IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.34

 

 ~SIDE:Ichika Orimura~

 

 最近、アニエスの元気が無い。

 先日アニエスの服を買いに行った後からだろうか。

 何があったのか聞いても教えてくれない。

 絶望とかじゃなく、憂鬱や葛藤か何かだと思う。

 とにかく放課後の訓練の時によく上の空だったり。しかし、成績やISの稼働データはこまめに送っているらしく、さすがアニエスだと言える。

 

「おーい、アニエスー!」

 

「…………」

 

 またしても上の空だ。毎日少しずつ酷くなってきている気がする。

 今日は第六アリーナ手間高速機動実習をする事になっていて、追加装備なしの組は俺と箒とアニエスの三人なので相談しろとの織斑先生の提案である。

 やがて織斑先生に注意されたアニエスがやって来る。

 

「すまない。考え事をしていた」

 

「出力調整か? アニエスはどういう風にするつもりなんだ?」

 

「オレは全出力をスラスターに回す。こんな感じでな」

 

 そう言ってディスプレイを見せてくるアニエスだったが、俺とその隣にいた箒は目を疑った。

 アニエスの専用機、アヴニール・ルーは元から高機動型であるにも関わらず、ロックキャノンに回すエネルギーを全てアヴニールのスラスターに回しているため、飛んでもない出力を生み出していた。

 普通の人間が扱える代物ではない。それだけはわかった。

 

「アニエス。いくらなんでも、これはやりすぎではないか?」

 

 箒が心配そうに尋ねるが、アニエスは首を横に振った。

 

「アヴニールの利点は速さと身軽さだ。これくらいピーキーな仕様の方がいい」

 

 物には限度というものがあると思うのだが、アニエスはあれだろうか。織斑先生と同じレベルの人間じゃないのだろうか。

 

「織斑……」

 

「な、何だ?」

 

「いや、やっぱりいい」

 

 アニエスはアヴニールを纏って、俺たちから離れた。

 キュゥン…… と甲高い音と共にアヴニールのスラスターに火が付き、次の瞬間に砂ぼこりを上げて爆発する。

 

「アニエス!」

 

「一夏、上だ」

 

 見ると、アニエスの姿は一瞬にして上空に舞い上がっていた。

 先程の爆発はアヴニールの高すぎる出力のせいだったらしい。

 しかし事故というわけではなかったのだから、とてつもない性能だ。

 

「あれがアヴニールの性能か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アニエス」

 

「ん、織斑か。どうした?」

 

「どうしたじゃない。最近のアニエスは元気が無いけど、どうしたんだ?」

 

「別に、ちょっと不調なだけだ」

 

 本当に不調なだけだろうか。

 今までは頻繁に放課後の訓練にやって来たのが、最近になってめっきり来なくなった。

 まあ、アニエスにも用事があるのだろう。それは別にいい。

 俺が気になっているのは、アニエスの最近のISの操縦が、俺の目からでも分かるくらい荒くなってきている事だ。

 今までのアニエスの操縦は、大胆かつ繊細というか、大雑把に見せ掛けて実は計算されているというような感じだった。

 なにより、普段の操縦ではISを労るようなアニエスが、最近は投げ槍になったかのような操縦をする。

 これはもう、不調というよりは何かを諦めたかのようにも見える。

 

「キャノンボール・ファストまで時間が無いだろう? 早くお前も白式を仕上げろ」

 

「……アニエス、今日時間あるか?」

 

「ああ、忙しい」

 

「……そうか」

 

 アニエスはそうして去っていった。

 本当にどうしてしまったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれのISのスラスターが甲高い音を上げながらカウントダウンを待つ中、一際小さいアニエスのアヴニールは前屈姿勢で待機していた。

 これはアニエスがクラウチングスタートの姿勢でいるからで、それを観客や来賓、レースの相手までもの視線を集める。

 3……2……1……スタート! と同時にアニエスが飛び出す。

 それを追ってセシリア、鈴……と列ができるが、やはりアニエスに追い付ける物はいない。

 瞬発力、機動力を他よりも遥かに上回るアヴニールはあっと言う間に第一コーナーを曲がり、後方を突き放す。

 アヴニールは小さい体のためスリップストリームを仕掛けられる心配はない上に、スラスターの出力が圧倒的であるゆえにそれを許さない。

 

「行かせませんわ!」

 

 セシリアがライフルを構える。

 このレースでは妨害あり。ただ速いだけでは勝てない。

 しかし、それはアニエスも重々理解している。その上での先行なのだ。

 セシリアの正確な射撃がアニエスを襲うが、アニエスはまるで背中に目があるかのように易々と避けながら、アヴニールを加速させた。

 それを見て鈴がセシリアに加勢するが、結果は変わらない。

 後方より遥か先を行くアニエス。

 観客の誰もがアニエスの圧倒的勝利を確信した瞬間、突然アニエスがコースアウトした。

 ピットの扉に一直線。しかし、すぐに出てくる。

 その手にはロックキャノンを持っていた。

 アニエスは一度コースアウトしてしまったので、失格となるのだが、アニエスはそんな事はどうでも良いという風に、再び空を飛ぶ。

 そして次の瞬間、アリーナ中の警報が鳴り響いた。 

 




多忙のため次回はさらに遅くなるかもしれませんが、投稿していくつもりです。
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