IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.31

 

「ねえ、あの人……」

 

「すっごい美青年。誰が呼んだのかしら」

 

 文化祭当日。始まって間もなく、窓から校門の辺りを見てそんな事を口にしている生徒達がいた。

 オレはそのすっごい美青年──カーリーを迎えに走っていた。

 外に友達がいなかったオレは、初めはマズマを呼ぼうと思っていたが、彼にはどうしても外せない予定があるという事で、以前から学園を見てみたいと言っていた(らしい)カーリーを招くことにしたのだ。

 

「カーリー」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……と、取り合えず学園内を案内しよう」

 

 カーリーは相変わらず無口で、待っている間に女子に話し掛けられても、軽い会釈しか交わしていなかったようだ。

 

「これが学園祭のパンフレットだ。カーリー、どこか行ってみたい場所はあるか?」

 

「…………」

 

 喋らない。

 

「オレのクラスはメイド喫茶になったんだが」

 

「…………」

 

 しかし、喋らない。

 

「ほら、中華喫茶もあるぞ」

 

「…………」

 

 やはり、喋らない。

 

「クレープ食べるか?」

 

「…………」

 

 喋らないで、食べる。

 

「占いの館という物もあるな」

 

「…………」

 

 黙って、入る。

 

「そこは入るのか!」

 

「…………」

 

 黙って首をかしげられた。

 なんというか、シズに一緒にいてほしい。

 ミーから聞いた話だと、カーリーはシズと話す時だけは途端にお喋りになるとか。

 このシスコンめが。お前も唐変木なのか?

 

「あれ、アニエスじゃない。その人誰?」

 

 占いの館を出てすぐ、チャイナドレスの鈴が現れた。

 

「彼はカーリー。ダダリオ・ネクスト社の社員だ」

 

「へえ。よろしく、カーリー」

 

「…………」

 

 背の高いカーリーと背の低い鈴なので、並ぶとすごく身長差が感じられる。

 

「で、アンタたちデートしてるの?」

 

「いや?」「…………(フルフル)」

 

「息ぴったりね、アンタたち」

 

「カーリーを呼んだのはオレだが、始めてここに来たから案内していたんだ。それより、お前は店の方はいいのか?」

 

「私の今日の勤務時間は終了。これから一夏に会いに行く所」

 

「そう言えば、オレの出番ももうすぐだ。すまない、カーリー。オレはこれで」

 

 カーリーは「構う事はない」とでも言いたげに手を上げて首を振る。

 相変わらず無口な奴である。

 ある程度は案内したし、カーリーなら迷う事はないだろう。

 囲まれはするだろうが。

 

「ダダリオ・ネクスト社か」

 

「どうした、鈴?」

 

「ううん、ただマイナーな会社がよく第三世代型ISを開発できたな~って思っただけ」

 

 もしかしたらオレが過去に来たことによる変化かもしれない。

 それでも、オレにとっては有益な変化だった。

 ISによる戦争を引き起こそうとしている人物なら、保身にかけては必要以上に準備をしているだろうと予想ができる。

 きっと専用機がなかったら、オレは訓練機をパクって挑んでいたかもしれない。

 

「着いたぞ、鈴」

 

「すぅ……はぁ……」

 

 鈴は目的地に着くなり深呼吸を始めた。

 

「さてはその格好を見せるために行く気だったな?」

 

「似合ってるでしょ?」

 

「流石中国人なだけあるな。ほら、行くぞ」

 

 中に入るなり、燕尾服の織斑がそれはもう忙しそうに店内を駆け回っているのが目についた。

 しかも接客のひとつひとつに真剣にやっているようで、クラスメイトたちから受けた執事の心得をしっかり守りながら駆けずり回っている。

 

「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」

 

 近くにメイドもいるというのに、忙しそうな執事を態々指名する鈴である。

 

「何してるの、お前……?」

 

 織斑が気付き、振り向く。

 そう言えば、鈴と織斑を並べて見るとあるアニメのキャラクターが思い浮かぶな。

 二足歩行型のロボットのアニメだ。施設武装組織のエージェントの兄妹である。

 写真でも取っておこうか。簪に見せる……のは、いいか。

 

「さて、オレも仕事、仕事と」

 

 因みにオレの仕事も接客である。

 メイド服に身を包み、他に客の列の対応だったりだが、主にウェイトレスだ。

 と言うのも、主な接客は織斑が事実上担当している。

 殆どの客が織斑執事を指名するため、回転率の悪いこと悪いこと。

 

「どこかにブロンドの貴公子でも居ないものか」

 

「残念。今日の僕はメイドさんなんだ」

 

 着替えるためにやって来たスペースからシャルロットが現れた。

 シャルロットの言う通り、今日の彼女は執事ではなくメイド姿だった。

 

「おう、似合ってるな」

 

「えへへ、一夏にもそう言われたんだ。で、貴公子だって?」

 

「いや、シャルルがいれば織斑も楽になるし、店の回転効率も上がるんじゃないかと思っていたんだ」

 

 実は出し物を決めるとき、織斑の他にシャルロットが執事になる案も出たが、その時のシャルロットの断りようが凄かった為、やむ無く織斑だけが執事になったのだ。

 

「アニエスがやれば良いじゃない。前に見たアニエスかっこよかったし」

 

「知らない。覚えてない」

 

「シャルロット~、アニエス~。早く接客お願い~」

 

「はーい、今行くよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーむ、織斑が居なくなってから、少し客足が遠退いたかな」

 

「まあ、仕方ないわよね。一夏くんが目当てで来る人がほとんどだろうし」

 

 オレが仕事をし始めてから少し後のこと。

 楯無が来て織斑が店を出ていった。

 

「アニエスの店番の時間もうすぐ終わるけど、もう上がってもいいよ?」

 

 クラスメイトのひとりがそんな事を言い出した。

 

「あのイケメンの人、もしかして彼氏?」

 

「いや、ただの知り合いだ。……まあ、その申し出は有り難いな」

 

 と、いう訳でオレの勤務時間は少し短めに終わった。

 織斑はどこへ行ったか分からないので、カーリーを探してみるのも──

 

 ピピピピ……

 

「うん? メールだ」

 

 ケータイを取り出してみると、カーリーからのメールのようだ。

 

 

 今日はこれで帰る。シズや他の皆にもいい土産話ができた。

 招待してくれてありがとう。

 

 

 と、書いてある。

 

「そう言えばカーリーの肉声ってまだ聞いたこと無いな」

 

 あの顔からどんな声が出るのか、かなり興味深かった。

 とは言え、カーリーが帰ってしまったのなら、オレのこの後の予定はどうしようか。

 

「そうだ、鈴の店に行って──ん?」

 

 二組の中華喫茶にでも行こうと踵を返したところ、明らかに挙動不審な男を見つけた。

 周囲の女子に目移りしているように見えるが、道に迷って戸惑っているようにも見える。

 

「おい、そこの男子」

 

「えっ、男子って俺か?」

 

 頭にバンダナを巻いた赤毛の男。

 誰かに招待されたのだろうが、誰にも案内されている様子はない。

 

「どうした、迷ったか?」

 

「い、いや。別にそんな事は──。えっとお名前は?」

 

「ん? オレはアニエスだ」

 

「俺、五反田弾って言います。ええ、実は迷子でして。良かったら学園内を案内していただけませんか!」

 

 弾はその後すぐに「うおぉ! 言ったぞぉ!」と小声で叫んでいるが、オレには丸聞こえである。

 

「まあいいか。よし、ついさっき暇になったんだ。案内してやる」

 

「おぉ! やったぁ!」

 

 いちいち反応がオーバーな奴だ。

 しかし、なんで敬語なんだ? こいつ、俺と同い年だろうに。

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