IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.19★

「アニエスさん、遅かったですわね」

 

 オレに割り振られた部屋には、本音、セシリア、相川が他にいる。

 本音と相川は先に行ってしまったようで、セシリアはまだ部屋の中にいた。

 

「すまない。織斑先生と話をしていた。待っていてくれたのか?」

 

「いえ、アニエスさんが逃げないようにと、箒さんと鈴さんから固く頼まれましたので」

 

「やっぱり、アレを着なければならないのか?」

 

 オレとしてはアレを着ても似合わないかと思うのだが。

 こうなってしまった原因は水着選びを箒、セシリア、鈴の三人に手伝わせてしまったオレのミスだ。

 

「もちろんですわ!」

 

 セシリアは自信満々に微笑む。

 

「実はジャージを持ってきたんだが──」

 

「却下ですわ」

 

「日焼けするのはちょ──」

 

「サンオイルを貸してあげましてよ」

 

「…………」

 

 ダメだ。どんなに言い訳しても即行で打ち返されてしまう!

 

「逃げることは許しませんわ」

 

「ああ、ちょっと待てっ。引っ張るなぁ!」

 

 首根っこを捕まれてズルズルと引きずられていく。

 ハンターによって捕獲された獲物に、成す術はもうないのだ。

 

「鈴さん! まだいらっしゃいますか!」

 

「あ、セシリア。来たわね」

 

 女子の更衣室に着くと、水着姿の鈴が中から出てきた。

 セシリアと引きずられてきたオレを見て、まだ中で着替え途中だった女子の何人かが引いているじゃないか。

 

「やっぱりアニエスは嫌がってたのね。似合うのに」

 

「困ったものですわ。似合いますのに」

 

「で、でも……」

 

「デモもリプレイも無いわ。観念しなさい」

 

「ほ、本当にこんなの着るのか?」

 

 鈴がオレの荷物から買ったアレ──水着を取り出す。

 ビキニタイプの淡い赤はオレの髪の色に合わせたらしい。

 オレは露出を控えるようにリクエストした筈なのに。

 

「ほら、早く着替えますわよ!」

 

「嫌なら手伝ってあげるから!」

 

「わかった、わかった! 自分で着替えるって!」

 

 渋々と、本当に渋々と着替える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、オレがこんな格好をするなんて……」

 

 水着に着替えたオレは観念して浜辺に出てきたのたが、織斑に見られないかと恐る恐る進──

 

「あれ、アニエス?」

 

「ひゃっ!? ──むぐ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 驚いて素頓狂な声を出してしまい、慌てて口元を押さえる。

 

「お、織斑……?」

 

「おう、そうだけど」

 

 み、見られてしまった。織斑に。男に。

 殆ど裸のような姿を男性に見られたのはいつ以来か。

 確か、仲間に着替えを見られた時だ。

 その時はそいつをボッコボコにしてやったが。

 

「アニエス」

 

「な、何だ?」

 

「その……似合ってるな」

 

「…………」

 

 何か言おうと迷っていた矢先にこれか。

 ちょっと乙女心を刺激してくる言葉だが、オレは未来人。

 そう簡単にお前に攻略される程、ちょろい女ではないぞ!

 

「それより、こんな所でどうした?」

 

「セシリアと約束があってな。断るのもあれだし」

 

「セシリアならもうすぐ──」

 

「いーちかっ♪ とぅ!」

 

 織斑の後ろから鈴が走ってきて、飛び上がる。

 流石の跳躍力で織斑の肩に飛び乗った。

 うむ、軽量級は伊達ではないようだ。

 

「うわっ、とと。鈴!? いきなり飛び乗るんじゃねえよ」

 

「おー、高い高い。遠くまで見えるわね」

 

 これが幼馴染みであるが故の遠慮の無さだというのだろうか。

 むしろ鈴だからこそできる芸当と言うべきか。

 

「その歳で恥ずかしくらないのか、鈴」

 

「アニエス、まだここにいたんだ」

 

「織斑に見られてしまったがな」

 

「似合ってるし、いいじゃん」

 

 そういう理由ではないのだが。

 

「え、何か俺に見られたらまずい事があったのか?」

 

「昔、似たような経験をしてな」

 

「「???」」

 

「その時殴ってやった男の顔が甦るのだ」

 

「「ひっ」」

 

 ポキポキと手の間接を鳴らして見せると、ふたりは予想以上に引いてしまった。

 

「そんな顔をするな。織斑にはそんなことはしないさ」

 

 その男は完全に下心丸見えだったからな。

 あのロリコンめ。オレの下着姿を見て鼻の下を伸ばしていやがった。

 その後どうなったか聞きたいか?

 教えてやろう。

 そのロリコンはオレを見るだけで固まるほど『トラウマ』になったのだ。

 

「なんか、その……すまん」

 

「何故謝る。織斑にはそんなことはしないと言っているのに」

 

 自分が唐変木であったことを救いに思うが良い。

 

「それはそうと、鈴。早く降りないとセシリアが来るぞ」

 

「セシリアが? なんで──」

 

「あ、ああ、あ……り、鈴さん。何をしていますの!?」

 

「ほんとに来た」

 

 どうも遅いと思っていたが、なるほど。

 ビーチパラソルを取りに行ってたのか。

 セシリアは織斑と鈴の姿を見て開いた口が塞がらないらしい。

 

「何って監視塔ごっこ?」

 

「ごっこかよ」

 

「そうよ。だって私ライセンス持ってないし」

 

「そりゃそうか」

 

「わたくしを無視しないで頂けます!?」

 

 オレがいるとも付け加えておこう。

 

「織斑。セシリアと約束していたんじゃないのか?」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

「それではさっそく」

 

 セシリアは嬉しそうにパラソルを砂浜に立て、シートの上に俯せになって水着の上の紐を解いた。

 

「これは……」

 

 セシリアの側には高そうなサンオイルが置かれている。

 いや、実際に高級な物なのだろう。

 セシリアの持ち物は大体そんな感じだ。

 

「一夏さん。お願いしますわ」

 

「「はっ?」」

 

 セシリアが織斑にさせようとしている事はわかる。

 この状況を見れば誰でもわかるだろう。

 シャルロットに便乗でもしたのか、セシリアも中々やる。

 

「幼馴染みはここまで積極的にはなれないか」

 

「わ、私だってその気になれば、これくらい……」

 

 自分がやられているのを想像したのか、鈴は顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

 これは当分無理そうだ。

 そうしている内に織斑はセシリアの背中にオイルを塗っていく。

 織斑の顔が赤くなっているのは気のせいではない。

 と、二人の会話にこんなものが上がってきた。

 

「せ、背中だけでいいんだよな?」

 

「ふふっ。よろしければ……ま、前も──」

 

 その瞬間鈴が飛び出した。

 

「あぁ、もうっ! じれったいわね!」

 

 鈴は織斑からオイルの容器を引ったくり、雑にセシリアの背中に塗りたくっていく。

 

「ひゃっ、冷たっ!? り、鈴さん!?」

 

「そりゃそりゃそりゃ……!」

 

 セシリア情報だが、サンオイルは塗る前に手で温めてから塗らないと冷たいのだそうだ。

 鈴はその手間をものの見事にすっ飛ばしていた。

 

「あぁ! もう許しませんわ──」

 

『あ……』

 

 鈴のイタズラに起き上がって拳を振り上げたセシリアだったが、その胸部には水着が装着されていない。

 つまり、上半身丸出しで起き上がってしまったのだ。

 

「…………」

 

 そんなセシリアの姿を見てしまった織斑は先程に増して頬を染め、『俺は何も見てない』と言わんばかりにそっぽを向いている。

 

「い、一夏さん……」

 

「な、なん──だぁ!?」

 

 セシリアの強烈な右ストレート(ブルーティアーズ部分展開済)が織斑を突き飛ばした。

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