IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.11

 

「織斑、模擬戦をしてみないか?」

 

 ラウラに頼まれた織斑との模擬戦。

 中々アリーナでの模擬戦が認められず、ようやく短い時間だけ許可が降りた。

 

「模擬戦って、誰と?」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒとだ」

 

「「「えっ!?」」」

 

 ラウラの名前を出した瞬間、そばにいた連中が声をあげた。

 予想通りの反応ではある。

 そして真っ先に反論してきたのは箒だった。

 

「アニエス、何を考えている。アイツは一夏を敵視しているのだぞ」

 

「それについてはオレとシャルルが立ち会うことにした。シャルルにも話は通してある」

 

 織斑の訓練の一環だと言ったら二つ返事で了承してくれた。

 

「織斑は昨日、シャルルと射撃武器について学んだだろう? 今日は本気で撃ってくる相手に今までの違いを実感してもらう。いいな?」

 

「最近、織斑先生とアニエスの雰囲気が似てきたと思わない?」

 

「そうですわね。特に相手に有無を言わせない所とか」

 

「聞こえてるぞ。鈴、セシリア」

 

 あんな鬼教官と一緒にしないでほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふふふ。待っていた……待っていたぞ、織斑一夏!』

 

「悪い顔してるな」

 

「うん、してるね」

 

 モニターの向こうでは念願の織斑一夏との戦闘がようやく叶うと言って嬉しそうなラウラがいる。

 しかしその笑顔が悪い。

 織斑は勿論のこと、ピットに設置されたモニターで見ているオレとシャルル、そして観客席で見ている箒、鈴、セシリア。更には今回の件の情報を聞き付けて集まってきた女子たち、それら全員が引く程だ。

 

《では、織斑一夏とラウラ・ボーデヴィッヒによる模擬戦を開始します》

 

 オレがいつでもリヴァイヴに乗れるように準備を終えると同時にアナウンスが流れ、それが終了した直後ラウラが動く。

 

「いきなり!?」

 

 シャルルが驚き、次の瞬間にはラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』のレールカノンが火を吹いた。

 

「さあ、織斑。これまでの成果を見せてみろ」

 

 織斑はラウラの砲撃を寸での所で躱す。

 そこから瞬時加速で接近し、雪片を振るう。

 ラウラは雪片弐型の性能をよく知っている筈だ。

 なにせ大好きな織斑教官の使っていた武器の後継型なのだから。

 

「ダメだ」

 

「え?」

 

 織斑は判断ミスをした。

 シュヴァルツェア・レーゲンに不用意に近づいてはいけない。

 それはドイツの第三世代兵器、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)と呼ばれる特殊兵装のせいだ。

 

『な、体が!?』

 

 織斑の顔に驚愕の表情が張り付く。

 突然自分の体がピクリとも動かなくなれば、それも仕方がない。

 これはオレのミスでもあるか。

 いつもの織斑なら、こんな不用意に近づくことはなかった。

 それはオレが相手をよく見ろと教えたからだが、ラウラが織斑を敵視しているように、織斑もラウラに対して何か思うところがあったようだ。

 事実、織斑が瞬時加速をかけた時の目がそれを物語っていた。

 

『やはり貴様も、私とシュヴァルツェア・レーゲンの前では有象無象のひとつでしかない──消えろ』

 

 動けない織斑に、ラウラの砲撃が炸裂。

 次の瞬間、レーゲンから四つのワイヤーブレードが射出され織斑の体に巻き付く。

 

「まずい。行くぞ、シャルル!」

 

「う、うん!」

 

 危険を察知して、オレたちはアリーナへと飛び出す。

 ワイヤーブレードが巻き付いた部位は右腕、左腕、左足、そして首だったのだ。

 絶対防御が発動しなかったということは、巻き付く時は脅威ではなかったということだが、その後まではISも考慮していない。

 ラウラがあのまま攻撃を続けていれば、白式が強制的に量子変換されISスーツを着ただけの織斑が残り、ラウラはその織斑を直接痛め付けることができる。

 クラス対抗戦で鈴がやろうとした『殺さない程度に痛め付けることはできる』とは訳が違う。

 

「ラウラ、やりすぎだ。織斑を放せ」

 

「何を言っている。これは私とコイツの戦いだ。邪魔をするな!」

 

「そうか、では仕方がないっ」

 

 オレは近接ブレードを展開し、織斑に巻き付いたワイヤーを切る。

 首を絞められて気を失った織斑をシャルルが受け止め、急いで離脱していった。

 

「邪魔をするなと言った筈だが?」

 

 取り残されたラウラの目には怒りが籠っていた。

 

「ラウラ、これは模擬戦であって戦争じゃない。よって相手を徹底的に痛め付けることは許されないぞ」

 

「ふんっ」

 

「お前には少しお仕置きが必要だな」

 

 ラウラは織斑を有象無象のひとつでしかないと言った。

 その有象無象とはこの学園の生徒全員を意味している。

 そんな意見を持つ物には当然お灸を据えなければならないだろう。

 

「思い上がるなよ。たかが訓練機で私の相手をするか?」

 

「お前こそ思い上がるなよ。ISの性能差が勝敗を分かつ絶対条件ではない事を教えてやる!」

 

「ならば容赦はしないっ!」

 

 感情的になって突っ込んでくる。

 その動きは至極単純で、カウンターを当てるには簡単すぎる程だ。

 

「ぐっ!」

 

 カウンターパンチをまともに食らい、よろけるラウラ。

 

「仲間内で『政府の犬』と呼ばれる軍人がどれほどの物か見せてもらおうか」

 

 挑発することで相手の激情を買い、相手の動きをさらに感情的にさせる。

 

「そうか。貴様、傭兵か」

 

「元、だがな。今はIS学園一年一組『アニエス・アロン』だ!」

 

 左手にショットガンを構え、ラウラに向けて放つ。

 ラウラは慌てて射線上から出ようとするが、至近距離から放たれた散弾を完全に避けることはできなかった。

 

「くっ、傭兵風情が」

 

 ラウラは軍属でIS専用の部隊の隊長で、それに見合うだけの実力がある。

 お前は織斑千冬に──その強さに憧れているんだったな。

 しかしラウラよ。心得ているか?

 ISは確かに兵器だ。世界最強の力だ。

 だが、それが強さに繋がるとは限らない。

 攻撃力はあくまで攻撃力でしかないのだ。

 お前は間違っている。

 単純に言う強さは軍事的価値と言って大差ないが、哲学的な強さはもっと複雑な物なのだ。

 

「幼すぎるんだ、お前は」

 

 ラウラよ。この言葉の意味がわかるか?

 身体的な幼さを言うなら、オレとお前の年齢は一緒なのだからオレも幼いという事になる。

 オレが知っている強さは──あの人が教えてくれた強さは、今のお前が持っていないものだ!

 

「食らえっ!」

 

 レーゲンの装甲に刃を押し込む。

 しかもそこはレーゲンの特徴とも言えるAICの展開するための機関だ。

 しかし破壊した訳ではない。

 あと1センチ押し込めばAICを展開できなくなる。

 しかしそれは今度の学年別トーナメントに支障をきたすため、オレにはできなかった。

 

「こ、この私が……」

 

「これでも学園の生徒皆が有象無象だと?」

 

 ラウラも今の状況が分かっているのだろう。

 これ以上抵抗することはなかった。

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