IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.14

 

「反則じゃないか?」

 

「いや、そんなことはない」

 

「僕も反則だと思うんだけど……」

 

「…………」

 

 織斑、アニエス、シャルロット、ラウラがそれぞれの配置につく。

 あとは試合開始のアナウンスを待つのみだ。

 

「ラウラはひとりで織斑と戦いたいらしい。安心しろ。前のようにならないようキツく言っておいた」

 

「アニエスってお姉さんみたいだね」

 

「オレはまだ16歳だ」

 

《──それでは、試合を開始してください》

 

 ついにアナウンスが鳴り、第一試合の火蓋が切って落とされた。

 

「「アニエス(シャルル)、そっちは任せた!」」

 

「「了解!」」

 

 アニエスとシャルロットは上空で、ラウラと一夏は地上で戦闘を開始した。

 

「行くよ、アニエス!」

 

「来い、シャルル!」

 

 二人は同時に銃を展開し、引き金を引いた。

 二人が展開したのはどちらもショットガン。

 しかし、シャルロットの物はボルトアクションのいらない連装ショットガン。

 アニエスが一度撃ったとき、シャルロットは三発も撃つことができた。

 単純に武器の構造の差で、その差はどうしても縮められない。

 二人の差はその実力とISの性能である。

 どちらもフランス製のラファール・リヴァイヴであるが、シャルロットのは専用機でラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡとなっている。

 普通に考えれば訓練機が勝てる確率は低いが、それはラウラに対して「性能の差が勝敗を分かつ絶対条件ではない」と豪語するアニエスの実力がそれを凌駕しているのだ。

 

「くっ」

 

 互いに互いの攻撃を躱すが、アニエスの方が難しい分だけ隙ができた。

 シャルロットはそこをアサルトライフルで攻撃。

 アニエスが瞬時加速で射線を逃れながら同じくアサルトライフルを展開したのを見ると、素早くスナイパーライフルを展開して距離を取るシャルロット。

 

「なるほど、砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)か」

 

 砂漠の逃げ水。

 斬り合っていたかと思えばいきなり銃に持ち替えての近接射撃、間合いを離せば剣に変更しての接近格闘。

 押しても引いても一定の距離と攻撃リズムを保ち、攻防ともに高いレベルが安定した戦闘方法。

 シャルロットいわく『求めるほどに遠く、諦めるには近く、その青色に呼ばれた足は疲労を忘れ、綾やかなる褐色の死へと進む』とのこと。

 アニエスの解釈では相手の展開した武装に合わせて、相手に不利な間合いを行き来する戦法となっている。

 シャルロットのこの戦法は彼女が得意とするラピッド・スイッチという技術による所が大きい。

 特に一夏のような攻撃の有効範囲が極端に狭い相手にはとても有効な戦法と言えた。

 

「流石だな、シャルル」

 

「アニエスこそ。訓練機でそこまでやるか、って感じだよ」

 

 シャルロットは焦りを感じていた。

 彼女は以前、アニエスとラウラの戦闘を見ていたが、実際に戦ってみるのとはやはり違っていた。

 戦闘時のアニエスは、近くだと普段とは別人のように見えたのだ。

 普段は毅然としてシャルロットにとって謎の多いアニエスだが、いざ戦闘開始ともなると感覚派と理論派が入り交じったような操縦技術を見せる。

 アニエスは自分の特技を瞬時に見極め、それに対応した戦略を今も頭の中で構築しようとしているのだろうと考えると、シャルロットは背筋に冷たいものが走ったように思えた。

 

「これはあまり長引かせるわけには行かないかな」

 

「どうかな……ふっ!」

 

 アニエスはショットガンを発射。

 シャルロットはシールドを構えて距離を取り、素早くスナイパーライフルを展開する。

 間髪入れずに照準を合わせようとするがその場にアニエスの姿は無かった。

 

「こっちだ!」

 

 ハイパーセンサーがアニエスを捉えていたが、シャルロットの反応速度が遅れて認識した。

 

「うそっ、どうやって!?」

 

 アニエスの手には近接ブレードが握られている。

 交わせるタイミングではなかった。

 

「貰ったぞ!」

 

「しまっ──」

 

 刃がシャルロットのISの装甲を切り裂く。

 そして距離を取ろうとスラスターを吹かすシャルロットであったが、アニエスがリヴァイヴ(カスタム)Ⅱの装甲の一部をがっちりを掴み放さない。

 振り切ろうとブレードを展開するも、あっという間に弾かれてしまう。

 続けて幾度も切り付けられる。

 シャルロットの戦法も、相手との距離が動かせなければ効果を発揮しない。

 

「これで、最後──!」

 

「ああああああっ!!!」

 

 アニエスとシャルロットの勝負が付こうという時、ラウラの叫び声がアリーナ中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は戻り、一夏対ラウラ戦。

 戦況は膠着状態にあった。

 というのも、試合開始直後にシャルロットがアサルトライフルを一夏に手渡していたからだ。

 当たらずとも牽制になればいいと渡した物だが、AICの弱点に気付いた一夏はそれを上手く活用して戦っていた。

 

「バカなっ。こんな短時間で!?」

 

「油断大敵って事だ、ラウラ!」

 

 一夏の撃った弾丸はラウラの動きを制限し、それを補おうとラウラがワイヤーブレードを射出。

 それを打ち落とすだけの技量を持たない一夏だったが、接近して雪片で叩き落とすことはできる。

 

「この私が……」

 

 今、ワイヤーブレードが全て破壊された。

 

「こんな奴に!」

 

 ラウラは一夏の急成長に驚いていた。

 今ならアニエスが一夏のことを買っていたのが分かる気がしたのだ。

 そしてラウラは、自分の慢心が生んだ小さな敗北を感じた。

 

(こんな……こんなところで負けるのか、私は……!)

 

 その瞬間、ラウラの脳裏に最愛の教官の顔が浮かんだ。

 その顔はラウラの憧れた織斑千冬ではなく、ひとりの姉としての織斑千冬だった。

 

(なぜ、あなたはそんな顔をなさるのですか……)

 

 かつてその顔を見たときのラウラは、自分の理想が崩れそうな思いだった。

 だからこそラウラは腹が立った。

 誰よりも強く、誰よりも厳しかった憧れの鬼教官の顔を、嬉しそうに綻ばせる男の顔を見ると心の奥底から激しい感情が溢れてくるのだった。

 

(この感情は何なのだ。邪魔だっ!)

 

 ひどく腹が立つ上に、そのせいなのか攻撃の精度が若干落ちるのは感じていた。

 そしてそれがラウラをまた腹立たせる。

 

(コイツだ。コイツのせいだ)

 

 この溢れてくる激情を払い除けたい。そのために──

 

 

 力が、欲しい。

 

 

 ドクン……と、ラウラの奥底で何かがうごめいた。

 そして、その何かは語りかけてくる。

 

『──願うか……? 汝、自らの変革を望むか……? より強い力を欲するか……?』

 

(言うまでもない。力があるのなら、それを得られるのなら、私など──空っぽの私など、何から何までくれてやる!)

 

 ラウラは何かも分からぬそれに手を伸ばす。

 

(だから、力を……比類無き最強を、唯一無二の絶対を──私によこせ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Damage Level ── D.

 Mind Condition──Uplift.

 Certification──Clear.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《Valkyrie Trace System》──boot.

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