「近距離戦闘と遠距離戦闘の即時切り替え。基本戦略の組み立て直し。それに射撃訓練の追加、新装備の経験訓練と……やる事が多いわね」
楯無に今後の課題を話してみたが、予想通りの反応だった。
「白式の性能の偏りが大きいだけにな」
近接特化型の雪片、そして高火力の荷電粒子砲とエネルギー攻撃を無効化する盾を持つ雪羅。
火力調整が難しい上にどれも燃費が悪すぎる。
こうして楯無と話し合っているだけでは何も解決できない。
「オレなんかより、楯無が教えた方が良いんじゃないか?」
織斑はよく分かりやすいと言ってくれるが、未だに織斑の勝率は二割以下。
初見で戦う相手にはまだ勝ち目はあったが、その後はほとんど勝てていない。
もっとうまく相手の隙を突いて一撃を叩き込まなければならないのに。
「その必要があると見たわ」
「では?」
「ええ、近々接触してみるつもりよ」
「やはり生徒会に引き入れる気か」
「それが一番だと思うのよ。そうだ、アニエスは部活どうするの?」
「オレは……別に考えてない」
ずっと織斑の訓練や簪の専用機に掛かっていて、部活なんてやる暇がなかった。
それに最近はアヴニール・ルーの事もあり、更に忙しくなった。
「部活をやる暇が元より無いんだ」
「よかったら生徒会に来る?」
「いや、まだ保留にしておく」
「そう、残念ね。おっと、もう時間だわ」
そうして楯無は足早に去っていく。
「部活……か。タイムスリップではなくて、異世界転生だったらなぁ」
「はっ? 楯無を?」
楯無が全校集会で織斑一夏争奪戦を宣言してからすぐ後の事。
三年の先輩に「楯無を倒さない?」と勧誘された。
生徒会長、即ち全ての生徒会長の長たる存在は最強であれ。
それがIS学園の生徒会長という肩書きが証明する事実。
不意打ちでも何でも、当時の生徒会長を倒す事ができれば倒した者が生徒会長になるという決まりで、今回の織斑一夏争奪戦を中止及び織斑を入手。というのが三年の先輩たちの魂胆らしい。
「ふむ、学園最強に挑もうというのは面白いですね」
という訳で時間は飛んで放課後。
三年の先輩たち計三人とオレの生徒会長への襲撃が始まる。
標的は職員室から出てきた織斑を待ち伏せ、一緒にアリーナへ向かっている。
こっちの作戦は一人目が竹刀を持って攻撃、これが撃破されれば次の手段として校舎の向かいの廊下から弓で狙撃、これでも駄目なら不意を突いて三人目とオレが突撃。
三段構えの作戦だが、正直どこまで通用するのかは甚だ疑問だった。
「覚悟ぉぉぉぉっ!!」
竹刀持ちが攻撃を開始、反射的に織斑がふたりの間に立つが、それをするりとかわして楯無が扇子を取り出す。
「迷いのない踏み込み……いいわね」
楯無は余裕の表情で竹刀を受け流し、左手の手刀を叩き込む。
竹刀持ちが崩れ落ちると同時に、弓矢が窓ガラスを突き破る。
「こ、今度は何だ!?」と織斑が声を上げた。
楯無の顔面を狙い、次々と矢が飛んでくるが、どれも楯無には当たらない。
「ちょっと借りるよ」
竹刀を蹴り上げて浮かせ、空中のそれをキャッチすると同時に放る。
割れた窓ガラスから投擲されたそれはスコーンと弓女の眉間に当たり、見事撃破した。
「もらったぁぁぁぁ!」
バンッ! と廊下の掃除道具ロッカーの内側からボクシンググローブを装着した先輩が現れる。
ワンテンポ遅らせてオレも出ると、目の前でボクシング女が宙を舞った。
次の瞬間には楯無のソバットがボクシング女をロッカーへと叩き込んだ。
「次っ!」「ふっ!」
楯無が着地すると同時にオレの拳が突き出される。
楯無がそれをいなし、お返しとばかりに左フック。
オレがそれをかわし、続けて迫る右ストレートもかわす。
右ストレートをかわしてすぐ、今度はオレが左アッパー。
楯無はギリギリでかわし、蹴りを食らわせてくる。
すんでの所で防御が成功するが、学園最強の蹴りは並大抵の物ではなかった。
が、まだ余裕はある。
自分が最強であると思っているあのポーカーフェイスをひっぺがしてやらんことには、倒れた三人の先輩に示しが付かないというもの。
「まさか貴女まで出てくるなんてね」
「学園最強と手合わせ願おうか」
「一年最強相手じゃ流石にキツいのだけれど」
「その余裕。気に入らない、なっ!」
容赦無しの蹴り。しかしかわされた。
すると楯無はお返しとばかりに膝蹴り。
オレはそれを受け止め、足払いで楯無の体勢を崩す。
すると位置の問題で、織斑の方を向いたままスカートがめくれ上がる。
楯無はその事実にいち早く気づき、オレから顔を赤くしながら離を取ってスカートを整える。
「スカートは無防備だな」
「貴女だってそうじゃない」
「オレは下にスパッツを履いている。パンツじゃないから恥ずかしくない」
「どこのヲタク理論よ」
ところで意外と簡単に楯無のポーカーフェイスを剥がすことができた。
最強と言えどまだ高校生なのだ。オレもだが。
織斑の方を見てみると、顔を赤くして目を背けていた。
「なんだ、この状況は」
「誰が作り出したのよ」
殺伐とした状況から、一気に桃色の背景が浮かび上がっていた。
「結局、勝負はどうなったんですか?」
恐る恐る織斑が訊ねてきた。
「どう……って」
「今日の所は引く。いつかガチンコで戦ってみたいからな」
倒れた竹刀持ちとグローブ装備を担いで、弓女の下へ向かう。
次回、楯無と勝負するならISを使って勝負したいと思っている。
IS学園生徒最強としてではなく、ドイツ国家代表IS操縦者としてだ。
機会があればきっとその時は来るはずだ。
余談だが、IS学園の生徒には外部の人物を学園に招く事ができるチケットが配られるらしい。
当然オレにも配られるのだが、誰を招こうか迷っている。
IS学園以外での知り合いというと……誰がいたであろうか。
突然ですがストック切れです。
これからは不定期更新になります。