夢の守り婢奴   作:スターク(元:はぎほぎ)

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牧路凱歌は終われない【終】

「やってくれましたね」

 

倒れた士・鳴滝の元へ夏海達が着くのに1分も経たなかった。すぐに変身解除した海東含め全員ロクな高速移動手段も持っていなかったにも関わらず、これ程早い現着が出来たのは、偏にジェットスライガーを呼び出した南阪の助力に依る物が大きい。

彼等に対し、ユウスケがなけなしのモーフィングパワーで応急処置。次は医療機関に、という所で出たのが上記の南阪の発言である。

 

「鳴滝さんの次元移動能力で、凱歌さんをこの世界から弾き出す……見事な作戦でした。これで晴れて地球は無防備、地球人は共通の敵を失って内紛待った無しです」

「…………」

「……で。どうするんです、コレ」

 

もはや皮肉や嫌味を通り越して直球の問責に近い。常に朗らかだった南阪の形相には、今や明らかな怒りの色が乗っていた。

 

「…………人間はそこまで愚かじゃない。カイザ部隊だっている」

「愚かですよ。あの部隊も変身者もすぐに政治や戦争の道具に早変わりしますし、何よりオリジナルのカイザには到底及ばない粗悪品です。ヘルヘイム辺りでも来た瞬間に絶滅不可避なんじゃないでしょうか」

 

取り付く島もない。そんな彼に対して、次に口を開いたのは目覚めた鳴滝だ。まだ比較的傷が浅かったのだろう、しかし苦痛に顔を歪めながら彼は提案する。

 

「スケイブが開いた時空間ゲートは私が閉じよう。そうすれば、少なくとも異世界から新しく参入してくる侵略者は絶たれる筈だ」

「成程。それは助かります……が、既にこの世界に到着して潜伏状態にある敵に対してはどのように?」

「っ」

 

しかし次ぐ問い掛けには彼も答えられない。ディケイド一行も鳴滝も、どう足掻いたところでこの世界にとっては異物だ。長く留まれず、ずっと守ってはいられない事は明白だった。

一方、怒気を解いて南阪は微笑む。その提案をして貰えただけ御の字とばかりに。

 

「気に病む必要はありません。元より僕達は守護を()()()()()立場、一瞬でも貴方達を責めた……もしくは責めようとした時点で、僕は僕の呪う有象無象(にんげん)と完全な同類です。そんなゴミからの 責なんて、いちいち気にしてたら身を持ち崩してしまいます」

「でも……私達は実際、取り返しのつかない事を……」

「夏海さん。凱歌さんは死んだんですか?」

 

違いますよね?という言外の質問に、夏海は一拍置いて首を横に振る。オーロラカーテンの先はただ異世界に繋がっているだけ、向こうの環境がよほど地獄でもない限り即死は考え難いだろう。鳴滝も頷いたのを見るに、彼が飛ばされた先は遠いだけの場所に過ぎない。

ならば。

 

「じゃあ、彼は帰ってきますよ」

 

確信と、諦念を孕んだ断言。

 

「何故……そこまで言い切れるんだい?」

「彼は僕らを絶対に諦めてくれませんから」

「まるで見捨てて欲しいような物言いだな」

「ですよ?ああそうか、ハプニングで言い損ねてたんでしたね」

 

エボルがバラバラになって吹っ飛ばされてきた時の事を思い出して苦笑しながら、南阪は言う。内に秘めたる本当の願いを。

 

「僕は、凱歌さんに殺されたいんですよ」

「「「───っ」」」

「何も守れず、何一つ役に立てない。その上で守られるしかないこの無能を、この世からとっとと切り捨てて欲しいんです。彼の手で」

 

吐き捨てる彼に、夏海達が欠けられる言葉など何一つ無かった。この世界で数多の辛酸に漬け込まれて醸成された絶望は、外野如きの言葉で何とか出来るものとは到底思えなかったから。

そうして南阪は踵を返す。話はお終いだと、その背中と歩みで示して。

 

「……最後に、聞く」

 

それを呼び止めたのは、ユウスケの背で目を覚ました士だった。

 

「お前は、俺達に、何を望む」

「出て行ってください。二度と顔を見たくないので」

 

今度こそ、それで終わり。

南阪の姿が砂塵の向こうに消える。士は再び気を失い、残された者達はその場に立ち尽くすしか無かった。

 

 


 

 

「ついに戻って来たァーーー!!!」

 

叩き壊されたエボルトリガーの状態から、無事な部位だけ切り離して這う這うの体で逃げ出し。

ディケイド達に気取られないよう慎重に身を隠しながら、ギリギリで宇宙へ逃げ延びて。

鳴滝とやらが時空間ゲートを閉じようとしていたので急いで滑り込み、元の宇宙(ビルド世界)へと逃げ帰る事に成功した。

 

……今の状況説明だけで“逃げ”ッて言葉を3回も使わされた。全く我ながら酷い痴態だ、ちょっと屈辱なんてレベルじゃねェ。

 

今回の教訓は二つ。まず、従える部下をちゃんと選ぶ事。内海のように裏切ってくるのを込みで引き入れた奴ならともかく、まさか完全に心酔した部下(スケイブ)の所為でこんな厄介ごとに巻き込まれるなんて思いもしなかった。次からはちゃんと妄信の果てに暴走するような奴は弾いていこう、そうしよう。

そしてもう一つ、牧路凱歌。アイツには必ず復讐する、俺もブラッド族も人間も全否定してきたアイツとは絶対に相容れん。食われかけた上にボコり尽くされた恨みもあるからな、次はフェーズ4以上のパワーで捻り潰してやらんとなァ!!?

 

と、一念発起しては見るものの。

 

(……つ、疲れた)

 

流石にここでメンタルが限界にきた。いつも“食う”立場だったから、まさか“食われる”立場に立つ事がこんなにストレスフルだとは思わんくて……不味い、ちょっと色々回復したい。休みたい。切実に。

 

具体的には、nascitaで豆を炒りたい。今思えばあの時間が一番落ち着いていた。

 

「行くかァ、地球」

 

散々酷い目に遭った別世界の地球の記憶を、慣れ親しんだ地球の記憶で上書きしよう。回らない頭でそう考えて、俺としては至極珍しく悪意0で、戦兎達のいる星へ進路を向けたのだった。

 

 

もちろん大騒動になった。悪いな石動また体借り、ぅゎベルナージュやめr

 

 


 

 

空は遥か、人工衛星。そこには人類に与さず、かと言って凱歌の陣営でもブラッド族との協力もしていない、完全なる第4勢力の基地がある。

地から離れ孤立した空間。そこに座すのは……何を隠そう、スマートブレインの残党達だ。

 

「確認取れました。地球上の何処にも、牧路凱歌──アークオルフェノクの存在はありません。完全に消失しています」

「……そう」

 

その中心に居る女性、影山冴子は報告を受けて頷く。そこから暫し、重苦しい沈黙が場にのしかかった。

当然だ。牧路凱歌は王の仇、しかしその身の裡にアークを内包している以上はオルフェノク復権の鍵でもあったのだから。その存在が喪われたという事は即ち、繁栄への道が完全に断たれたという絶望を意味している。

 

「どうする……王の代替となる存在など有り得るだろうか」

「今の所、我らオルフェノクの自己改造実験は寿命を延ばすどころか縮める結果しか産んでいない。可及的速やかに結果を出さなければ破滅が待つぞ」

「とはいえ、SBがまたも壊滅してしまい、今となっては研究支援も……」

 

「静粛に」

 

その困惑を制したのは、まさしく影山冴子の一声で。

 

「──王の力は健在よ。私に宿る不死が、それを教えてくれているわ」

「本当ですか冴子様!」

「しかし地球にいないのなら一体何処に……」

「ならばそれを解き明かす事こそを喫緊の命題とする。今は耐える時という事、希望を見失ってはいけないでしょ」

 

生存への欲望を肯定し、魔女は妖艶に笑う。己の狂気を自覚しながら。

 

(絶望)からの再起こそオルフェノクの本領。それを世界へ今一度、魅せ付けてあげましょう」

 

 

 




 

 

 

────平和。

 

「叫べー!声出せー!」

「ファイ!オー!!ファイ!オー!!」

 

部活動だろうか、ジャージを着た少女達が懸命に駆けていく。静かに朝焼けが照らしていく中、その曙光に汗を輝かせながら河川敷を。

その背景にはビル群。人が活気づき、各々の営みを執り行い始め、まるで朝日に世界が目を覚ましたようだ。

それに触発されたように、俺の手は既にカメラへ伸びていた。どうせ“歪む”、そう分かっていてもこの景色を映したいと思ったから。

 

少女らを中心に、世界をレンズに収め、さぁシャッターを切る……その刹那。

 

「撮影許可は得てるのかな?」

「……必要だったか」

「そりゃそうでしょ。肖像権、著作権、その他もろもろをクリアして貰わなきゃ近付き厳禁だもんねー」

 

そこら辺デリケートなんだよ。そう告げつつ歩み寄ってきたのは、少女たちと同じ()()の成人した女性だった。

彼女はポニーテールを揺らしておどけながら、軽い足取りで俺の隣に立つ。走っていく少女達の背を、心底愛おしげに見送りながら。

 

「で。立ち振る舞いから察するに、君は旅人って所かな?」

「ほう。今の俺は“スポーツ新聞記者”の役割に徹してたんだが、どうして分かった」

「ん~……────君みたいな人を、知ってるから」

「俺みたい?」

「君、この世界の人じゃないでしょ?」

 

核心を突かれ口籠った俺を横に、彼女は遠い目をして大河を見下ろす。その水底へ沈んでいった、誰かを想うように。

 

「なんだかこの世界から()()()()感じ、っていうのかな。そういう人がいたんだ」

「……」

「ボクらを全力で思って、ボクらの総てを愛してくれた。でもそれを隠し切って、危ない橋を渡り続けて、誰にも知られず悟られず……終いには、救われるべき者を根こそぎ救い切って、どこかに行っちゃった」

「救われた奴がいるなら……悪くはないんじゃないか?」

「そんなワケ無いじゃん、助け方が強引過ぎるんだよ!その罪でさえ、一緒に背負おうと言ったヒト達を無視して一人で全部持って行っちゃうなんて酷くない?ボク達、当事者なのになーんにもさせて貰えないなんておかしいでしょ!」

 

心底腹立たしいようで、顔を真っ赤にして捲し立てて来る。その様子に嘘偽りは微塵も見られず、それが実在した過去だったことを雄弁に示してくる。

そのまま彼女は、言いたいことを洗いざらいブチ撒け続け。

 

「ヒト様の世界を掻き回すだけ掻き回して、踏み荒らして!例えるなら病巣だけ取り除いて縫合しない無茶苦茶な手術さ、施術される側の身にもなって欲しいね全く!!でもそんな彼と一緒に夢を見たかったんだ、一歩引いた目で僕らを見つめてくる彼を同じ熱狂に引きずり込みたいってボクもボクの周りも皆思ってたのに────

 

────今じゃ、殆ど誰も、覚えちゃいない」

 

「……記憶ごと、か」

「うん。ボク自身もう声も顔も……名前だって忘れちゃったよ」

 

止まった。世界から消え、その記憶さえ持って行った友人への恨み口は、切なげな溜息で終わった。

その愁いを帯びた眼差しをそのまま、彼女は俺に向けてくる。

 

「聞かれても無い事を喋り倒しちゃってごめんね。でも、君はなんだか()()()()()()をしでかしそうな雰囲気があったから……同じ轍を踏んで欲しくないんだ」

「悪いな、MOVIE大戦2010(もうやった)。お陰で耳が痛い」

「前科持ちィ!?ちゃんと当時の仲間や友達に説明しなよ、自分は無事だって!悪い事言わないから!!」

「そこは安心してくれ、もう済ませてるから」

「なら良し……いや良くないけど」

 

かつて自分を夏海に殺させる事で、ライダー達を破壊の果てに再生させた経験が重くのしかかる。成程、俺は奴に過去の自分を重ねてた節があったのかも知れない。道理で矢鱈熱くなってしまった訳だ、この際夏海やユウスケにもう一回詫びを入れといた方が良いか。

……さてと。

 

「行くの?」

「ああ。この世界に俺が破壊すべき(ライダー)は無いからな」

「そっか。お達者で」

 

ここはライダーの世界じゃない。なら、留まる理由もまた無いから。

だが……()()の一つくらい、残して言ったって罰は当たらないだろう?

 

「牧路凱歌は戦い続けてる」

「──え?」

「だからお前も、お前の道を走り続けてやれ」

 

アイツが、そう望んだように。

 

 

 

「がいか……そうだ、凱()……!」

「テイオー、こんなところで何を?」

「聞いてよ葵!さっき、さっき旅の人が……教えてくれたんだよ、“牧路凱歌”って!!南坂トレーナーにも伝えないとっ!」

「──!!!」

 

 

 

オーロラカーテンを通り、この世界の光写真館前へ。扉を開ければそこに、見慣れたいつもの皆がいる。

 

「お帰りなさい、つかs……え、何ですかこの高級ケーキ」

「ちょっとした気紛れだ。ユウスケと一緒に食べてくれ」

「お前にしちゃ珍しいな。なんかあったか?」

「色々あり過ぎてどれに言及すれば良いのか分からん。お前がまんまと神経弄られて襲い掛かってきた事とか?」

「悪かったって!!って、それこの前の事?小夜ちゃんの時の事??」

「士~、僕には何も無しかい?」

「無い。お前に謝る事は無いからな」

「いやあるだろ!スーパーヒーロー大戦を忘れたとは言わせないからね!?」

「それはお前のビッグマシン起動で帳消しだろ!!」

 

ウザ絡みを掻い潜り、写真館の背景ロールを見れば……そこに飾ってあるのは集合写真だった。

うら若き少女達が、監督者であろう成人男性に見守られながら笑顔で写る光景。中心には、先ほど話しかけてきた女性をそのまま小さくしたような少女が、満面の笑みにピースを飾って立っている。

 

その真隣の、不自然な空白(スペース)。丁度ヒト一人分が収まれそうな……いや、言うまでもないな。

そこに本来、奴がいた事なんて。

 

「この世界の存在は実に不安定だ。まるで砂上の楼閣だな」

「オイ。鳴滝までいるなんて聞いてないぞ」

「前回は助け合った仲ですし……良いかなって」

「オーガを“次の破壊者(ディケイド)”にしない為に致し方なく、だ。馴れ合う気は無い」

「はいはい」

 

その裏から出てきた影に思わずギョッとする。そんな俺に鋭い視線を一瞬だけ向けてから、鳴滝は引き続き口を開いた。

 

「オーガの世界から流入した因果を以て構築された世界。いわば前者が“基礎”……基礎を喪えば、その上の物は崩落する運命にある」

「……だからアイツは、死に物狂いで戦ってたのか」

 

ユウスケの言葉が全てだった。これが奴の、牧路凱歌の正義。

 

この世界には平和がある。自由がある。希望がある。奴が身を窶していたのは、それを守る戦いだったんだ。

その為に身を擲ち、傷付き、倒れ、削れ続けても立ち向かう事をやめはしなかった。自分の世界で愛する()を喪って尚……いや、その魂が輪廻を巡り、この世界でまた輝くからこそ、か。

 

「自由を与える為に自由を奪う。これだけ見れば愚かな行いだね」

 

そこへ現れたのは、全員分のコーヒーを()いだ栄次郎さん。

 

「けど、それ以外の選択肢が無くなった時……“仕方ない”とその道を行くのか、“自分の意志で”その道を往くのか。この二つは似てるようで全然違う」

「……そういえば彼、同情なんて求めてなかったな」

「うん。きっと、後者を貫いた者が見る景色は違うんだ。行き着く先が同じ、血を吐き続けるマラソンだとしても……そこに()()()()()()か。それは進み続けた人にしか分からないんだから」

 

「だが、肯定はしない」

 

栄次郎さんの言う通りだ、けどそれが何だ。自由を奪われた他の謂れ無き弱者にとって、そんな行いは悪逆でしかないから。

 

「“次”に行くぞ、夏海、ユウスケ。俺達はまだ旅を終わらせる訳にはいかない」

 

きっと牧路凱歌は戻って来る。アイツがしがみ付く自分(オーガ)の世界へ、世界(ちきゅう)守護者(アイツ)を求めるままに。その呼び声を頼りに必ず、この平和な世界を存在させる為に還り……その意のままに、他者から自由を奪い続けるだろう。

 

そして旅の果てに、俺達はいつかまた出遭う。

その時こそ。

 

(止めてやる。今度こそ、必ず)

 

夏海達の頷きを背に、背景ロールを閉じ──再度開けば、眩い光が視界を包んだ。

 

 

道は続く。俺の旅路も、牧路凱歌の修羅道も。

 

 

 


 

 

 

 

予測通り、世界は混沌の様相を呈しました。

凱歌さんが行方不明になった事が判明して1年。まず発生したのは大国同士の睨み合いです。当然でしょう、そこにはスマートブレインやブラッド族の遺したオーバーテクノロジーに関する凄絶な奪い合いが発生したんですから。どの国もまず最初に考えるのは自国の回復と覇権、それを踏まえれば当然の帰結。

こうなる可能性を考えて、凱歌さんはかなり頑張って地域ごとにオルフェノク軍の攻勢を調節してたんですが……焼け石に水とはこの事で。相当数の死人にが出るのは避けられませんでした。

 

けれど意外にも人間同士の戦争には発展していません。ギリギリ。奇跡的にも。

これは凱歌さんの苦慮が完全に無駄な訳ではなく僅かながら功を奏していた事、また各国の疲弊状態が著しく厭戦の風潮が漂っていた事などが挙げられますが……個人的には、()()()()が大きく作用したと考えています。

 

この幸運に関して説明すると長くなるので、またも割愛させていただきましょう。ライダー怪人の次はトランスフォーマーとか、もう理解追い付きませんから。

 

 

ともかく、暫くは。暫くの間だけは、人類間で戦争はありませんでした。鳴滝さんのお陰で他に新たな侵略者も来る事もありませんでしたから。

 

 

しかし、平和とは戦争の準備期間……とは誰の言でしたか。

 

 

『武装解除し降伏せよ!諸君らは包囲されている!!』

「ふざけるな!協定違反を犯したのは其方だろう!?」

 

僕の目の前で、二つの勢力が銃口を向け合っていました。散発的な対立ではない、世界の命運を分かつような局面で。

さっきまで隣で一緒に戦っていた兵士が、僕達を取り巻く戦車群に叫びます。それに対する返答は、拡声器。

 

『これは先程、弾劾された合衆国政権に代わり国防長官が発令した特殊作戦である。また英・仏・露・中の首脳もこれを是認し、各国に駐留している諸君らの分隊も逮捕された。残るは本体である諸君らのみである、従わない場合は火器の無制限使用が許可されている』

「バカな……クーデターでも起きたのかっ」

「他部隊との連絡取れません!」

「どうする、俺達はどうすれば良いんだ!?」

 

困惑している間にも包囲は狭まり、選択の猶予は無い事を刻々と示してきています。彼ら一人一人に向けられた無数の銃口のなんと冷たい事か。

 

 

……これでも頑張ったんですよ?

あの人がいなくなった後、全世界の人々は僕を尊敬するよう調整されていた事も相まって、英雄として発言権を得ていました。その立場を利用して、僕なりに平和を出来る限り長く保とうと……せめて彼が返ってくるまでは保たせようと、死力を尽くしたんです。

 

だから今、僕だけは銃を向けられていません。

 

「南阪さん!なんとかしてくれ!」

「貴方しか頼れないんです!!」

「……」

 

分かってます。分かってます、言われなくとも。敵味方全員の視線が、ボクの背筋に突き刺さってるんですから。

 

でも……どうしろって言うんですか。

今この場をなんとかした所で、何になるって言うんですか?

世界中を駆けずり回って、似たような一触即発を何とか仲裁して……これが、何度目?これから何度待つ?

 

ウンザリだ。

 

「南阪!!!」

「南阪さぁん!!」

(もう勝手にして下さいよ)

 

部族。国。一族。家庭。敵にしろ権威にしろ、強大な力の存在が無ければ一致団結を視野に入れる事すら出来ない無知蒙昧な衆愚(にんげん)共。僕自身その枠の中の存在でしかないのに、これ以上のコントロールなんて無理ですよ。

勝手に争ってください。勝手に潰し合い、殺し合って、滅びるなりなんなりお好きにどうぞ。その結果、僕もまた巻き込まれて死ぬことになったって、もう知った事か。

 

……ああ、でも。

 

(せめて無関係な()()は逃がさなきゃ、ですかね)

 

チラリ、背後に控える車たちとその中にいる民間人。彼らまで巻き込むのは気が引ける、そう考えてポケットの中の()()へ手を掛けた。

 

 

凱歌さんは怒るだろうか。

 

帰って来た時、荒廃したこの地球(ほし)を見て、僕に何してたんだと叱ってくれるだろうか。

 

あわよくば、そのまま見限ってくれたら……なんて。

 

 

「おーおー。相変わらずやってんなぁ」

 

 

そうやって彼の事を考え過ぎていたから、とうとう幻聴でも聞こえ始めたのかと。

 

 

「ま、実に予想通りだ。ちなみに今は何年何月?」

「え、ぁ……!」

「そんな馬鹿な!?」

 

有り得ない。こんな都合の良い事が在る筈が無い。僕に在って良い筈が無い。

 

「んだよ、折角の()()だってのにロクに口も利けないのかお前ら。

酷いよなぁ南阪──おーい?南阪~?」          

 

彼が、こんなに早く。

僕らを見捨てずに、戻ってくるなんて。

 

「何呆けてんだよ、バーカ」

 

「あッ……あぁあ……!!」

 

俯いていた視界、その地面に降り立つ足先。ここまで来ればもう、現実を直視せざるを得なかった。

 

凱歌さんがそこにいた。あの日からずっと変わらないまま、僕の英雄(ヒーロー)が!!

 

「何涙ぐんでんだよ。って、まぁ掛けさせた苦労考えりゃ当然か──よくやってくれた。後は任せろ」

「がいかさん、がいか、さんっ」

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「仕方ない奴だな、下がってろって」

 

跪いた僕を背に庇い、彼は地球の歴史の表舞台へとうとう舞い戻った。対立する人類、その最前線へ舞うように躍り出て。

主役は俺だ。ここは(オーガ)の世界だと示すように。

 

人間どもの反応は迅速でした。先刻までの諍いは何だったのか、一斉にそれぞれの銃口も砲塔も彼に向けて一斉射。無意味だと分かり切っているのに、そうせずにはいられない愚かさ。

それを一笑に付して、彼はオーガフォンを手に、その叫びを大地に轟かせるのでした。

 

「さ、もう一度────

────始めようか!!!」

 

\Standing-by/

 

「変身ッ!」

 

\COMPLETE/

 

 

 

彼の戦いは終わらない。悠久より長い時を経て、望む未来(せかい)に辿り着くまで……その拳は阻む物を壊し続け、その脚は他者を踏み躙る事をやめないだろう。

 

殺して戮して、贖えない罪を重ね続け、背負い抜いて。彼は敵を屠る。

 

歩みが報われる、その日まで。




これにてひとまず完結です。お付き合い下さり、誠にありがとうございました。
実質的に拙作「パレードを終わらせない」「オルフェノクになったので敵全員●す」の続編である今作ですが、出来る限りこの作品だけでも理解は出来るよう努めたつもりです。“出来てない”・“そもそも前二作読んでも意味不”いう声に対しては、思い当たる節しかありませんので耳を塞がさせていただきますので悪しからず。

まぁ作者の脳内構想的には今作でさえ“序章中の序章”に過ぎないんで、今後もズルズルと更新したり完結設定を解除したりするかも知れません。しかし最低限書きたかった部分は大体書けたので、見切りを付けて一先ずここ迄とさせて頂きましょう。

ではいずれ何処かで。
もしくは此処でまた。
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