「暑い……」
季節は夏。日中の気温が上がり、女子たちが紫外線対策だ水着だ何だと忙しくなる季節だ。
あ、オレも水着を買わなくてはな。臨海学校の為に。
織斑先生曰く『水着が無いなら下着で泳がせるからな』と言った。
男がいる──というよりいつでも、それはダメだと思うのだが。
と言うわけで、簪と二人で買い物に行こうと思ったのだが、彼女は臨海学校には参加しないらしい。
やはりそこにも彼女の専用機が絡んでくるのだった。
簪とオレと本音で頑張ってはみるものの、中々これが難しかったのだ。
仕方がないので、オレは本音の方を誘いに行こうとしたのだが、これもダメだった。
気まずいのだ。
簪と一緒に、彼女が好きなヒーロー物のアニメから感動物のアニメなどを見ていたのだが……いや、これ以上はやめよう。
「仕方が無い。ひとりで行くとしようか」
一緒に買い物に行く友人は他には見つからない。
第一、気を遣ってしまうからだ。
例えば織斑たちは、あの代表候補生たちに気を使ってしまう。
……と、思っていたのだが。
「あれは……?」
オレの目線の先。そこには箒、セシリア、鈴、ラウラの四人だった。
彼女たちはその視線の先にいる織斑とシャルロットを尾行しているようだった。
シャルロットとは言えば、学年別トーナメントの翌日に女子として再編入。
織斑に恋する『オリムラヴァーズ』の一員になったのである。
しかしラウラが織斑に嫁にすると言ってキスをした時は驚いたな。
シャルロットと織斑が大浴場を使ったと聞いて暴走した専用機持ち達を更に暴走させるには十分すぎたのだ。
流石の織斑もキスをされれば気付くのかと思えば、今の目の前の光景である。
よしっ。ひとりでは暇なので絡んでみるとしよう。
「おい、何をしているんだ?」
『ひゃっ──っと、ととっ』
尾行している四人に話しかけると一斉に驚き、一斉にオレを草の陰に引き込んだ。
「み、見つかったらどうするのだっ!」
「そんな事も分かんないの!?」
「尾行する気があるですのっ!?」
「そんなことで戦場を生き抜けるのか!」
順に箒、鈴、セシリア、ラウラと小声かつ物凄い剣幕で起こられてしまった。
「ああ、すまない」と一応謝っておく。
「で、どうなってるんだ?」
織斑とシャルロットのペアは、織斑の性格を考えれば只の買い物なのだろうが、シャルロットはこの状況をデートだと思ってるに違いない。
しかも、二人で一緒に駅に降りた所で手を繋ぎ始める始末。
「どう見てもデートじゃないか」
残念ながら会話の内容まではわからないが、織斑の照れ臭そうな顔と、シャルロットの嬉しそうな顔を見れば一目瞭然だ。
ふたりはどうやら水着を買いに来たらしい。
オレも水着を買わなくてはならないのに、こんなことをしていていいのだろうか。
「……ん?」
シャルロットがこちらをチラッと振り向いた。
そしてオレと目があって目を丸くした。
「とっくに気付かれてるじゃないか」
「分かってますわ。わたくし達はあくまで監視でしてよ」
監視ってなんだ、監視って。
これではデート(?)をしているシャルロットも落ち着けないだろう。
ご愁傷なことだ。
「そうか、アニエスにはまだ話していなかったな」
箒が突然思い出したように言った。
「なんのことだ?」
「私たちは嫁争奪戦において正々堂々と戦うという決定だ」
ラウラが得意気に言っているが、さっぱり意味がわからない。
織斑を取り合っているというのはわかったが、正々堂々の部分が理解不能だ。
「まあ、大体は把握した」
「その為にも尾行ですわよ!」
コソコソと尾行するのが正々堂々なのか。はじめて知ったな。
何をしているんだか、この四人は。
一緒に尾行してしまっているオレもオレだが。
シャルロットは相変わらずチラッとこちらの様子を見る。
と、水着エリアで状況は動いた。
「あれ、一夏どこ行った?」
「試着室に入ったな。シャルロットと一緒に」
『一緒に!?』
確かにオレは見ていた。
オレンジ色の水着を持ったシャルロットが織斑の手を引いて更衣室に入っていったのを。
オレたちから姿を眩ますのと、織斑との距離を縮める二つの意味があると見た。シャルロット、中々やるじゃないか。
とは言え、さすがに試着室に一緒に入るのは教育上よろしくないだろう。
「い、行くわよ!」
「待て、鈴。シャルロットが着替え中だったらどうするんだ!」
「なら、尚更行くわよ!」
「それは流石にまずい──おっ?」
オレの目線の先、そこには二人の人物。
オレにつられて四人もその方向を見る。
「お、織斑先生と山田先生……?」
「ふっ。織斑め」
あの二人も織斑とシャルロットが試着室に入っていったのを見ていたのだろう。
と、織斑先生はおもむろに試着室のカーテンを開けた。
「「……あ」」
「何をしているか、バカ者どもめ」