脱ニート中の元職業軍人の俺が炎の銀兵士に詰め寄られている件   作:ライハイト

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16話 ニート化という死神が来なければ働けぬ情けないやつ

 

 ――『混沌』と呼ばれる現象がある。

 

 エーテルで満ちるこの世界で二つの属性が掛け合わせ、一定の領域にまで練り上げられると、その空間にはより高度で、より純度の高い爆発的なエネルギー飽和現象が発生する。

 

 彼方より手繰るは雷鳴の化身。

 

 その手に従えるは猛火の具現。

 

 俺は担い手として、その力を導くだけで良い。

 

「ッ、回避――――!!!!」

 

 ――――9秒。

 

 僅か一秒の索敵。

 背後より迫り来る雷電を捉えた砲兵が叫んだ。その反応と挙動は賞賛に値するがあまりにも遅すぎる。

 銃を構える歩兵に至っては悠長なことに何も気づいていない。

 不可視の秒針が刻まれる絶速の中、ククリ刀を片手に銃口を向ける兵士めがけて突貫する。

 

 炎熱が手に握る刃に灯った。

 敵の背後より迫り来る雷電を纏う黒い鋼と焔が奔る白い鋼。

 今の俺にサラはいない。11号に預け、彼女の助けになってくれていることだろう。

 だが幸いにして炎の『残量』には余裕がある。

 

 だからなんの憂いもなく、炎を象る片翼を全開で振り抜いた。

 

「ぎゃッ――!?」

 

「爆発――ッ!?」

 

 ――――8秒。

 

 再度、轟音。

 爆風が大気を叩く。

 熱の奔流は雷撃と共鳴し、電光は炎の後押しを受けて白む閃光へと至る。

 極限まで研ぎ澄まされた二つの現象は爆圧を伴って次なる階層の現象へと昇華し、その衝撃は澄んだ力場となって刃の振り抜きと共に兵士を吹き飛ばした。

 前方の炎、後方の雷。挟撃として放った斬撃との誤差はコンマゼロ秒にも満たない。

 

 その余波だけで俺達を確実に追い込んでいた包囲網は容易く崩壊した。

 

 だが流石の練度と言うべきか、奇襲作戦の後詰に配置されるだけあってこの速度の中でも俺に銃口を向ける筋の良い奴が数人残っている。

 

「――――!」

 

 認識は一瞬。

 そしてそのまま虚空を掴むようにして腕を手繰り寄せれば――敵の武器がひとりでに次々とその手を離れ、放り捨てられていく。

 

「――っ!!? バカな、()()()()()()()()()()――」

 

 ――――7秒。

 

 けれどもそれすらも遅い。

 勝負は既に()()()()()()から始まっていた。先手を許した以上、ここより先は後手に回ることは許されない。

 

 舞い上がる黒煙を突き破り、回転を伴いながら蒼い電光を纏って飛来するククリ刀を受け取る。

 

 エアリスの解析能力によりこの空間の情報は掌握済み。刃を投げつけた時点で、この場の『磁力』も全て俺の意のまま。

 

 よって、俺の得物はおろか敵の得物すらも、既に俺の手中にある。

 

「ま、まさかこんな――」

 

 ――――6秒。

 

 二条に伸びる炎雷の柱が交差する。

 飛来した刃の勢いを殺さず、双刃を袈裟斬りに振るえば、残す敵影は残り僅か。

 立っている兵士も残り数名。その優勢は影も形も見えず、わが身を襲う劣勢に怯む兵士のみ。

 迷いはいらない。

 慰めもいらない。

 冷徹に、確実に、ただただ敵を駆逐する。

 

 そして視線の先。

 

 この場で唯一俺の動きを捕捉し、照準を疾走する俺の体へ合わせていた砲兵へ突貫した。

 

 ――――5秒。

 

 周囲で転がる味方のことなど考えもせずに飛来する榴弾を斬り飛ばす。

 それはただ()()()()()

 エーテル爆薬を覆い空気との反応から保護している弾郭をなぞるようにして刃を奔らせれば、着弾と共に爆破する仕掛けは作動せず、残るのは重々しい火花が散ると共に無残な静寂のみ。

 そしてそのような形で斬られることなど考えてもいなかったのか、硬直する砲兵の懐に一呼吸の間に飛び込んだ。

 

 火を灯す砲身を斬る。

 脆弱な装甲の隙間を斬る。

 タンクより暴発した光線を斬る。

 大気に触れて化学反応による誘爆を引き起こす前に背部のタンクを斬る。

 

 一つ一つの武装を潰し、屈強な黒鉄の装甲をなます切りにし――最後に鎧のパワーアシストを行っているメイン機構を切り開き、剥きだしにする。

 

「ば、か、なぁ――」

 

 ――――4秒。

 

 砲兵に足で組み付き、片方の刃で固定しドラム缶状の装甲に対して疑似的な首関節を作り上げて即席の拘束技を成立させ、すぐさま雷電を纏う右の刃を逆手に持ち替えた。

 

 動けぬ体に得物を失った丸裸も同然な現状、迫り来る刃と死の予感に顔を引き攣らせる砲兵の顔にもはや戦意はない。

 聞きたいことは聞けた。必要な情報は手に入った。であればその時の敵への対処などただ一つ。

 

 だけど今の俺は『兵士』ではない。

 

 恐怖に身を凍らせる砲兵であった男の様相に構わず――その装甲に逆手で刃を突き立てた。

 

 何度も。

 何度も。

 何度も。

 何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

 

 頬にオイルが飛び散るのを感じ取る。

 エーテルを循環させ赤い光を放つ鋼の甲殻が光を失い、見るも無残な鉄屑へと変わっていく。

 戦車の砲弾すらモノともしない分厚い装甲がたった一振りの刃を前になすすべもなくバラバラにされ、破片や部品がスクラップ同然となって俺の顔の横を次々と通り過ぎて行った。

 

 砲兵の瞳に映る俺の顔は、いっそ機械的なほど無機質なものであったことになんの感慨も抱くことなく――その戦闘は終了した。

 

「――――3秒」

 

 秒数にして七秒。

 

 戦闘と呼べる状況がこの場において、完全に終了した。

 

「おっと、危ない危ない」

 

 砲兵の残骸と共に装甲を纏っていた反乱軍兵士が背中から倒れ伏す寸前に胸倉を掴み……頭を打たないようそっと地面へ降ろした。

 

 構えを解かずに周囲を見渡す。

 混沌により生じた爆風を受けて地面に打ち捨てられた兵士達が一人残らず倒れ伏している。

 残心を維持したまま、再度ゴーグルと接続したエアリスによって周囲の解析。無事なものなど何一つなく、同時に先の仕掛けのような爆弾等の危険物も存在しない。

 

 いるのはボンプの姿で尻もちをついたリンちゃんの姿のみ。

 

「さて、と……無事かプロキシ」

 

『……』

 

 声をかけるが返事がない。

 画面をのぞき込むようにしてこつこつと液晶をノックしてみるが表示された目がぱちくりと開閉を繰り返すばかりで反応らしい反応がない。

 おかしい、攻撃には可能な限り気を使っていたのだけれども。

 

「どうしたんだプロキシ? ラグってるとか? そもそもラグとかいう概念あるのかシステム」

 

『あ、別にないんだけど……その、殺してないよね……?』

 

「そりゃ勿論。でもやっぱあてにしちゃ駄目だったな、うん。だいぶズレた」

 

 半分以上が俺にしかわからない個人的な感想だったことにリンちゃんが小首を傾げている様子に思わず苦笑いが零れる。

 ズレてたというのは戦闘における体感時間のこと。

 ここまで本格的な戦闘は久しぶりだったということもあるだろう。

 相手は武術も武器も使わないエーテリアスや、本格的な武装をしていないホロウレイダー相手ならともかく相手は軍から降りてきた反乱軍。この規模の装備と編隊で組まれるのはやはり脅威だ。

 

 お陰で戦闘時間を多く見積もり過ぎたし、逆に想定と3秒もズレていたのは地味に手痛いミスである。

 

『うーん……普段がアレだからあんまりそう感じないけど……コーバスってやっぱり……』

 

「……? 何が言いたいかはわからないけど、俺の知り合いなら5秒も掛からなかったぞ」

 

『それ比較対象として本当に適切……?』

 

「正体不明のメロンを食って俺だけ腹を下したけど何故かあの人だけ何ともなかったとかそんな感じ」

 

『まず正体不明なものお腹にいれない。ぺってしなさいぺって。帰ったらジャーキーあげるから』

 

「誰が食うか」

 

 まるで毒蛇でも咥えて持ってきたペットみたいな物言いである。メロンっぽかったからいけると思っただけだし……! 

 

 ――ってそんな日常における世にも奇妙な話なんて今は本当にどうでも良いのだ。

 

 それはそれとして、やはり鈍っているというのは隠しようもない事実。

 戦闘における体内時計が3秒も狂っていたという事実は如何にしがたい。つまりはそれだけ自身の体の動きに齟齬(そご)が生まれているということの証明であり、足りない一秒と欲しい一秒をいざという時に計算をミスるなんて事態になりかねないのだ。

 

 とはいえ反省している暇もないのが現実であり現状。

 

 ここは想定より早く終わったことが僥倖であったと今は解釈しておくことにしよう。

 

 それよりも先にやることがある。

 

「んなことよりプロキシ。11号との連絡は?」

 

『今やってる。ジャミングが酷いしこの周波数は……多分この前設置した装置のものかな』

 

「じゃ全部計算づくだったってわけか。時間もない、急いで11号の元へ向かうぞ――失礼!」

 

『ひゃ!?』

 

 ボンプになったリンちゃんを片手に抱えて走る。

 

 やっぱ裏でコソコソしてるやつはろくでもないなホント。ソースは俺。我ながら諸々の工作なりなんなりをしてたという実体験って意味で。

 

『い、いいってコーバス! 走りながらでもナビゲートくらい出来るよ!』

 

「いいから演算に集中してくれ。この活性率なら強力なエーテリアスは近くにはいない。なら出現したとしても移動の片手間で処理していくよ」

 

 ボンプはその形に反して意外と重いことを慮っての発言だろう。

 だが生憎ともっと重いものを知っている、なんて言ったら女の人はまぁ怒るだろう。見えてる地雷を避けない馬鹿はいない。

 

 ……俺は敢えて踏みに行くことに愉しさを覚える度し難い性質を持っているのだが、今はそんなことはどうでも良いのだ。本当に。

 

「エアリス、仕掛けは生きてるな」

 

「ンナンナ……ンナンナ(だいじょうぶ……けど敢えて見逃されてたらわかんない)」

 

「なるほど」

 

 走りながらマントの下に張り付くエアリスにそう確認すると、そんな言葉が返ってくる。

 あの爆破のタイミングとシチュエーションからして、俺達の裏切り……というには語弊があるが、なんにせよ潜入を気取られたことはもはや言われるまでもない事実だろう。

 

 だというのに『モグラさん』からのアプローチは一向にない。

 

 泳がされてるのか、はたまた死んだと思われてるのか。

 

 なんにせよ、俺のやることは決まっていた。

 

「よし、じゃあ手筈通り作動させよう」

 

「……ンナナ?(……いいの?)」

 

「いいんだよ。もとよりこういう場面を想定した仕掛けなんだ。これなら俺に万が一があっても11号は確実に助かる」

 

「……ンナ(……わかった)」

 

 よし。

 これでこの作戦における()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 少なくとも敗走はあり得ない。

 あとは『モグラさん』たちの仕掛けと仕込み次第なところではあるが……あれだけ自信だ。何やら防衛軍ではどうしようもないか、あるいはそれらに比肩する被害をもたらす隠し玉があると思って動いた方が良いだろう。

 

 

 あとは――彼女が五体満足でいることを祈るだけ。

 

 

『――焦らないでコーバス。要はあんたなんだよ』

 

「……ごめん」

 

『いいって。仲間だもん、心配して当然でしょ』

 

 知らずに回転数が上がっていた足を緩める。

 それだけじゃない。さっきの戦闘では狂わなかった鼓動が、今になって跳ね上がってるのがわかる。

 

 ……指摘されてから気づくあたり重症だよなこれ。

 

 まぁ状況が状況だ。無理もない、なんて誰に向けたものかわからない励ましのようなもので己を叱咤することしかできない。

 

 現状、はっきり言って『モグラさん』への怒りがうなぎ登りだ。

 通信不能な環境。

 取り残され孤立した俺と11号。

 袋小路に立たされ頼れる味方現場にいないという状況。

 このシチュエーションだけで嫌でも軍での出来事を思い出させてくれる。

 

 正直、少しでも気を抜けば今でも吐きそうになっている。

 

「……やっぱ労働ってクソなのでは……?」

 

「ンナ、ンナンナンナンナ(あ、今のお姉ちゃんにはそれっぽく報告しておくから)」

 

「馬鹿なことはやめろ! いいのか、俺には八千人の部下がいる!」

 

「ンナンナ?(すぐわかるウソつくのやめよう?)」

 

「情けない弟の醜態をチクる意味があるのか!? 流石にそれはナンセンスだ!」

 

「ンナンナ!(情けないやつ!)」

 

『なーにこんな状況になってもふざけてるのコーバス! エアリスちゃんに迷惑かけない! 取り敢えず11号との通信ネットワークだけ再構築したから! もうすぐ繋げられるよ! だけどそんな長く繋げられないかも!』

 

「いや十分、ありがとう!」

 

 だけど一方的に俺が加害者だと決めつけた件については後でゆっくり話させて貰う。

 

 荒ぶる姉の姿を想像して身震いした己を誤魔化すようにインカムに触れた時――変化は起きた。

 

 

『――を、――応――を!』

 

 

 遠のいていたノイズは徐々にその輪郭を取り戻し、誰かの息遣いが混じり始める。

 響く銃声は一つ二つではない。

 共に聞こえてくる怒鳴り声と、鉄を打ち付けたような金切り音が尋常ではない戦闘状況を証明している。

 

『――――応答を! 聞こえてるなら返事をしなさい!!』

 

 鋭く凛とした、それでいてこちらの非を責める気なんて微塵も感じさせない、ある意味で彼女らしい声がインカムを通じて鼓膜を震わせる。

 

 その声を聴いただけで煮凝りのように胸の中で澱んでいた、重油のような危機感が綺麗さっぱり消え去った。

 

「もしもし11号!? 俺だよ俺! そう俺!」

 

『まるで詐欺師のような応答ね、『ダークローチ・ディメンション』』

 

「だからコーバスだっつの! でも今のなんか新手の詐欺に使えそうだな流れだな――ってそれより状況は把握してる、俺も今すぐそっちに増援に向かうぞ! それまで持ち堪えられるか!?」

 

『……』

 

「――おい、11号」

 

『11号、ちゃんと答えて』

 

 

 銃声だけが響き渡り、乱れる11号の呼吸だけが聞こえてくるという戦闘中ではありえない沈黙。

 

 

 その絶妙な間に全身から嫌な汗が湧き出てきて、首から下げたドックタグを無意識のうちに握りしめた。

 

 

『――いいえ、あなたはそこで退却して』

 

 

「――――」

 

『な、なんで!?』

 

 11号のその言葉に足を止める。

 脳の裏が焼き切れるような怒りでも、心臓を抉られたような悲しさでもない。自分の中のバロメーターのようなものが静かに、中央で停止するような感覚。

 

 通信越しに放たれたその言葉の真意を測るように、感情という心の代謝がここに来て停止する。

 

『状況は最悪よ。実験兵器は既に反乱軍の手中にあった。敵の狙いは私で、あなたを袋叩きにすることだったの。数も装備も火力もこちらが劣っている、だからあなたは少しでも集めた情報を友軍に持ち込んで――くっ!』

 

 ひと際大きな爆発。砲弾か榴弾か何かが近くを掠めたのだろう、ただでさえ不安定な雑音混じりの通信がその爆音よりもたらされる振動によって声すら呑み込んでいく。

 明らかな劣勢に、こうして通信していること自体が相当な無理をさせているというのが否が応でも伝わってしまう。

 

 そんな中で通信を繋げることを優先した11号のことも。

 

「……いや、なんでそうなる。経路の問題ならキミが来た道を俺が辿れば済む話だろ。こっちにはプロキシだっているんだ。迷うことなく駆け付けてやる。というかキミが退却すれば良いんだよ」

 

『無理よ。退路は既に爆破して塞がれている。敵の逃げ道はあらかた塞げてるのだろうけど、私の退路もない』

 

「――――俺に、情報だけ持ってとっととズラかれと?」

 

 無人の通路に響く銃声。しかし人もいないのにそのようなものが聞こえてくるはずもない。

 向こう側で一人、たった一人。

 通信からここには届くことのない迫り来る戦場の気配を明確に感じ取る。

 でもその沈黙はきっと、長く続かない。

 

 イヤホンから伝わる音が途切れ始め、混じるノイズがその量を増してきたからだ。

 

『これは元々防衛軍の払うべきツケよ。あなたをここまで巻き込んだのは間違いなく私の責任。でも、あなたとボンプも機を見て必ず逃がす。必ず――何よりあなたは兵士じゃないの。それをはき違えないで』

 

 この事態は軍の責任であると、その尻拭いをさせられている女がそんなことを口にする。

 

 そう、俺には関係がない。

 軍で培ってきたノウハウをたまたまこんな形で活かせてるだけで、今の俺はあくまで治療の一環でホロウに入り浸る街の修理工でしかない。

 

 俺が果たすべき責任は軍から身を引いた時点で既に果たしている。

 

 だからこそ、これ以上踏み込む道理がそこには無くて。

 

 今の役割を買って出た彼女がそれ以上()()()()()()()()()()()()道理だった。

 

『お願い『コーバス』――私に、市民を護る軍人で居させて』

 

 迷わず紡がれたその名を口にする言葉は切実だった。

 軍への忠義、任務への責任、兵士としての務め。どれも彼女には大切なもので、そのどれかを捨てるかなんて彼女の中ではあり得ない。

 

 だというのに俺は。

 

 こんな、会って間もない碌でなしでしかないこの俺を。

 

 俺を助けたいという想いで、それを11号に捨てさせようとしている。

 

 

『今度こそ――私に護らせて』

 

 

 ――――いや、少し違うか。

 

 いったい彼女は、()()()()()()()()()()()

 

 あなたを護らせて、の意味。

 

 それは昔の部隊の仲間に向けてのものか。

 

 それはホロウ災害か、あるいはまた別の理由で失った家族か。

 

 あるいは――11号すら気づいていない、自分自身の願いなのかもしれない。

 

 

 でもそれは――。

 

 

「――それはもう手の届かないとこに行った仲間に口にする言葉だな」

 

『……?』

 

「勘違いするなよ11号。俺はまだ生きてるし、この任務だって完遂する――まだ俺は、ちゃんとここにいるよ」

 

 色々なものを取りこぼしてばかりの人生。

 尊敬する人からの期待も、愛する家族から向けられた信頼も、友人すらも結果として裏切り続けた男がコーバスという兵士であり、玄飛という人間の正体だ。

 

 なんて、無意味。

 こんな無様を晒すくらいなら殺して欲しいと、生き残った俺は何度願ったかわからない。

 

 

「俺が君でも、きっと同じことをする」

 

 

 だが、それでも。

 

 

 他でもない彼女が護ると言ってくれたおかげで。

 

 

 こうして、譲れないものが出来た。

 

 

「簡単には、退けないよな」

 

 

 手の届く場所で足掻き続ける誇り高き兵士を。

 

 こんな俺でも護ると言ってくれた人が生きている限り。

 

 俺はもう、そんな命を見捨てたりはしない。

 

 

「待ってろ、意地でも一緒に戦ってやる」

 

『『コーバス』……』

 

「だから頑張れ、キミも意地でも生き残れよ――すぐに迎えに行く」

 

『あなたは――』

 

 

 パエトーンが構築した一時的なネットワーク回線が持続時間の限界を迎え、完全に途絶する。

 信号も履歴すらも探知できない。

 

 だがそれでも届いたものがある。

 

 届かせなきゃいけないものがあるのだ。

 

「パエトーン、最短ルート算出。とにかく急ぐぞ」

 

『ルートは進みながら探すよ!』

 

 

 

 もう二度と兵士を――仲間を失わないために。

 

 

 

 

 




ここすきみてニヨニヨしてる情けないやつ、つまり俺や。

同じくらいお気に入りと評価は感謝やね。

そしてアンビーに置いてかれた、裏切られたと思って失望を抱きながらも信じていたい気持ちでぐっちゃぐちゃになってる中で絶対一緒に戦う、迎えに行くって言ってくる脱ニートの言葉を受けたハリンちゃんの心境は如何に。

せっかくだしツイッギーにも意見を聞いてみたい。
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