IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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ISの10巻がやっと発売されましたね。
さっそく読みましたが、今回で欠けた歯車の先の展開がドバッと思いつきました。
はやくシリアスを抜けて進みたいです。
ってな訳で、今回は短いですが、近々アヴニールをパワーアップさせる気でいますので、よろしくお願いします!


Episode.38

 

 ようやく、簪が織斑とパートナーを組んだ。

 何やら事故があったらしいが、それが原因で整備科の協力を仰ぐことを決心したらしい。

 これでオレのやる事はなくなった。

 後は歴史通りに打鉄弐式が完成して、簪が織斑に惚れて、タッグマッチ戦にやって来る無人機を撃退する。

 オレの役目はイレギュラーの排除。

 絶対にこの学園を、織斑達を守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、なんとかなったな」

 

「うん……。みんなのおかげ……」

 

 整備科の先輩たちに手伝って貰い、打鉄弐式はようやく形になった。

 ただ、マルチロックオンシステムだけはどうにもならず、タッグマッチ戦には通常のロックオンシステムで挑むことになった。

 稼働テストを終え、着替えに戻ろうと二人で歩いている。

 そこで、この数日間でだいぶ仲が改善された織斑くんに、私はルームメイトの事を相談してみた。

 

「アニエスか。確かに、なんか元気ないんだよな」

 

 訊ねても誤魔化されると付け加える織斑くん。

 私が聞いても同じだと教えると、二人してどうにかアニエスを元気付けられないかという話になった。

 

「そもそも、なんでそうなったか、だよな」

 

「心当たりは?」

 

「うーん、キャノンボールファストの時にはもう何か変だった気がする」

 

「確かに……」

 

 確か打鉄弐式がキャノンボールファストに間に合わないという話をした日だ。

 私服を買って帰ってきたときには、何か思い詰めていたような気がする。

 何かがあったとすれば、その時。

 そう言えば、その時に織斑くんも一緒だったのでは?

 その事を織斑くんに訊ねてみた。

 

「あの時かぁ。確かにあの日が境だったかもな。そう言えば、アニエスが途中でどっかに行っちまったんだよ」

 

「……なんで?」

 

「わからない。でも、俺たちと別れた後に何かがあったのは間違いないな」

 

 原因を探るのはほぼ不可能だとして。

 やっぱり元気付ける方が良いのかな。

 

「……どうする?」

 

「アニエスの好きな物って何かな?」

 

「……ポッキーかな」

 

 アニエスと初めて会った時の事。

 部屋の扉が開かなくて本音の部屋に行ってたのを思い出す。

 その時に生まれて初めて食べて食べて気に入ったのがポッキーらしい。

 

「なんか、普段のアニエスからは余り想像できないな」

 

「アニエスだって女の子」

 

「女子って皆お菓子は好きだよな、うん」

 

 私もちょっと意外だと思うけど。

 

「後は、アニメ……?」

 

「アニメ?」

 

「私が教えた。戦隊モノとかヒーロー系のもの」

 

 最近もアニエスとよく見てた。

 更に見た後はお互いにどこが良かったとか話し合ったりもした。

 世間一般的なガールズトークという物とは違うかもしれないけど、アニエスも楽しそうに話してくれるから、多分それで良いんだと思う。

 

「へぇ、簪はアニメが好きなのか」

 

「う、うん……」

 

 アニメもお菓子も、私と本音の影響だと思う。

 もし寮の部屋が私とじゃなかったら、アニエスは今頃どんな物が好きになっていたのだろう。

 

「アニメとお菓子か……。アニエスも結構可愛い趣味してるんだな」

 

「か、可愛い?」

 

 言われているのはアニエスなのに、アニメを教えた私にも間接的に言われているような気がして照れる。

 

「なら映画、かな」

 

「アニメとお菓子?」

 

 ポッキーというよりポップコーンとかのイメージが強いけど、何もポップコーンだけとか、ポッキーだけって訳じゃないし、確かに良い案かもしれない。

 

「アニメ鑑賞会だと近場で住むだろ? だから少し出掛けた方が良いかなって思ったんだけど」

 

「うん、良いと思う」

 

「何が良いんだ?」

 

「うおっ!? なんだ、アニエスか」

 

 廊下を曲がった所でアニエスと鉢合わせた。

 

「すまない。邪魔をするわけじゃ無かったんだ」

 

「邪魔だなんて、そんな……。そうだ、アニエス。明日は予定空いてるか?」

 

「どうした、突然?」

 

「よかったら映画を見に行かないか?」

 

「映画?」

 

「アニエスってアニメやお菓子が好きって聞いたんだ。最近、アニエス元気が無いだろ? だから気分転換にでもって思ってな」

 

「気分転換か。良いだろう、明日の予定は無いしな」

 

「ほっ」

 

 アニエスが了承してくれて何故かホッとする私たちだった。

 そしてその直後、彼女がニヤリと笑った。

 

「だが、余裕だな。他の専用機持ち達はタッグマッチ戦に息巻いているというのに、呑気に映画鑑賞とは」

 

「「うっ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、アニエスと簪と俺との三人で映画館にやってきた。

 昨日の内に調べておいた映画の中から、アニエスと簪が好きそうなヒーローモノのを選ぶ。

 天の道を行く主人公が変身して、めっちゃ速くなるヒーローになる映画だ。

 上映中、アニエスの事を見てみると、登場人物のヒーローに同情のような眼差しを向けていた。

 よく分からないけど、あまり効果があったとは言えないかもしれない。

 だけど、少しだけアニエスが笑っていた。

 そして学園に帰ってきてからアニエス先生のタッグマッチ戦における講義を受け、部屋に戻ろうとした所に、アニエスがついてきた。

 

「織斑……」

 

「アニエス、どうした?」

 

「織斑は、今日見たヒーローをどう思う?」

 

「どうって……」

 

 あのヒーローは確か過去を帰るために時を遡る奴だった。

 

「時を遡るというのはな、とても危険な事だと思うんだ」

 

「うん?」

 

 まるで自分の身近にあったような話し方だ。

 

「前に、ある人が言っていた。過去を変えてしまうと、その先の未来も変わると」

 

「そりゃ、そうだな」

 

「いい方向に変わるならそれでいい、オレはそう思っていた。だが、それによって自分が消えるとしたら、どう思う?」

 

 何か、アニエスの言っていることがおかしい気がする。

 映画の話だよな?

 

「消える? いや、あの映画は別にそういうのじゃなかった──」

 

「いや、あの映画の話は本の少しの時間を遡っただけだ。そうだな、青い猫型ロボットなんかは、過去を変えるという点では一緒だが、下手をすれば、過去を変えるようにロボットを送った、主人公の身内は生まれなかった事になってしまうだろう」

 

「う、うん?」

 

 たしかあのアニメは、歴史を変えても結局主人公の孫は生まれてくることになってるんだけど。

 

「しかし、時間遡行は出来たとしても、本当に歴史を変えられるのかどうかという話だ」

 

「変えられるんじゃないのか?」

 

「例え話をしようか。未来から来た人間が、誰かを殺すとする」

 

「いきなり殺人かよ」

 

「なら、誰かを助けるとしようか。未来人は過去にやってきて一人の女を死から救い出した。しかし、その女は自分の父親と結婚する運命を辿る人物だった。そうなると、未来でその未来人は生まれなくなり、同時に過去にやって来るという事実も消える。そうなると未来人が女を救うというのも消えて、その結果未来人が生まれる未来ができる……。そんなイタチごっこのような考えに至る」

 

「タイムパラドックスってやつか」

 

「そこでここで幾つかの考えが生まれる。一つは決して変えられないという考えだ。女を助けようとしてもすぐに別の要因で死んでしまう、もしくはどうしても助けられない。運命からは逃れられないという考え方だ」

 

「…………」

 

「オレはこれが凄く正しい気がする。歴史を変えようとしても、人間の力ではない修正力が働いて、結局は同じ結果になってしまう。そう考えると、歴史を変える為に努力するなんてバカバカしく思えないか?」

 

「うーん、話が難しくなってきたな」

 

 そもそも、なんで映画を見てそこまで考えるのだろう。

 映画の中の話は結局はフィクションで、現実では有り得ない話だというのに。

 

「やり直しはきかない。それが時間だとしたら、オレは……」

 

「アニエス。よく分からないけど」

 

 俺はアニエスの顔が沈んでいくのを見て、勝手に口が動いていた。

 

「歴史を変えるっていう話でアニエスが何を悩んでいるのか知らないけど、過去にその未来の人間がやってきた事で、もう歴史は変わってるんじゃないのか?」

 

「もう、変わってる?」

 

「いる筈のなかった場所にそいつが立っているんだから、それはその時点でもう変わってる。変えられないって話は何かで読んだことがあるけど、俺が読んだのはそれだけじゃない。石を蹴っただけの筈が、それがきっかけで連鎖的に何かが起きて、結果未来が変わるって話もあっただろ? なら、そいつがそこに立っているだけで、未来は変わってるんじゃないのか?」

 

「なるほどな。既に石は転がっているという訳か」

 

 石を蹴っただけにな。

 

「って言うか、アニエスが元気が無かったのはそれの事だったのか?」

 

「ああ、まあそんな所だ」

 

 変な奴だ。と思うと、アニエスにも勘付かれそうだ。

 俺の周りの女子は皆、簡単に俺の考えを読んでくるからな。

 何でなんだろう。顔に出てるのか?

 

「少し考えてみる。訳の分からない話をして悪かった。ありがとう、織斑」

 

「おう……っと、着いたな」

 

 女子に部屋まで送られてしまった。

 男として送る側であるべきなのに。

 

「じゃあ、お休み」

 

「また明日なー」

 

 去って行くアニエスの背中は前よりも元気になったように見えるが、やはりまだ何か引っかかってるように見えた。

 

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