IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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はやくシリアスを抜けたいです。
シリアスは苦手。


Episode.39

 

「簪? どうした、気分が優れないか?」

 

 そう小声で簪に訊ねた。

 タッグマッチトーナメント当日の朝、簪は姉の楯無が壇上に出た所で、何かを思い出したように表情を曇らせていた。

 きつく下唇を噛みしめて、その目尻にはじわりと涙が浮かんでいる。

 織斑に限って簪にここまでの表情をさせることはないだろう。

 となると、やはり楯無か。

 

「アニエス」

 

 生徒会役員として前にいる織斑に気付かれないように涙を拭う簪。

 

「私、やっぱり……」

 

「落ち着け。……な?」

 

 俯く簪の頭を軽く叩いてやる。

 簪は最近、織斑に好意を寄せ始めていたようだったし、この間も嬉しそうにケーキを焼いていた。

 その後に何かあったとすれば、楯無と会ったとか。

 簪は楯無に対して劣等感からコンプレックスを抱いていた。

 そうなると織斑と親しそうに話す楯無に嫉妬、やはり自分では姉には叶わないという劣等感再び。

 なるほど、それならこの表情もうなずける。

 

「勝てるさ。その為に訓練を積んできたんだ。そうだろ?」

 

「そう、だよね。ありがとう」

 

 それで少しは気が紛れたのか、簪は楯無を真っ直ぐに見た。

 楯無は箒と組むと言っていた。

 IS学園の生徒の中で最強の生徒会長と、人類最高の天才が手掛けた第四世代型ISを持つその妹。

 相変わらずパワーバランスを度外視したタッグの組み方だ。

 他にも『セシリアと鈴』『シャルロットとラウラ』というタッグがあり、箒を含め、その全員が織斑が簪と組んだ事にお怒りの様子。

 トーナメントの当たり方では、真っ先に織斑がボコボコにされかねない。

 と、そんな事を考えていても恐らくは意味がないことだろう。

 なぜならこのトーナメントは無人ISによって中止にさせられるからだ。

 無人機が篠ノ之束の物で間違いは無いが、本来の数ならオレが出る幕は無い。

 襲撃してきた無人機は全機破壊したとの情報だったはず。

 オレはあくまでバックアップをするだけでいい。

 

「では対戦表を発表します!」

 

 楯無の合図と共に、大型の空中投影ディスプレイが開かれる。

 そして第1試合を見たとき、これはもう運命だとしか思えなかった。

 

 

 第1試合:更識楯無&篠ノ之箒 VS 更識簪&織斑一夏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簪の所にいなくていいのか、織斑」

 

「アニエス。いや、いきなり楯無さんとの試合だから、簪に何を言おうか迷っちゃって」

 

「お前なら迷うことは無いだろう。いつも通り誑かしてこい」

 

「別に誑かしてなんかねえよ」

 

「あっ、織斑くーん。アロンさーん」

 

 新聞部、黛薫子が走ってきた。

 

「どうしたんですか? 俺、ISスーツに着替えに第四アリーナまで行かなきゃいけないんですけど」

 

「これこれ、オッズなんだけど」

 

「はあ」

 

 見せられた紙には楯無&箒ペアが圧倒的な人気を誇っていた。

 学園最強と第四世代はやはり優勝候補だろう。

 

「ちなみに俺は──げっ。最下位……」

 

 織斑&簪ペアは数人しか人気が無い。

 試合中に邪魔が入らなければ、大穴と言えただろうに。

 一応、楯無対策はしていた。

 楯無のISの性能は織斑も簪も知っているし、付け入る隙はあった。

 

「まあ、更識さんのデータも未知数だからでしょうけどね。一年最強と言われるアロンさんが出場してたら、多分そっちも人気だったんじゃないかな」

 

「アニエスってそんな風に呼ばれてたのか」

 

「そう言えば以前、楯無がオレのことをそう呼んでいたな」

 

 三年と一緒に楯無に挑んだあの時が懐かしい。

 なお、二番人気は二年&三年ペア、次にシャルロットとラウラで、すぐ下にセシリアと鈴がいる。

 

「五組……専用機持ちって現在十人──いや、アニエスも居るから十一人なんですか」

 

「そう。うち一年が八人。今年は異常よ、異常。三年生は一人しかいないし、二年はたっちゃん含めて二人しかいないんだから」

 

 今すぐ戦争が起きても、IS学園が間違いなく最強だろう。

 その十一人だけでなく、この学園の教職員用、さらに訓練機用の物も用意されているのだから。

 オレの知るIS二個小隊程の戦力だ。

 

「なんか、とんでもないですね」

 

「あなたのせいでしょ、あなたの。しかもほとんどが第三世代型で、篠ノ之さんに限っては第四世代相当らしいじゃない」

 

 代表候補では無いのに専用のISを所持している箒、そして織斑。

 この二人が異常な事態の中心だ。

 一年の代表候補生達は、それぞれの国がこぞって第三世代型の稼働データとやはり織斑一夏との接触が目的だ。

 それに何が異常かといえば、やはり織斑がISを動かせる事が既にそうなのだが。

 

「ともかくね、試合前にコメントちょうだい! 今から全員分行かないといけないから、私忙しいのよ! はい、ポーズ!」

 

 言うなり、カシャッ! とシャッターを切る。

 

「写真オーケー! それじゃあコメント!」

 

「えっと、じゃあ──」

 

 ──ズドォオオオン!!

 

 爆音と共に建物が揺れた。

 

「きゃあっ……!?」

 

「危ない!」

 

 連続して続く振動に黛先輩が姿勢を崩し、壁にぶつかりそうになるのを織斑が抱き寄せた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「う、うん。それより……なにが起きているの……?」

 

 バシャンッ! と派手な音を立てて、廊下の電灯がすべて赤に変わる。

 続けてあちこちに浮かんだディスプレイが『非常事態警報発令』の文字を告げていた。

 

『全生徒は地下シェルターへ避難! 繰り返す、全生徒は──きゃあああっ!?』

 

 緊急放送をしていた先生の声が突然途切れる。

 続けて、また大きな衝撃が校舎を揺らした。

 

「な、何が起きているんだ……!?」

 

 衝撃は爆発によるもの。

 始まったのだ。第二次無人機襲撃が。

 連続して起こる衝撃の数だけ、無人機がやってきたという事だ。

 

「とにかく先輩はシェルターへ! 織斑、お前は簪の所へ行け!」

 

「分かった!」

 

 織斑を走らせ、オレは先輩をシェルターへ促してから、出口を探して走り出す。

 更にポケットから端末を取り出し、織斑先生へと繋げた。

 

「織斑先生、状況は」

 

『アニエスか。無人機が十機、うち五機がそれぞれのペアのピットに侵入していて、更に二機が上空で停滞している。残りの三機は教師陣が対処している』

 

 オレは以前の無人機撃破の功績から、織斑千冬の緊急時の補佐をするように打ち合わせをしていた。

 教師陣と専用機持ちの全戦力で自分たちの学校を守ろうというのだ。

 

「2機が停滞……。くそっ、足止めのつもりか!」

 

 五機の無人機と五組の専用機持ちでようやく破壊することができたという筈だったが、そこに更に二機が投入されるとなると危ない。

 なら、オレが二機同時に相手をしなければならないという訳だ。

 

『更識簪がひとりだ。織斑はどこにいる!』

 

「今、織斑が簪の所へ向かっている。多分間に合うだろう。それよりも停滞している二機の位置を教えてくれ」

 

『二機とも第四アリーナの上だ』

 

 恐らく教職員が準備しているのだろうが、待っていたら攻撃を開始してしまうだろう。

 ピットに侵入した無人機は各ペアで対処できる筈だ。

 

『例の如くセキュリティがハッキングされている。出られるか?』

 

「またあいつか。本当に面倒な相手だ」

 

 前回、オレにハッキング用の無人機を破壊されてから、護衛用に追加したのか。

 篠ノ之束。あんたはいったい、何をしようとしているんだ。

 

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