IS-インフィニット・ストラトス- 欠けた歯車   作:生そば

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Episode.41★

 

【挿絵表示】

 

 

「来いっ。ブラック★ロックシューター!」

 

 アヴニール・ルー、第二移行。

 刹那の間に相棒の新しい情報が流れてくる。

 全パラメータが1.5倍に上昇。

 新システム追加。

 機体名を含む数項目の名称変更。

 

『アヴニール・ルー』→『ブラック★ロックシューター(以降、BRS)』

『ルミエール』→『ブラックブレード』

『ロックキャノン』→『ハイペリオン』

 ……etc.

 

「ディフェンサーモード!」

 

 視界が一瞬だけ青くなる。

 次の瞬間、ゴーレムの八剣をシールドエネルギーが防ぐ。

 しかし、減ったシールドエネルギーはほんの僅か。

 

「はぁあああ!」

 

 オレは名前が変わった新たな剣『ブラックブレード』で、ゴーレムをシールドごと斬りつける。

 迷いを断ち切るが如く。

 そうだ。オレはもう迷わない。どちらも諦めはしない。

 未来も変えるし、夢の学園生活も満喫してやるさ。

 

「まだだ!」

 

 シールドを失い、再び八剣を振り回すゴーレム。

 それをブレードでいなし、腹部に向けてハイペリオンと名と姿を変えた左腕部装備を突き付ける。

 

「バーストショット!」

 

 チャージショットよりも高威力のエネルギー弾がゴーレムのコアを剥き出しにする。

 これだけでは無人機が止まらないのは、先程織斑たち四人がやっていたのが見えていた

 ISのコアは頑丈にできている。

 ゴーレムは己の接近戦での劣勢を判断したのか、上空に飛翔する。

 逃がすか。

 

「カートリッジ、トレイサーガン」

 

 誘導弾を発射するカートリッジ。

 もっと早く発現していれば、打鉄弐式にも使えただろうに。

 四つの誘導弾がゴーレムのスラスターを破壊し、姿勢を崩したゴーレムが落下してくる。

 オレは瞬時加速で飛び上がり、ブレードを構える。

 

「これで、トドメだ!」

 

 ブレードが光を放ち、たちまちエネルギー状の刃を作り出す。

 BBジェノサイド。ブラックブレードに発現した高威力の斬撃。

 それは広範囲に攻撃することが出来る近中距離のものだが、それを圧縮して単体への攻撃用にしたのが、イクサ・ブレードというシステムらしい。

 確かな手応えと共にゴーレムⅢaの動きが止まり、スラスターを吹かして更に上空へ。

 

「次はお前だぁ!」

 

 アリーナのシールドを突き破り、上でハッキング機能を有していたゴーレムをも貫く。

 二機のゴーレムは空中で爆散し、BRSも残量エネルギーを警告してきた。

 やっと終わったと地上に戻ってくると、そこには口をぽっかりと開けた織斑と箒がいた。

 

「お前、アニエスか?」

 

「何を言ってるんだ、お前は?」

 

「では、その姿はISによるものなのだな」

 

「???」

 

「かっ……」

 

「か?」

 

「「髪が黒くて長くなってる!」」

 

 それは箒の事じゃ無いのか?

 と訊ねてみるが、そうではないらしい。

 二人はオレの頭を指して言った。

 オレの髪は赤だし、長くなんかない。

 と、視線の先にちらっと黒い物が見えた。

 ……髪だ。

 オレの頭から出てる髪だ。

 黒くて、左右非対称に結ばれたツインテール。

 

「はっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当だ。黒くなってる」

 

 部屋に帰ってから、鏡の前でBRSを纏ってみる。

 狭いところでも動きやすいというのは、このISの利点だな。

 とまあ、そんな事よりも……

 

「誰かさんに似てるな。これ」

 

 黒髪の左右非対称のツインテールの知人などオレにはいない。

 だが、髪の色を真っ白にしたらどうか。

 あの仮面社長め。このISに何をしたんだ。

 腰部のウィングスラスターが少し大きい物になった以外は、アヴニールとBRS本体に殆ど差異はない。

 髪が伸びた意味があるとは思えないが──

 

「──だ、誰?」

 

 鏡と睨めっこしている間に、簪が帰ってきた。

 やはり赤髪が黒髪になると誰だか分からなくなるようだ。

 

「オレだ、アニエスだ」

 

「こんな所でIS展開して……、しかもウィッグ?」

 

「いや、アヴニールが第二移行してからこうなった」

 

「ISを装着って言うよりも、変身みたい」

 

「劇的なビフォーアフターだ」

 

「でも似合ってる」

 

「そうなんだよなぁ……」

 

 今まで真っ黒なコートに真っ赤な髪だったから、頭だけ少し浮いていると思っていた事もある。

 ISがオレのそんな思いを組んでこうなったと思えば、確かにあり得るかもしれない。

 何であの社長なのかは知らないが、もの凄く余計な変身だったんじゃないだろうか。

 ちなみに視界が稀に青くなるのは、システム発動のエフェクトで左目に青い火が灯るようになっていたからのようだ。

 なんでここはオレの目に合わせて赤じゃなかったんだろう。

 ISの考えてる事がわからん。

 

「取りあえず、会社の方に連絡はしておくか」

 

「あ、アニエス……」

 

 簪が改まって訊ねてきた。

 オレはBRSを待機状態に戻して向き直る。

 

「うん、どうした?」

 

「アニエスって、好きな人とかできたことある?」

 

「何だいきなり……あぁ、なるほどな。織斑か」

 

「ち、ちがっ……くない」

 

 顔を真っ赤にさせて俯く簪。

 ほら織斑、やっぱり誑かしてるじゃないか。

 

「織斑の事で相談か? オレは特定の誰かを好きだと思った事は無いが、相談なら乗るぞ」

 

「その……好きな人と仲良くする為には、どうしたら良いかな」

 

「仲良くって言うか、目的は恋愛に発展するかどうかなんだよな」

 

「そんなにハッキリ言われると、恥ずかしい」

 

「誰かを好きになるのは、人として当然の感情だろ。しかし織斑相手は強敵だぞ。あいつの周囲にいる奴らもそうだが、一番の敵は織斑自身だ」

 

「それは、知ってる」

 

「キスをしても、相手の感情に気付かないくらいの、いっそわざとなんじゃないかと思うくらいの唐変木だ」

 

「キスだけじゃダメって事?」

 

「キスよりも凄いことしなきゃならないのか。あいつを堕とすのは」

 

「────!?」

 

 ぼふっ、と爆発したかのように、簪は耳まで顔を赤くした。

 何を考えているんだ、おませさんめ。

 

「まあ、それは今の所誰にも無理そうだし……。そうだな、まずはアイツの近くに寄る事を考えるか」

 

「他の人たちみたいに?」

 

「それでは有象無象に埋もれるだけだ。お前だけのやり方がある筈だ」

 

 箒はファースト幼馴染み、鈴はセカンド幼馴染みとして織斑の近くにいるのはおかしくない。

 セシリアは同じクラスとしてクラス代表の補佐をするという名目がある。

 シャルロットは同室で寝泊まりしていたり、織斑がここにいろと言われて、織斑の近くにいる事ができる。

 ラウラはおそらく、どんな状況であっても織斑の傍にいようとする度胸があるが、これはラウラ以外にはない真っ直ぐな本人の特権か。

 そこに簪が入るとすると……

 

「簪は、アニメ好きだよな?」

 

「えっ、うん」

 

「なら、趣味の共有なんてどうだ?」

 

「趣味?」

 

「織斑の趣味の話はあまりした事はないし、あいつも特に何かをやっているようにも見えない。最近は訓練ばっかりだったからな。そこで簪、お前が織斑に趣味というものを教えてやれ」

 

「でも、どうやって……」

 

「例えば、一緒に映画を見ようとか……。あ、いや。一緒に部屋でアニメを見ようなんてどうだ?」

 

「一緒に、部屋で……」

 

 かぁーっ、と簪の顔が再び赤くなる。

 

「が、頑張ってみる……かも……」

 

「おう、気張れよ。青春女子高生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある真っ暗な部屋で、一人の女性が映像を何度も何度も繰り返して見ていた。

 

「ふふふっ。やはりそうだったのか」

 

 その人物はディスプレイに映る赤髪の少女を見て、嬉しそうに口元を吊り上げた。

 戦いの中で燃えるような赤い短髪が、長い黒い髪へと変わっていった様子を、その人物は黒くなった赤髪の少女の画像をスクリーンショットして保存する。

 そうしてもう一度、進化の瞬間を再生してから、呟いた。

 

「……さあ、ゲームを始めよう」

 

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