脱ニート中の元職業軍人の俺が炎の銀兵士に詰め寄られている件 作:ライハイト
赤熱する鋼の巨人『テューポーン』。
鋼の義肢が獲物を目の前に今か今かと関節を擦り合わせながら躍動の火花を上げている。
劣化とエーテル侵蝕により虫食い状態になった円状のガラス張りの回廊から階下の11号を見据える銃口は赤く光る照準を伴って、彼女の一挙手一投足を見逃すまいと狙いを定めていた。
そんな状況で11号は凍り付いたように、イヤホン越しに届く糾弾の声を聞き届けている。
『よくも俺を騙してくれたな。貴様……否、貴様らは俺が『パエトーン』に抱く敬意を利用し、この純粋な心を踏み
「落ち着いてください『モグラさん』。先程から何を仰っているのです」
――状況は、一言で言えばお話にならない。
『モグラさん』のその言葉に11号は通信を試みるが、いくらチャンネルを切り替えても雑多な音を放っているだけで相方に繋がる気配はまるでない様相に、彼女は歯噛みする。
彼女の本来の所属である防衛軍への緊急用の回線に切り替え連絡を試みるが、それも使えず。
周囲には尋常ではない兵士の数。
正規軍が一人もいない軍基地であった場所は既に罠の張り巡らせられた敵の巣穴のど真ん中。
唯一の頼みの綱である通信は現状の示す通り、『モグラさん』によって完全に掌握されている。
盤面の情勢は火を見るより明らか。
詰まるところ、今回の潜入任務が用意周到に練られた作戦の一部であったことを否が応でも11号は理解させられたのだ。
「……やはり理解しかねます、『モグラさん』。私たちは忠義を示した筈。この仕打ちはあまりにも我らへの礼を欠いているのでは?」
わざとらしい溜息が音声となって11号の耳に届く。
既に作戦は事実上の崩壊。
だが沈黙は完全なる敗北を意味する。
まだ足掻く余地はまだ残されている。そう判断したからこそ11号は会話を選んだ。
それが、なけなしの時間稼ぎにしかならないとしても。
『未だに減らず口を叩く余裕があることは褒めてやろう。だが無駄なことだ――まさかこの段階にまで来てまだ活路を見出そうとは言うまいな?』
直後――轟音。
ここからそう遠くない場所。
11号の脈拍と同期するように立つ場所を揺るがす衝撃に、彼女は身構えた。
だが攻撃開始の気配はない。
連鎖する閃光が赤く、淡い光の中にある実験場を数度照らす。
ただただ、通信越しで愉快げに唸る『モグラさん』の声に、11号の虫唾が奔った。
「今のは複数の爆発……? まさか――」
『そのまさかだ。お前の唯一の援軍であろうあの男が駆け付けられる通路は、今しがた全て爆破して塞がせて貰った――さて、次はどうするんだ。軍人さん?』
影も形もない『モグラさん』が高慢に見下ろす姿を、11号は幻視する。
顔も見えず姿も伺えないというのに、卑しく下賤な笑顔を浮かべているであろうことは容易に想像できた。
次はどうするか。
そんなの、はなから決まっている。
「――基地に駐屯していた正規軍はどうなったのです。放棄されていたとはいえ、まだそれなりの数の兵士が哨戒についていた筈ですが」
11号は生粋の『兵士』。
卑劣とは憤るものではなく利用するものと、理解している。
退けぬのなら進むだけ。諦めるなんて選択など考えるべくもなかった。
――――焦らないで、敵は多い。
――――まずは油断させ、警戒を緩める。
11号の脳裏に擦り切れ、忘却された筈の声が蘇る。
彼女にとっての熱量の源泉。
その執着に、彼女は思わず歯を軋ませる。
だが、それでも。
それでも――11号は己を信じた二人の姿を思い出し、踏み留まる。
今はもう、嘗てとは違う。
私には私のやり方がある。
自分は二人の命を背負っているのだからと、言い聞かせて。
『あぁー、それなら
「……私たちが駆け付けていた頃には、既にこの基地は掌握していたということですか」
『それだけじゃない。貴様らが懇意にしていた『羊飼い』の情報網……既に同業者を買収してそれらは掌握済み。貴様らの悪巧みも筒抜けだったというわけだ!』
だがそれで状況が変わるわけじゃない。
会話を重ねれば重ねるほど、こちらの動きが筒抜けになってしまった事実が露見していく。
そして、決定的な一言が放たれた。
『極め付けはこれだ――『クリムゾンアイズ・ハーミット』の名前に聞き覚えがないわけではあるまい?』
「――――」
もう後戻りのできないことを示す言葉が放たれた、その一瞬。
それは焦躁の故の愚策か、あるいは危機感が故の奇策か。
いっそ悪魔の思いつき的に、『彼』ならどうするだろうと考えた。
軽薄で。
ふざけていて。
それなのに重い言葉を放つ、奇妙な男の振る舞い。
奇しくもそれは当の『モグラさん』を翻弄し、今に至るまで情報を引き出し一時的であるとはいえその懐に入り込むことに成功して見せた。
だからだろう……同僚や参考先の本人すらも『やめとけ』と声を大にして制止するであろうソレを。
持ち前の胆力を以て――臆面もなく実行した。
「――ブラッドレッド……メロディーズ……?」
『……おい待て、なんだその反応、一字一句合ってないが?』
「赤血の……旋律……?」
『誰が訳せと言った!? 小学生の国語の授業か!』
がなり立てる『モグラさん』の言葉に、11号は余人には測れないほど薄く表情を変化させる。
手応えがあったことで、『彼』の言動は決して愚行ではないことが証明された。
敵地の中心で、常に監視の目があったにも関わらず平然と無駄話を続けていた男のソレは、相手の思考を乱し、主導権を奪うためのもの。
やはり、彼は軍人。
軍を離れようとも軍人で居られるということは……少なからず11号にとってこの危機的状況において奮い立たせるには十分すぎるものだった。
……なお、彼――コーバスの言動が半分は素であるというのは言わぬが花と言うものだろう。
「まさか……これも私を惑わすための作戦の一部とでも……?」
『気は確かか! もともとお前の仕掛けだろうが! おいおい、その感じまさか嘘だろ貴様!?』
「意見を言わせて貰えるのなら、同盟にせよターゲットにせよ相手の名前を抑えておけないのは些か問題があるかと」
『今のお前に一番言われたくないわ!!』
「先ほどから何を仰っておられるのですか、『モグラさん』」
『ああああああああぁぁぁ!!?』
『『モグラさん』、先ほどからずっと奴のペースです。音声でも滲み出てくるほど真っ赤です』
荒ぶる『モグラさん』を前に先ほど部隊を指揮していた男の声が差し込まれる。
そして周囲の目があることを思い出したであろう瞬間、通信越しに咳払いが一つ落とされる。
どうやら体裁だけは取り繕うつもりらしかった。
『と、とにかく! 碌に名前も言えないような関係値しか積んでないお前にそのような指摘をされる筋合いはない! その様子だと顔も覚えてるかどうかすら怪しいぞ貴様!』
「それこそ心外です。そんなことはありません。ちゃんと心に刻み込んであります。我が盟友、『カーマインアイス・ハーメルン』のことは」
『だからさっきっから一度たりとも正解を導けてないんだよ! 貴様の答え合わせをしてるんだろうが! まったくアイツと言いなんでこの俺がバカ二人の相手をしなくちゃならん!』
バカ、と言われて11号は一人の顔を引っ張り出す。
逡巡は一瞬。
軍人としては認めよう。その実力も立ち振る舞いも、そうであれば呑み込める。
だが――何事も限度があるというもの。
そして幸か不幸か、この場に居るのは紛うことなき『敵』。
彼女から割と理不尽かつ雑に湧いた激情のぶつけ先には最適だった。
「取り消しなさい、今の言葉……!」
『いわれのない怒りを感じるぞ……!』
『『モグラさん』、今はふざけている場合ではありません』
『黙ってろ隊長殿ォ!! 数時間でもこいつらの相手をしてみろ!! ホロウの侵蝕とか関係なしに画面ごと叩き割りたくなるんだからな! いや割とマジで!』
『部下の目もありますので――何よりあの『烏』を騙る男は既に始末をつけてあリます。あとはかの『11』を確保するだけで良いのです』
隊長と呼ばれた男の一言で、僅かに弛緩していた空気が再びその冷たさを取り戻す。
冗談めいた応酬の裏で、敵の作戦は着実に進んでいる。
ここは敵の庭だ――その事実だけは揺らがない。
そして男の口から放たれた『烏』という言葉。
背中を任せると笑って見せた『兵士』の顔をした青年の背中が、11号の脳裏に浮かび上がった。
『そ、それもそうだな、一番厄介なやつには既に始末をつけてあるわけだし……んっん″……おい軍人さん? 貴様が何度も通信を試みたこの周波数に覚えはあるだろう? お前たちがせっせと仕掛けをしていた盗聴機能付き発信機だよ!』
「それは――」
音声越しに、先日の記憶が掘り起こされる。
無数の銃口が向けられ、あらゆる通信手段を封じられたこの危機的状況で何の脈絡もなく11号の頭の中で蘇った、この任務を始めた時の記憶。
不細工に膨れ上がって原型を留めていなかった、盗聴された情報を抜き取る機能を備えた発信機付きの通信機器。
軽口混じりに取り付け作業を進めていた光景が、つい最近のことなのにまるで古い夢のように思い浮かんだ。
『エアリス、仕込みはしておけよ』
『ンナー』
『そういうなって。はよ』
どうしてそんな会話を思い出すのか、11号にはわからない。
だがそれら口にした男が一体どんな人間だったか……彼女の中には鮮明に焼き付いている。
その言葉は無駄ばかりだが――その行動は決して仕込みを怠らない男だった筈だ。
『今頃あの間抜けは頭のない蠅の如くこの基地内でエーテリアスに貪られているだろうなぁ!』
だがその前に。
11号は『モグラさん』の口にしたことを否定せねばならなかった。
「あら、知らないのね彼を」
『なんだと……?」
「経歴からして元は情報官なのでしょうけど……狙う順番を間違えてるわ」
一歩、大きく踏み出す。
それに合わせて銃口から放たれる赤い照準が11号を捉えるが、彼女はそれでも構わず前進する。
この程度では恐るるに足りないと、証明するように。
「激辛の食べ物は基本的になんでも大丈夫。言葉はふざけてるし行動もそれに引っ張られるように不安定でどうしようもないけど――少なくともあなたよりは兵士とは何たるかをわかっている男よ」
『何を言い出すかと思えば――』
「あと無職であったことを気にしているわ」
『おい』
己の戦友をそのように語るなど片腹痛い。
ほんの僅かな交流。
それでも、これだけ知れることがある。
その程度の存在に奪える命なら、せいぜい奪ってみせろ。
そう高らかに宣言するように、11号は剣を構える。
「それにあなたからは前線に出たこともない肥え豚の匂いがする」
『――簡単には死なない!
敵の激昂と共に11号は背中の剣を引き抜く。
求めた声が聞こえる筈の向こう側は、静かなままだった。
◇
轟音の余韻が残る隠し部屋の一角。
モノが燃える匂いとこれまた嗅ぎ慣れた爆薬の香りが視界に敷き詰められた黒と一緒に満遍なく充満している。
紙片は閃光の名残を火と共に纏う紙吹雪に。
吹き飛んだ瓦礫と一緒に黒焦げになった電子機器の数々がその規模を物語っている。
だがその一部。
俺達が立っているこの場所だけが、かつては白かったであろう部屋の面影を残している現状が異彩を放っていた。
「あっぶなかったな……無事か、プロキシ」
『な、なんとか……』
刃を振り抜けば、灼熱と共に立ち込めた黒い煙幕が二手に分かたれ晴れていく。
黒く焦げた周囲と違い、俺とその後ろで頭を抱えて屈んでいるボンプ姿のプロキシは無傷。
具体的には、炎の痕跡が俺達を避けるように踏みしめる床だけがかつての姿を残したまま、爆破の軌跡を残して無傷のままの白い金属製の床を晒している。
ともすればまるで絵の塗り残しのような光景に、ひとまずはプロキシの無事であるという言葉が事実であることを確認した。
「いやー……久々だったから切り口も投げ方も雑になったな、うん」
『……?』
「……プロキシ? もしかして爆破をモロに喰らったか? もし耳なんかに異常があるんだったら事前に申告してくれ。エアリスを補助につける」
『え? いや、別にどこも痛くはないんだけど……えっと、ちなみに今のどうやったの……?』
「どうって……えーっと?」
どこか現実感のない様子で質問してくる様子から、どうにも先程の攻撃にどう対処したか気になって仕方がないらしい。
答えるのはやぶさかではないが……別に特別なことは何にもしていないわけなんだけど。
リンちゃんなんかは映画を見てたりするからわかるかもしれないのだが――要は雷切的なアレというか、なんというか。
取り敢えずその所感を伝えることにする。
「熱って輪郭があるだろ。揺らいだり波打ったり」
『うん』
「満遍なく均等に行き渡るとビームに出来るんだけど、爆発とか火炎放射だとそうもいかない。必ずその輪郭に綻びが生じるんだ」
『……ん?』
「んで、あとはその通り道を斬ってやればいいだけ」
『……んん??』
……いや説明むずいな。いざ人に伝えるとなると。リンちゃんが二頭身である己の姿を忘れて首を捻っている。絶対キツイだろそれ。
まず肘に力を入れて肩を楽ーに……なんて得物の振り方をレクチャーしたところで余計に混乱させてしまいそうだ。というか今のリンちゃんはボンプだし。
はて、あの人はなんて言ってたか――。
『いいか、術理とはあらやる感覚を言葉や技能に落とし込んだもの。要するに実現できた段階でそれらは本来の姿、より高次元の領域に達する――つまり熟成されたメロンは夕張であれマスクであれ一つの果実として別次元の味覚に至るのだ』
『この変な模様が浮かんだ紫のメロン食べます?』
『いただこう』
――駄目だ、その他のノイズが酷すぎて参考にならねぇ。
まぁこういう時は感覚頼りに限るというもの。雅さんもそう言ってた。
「要はアレよ――見えたら、斬れるだろ」
『えぇ……』
ドン引きされた。
いや、とある剣士の直伝なのだから文句はその人に言って欲しい。というかこれでも肌感では及第点と言った具合で完成とは言い難いというのが現状だ。
その妥協に妥協を重ねたのがエアリスの解析機能の装備という結論だったりする。
あの人が戦闘において直感的に観測してる情報を再定義、再解釈することでデータを集積し最適化を繰り返していった代物。
ジャミングだの解析だのはそれらの機能の副次効果に過ぎないのだ。
『……ってそれどころじゃないよコーバス! ごめん、情報ばっかりに目が行っちゃって肝心の罠に気づけなかった……』
「いいって。俺の体調を気にかけてくれたんだろ? だったら半分は俺の所為みたいだろ――あとは連中の殺意を少し見誤っていた俺のミスだな」
鈍ったなぁ、なんて呟くがもう遅い。
半ば晴れた煙の残滓の中で影が揺れ動く。
そこから覗くのは重く冷たい銃口。
逆手にククリ刀を構え、そんな俺の後ろにプロキシが身をひそめる。
その惨状にらしからぬ緩まった空気を引き締める、冷たくも黒い銃口より放たれる赤いポインタが俺とプロキシの各急所を捉えて離さなかった。
そして煙の中より――大砲が人のカタチを得たような重厚な装備で身を固める歩兵が現れた。
背中に背負ったエーテル燃料がぎっしり積み込まれたタンク。
その横に携えられたその重装甲に勝るとも劣らない巨大な砲身。
火薬が敷き詰められた大樽が如く膨れ上がった鎧は砲台を積んだ人型の小さな要塞じみている。
新エリート防衛軍が現役兵科が一つ、『重装砲兵』。
決して一人のプロキシと小兵に差し向けられるような人材ではなかった。
「今時珍しいな。砲兵なんて役職、敵以外で見たことなかったが」
「妥当な戦力分担、だそうだ。それに見誤っていたのはこちらだ。あの秘密が漏れるようなら早急に始末しろというのが『モグラさん』の指令だが……まさかあの爆破の仕掛けを無傷で凌ぐとはな」
「秘密なら全部吹き飛んだよ。お前らの思惑通りな」
「なら手っ取り早い。あとは貴様らを頭の中にあるものごと此処で始末すれば良い話だ」
砲兵が背後にマウントした砲身を手に取り、その銃口を赤く熱していく。
背中のエーテル燃料タンクが唸りを上げるそれはまさしくエンジンが掛かった機械そのもので、いつでもこちらを迎撃可能だということの証左であった。
『そう……つまり待ち伏せされてたってことね』
「そういうことだ。お陰で貴様らは袋の鼠。くだらない潜入ごっこもここまでだ」
「にしては手厚い歓迎だな、反乱軍。だがこれ以上はやめとけ――死人が出るぞ」
「ほう……それはどっちが?」
「俺だ」
「お前か……」
なんか呆れられてる気がするがそんなもんは些事だ些事。
それに今までのやり取りで数は把握した。
だいたい班編成で五人組が三つといったところだ。
この状況で必要なのは時間と情報。よって、プロキシには敵方の情報を可能な限り共有しておくことがベストだ。
「あぁ、紹介しようプロキシ。装備からして彼らは突撃部隊出身だ。突撃とか名乗ってる癖してナイフよりも手榴弾で相手を吹き飛ばすことに快楽を覚えるこれ見よがしな爆弾魔だよ」
『これ見よがしって言うかどう見たって銃火器を装備してるんだけど……?』
「半分は当たってる。耳が痛い」
『全部当たってるし全部間違ってるんだよ』
気晴らしにリンちゃんとコントを繰り広げるが相手に油断した様子は見られず、それどころかじりじりとその守備範囲を広げこちらが逃げられないように壁へ壁へと追いやっている。
近づくことが出来ない以上、こちらとしては下がるしかない。
「しかしこちらに動きをギリギリまで悟られずに潜入する手腕と、そのような口ぶりをしながら全く油断していないその様子……伝え聞いていたイカレっぷりとは程遠い周到さだな。やはり貴様も軍の差し金だろう」
「あ、俺はもう軍とは関係ないのよ。今は姉のすねかじりを経ていっぱしの無職――誰だ無職って言ったの!?」
『あんただよ』
「伝え聞いていた通りのイカレっぷりだな。さきの爆風で頭をやられたか」
『ごめん、この人ってデフォルトはこれなんだ』
なんでキミが謝る必要があるんですかねぇ、リンちゃん。
一応こいつら敵よ敵。
「な、なんなんですかこいつら……クソほども緊張感がないのですが」
「油断するな馬鹿者。ほぼ単独でこの施設の監視網と警備を掻い潜ったうえで最重要機密をピンポイントで引き当てるコンビだぞ。相当な手練れだということは見てわかれ」
「言われてるぞパエトーン」
『さっきの発言で同類って思われるの凄い嫌なんだけど』
「割とそんなもんだぞキミ」
『△□×~~◐※◇♨*~~×!!!!』
「言葉にしてくれ、わからねェ……」
なんか無職のお前と一緒にするな(被害妄想)なんて言われてた気がしたから反撃しただけなのに……。
だがそんなコントを繰り広げたところで状況が変わるわけでもなく、痺れを切らした様子で銃器より安全装置を外す音が残酷に部屋へ響き渡った。
「降伏しろ。そしてもう一人の同行者――11号の身柄をこちらに引き渡せ。そうすれば命だけは取らないでおいてやる」
「……なんで11号?」
「それをお前に教える義理はないな」
「そりゃそうだ」
あっけらかんとした様子は取りつく島もない。
『モグラさん』の配下にしては随分と油断も隙もない御仁だ。
恐らくはかつて真っ当な兵士だったのだろうが……おそらく今の防衛軍を見て失望した手合いだろう。
その気持ちはわからなくもないのがなんとも。
『コーバス……! 本当にヤバイって……! 11号もこのままじゃ』
「まーまー焦んないで良いよプロキシ。ここは俺に任せろ」
『コーバス……!』
リンちゃんの焦りももっともで、狼狽えていることを示すようにボンプの液晶も揺れてるが、問題ないと笑いかける。
そう、何も問題はない。
なにせ、背後を取られた時点でもう勝負はついている。
「――――降参でござる。
『あんたから逝け!!』
「もう撃ちましょう。プロキシはともかく、まだエーテリアスの餌にした方がやつは使い道があります」
「駄目に決まってるだろうが……いいか、そのまま地面に膝をつけ。武装解除しろ」
ぎゃいのぎゃいのと文句を垂れるプロキシを無視して膝をついて指示通りに武装を放棄する。
ざっと10秒、と言ったところか。
とはいえこんな様だから果たしてあてにして良いものか。頼むぞ未来の俺。あてにしてるぞ数秒後の俺。どれも俺じゃね? ってツッコミはなしだ。
「はいはい。俺としては早く11号のところに行きたいんだけどな」
「気楽だな。こんな時にまで他人の心配とはな」
「そう焦るなよ。すぐに伏せるって――ああ、取り敢えず言っておく」
そうして伏せた、直後。
「――――お前ら、狙う順番を間違えたな」
そして来襲した敵の背後より。
蒼電が室内で弧を描きながら軌跡を作り上げた。