織斑のお陰でVTシステムの事件は無事収拾された。
今回、ラウラ本人にはお咎めはないらしい。
無論、条約に違反していたドイツ軍には面倒事が舞い込むだろうが、自業自得だ。
「お疲れさま、アニエス」
オレは部屋に戻ろうとすると、楯無に待ち伏せられていた。
「オレはほとんど何もしてない。頑張ったのは織斑だ」
「VTシステムについては聞いてるわ。ところで、貴女は今回の件は知らなかったの?」
「いや、知っていたさ。しかし忘れていた。ここの所平和が続いていたからな。だいぶ惚けてきているよ」
惚けていた自分を磨り潰すように、ぎゅっと拳を握りしめる。
「貴女がいなくてもこの事件は起きた。そうでしょ? なら貴女が気に病む必要は無いわ」
「そうだが──」
「あ、私はこれで。ね?」
オレがいい終えるより早く何かに気付いて、楯無が猛スピードで逃げていった。
何事かとその場で呆気に取られていると、その答えはすぐにやってきた。
「アニエス?」
「ん、なんだ。簪か」
「今、話してたのって……」
「ああ、お前の姉だ。今日のトーナメントの件について聞かれたよ」
「そうなの?」
どうしたのだろう。
トーナメントのことについて話していたのは嘘ではないのだし、万が一にもオレは顔に嘘が出るわけでもないだろう。
「さっきチラッと見たとき、アニエスが怖い顔してたから……」
「怖い顔?」
楯無とは普通に話してたし、怖い顔をしていたつもりはなかったのだが。
「今日、何かあった?」
「いや、特にこれといった事はなかった」
それにしても、簪が心配してくれるなんて珍しいこともあるものだ。
いつもISを作っていたからそんな機会が無かったのかもしれないが。
「今日も弐式を作りに行くか?」
「うん。そう思ってたんだけど……」
「うん?」
そっと簪が何かを差し出してくる。
「DVD?」
「うん。私の好きな……アニメ」
「簪はアニメが好きだったのか」
「う、うん」
ちょっと恥ずかしそうにうつむく簪は、とても可愛らしかった。
今なら楯無の気持ちが分かるかもしれん。
以前、お姉ちゃんと呼ばれて甘えられていたと聞いたが、簪の笑顔は確かに母性本能が擽られる気がする。
まだ見たことはないが……いや、オレは同い年なのに母性とはどうなのだろう。
「う、うむ。……では部屋で見るとしよう」
「うん!」
大変嬉しそうだ。
喜んでくれるのはいいのだが、ISの方はいいのだろうか。
その後、簪と二人で色々とアニメを見たのだが……
「ふむ。面白いな、これ」
「でしょ?」
「特に、なんだったか。こう……」
オレはとあるアニメの主人公と同じことをやってみせる。
「フランシスコ・ザビエル!」
「かんちゃーん。あにりーん。いる~」
「「あ…………」」
その場に本音が来て赤っ恥を書いてしまったのである。