IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.2

 

 翌日、簪と共に学食へ向かうが、箒と一緒に食事を摂っている織斑の姿を見て足早に去っていった。

 何があったのか、その様子からはさっぱり読み取れない。

 簪の事でわかった事と言えば、一晩中ひとりでカタカタしていた事だろう。

 何をしているのか教えてもらえず、仕方なくそのカタカタ音を危聞きながら眠りについたのだが。

 

「…………」

 

 それにしても、今日は部屋を出てから妙に視線を感じる。

 辺りを見回すも、それらしい人物はいない。

 すると、感じていた視線がわからなくなった。

 

「気のせいだろうか?」

 

 この学園内でオレを監視する人物などいるはずがない。

 未来人とは言え、オレが無闇に歴史を変えてしまってはオレという存在が危ういかもしれないのだ。

 誰もオレがそんなことを考えてるとは思わないだろう。

 あくまで目立たずに過ごすというのが一番だと思うが、生憎オレは戦争が起こると分かっていて放っておける性格ではないのだ。

 

「このBセットを貰おう」

 

 カウンターにBセットの札を出す。

 メインディッシュがアジの開きという和食のセットだ。

 トレイを受け取り、空いてる席を探していると……

 

「おーい、アニエス!」

 

 織斑だ。しかもその側には箒が。

 

「おはよう、織斑」

 

「おう。おはよう」

 

 ……座ってもいいのか? と箒の方へ視線を投げると、なに食わぬ顔で朝食を食べている。

 なに食わぬ顔で、食べているのだ。

 

「ふむ」

 

「ん、どうかしたか?」

 

「いや、なんでもない。ではお邪魔するとしよう」

 

 少し遅れてしまったので、朝食を早く食べなければ授業に遅刻してしまう。

 箒には悪いが座らせて貰おう。

 

「箒、昨日話したアニエス・アロンだ」

 

「よろしく、箒」

 

「で、こっちが篠ノ之箒。俺の幼馴染みだ」

 

「…………」

 

 幼馴染み、か。これまた定番だな。

 さっきから箒がオレのことをチラチラ睨んでいるのは、オレが恋敵とでも思っているからなのだろうか。

 

「昨日から不機嫌でな。すまん、アニエス」

 

「ふむ……。箒?」

 

「…………」

 

「オレはお前の敵ではない。協力できることがあれば協力しよう」

 

「……そうか」

 

 ほっ。どうやらこちらの意図が伝わったらしい。

 しかし、協力とは具体的にどんなことをするのだろう。

 色恋沙汰は経験皆無なのでさっぱりわからん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、剣道場。

 織斑が箒と剣道で勝負していたのだが試合開始から10分もせずに織斑があっさりと負けた。

 

「どうしてここまで弱くなっている!?」

 

「受験勉強してたから、かな?」

 

「中学では何部に所属していた」

 

「帰宅部。三年連続皆勤賞だ」

 

 ここでひとつ、未来情報。

 歴史が動き出すのは、世界で唯一ISを動かすことのできる男が出現した所からだ。

 織斑一夏は周りに沢山の専用機持ちを侍らせていた為、裏の世界では『織斑勢力』などと言われていた。

 例としてはオレのルームメイトもそのひとりだったのを思い出した。

 そして裏では有名な亡国企業(ファントム・タスク)はIS学園に攻撃を仕掛けていた。

 しかも一度ならず何度もだ。

 初めはIS学園の専用機持ちの中で最も弱い織斑を狙ってISのコアを奪取しようとしたが先手を打たれ、ならば機体ごと奪ってしまおうとしたがこれも失敗。

 そして次に思い付いたのは織斑を殺して奪い取る事だ。

 しかしどれもこれも織斑勢力のメンバーの手によって妨げられる。

 ところが遂に織斑の白式のデータが奪われるといった事態に陥る。

 白式の武装『雪片弐型』の構造が第四世代の物であったこともあって、亡国企業はその技術を予めどこからか建設されていた『黒騎士』というISに導入し、その見せしめながら勢力を強めていくという。

 亡国企業がどのようにして白式のデータを奪うことができたのかは知らないが、ことの原因は織斑の力不足にある。

 オレの目的の為にも織斑には強くなってもらわなければならない。

 

「織斑くんてさあ」

「結構弱い?」

「ISほんとに動かせるのかなー」

 

 ひそひそと聞こえるギャラリーの落胆した声。

 結構弱い、なんて物ではない。

 今の織斑が戦場に立ったら五分と持たない。

 対する箒は稽古を積んできたようで、剣の腕は立つようだ。

 初期の白式の武器は雪片ひと振りだけだったらしいから、彼女との稽古は有意義な物だろう。

 が、しかしひとりだけと稽古をしても意味はない。

 箒には悪いが、オレの目的の為にもここは一肌脱いでみようか。

 

「織斑、肩の力を抜け」

 

「え、アニエス?」

 

「お前は剣道を久しぶりにやるから緊張しているだけだ。体に染み込んだ技術は感覚こそ薄れても動きだけは忘れないもの。体が覚えているとはそういう物だろう」

 

 周りからの女子(特に箒)の視線が少し痛いが、お構い無しにオレは言葉を続ける──しかし、箒がそれを許さなかった。

 

「な、何なのだお前は。私と一夏は幼馴染みで同門だ。故にこいつの剣道は私が見る。お前には関係がないだろう!」

 

「そうか? オレはお前や織斑と同じクラスだし、……そうだな。昨日織斑にはナンパされた身でもある」

 

「なっ!?」

 

『えっ!?』

 

 この場にいる全員がオレの言葉に反応した。

 

「あ、アニエス。だからアレはナンパじゃなくて──」

 

「たしか……『俺たちって前に何処かで会ったことある?』だったか?」

 

 あんなことを平気で言える所が、唐変木である織斑一夏たる所だろうか。

 

「い、一夏ぁ……貴様ぁ!」

 

「ま、待て箒っ。誤解だ!」

 

「問答無用!」

 

 箒は昔はこんな性格だったと『未来の織斑さん』からの情報。

 ばっちり狙い通りだ。

 

「ほら織斑、打ち返して見せろっ!」

 

「えっ、えっ!?」

 

 箒の怒りに任せた一撃。

 確かに速いが直線的で避けやすい。

 

 ブンッ!

 

 風切り音のする振り下ろしを一夏は見事に躱して見せる。

 そして次の瞬間──

 

 バシイィン!

 

 一夏の竹刀が箒の面を叩いた。

 

「……なっ」

 

 箒が面を打たれて正気に戻ると同時に驚きの声をあげた。

 ギャラリーたちは声もあげられない様子。

 

「危なかった……って、アニエス!」

 

「許せ。だが、感覚を少しでも思い出せたんじゃないか?」

 

「ん? あぁ……」

 

 どうやら成果はあったらしい。

 こちらとしてもひと肌脱いだ甲斐があったというもの。

 と、次の瞬間拍手の音が湧いた。

 

「すごい、織斑くん!」

 

「アロンさん、お姉さんみたいだった!」

 

 そんな言葉が飛んでくる。

 失礼な。オレはお前たちと同じ高校一年生だぞ。

 

「ほら、いつまで惚けている。まだ稽古を続けるんだろ、箒」

 

「あ、あぁ。勿論だ」

 

 箒、そして織斑にも同じように促す。

 そして三時間ほど経った頃。

 ようやく稽古が終わった。

 

「ふぅ……つっかれたぁ~」

 

 終わりを告げると、織斑は防具を外すとそのまま床に倒れる。

 因みにギャラリーは一人もいなくなっている。

 オレの何が良くて『お姉さま』と呼ぶのか知らないが、それはつまりこのオレが実年齢よりも老けて見えると。そういうことか?

 

「このくらいで根を上げるなんて、やはり鍛え直さなくてはならんな」

 

「これから放課後は毎日。時間は……今回と同じ三時間ほどでいいか」

 

「え、ふたりとも? それは長過ぎ、っていうかこのペースで毎日は流石にキツい──」

 

「「問答無用だ」」

 

「お前らいつの間に仲良くなったんだよ!」

 

 はて、何時からだろうか。覚えてないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日の事をどこかで知ったのか、簪は一言も口を聞いてくれず、オレは妙に大きなカタカタ音を聞きながら眠りについた。

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