夢の守り婢奴   作:スターク(元:はぎほぎ)

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箸休め
すぐ本編に戻ります


【番外編】南阪のカンタン!時系列講座

……まぁ、ですよね。事情がこんがらがり過ぎて訳分からなくなってますよね、凱歌さんも秘密主義で隠し事多過ぎですから。なんなら僕も全然把握できてませんよ。

 

なので一旦、戦線離脱した僕らの方で分かってる事、主に凱歌さんの経歴と力だけでも整理しましょうか。スマホ持ってます?じゃあ僕の方からパワポを共有するんで皆さんでご覧になって下さい。

 

⓪ 異世界で仮面ライダーファイズにより

 アークオルフェノクが瀕死に。

  再起の為、影山冴子は接触してきた

 ブラッド族“スケイブ”の誘いに乗り、

 この世界に転移。新たなSB(スマートブレイン)を立ち上げ

 (アーク)の復活を目論見ます。

  SBは発展し、国際企業として社会に

 根付き、巣食いつつありました。

 

コレがまず前提情報です。現時点での質問には答えられません、私達もまだ情報を発掘し終えていませんから。とりあえず

“かなり前、凱歌さんや僕が生まれる前からSBが暗躍していた”

という事だけ把握していただければ幸いです。

 

 

前提はここまで。OKですか?なら本題を始めましょう。

 

では凱歌さんの人生を追っていく形で説明します。彼が人間だったころの来歴を箇条書きで纏めると、以下の通りですね。

 

 

1994年誕生。少し遅れて実父のDV癖が開花。

 

② 1歳の誕生日を前に、耐えかねた実母が蒸発。

  以後、父からの虐待を受け続ける事に。

 

③ 5歳冬、家からの脱走をきっかけに虐待が

 露見。

  父は逮捕、凱歌さんの身柄は独身の祖父*1

 

④ 中学三年になるまで、ある程度平和に生育。

 素行は悪かったですが成績は良かったとの事。

  祖父との仲は悪くなかったと聞いています。

 

⑤ 中学卒業を控えた3月。出社して来た実父が

 祖父を襲撃した為、居合わせた凱歌さんが

 反撃。

  勢い余って殺害し、過剰防衛で少年院に収監

 されました。

 

⑥ 2013年に出所するも、帰宅の折に自殺した

 祖父を発見・通報。

  諸々の手続きを終えた後、細々と生活。

 

⑦ 2015年、宝塚記念で散財。

  その直後、往来で暴漢と諸共に川へ落ちて

 昏睡状態に。

 

  同年、SBの統制下を離れ始めたのか、

 野良フェノクによる事件が勃発。各国政府は

 それを認知し、対策として特殊部隊“ν(ネオン)”を

 設立しました。

 

 

ここまで半分です。何か質問は?

 

「……えーっと。ユウスケさんは何かあります?」

「中々に凄惨で苛烈な反省だなとは思った。でも疑問点は今のところ無いな。海東はどうだ?」

「そうだねぇ……じゃあ一つ。実父のDV癖は祖父から引き継がれた物なんだろうけど、これに何か原因やきっかけはあったりするのかい?遺伝性なのか外的要因なのか知っておきたい」

 

ああ、その事についてですね。僕の意見としては“外的要因”に該当するかと。

牧路家の祖父はかつて競走馬の厩務員を務めてらしたんですが、ある一件で愛馬が酷い最期を迎えてしまいまして。それをトラウマとして人間不信になり、息子に酷い当たり方をしてしまったのが始まりみたいです。

尤も、当事者である凱歌さんとしては違う見解のようですが。彼曰く『どんな理由だろうと実行した時点でそれが生来の性根だろ。遺伝だ遺伝』と言ってました。

 

「うぅん……自分の系譜を“悪”と潔く定義してると見るべきか、DNAに責任転嫁してると見るべきか。鳴滝、君はどうだい?」

「後ろで大暴れしているディケイド達が気になってそれどころではない。私は居ないものと思って話を進めろ」

 

分かりました。では後半へ進みませてもらいます、ここから濃くて長いのでご容赦を。

 

 

⑧ 昏睡より回復。

  恐らくオルフェノクにはこの時に覚醒。

 

⑨ 社会復帰して暫くの後、往来にて暴れる

 ベアーオルフェノクと遭遇。

  桐雨茈という女性と逢い、彼女を守る為

 ホースオルフェノク(バイコーン型)に

 初変身・敵を撃破。

 

⑩ 正体を隠しながら茈さんと親睦を深め、

 その裏で彼女の生活圏に潜伏する(オルフェノク)達を

 駆除する生活を送っていた模様です。

 

⑪ 1カ月が経過した頃、影山冴子(ロブスターオルフェノク)が彼らに接触。

 危機に陥った所を部隊“ν(ネオン)”が保護し、以後

 彼を戦力兼実験体として運用する事に。

 

⑫ オルフェノク事案に巻き揉まれて家族を失った

 茈さんも部隊に迎え、1年程戦い続けました。

  火伽さんという仲間も戦死したのですが、

 彼について書くと長くなるので割愛。

 

⑬ SB(スマートブレイン)が事案に深く関与している決定的な証拠

 を掴み、強制調査を実施しました。

  SBからの抵抗もありましたが鎮圧した所、

 アークオルフェノクが出現し大混乱が発生。

 現場は地獄絵図となります。

  ここで茈さんが回収したオーガギアで

 凱歌さんが変身し、アークを討伐した事で

 事態は収拾されました。

 

 

はい、夏海さん。何でしょうか?

 

「νに編入された時、戦力兼“実験体”と言っていましたが、どのような実験を受けていたんですか?」

 

麻酔無しの解剖は出動時を除いて日常茶飯事でしたね。劇物投与も繰り返されてましたし、()()()彼は痛覚がありましたからその苦痛は計り知れません。人類側も一向にオルフェノクの情報が得られなくて焦ってましたから。

また、脱走防止の為に内臓に爆弾だって仕込まれていましたよ。ちなみに既に爆発済みです、アーク化した彼には通用しませんでしたけど。

 

「……っ」

「無理するなよ夏海……けど、最初は奴はアークではなくホース亜種だったんだろ?いつの間にアークになったんだよ、そもそもアークは別で存在してたみたいだし」

 

そこは今も謎なんですよねぇ……。

一応、1年の戦いの間で“オルフェノクが死ぬ時に発する青い炎は、オルフェノクに浴びせるとその個体の力や技術をある程度継承させる”という特性が判明してはいます。なのでアークを殺した凱歌さんにその力が引き継がれた、というのが現状、最も説得力のある仮説になるでしょう。ただし確証が何一つ無い事だけはご留意ください。

 

では続きです。

 

 

⑭ SB瓦解・アーク死亡後もオルフェノク発生件数は

 微減にとどまり、国際的な問題に発展。

  各国のネオンは国連に吸収・統合され、

 凱歌さんの身柄もそこ預かりに。

 

 

「国連?微減とはいえ減ってるんでしょう、話を大きくする必要は無い筈なのに……」

「……いやな予感がするんだけど言い当てて良い?もしかして彼、政治に利用され始めた感じかい?」

 

ご名答です、流石は怪盗。

ただそれだけでなく、この時スケイブが既に既得権益層を良い様に唆せる体制を整えてしまってまして。凱歌さんは彼らの良い走狗として、その力を活用されてしまったという帰結ですね。実験も過激化して、それはもう大変そうでしたよ。

反抗は不可能でした。茈さんが人質にされてましたので。オーガギアも没収済みでしたし。

 

「ぅゎ……」

 

でもこの頃はまだ()()でした。利用のされ方としても、国連戦力としての戦争終結や危険国家の抑制でしたから。

弱者からの搾取を助長する胸糞悪い副作用も伴いましたが、しかし歪とはいえ世界平和に繋がる利用のされ方です。正確には、国連を操る富裕層による支配体制の確立だったものの、それでも。

 

痛くても、苦しくても、凱歌さんはこれで良いんだと笑ってました。茈さんと僕の、人間としての生が保証されるなら安いものだと。

 

 

⑮ 凱歌さんの人権回復を訴えていた

 茈さんと、彼女に賛同してくれた人々を、

 反オルフェノク過激派が襲撃。多くを殺害

 し、茈さんを拉致しました。

 

  なお、この襲撃は政府の手引きにより

 誘発された物でして。茈さんはボロボロの

 状態で国連へ秘密裏に確保され、身柄を

 スケイブに引き渡された模様です。

 

「……は?」

「ま、待って下さい。そんな……っ!」

「というか国連は茈さんを守ってたんじゃないのかよ!?」

 

僕は事実を明かしたまでですよ。そこに虚飾があったら、疑うのは貴方達でしょう?

貴方達はこの世界がどうしてこんな事になったのかを知りたい。僕は知ってもらいたい。利益が相互に保証されてるのなら、僕が隠し事をする理由はありませんから。

 

……次、行きますね。一気に最後、つまり今この段階に至るまで。

 

 スケイブから齎される利益と引き換えに、

 国連は牧路凱歌の死および桐雨茈の身柄を

 差し出す事を決定。彼を切り捨てる建前と

 して、茈さんの件で脱走を促し、それを

 追撃する形で殺そうとしました。

 

  なおスケイブの算段としては、凱歌さんが

 それを跳ね除けて茈さんを探しに来るよう

 仕向ける事こそが主旨だったらしく、事実

 その通りに彼は生き残り誘導されます。

 

 SB本社跡地で待ち構えていたスケイブは、

 凱歌さんに、捕えていた茈さんの生命維持を

 条件にその命と力を明け渡すよう要求。

  抗いようの無かった凱歌さんは、それを

 呑もうとしました。

 

  しかし、茈さんが自決。

 

  それを目の当たりにし狂乱した凱歌さんが、

 アークオルフェノクとして完全覚醒。

スケイブを殺害しました。

 

 人間社会に宣戦布告。

 世界全土に配下のオルフェノクを生み出し、

 各国政府機関を同時爆破して戦争状態に。

 

⑲ 人類軍を捌いてる間も、スケイブに呼ばれた

 侵略者が度々襲来。凱歌さんが現在進行形で

 迎撃し、殲滅してきました。

 

⑳ 最中、これは本当に偶然だったんですが、

 鳴滝さんと海東さんがいらっしゃいまして。

  それによってディケイドの実在を確信した

 凱歌さんが、光写真館を乱立するという暴挙

 によって存在を誘引し、

 

㉑ 今に至ります。

 

 

……と。これが凱歌さんの来歴、そして世界がこんな事になってしまった帰結です。お分かりいただけたでしょうか?

 

「……」

「…………」

 

空気が死んでますね。意図して悪しざまに、悲劇的に語りましたから当然でしょうとも。にしても僕には語り部の才能でもあるんでしょうか、自惚れそうになってしまいます……と。ボケをかますのはこれぐらいにして。

何でしょう、海東さん。

 

「まず、彼についてはよく分かった。その行動理由が憎悪なのか、他にまだ理由があるのかは確かじゃないけれど、人類を見捨てるには充分な理由だ。認めたくはないけれど、彼にとっては“大義”ですらあるんだろうね」

 

ご理解いただけて何より。人間は愚かなものです、特にこの世界のは。誰が守護者なのかも、誰が自らの生命線なのかもわからず、それを断ち切ろうとした愚物共。そんな奴らが、凱歌さんに踏み躙られるだなんて、これ以上に正しい事がこの世界にありますか?いや、無い。

 

「……あるだろ」

「よせユウスケ。彼はもう()()()だ。僕達の倫理観は通じないと思った方が良い」

 

話が早くて助かります。ええ、僕は自覚出来るくらいに凱歌さんに依存してますから。精神的にも物理的にも。

何故なら僕には何も無い。自分を守る力も、誰かを助ける力も、何一つ。そこらの人間風情と同じ……或いは、それ以下の寄生虫。

 

「ああ。だからここからは……牧路凱歌について、じゃない。()()()()()()聞かせてもらおう」

 

……僕、ですか?

 

「そう、南坂。君だ。牧路凱歌の人生に君は深く食い込んでいる筈なのに、それを頑なに語らなかった君についてだよ」

 

だって、特筆すべき事は何も無いんですもの。精々ν(ネオン)にオペレーターとして配属されてて、凱歌さんとはそこで知り合ったぐらいで。以降はただ流されるまま、彼に守られるがまま。それ以上の事は何もありません、これで満足ですか?

 

「いいや。だったら何故、君は大恩ある牧路凱歌の意に()()()()んだ」

 

 

…………。

 

 

「どゆこと?」

「考えてもみたまえユウスケ、牧路凱歌は例えて言えば『同情するなら金をくれ』のスタンスだっただろう?もっと言えばその後に『さもなくば死ね』が付け足される感じの対話拒否もある」

「そう……でしたね。憐憫を拒む、というより厭う傾向(きらい)があったように思います。城の中でも、侵略者を撃退してきた旨を説明し正当性を主張していた南阪さんに『勝手な事するな』って言ってましたし」

「そう。つまり牧路凱歌は他者からの理解を全く必要としていない、人類を信用せず弾圧しているのもその一環なんだ……のに、南阪。君は何をしてるんだい?」

 

海東さんの問いが鼓膜を叩く。責めるような語調に聞こえたのは、恐らく幻聴でしかなくて。

 

「牧路凱歌の過去を、本人の了承なしに開示し、相も変わらずその行動の正当性を掲げて……()()()()よう僕らを誘導している。これは彼の本意からは反する行いだろう」

 

もしそうだとして。じゃああなたたちは何をすると仰るんです?

凱歌さんに告発しますか?それで、怒った凱歌さんに僕を殺させますか?それに費やした一手が隙にはなるかもしれませんね。

 

「違う。僕達の要求は“知りたい”から変わらないさ。そしてその対象は牧路凱歌だけじゃない」

 

……。

 

「次は君の番だ。散々明かしてくれたんだ、まさか今更になってケチるとは言わないよね?」

 

……はぁ。参りましたよ。僕だって貴方がたからずっと視線を向けられて耐えれるほど厚顔は持ち得ませんし。恥の多い人生ですが、差し支えない程度に話しましょうか。

そうですねぇ……ああ、僕は、きっと。

 

「凱歌さんに、殺されt」

「伏せろ!!」

 

鳴滝さんの声。反射的に全員が身をかがめたその瞬間、とある物体が超高速で吹っ飛んで来ました。

それは肉壁として立ち塞がっていたオルフェノク数体の身体を貫通し、僕達の頭上を掠めて背後の岩盤に激突。グチャグチャになって辺りに飛散します。

 

内、僕らの足元に転がってきたのは──赤い複眼を伴った、蛇の意匠が施された頭蓋。

 

「……エボル?」

「「死んだ!?*2」」

「死んでねェよ!!」

「「生きてた……」」

 

夏海さんとユウスケさんの落胆もなんのその、気にせずエボルトは首だけの状態で地面を転がります。その動きに合わせてバラバラになった肉塊たちが元に戻ろうと蠢きますが、ダメージが大きく思うように集まれないようです。

トドメを刺そうかと思いましたが下手に接触して規制されたら元も子もありません。念のために残存オルフェノクを盾として隠れる事にしました。

 

あ、でも一言だけ煽っておきますか。僕もブラッド族は大嫌いですし。

 

「強いでしょう?凱歌(かれ)

「認めたかないが()()()な……糞、俺でドッジボールするとかアイツらふざけやがっ」

\FINAL-ATTACK-RIDE──F・F・F・ΦZ!!/

\EXCEED CHARGE/

!!??

 

しかし一瞬後、衝撃波。エボルトは木っ端のように転がっていき、生身のユウスケさん達もまた吹き飛ばされてしまいました。

僕はオルフェノクに掴まっていたので辛うじて無事でしたが、目の前に夏海さんが吹っ飛んで来たので流石に手を伸ばします。この局面で助けなかったら、いつか死んだ時に茈さんにガン詰めされそうですからね。

 

「南阪さん、ありが、」

「感謝は後で!」

 

それは助かってから。度重なる衝撃に耐え、噴煙に隠されたその震源を辛うじて見遣りながら、僕は必死で叫びました。

 

「気を付けて下さい!!今の凱歌さんは──」

「砕け散れェェェッ!!!」

「──世界を、()()()んですっ!」

 

刹那の咆哮。それが煙を吹き飛ばし、見えた光景は。

 

オーガ(凱歌さん)の放った黄金の拳が、空間を()()()()()景色でした。

*1
後の調査で分かった事ですが、この祖父もまた凱歌さんの父に虐待していた模様です。

*2
歓喜




拙作で一番拡大解釈を重ね掛けされてるのは間違いなくオーガのスペックです。盛られ過ぎてミルフィーユと化してます
詳しくは次話
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