IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.9

 

 今日は休日。

 珍しく織斑が学園の外へ出掛けていった。

 オレは別にすることが無いので、簪の様子でも見に行こうかと整備室へ向かおうとしていた。

 

「ちょっといいかしら」

 

「ん?」

 

 その途中、簪によく似た人物に話しかけられた。

 扇子を片手に持っていて、『遭遇』と書かれている。

 オレにはこの人物に見覚えがある。

 

「更識……刀奈……?」

 

「ごめんなさい。今の私の名前は楯無なのよね」

 

「そうか。すまない」

 

 楯無という名前は更識家の当主となった者に与えられる名前である。

 オレの時代では、すでに刀奈は楯無の名を受け継がせていた。

 

「……未来人っていうのは本当みたいね」

 

「さすが更識家。情報を掴むのが早い」

 

「お家柄、色んな情報が入ってくるだけで、あなたを調べたかった訳じゃないのよ」

 

 この学園には何人の更識家、もしくはその関係者が在籍しているのだろう。

 今まで知ったのは、簪と本音、そしてその姉である虚といったように、楯無を含めて四人もいる。

 

「で、なんの用だ?」

 

「そうね。簪ちゃんの様子はどう?」

 

 あ、そう言えばこの姉妹、うまくいっていなかったか。

 

「どう、と言われても。今は整備室にいる筈だが」

 

「そういうことじゃなくてね……」

 

「ぶっちゃけた話、姉に対する対抗心はいつも通りだ」

 

「……そう」

 

 出会った直後の勢いはどこへやら。

 今のオレの言葉で一瞬で変貌してしまった。

 寂しそうな顔をしたり、遠い目をしたり、ちょっと笑ってみたり。何を考えているのか、コロコロと表情が変わっていった。

 

「以外と純情なんだな、楯無は」

 

「え? そ、そんなことはないわよ」

 

 妹の様子を聞いて百面相を始めるのは、どこから見ても妹思いな姉である。

 

「こほん。えっと、じゃあ……」

 

「やはり妹と仲良くしたいよな」

 

「う、うん。……もう、何で先回りしちゃうかなぁ」

 

 考えていることが丸分かりだからである。

 

「力になれるかどうかは保証しかねるが、やれることはやってやろう」

 

「ほ、本当!?」

 

 楯無の表情が一気に明るくなる。

 

「か、過度な期待は御免被る」

 

 保証しかねると言った筈だが。

 

「あ、そうだ」

 

 と、楯無は思い出したように言い出した。

 

「シャルル・デュノアって知ってる?」

 

「デュノア?」

 

 デュノアの名前は当然知っている。

 未来でオレが使っていたラファール・リヴァイヴァルはリヴァイヴの後継機だ。

 それに訓練機として優秀なリヴァイヴを作った会社としてデュノア社の名前は有名である。

 たしかこの時代では、デュノア社はまだ第三世代型ISの開発途中で、いまだに発表できずにいるはずだ。

 

「明日、デュノア家のご子息が転入してくることになってるのよ」

 

「ご子息……男?」

 

 それはあり得ない。

 織斑以外で男がISを操縦したという話は、実のところ今から20年後のこと。

 それもその男は国籍は日本。

 デュノア家はフランスの家系だ。

 

「二人目の男性IS操縦者だから、私の家にも情報が来たんだけど。どうも、デュノア家に息子は居ないようなのよ」

 

 織斑勢力のひとりにシャルロット・デュノアという女がいる。

 シャルロットが女であることを偽っているのなら、シャルルと偽るのも自然と言える。

 しかしいったい何故?

 

「しかもその子はフランスの代表候補生でね」

 

 つまり国家レベルで偽っていると言うことに?

 

「いや、わからない」

 

「わからない。っていうことは心当たりはあるのね?」

 

「うむ。しかし確かとは言えない」

 

「それなら仕方がないわね」

 

「すまない。せめて仲直りの件では尽力する」

 

「ん、ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の簪へのアプローチだが、ココアから始まる会話を試みることにした。

 まずはオレ自身が簪との距離を詰めなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、アレは織斑先生……と、誰だ?」

 

 夕食を終えた後、寮に戻ろうとしていた時。

 同じく寮へ向かっている織斑先生と銀髪の少女を見つけた。

 こちらが近付いていくと、向こうもこちらに気付いた。

 

「アロンか丁度お前の話をしていた」

 

「オレの、ですか?」

 

「コイツはラウラ・ボーデヴィッヒ。明日、転入する事になっている」

 

「ボーデヴィッヒ……。ああ、黒兎隊の」

 

 ドイツ軍シュヴァルツハーゼ隊。

 IS操縦者の本格的な育成を表向きに掲げた、条約違反ギリギリの部隊だ。

 そしてラウラ・ボーデヴィッヒはその隊長。

 ドイツの冷水と呼ばれる程の実力者で、コイツもまた織斑勢力のひとりだ。

 

「貴様は一年の中では相当腕が立つらしいな」

 

「いや、オレは只の一般生徒だ」

 

「ボーデヴィッヒ。コイツはこの間の二機の無人機のうち片方をひとりで撃破した実力者だ」

 

「織斑先生!?」

 

「事実じゃないか。私はお前たちは相性が良いと見ているんだが」

 

 オレは元傭兵で、ラウラは軍人だ。

 確かに傭兵として軍から依頼を受けるなどしていたが、それはあくまで商売としての間柄であって、軍属は基本的に傭兵を見下すし、そのせいか傭兵も軍属を軽蔑する奴が多い。

 オレは別に軽蔑するつもりは無いが、見下してくる奴に好感が持てる筈がない。

 ラウラがどんな人物か詳しくは知らないが、いかにも軍人ですという雰囲気が漂ってくる。

 織斑先生が軍人と傭兵の関係を知らない筈がないだろうに。どういうつもりなのか。

 

「ま、まあ。IS学園の生徒としてよろしく。ラウラ」

 

「…………」

 

「ボーデヴィッヒ」

 

「よろしく」

 

 やはり仲良くやっていせる気がしない。

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