。

 

「信用の担保があくまで『パエトーン』ありきっていうのが痛いな」

 

「……あなたもそう思う?」

 

 やはりこの任務に割り振った上層部の指示は適切とは言えない。

 

 11号がどうの、と言った話ではなく明らかに制圧作戦にて本領を発揮するであろう彼女をこの布陣で采配した指揮官の責任だろう。

 

 よっぽど人数不足なのか、あるいは……いや、これは下衆の勘繰りと言うものだろう。

 

 これまで与えてきた仕事ぶりから11号の素行を鑑みれば、軍を裏切るなんて縁遠いだろうし。

 

「忠義を証明するって言うのは確かに信用を得るには定石手段だけど、『モグラさん』のあの疑り深さだと解釈次第じゃ逆もまた然りって考える可能性もあるから……な、プロキシ」

 

『うーん……まぁ確かに? 11号のこれまでの苦労を思うと簡単に頷きたくないけど』

 

 むしろそのような前提条件でこの騒動の中核を成す人物まで行きつけたのは、ある意味で11号の軍人としての優秀さ故だろう。

 

 不自然な点はいくつもあれど、色々依頼を難航させているのはひとえに『モグラさん』の持つ慎重さによるものだということが伺えた。

 

 ……もっとも。

 

 俺からしてみれば、それほどの任務をどうしてこの段階まで一人で行わせたのだろう、という上層部への不信がどうしても募ってしまうのだが。

 

 考えるだけ無駄だと思っても、どうしても考えざるを得ない。

 

「気がかりなのはそれだけじゃない……特に不自然なのは『モグラさん』が軍でも極秘扱いの兵器の情報をどこで手に入れたか」

 

「……『モグラさん』が只者ではない腕を持つ情報官か、あるいは――」

 

『唆した人がいるかもしれない、ってことだね』

 

 もしかすれば獅子身中の虫なんて結果だってあり得る。

 

 もしその最悪の予想が的中していれば――俺達が今行っていることは自ら死地へ飛び込むことに等しい。

 

「……着いたわ、ここよ」

 

 三人して警戒を更に一段階引き上げていると、目的地は既に目と鼻の先だった。

 

 より具体的に言えば、俺たちが今立っている場所の向こう側。

 

 上空からの映像が確認できない以上正確な構造は表面上でも不明だが、大きな壁が円状に連なり、旧文明における中世の要塞のごとくエーテル合金の壁が基地の周囲を囲っている。

 

 そして目の前には戦車の一撃であっても破れないであろうことを思わせる分厚く堅牢な扉がそびえ立っている。

 

「これはメインゲートの非常ボタンよ。これを押せば――」

 

 かちりとそのスイッチが押される。

 

 するとみるみるうちに扉が――。

 

「……」

 

「……」

 

『……』

 

「…………」

 

 ……何も、起こらない……。

 

「壊れているわね」

 

「テレビをぶっ叩いて直してそうな人って皆同じことを言うよな」

 

「壊れているわね」

 

「大事なことだから二回言った?」

 

「お買い得の喧嘩なら買うわよ」

 

「喧嘩を買う理由がキャベツ並みに安い」

 

 赤い視線が今にも俺を焼き切らんと静かに燃えてる。なんと心苦しいことか。俺なんも悪くないのに。

 

「仕方ない。プランBで行きましょう――烈火!」

 

「待て待て待て!」

 

 剣を掴んで明らかに暴挙に出ようとしてる11号を羽交締めする。

 

 しゅっぼぉ! とか物騒な音をまき散らしながら火炎を纏っているところ悪いがそれプランBという名のぶった切りだろーが!

 

「そもそも既に放棄された実験兵器の管理施設だぞ! 扉の機能の一つや二つ失ってるのが普通だって!」

 

「……何か考えがあるのね?」

 

「適材適所ってことだ。ここは俺に任せろ」

 

「よかった。危うく目の前の社会不適合者を叩き斬るところだったわ」

 

「現場からは以上だプロキシ……! 俺が真っ二つか扉が真っ二つか選んでくれ!」

 

『徹頭徹尾よけいなことしか言わなかったあんたが悪いでしょ……』

 

 まぁ、それはそう。

 

 だがこういった施設の構造には多少の心得があるのは事実だ。

 

 騒ぎを起こすのは俺にとっても11号にとっても本意ではない。スマートに終わらせられるのならそれに越したことはないだろう。

 

 襟元からサラとエアリスを呼び出し、マントの中に仕込んであるケーブルを二人に取り付けたアダプターを突き刺した。

 

「エアリス、メインゲートの解析。警報システムはブロックしておけよ」

 

「ン~……ナッ(ン~……ナッ)!」

 

「答えてそうで答えてない回答は良いから。はよせい」

 

 ンナンナとぶつくさ文句を垂れながら接続用のケーブルを伸ばすエアリスの姿を確認すると共にゴーグルに映し出された解析情報から扉の機能の再起動を試みる。

 

 ホロウというあらゆる物質に消費期限が設けられ、ましてや前後するともなれば耐用年数などという言葉は無きに等しい。

 

 だからこそ、それを想定した緊急用の解錠機能を探り当てる。

 

「……主電源に繋がってる配線がいくつか駄目になってるけど大本の機能は未だに作動してるな……よし、サラは電力供給。こちら側から再起動して開閉機能を補う破損してる配線はお前が補っといて」

 

「ン~ナ~ナ~(ごすじんも働いてよ)」

 

「働いてるわ。ミスってマンション一棟の配線全部駄目にしたの忘れてないからなお前ら」

 

 再就職して一日目でやらかしてくれたこの姉妹の所業を思い出す。

 

 部屋の一つ一つから聞こえてくる電球の破砕音から始まった阿鼻叫喚の作業地獄。

 

 管理人さんの説教により結局俺一人で丸く収めるために徹夜で復旧作業に追われた出来事は克明に俺の記憶中枢に刻まれている。

 

 ほんと駄目よインフラ系の設備は軽はずみに弄ったら。いやマジで。見た目に反して諸々の内容が可愛くないのだこの子たちは。

 

 ……いや、得意分野の戦闘以外のことを任せてしまっている俺も十二分に悪いんだけどさ。

 

「――っと、開けた開けた」

 

 解錠を示すランプが赤から緑に点灯する。

 小さな地響きと共に響き渡る鋼の扉がその重厚感を露わにその内側を晒していく。

 

 正規の手段で開けられるわけもない俺たちは必然的に非常ボタンやらハッキングやらで入るしかないわけなのだが、実際に現実で開かれた眼前の扉には警報や赤ランプといった軍施設において然るべき反応は見られない。

 

 かくして平穏に俺たちは出入りを果たすことが出来た。

 

「ではお二方、こちらへ」

 

「やはり鮮やかな手口ね、とても初犯とは思えない」

 

『特別な道具もないのにその場で対応しちゃうんだもんね。いったいどれだけ人に言えないことしてきたのかな』

 

「褒めるのか貶すのかせめてどっちかにしない?」

 

 気持ちどや顔で案内してみたら、二人して口々に好き放題口にする始末。いい加減泣きそうだ。

 

 だって仕方ないのだ。放棄された施設を利用し根城にするホロウレイダーや、放棄された物資などを求めて侵入するなんてことはざらにある。

 あとは、組織の『内側』において()()()()()()()()()()()()()()

 

 よって俺の前職の内容を鑑みれば、このような技術が必須だったのだ。

 

『11号、指定座標のルート分岐に入ったみたい』

 

「ここからは二手に分かれましょう。手筈通り、脱出ルートも並行して検出してくれると助かる」

 

『私がコーバスに、11号が実験兵器の本体の方だよね。向かいながらルートを構築するから、作業が完了次第連絡お願い!』

 

 そして扉が開いたとなればいよいよだ。

 

 内部に人がいないとは限らないので、ここからは本当にスピード勝負となる。

 

 俺とプロキシが極秘実験兵器資料の回収。

 

 11号が実験兵器の破壊だ。

 

 まさしく正念場と言ったところだろう。

 

「なら11号、渡しておきたいものがある――サラ」

 

 未だに懸念点はある。

 

 だが妥協点を探しそのうえで互いの最善を探るのが今回の俺の仕事だ。

 

 襟元から出てきた赤い玉っころを彼女に向けて差し出した。

 

「サラをキミに預けておく。きっと力になってくれる筈だよ」

 

「……私を信用してないのかしら、なんて聞くのは野暮ね。でもあなたの武装の要でしょう、この子は」

 

「いなくなったら戦えないって? この鞘はエネルギー充填式なんだ。いなきゃいないでそういう戦い方があるから問題ないよ」

 

 目を丸くする11号を前に勝気に笑って見せる。

 

 何よりサラの基本的な役割は戦闘における火力補助がメイン。

 細かい諸々はエアリスが担当しているのだ。

 一部の『執行コード』が使えなくなるが、まぁそれだって誤差の範囲内。戦闘に支障はない。

 

「……あなたの『家族』の扱いを、私に一任すると?」

 

「言っただろ。背中を任せろって。だから俺も預けるさ」

 

「……」

 

『二人とも』

 

 プロキシの声が水を打つように俺と11号の間に差し込まれる。

 

 だが彼女とて熟練の兵士。

 

 ここで判断を鈍るようであれば、この規模の作戦をほぼ単独任務という形で任せられる筈もない。

 

 マントの襟元から飛び移ったサラの赤い体が11号の襟巻に入っていくのを、11号は拒まなかったことが何よりの答えだった。

 

「彼女の出番がこないことを祈るわ」

 

「怠け者のその子にはちょうど良い扱いだよ」

 

 

 

 

 かくして。

 

 

 波乱の予感しかしない作戦が始動した。

 

 

 




サラとエアリスの姉妹ボンプはリナのドリシア、アナステラをもう一回り小さくしたイメージの赤青ボンプ。

赤のほっぺには「+」、青のほっぺには「-」と着いてるのが特徴。それどこのプラマイコンビ?

「ティーネ」「エデ」という別個体を含めて四つ子の姉妹だったがうち半数は既に破損している。
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