夢の守り婢奴   作:スターク(元:はぎほぎ)

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そろそろ読者を振り落としていきます(犯行予告)

ちなみに本作のオルフェノクに入ってる意匠は、ユニコーンではなくバイコーンの方です


Mの背信/救われざる男

────世界は幾つもある。

 

ある世界では古代より目覚め、2000の技を持つ男にその力が引き継がれた仮面ライダーが涙ながらに拳を奮った。

 

またある世界では、加速した時間の中で宇宙より来訪した擬態生物と戦う仮面ライダーが天の道を貫き通した。

 

ライダーだけじゃない。

 

戦隊が平和を守る世界もある。

 

光の巨人が宇宙を救った世界もある。

 

怪なる獣の王が、己以外の悉くを滅ぼした世界だって。

 

 

「ご苦労だった」

 

──オレは、そんな異世界の一つを担う()だった。

 

「充分以上だ。オレの目論見をこれでもかという程果たしてくれた……これで()()()さ」

「そうかい。鉄砲玉冥利に尽きるわ」

「……」

 

敢えて突き放した物言いに、しかし彼は快く笑う。嫌味の無い本心からの善意で──まるでそれが当然みたいに。

止まりかけの心臓で、全身から血を滴らせて、穏やかに笑う。

 

「……恨んでくれよ」

「え?なんで?」

「君は、捨て石にされたんだぞ」

「神様が人間を駒にするなんて日常茶飯事だろ」

「そんなの神じゃない!」

 

何が神だ。オレに出来る事なんて何も無かった。

蔓延る悪逆を何一つ正せず、(いと)し子が虐げられる様を眺める事しか出来なかった木偶の坊。それがオレだ。

違う。そもそも、悪逆を為す人々さえも愛し子の筈だ。この時点でオレは区別という名の差別を行っているというのに、どの口で彼らの悪徳を糺せる?

 

──その結果。目の前の彼の運命を弄び、その手を穢させたというのに。

 

「恨んでると言ってくれ。呪ってやると言ってくれ。じゃないとオレは、オレは……!」

「……あのさぁ……

 

 

あれは()()()()だよ」

 

懺悔は届かない。彼は徹底的にオレの無罪を主張し、その罪を自身の背にだけ負ってしまう。

けれど、やはり何も出来ない。これ以上駄々を捏ねてしまえば、それは今告げられた彼の自由意思を否定する事になってしまうから。

 

「泣くなよぉ。お前に引っ張り上げて貰えて、俺はやっと自分の人生に意義を持たせられたんだ。感謝しか出来ないんだってホント」

「……君が選ばれた“本当の理由”を知っててそれを言うのは、皮肉にも程があるだろう」

「卑屈になんな、そんな調子でお前の加護を受けた奴らが路頭に迷ったら、それこそ俺の存在が無意味になっちまう。それに……」

 

とうとう心拍が止まったのだろう、灰となって崩れていく身体。生まれた世界の、死した水底へ還って逝く彼。それでも微笑みは絶やさずに。

 

「約束も出来たんだ。今度こそ誰かを愛して、マトモに生きてみるって、な」

「……応援してるよ。太陽の叡智が、君の未来に輝かん事を」

「そりゃ頼もしいや」

 

 

いよいよ離別の時か。身体の消失は喉元まで差し掛かり、口まであと少し。次が最後の言の葉。

 

「……ラビア。アイツらを頼む」

「ああ。祖たるこの名に誓おう」

 

消える、消える、消えていく。声も血も何もかも、この世界に非ざるべきと消されていく。

その眼差しが潰える、その前に。

 

 

「愛してるよ、凱歌」

 

 

目が見開かれ、困惑に染まった。そして否定の意思を示す前に、無くなった。

 

……その場にオレは、崩れ落ちる。

 

「──ぁ……あぁぁぁあああああッ!!」

 

分かっていた、彼は愛される事を拒絶する。それが分かっていたから、反論できなくなるあのタイミングでしか言えなかった。それが、オレ達の望みを、その範疇を逸脱してまで叶えてくれた彼に出来る唯一の仕返しだ。

こうでもしないと、こんな些細な愛でさえ彼は受け取ってくれなかったんだから!

 

「人間の神よ!いるなら、どうか聞いてくれ!!」

 

神が神に祈るなど、どれほど愚かで滑稽で惨めなザマだろう。それでもオレは、彼を、その未来を想えば縋らざるを得なかった。

 

「彼に、救いを……!」

 

 


 

 

貧乏旗本、徳田新之助は八代将軍である!

悪党は、世に蔓延り治世を乱す逆賊である!

江戸の平和を守る為、徳田新之助は逆賊と斗うのだ!!

 

 

つまり、徳田新之助は仮面ライダー。ディケイドが変身できても何ら不思議ではない。

 

 

「そうはならんやろ」

「なんでだ?敵は徳川幕府の統治を揺るがす衝撃者(ショッカー)だろ、その点でも徳田新之助は仮面ライダーだ」

「取り敢えず松●健の顔で井■正大の声を出す所からやめてくれんか」

 

しかしすぐ受け入れられるか否は別問題である。保-スオルフェノクの困惑を見るに、少なくともこの場では後者だったようだ。

と、いうか。

 

「その声……まk」

「ファンファーレ!早くしろカス共!!」

 

早くも判明しかけた真相を隠すべく、行われた露骨な話題逸らし。どうやらここに集められたオルフェノクは皆ホースの恐怖支配下にあるようで、怯えを見せながら各々の楽器を手に取った。

名曲の面影を残した不協和音が鳴り響く。それを聞いて尚、ホースの不機嫌は治らぬようで。

 

「チッ、故すぎや▲氏の音楽を台無しにしやがって。終わったら全員処刑な」

「「「ヒエッ」」」

「はっ。人間を殺戮するお前達が、人間の文化を尊重しているのか?」

「尊敬する奴と尊敬する価値の無い奴を分けてるだけに過ぎん。これは差別じゃない区別だ」

 

その中でもすぎやま▲ういち氏は特別枠だがな、と悪びれもせず宣うホースに、暴れん坊将軍もとい●平健もといディケイドは呆れ返る他無い。コイツ、自分の所業を肯定する為なら平気でダブスタをかます性根なんだなと。

そんな視線を他所に、ホースが向いたのはスタート地点だ。

 

「ま、アイスブレイクはこの辺で良いだろ。とっとと始めようや」

「……俺が勝ったら、」

「分かってる。寝んねしてるカイザの連中に関しちゃ耳揃えて元の場所に返してやるよ。ああ、耳だけちぎり取るわけじゃないから安心しろな」

「今の発言で余計心配になったが」

 

「ブルルルルゥ……」

「……ところでだけどディケイド。その馬って()()?どういう理屈でどこから召喚したんだよ」

「引っかかったな。アタックライドとはこういう物だ」

「そっかぁ」

 

ABARE-UMAのカードで呼び出した白馬に関して言及したところで、両者位置に就く。スターターを務めるオルフェノクが旗を振り上げ──スタートが切られた。

 

 


 

 

────作戦第1段階は失敗か。

 

『現地の状況はどうなった』

『他の全基地に散らばった同胞も把握できていないようだ』

『地球人達の間でも情報が錯綜している』

 

途切れた情報。カイザ部隊がどうなったかなど最早どうでもいい、ディケイドは。奴は今何をしている?

最も望むはアークオルフェノクとの共倒れ、次点で打倒。最悪は逆に倒されている可能性……だがまさか、それを知る手段さえ無くなるとは思わなかった。

 

『人類からの打診だ。これより東京区域に大規模航空編隊で侵入、無差別攻撃を実施すると』

『制空権も現地住民の保護もかなぐり捨てたか』

『我々はどうします?』

『……()()を始めよう』

『本気か!?』

『準備だけだ』

 

もしも事が次善を下回るルートを辿った場合に備えて、ディケイドにも言った“最終手段”の手札を切る。まだその前段階まで、だが。

 

それに踏み切ろうとした刹那だった。

 

 

『……!?』

『どうした、電力供給が切れたぞ』

『こんな時に停電か!』

『いや違う!意図的に遮断されてるんだ!』

 

突如暗闇に包まれる。我らブラッド族といえど生命維持にエネルギーは欠かせず、弱ったこの状態なら水槽から出る事も儘ならない。そんな状況で、水槽内の環境維持と外界の知覚手段が断たれたのだ。

端的に言って存亡の危機だった。

 

『まさか、人間風情が我らを謀ったというのか!?』

『こんなところで……!!』

「案の定“風情”ですか。茈さんの仇です、精々震えていてください」

動揺しようが暴れようが意味は無い。喉元まで迫った死神を知覚し、星狩りの一族は狩られる恐怖に打ちのめされるのだった。

 

「さて。そろそろ時間ですよ、遊んでる暇はあるんですか?」

 

余談だが、電力を失ったのは人類側の全基地で同時だったらしい。ブラッド族だけが困っている訳ではない、人類側もテンヤワンヤの大騒ぎだ。

が。それを知る由もまた、我らには無かった。

 

 


 

 

残り300m。

白馬(暴れ馬)灰馬(ホースオルフェノク)が駆ける。最終コーナーを終えて直線へ。

歓声は無い。席に配置されたオルフェノクらは微動だにせず棒立ちのまま、その足下に倒れたままのカイザ部隊のカメラだけが歪に映すのみ。

 

「────ハァッ!」

 

先に仕掛けたのはディケイドだ。ライドブッカーを鞭代わりに奮い、白馬が持つ末脚を発揮させた。グン、と前に出る馬体。

ホースオルフェノクも負けじと前傾姿勢。己の重心移動を加速度に加えゴールを目指す。残り200m。

 

小細工は無い。

卑怯も無い。

それは殊の外クリーンな、正々堂々とした決闘(競走)の様相だった。

 

残り100m。

 

白馬が自身の意思で勝負に挑む。促されるまでもなくさらに加速し、僅かに前へ。

 

「ぁっ……」

 

ふと、その視線がホースオルフェノクと交錯した。その瞬間が隙となる。

ハナ差、アタマ、クビ、半馬身、1馬身──決着。

相手を完全に後塵へ拝させて、白馬がゴール板を割った。ディケイドの勝利である。

 

転倒しないよう、両者徐々に減速。時間にして10秒ほどか、先に口を開いたのはホースオルフェノクの方だった。

 

「……これが、アイツらの見た世界かぁ」

「何の事だ?」

「こっちの話。と、それよりカイザ部隊の方だったか」

 

深入りは許さない、といった声音で指パッチン。するとカイザ部隊の姿が一瞬で掻き消え、また南阪との通信も回復する。

 

《士さん、南阪です!カイザ部隊全員が失神状態で転移して来ましたが、何かあったんですか!?》

「ちょっとな。作戦は半分失敗だ……が、もう半分は成功している」

《……つまり?》

 

()()()()()()()()()と接敵した」

 

その言葉に、ホースオルフェノクは一拍置いてカラカラと笑いだした。悪戯を見抜かれた子供が開き直ったようだった。

 

「あーあ。早ぇなぁバレるの」

「そもそも隠す気あったのか?声と気配が通信映像の時と同じだっただろ」

「確かに。次やる時はもっと気を付けるわ」

 

そう言いながら、彼の姿は何処からともなく灰を纏い、やがて現れたのは青年の姿。少し前に宣戦布告してきた時と全く同じ顔で、牧路凱歌は尚嗤う。

 

「で。第1R(レース)の勝者であるモヤシディケイドは、お次に何を望むかね?」

「決まってるだろ、お前の首だ」

\KAMEN-RIDE──DECADE!!!/

「おーこわ」

 

一方で臨戦態勢を崩さず、ディケイドは素の自分へフォームチェンジ。この場での決戦も厭わない姿勢だ。白馬もマシンディケイダーに戻り、牧路が名残惜しそうな視線を送るが何も関係は無い。

そしてそれだけに留まらず。続いて取り出された()()()のデバイスに、さすがの牧路も笑いが引っ込む事となる。

 

「……もうそれを切るのか?マジで言ってる??」

\KUUGA!/

\AGITΩ!/

\RYUKI!/

\ΦZ!/

\BLADE!/

「本気かよオイッ!!!」

 

牧路の方は此処を戦場にする気は無かったようで、気障ったらしい指パッチンをする余裕も無く腕を振るう。宣戦布告映像と先刻のカイザ転送と同様に、自身とディケイドのワープを試みる。

その猶予の内に、ディケイドは全ての手順を完了させていた。

 

\HIBIKI!/

\KABUTO!/

\DEN-O!/

\KIVA!/

\FINAL-KAMEN-RIDE──/

「ぐぉッ……!」

\──DECADE!!!/

 

牧路凱歌を吹き飛ばし、転移途上の空間の歪みを破壊する暴威。その中心に、破壊者が立つ。

それは九つの世界を巡った物のみが得られる力。完全なるディケイドだ。

 

「次やる時は気を付ける、とか言ってたが」

 

コンプリートフォーム。ディケイド、最強の姿。

その銃口を突き付け、彼は言い放った。

 

「お前に“次”は無いぞ?」

「……!」

 

向けられた殺気に思わず息を呑み、しかし牧路凱歌は再び不敵な笑みを浮かべる。自身がめり込まされた岩上の壁に手を掛け、ゆっくりと立ち上がった。

そう、ここは既に自身(アーク)の居城。目的地である最上階へのワープこそ強制終了されてしまったものの、途上でその中に入る事は出来ていたのだ。

「ここへ来てさえいれば、まぁなんとかなる」。そういう意図を、この笑みは孕んでいた。

 

轟音。

崩落。

 

「なにっ!?」

 

突如大穴が開いた天井に虚を突かれ、注意を逸らしてしまう。

その間に牧路は指を鳴らし、勘づいたディケイドは銃撃。鮮血がブチ撒けられ、だがトドメには届かなかった。

 

「糞っ!」

()ッッッッッッッわァ!?!お前マジかよ人間態だぞ俺?!》

「人間なのはガワ(見た目)だけだろうが!どこへ逃げた!?」

《ちょっと別件が迫っててな!割と予定カツカツなんだ、()()()と遊んで時間潰しといてくれ!!》

 

傷を負いながらも一人転移した牧路の声が響くが、ディケイドにそれを追う術は無い。オーロラカーテンを出せば話は別だが……上から迫る殺気は、それを許さないだろう。

 

その気配はディケイド──士もよく知る物で。

 

「ユウスケ……?」

「……やっと、見つけたぞ」

 

仮面ライダークウガ。

ライジングアルティメット。

その瞳は、()

 

一瞬安堵したその頬を、稲妻を纏った拳が打ち抜いた。

 

「ガッ……!?待てユウスケ!俺だ!!」

「ここが年貢の納め時だ!士はやらせない!!」

「士は俺、くぉッ……!」

 

クウガこと小野寺雄介の返答は的を射ない。その猛攻を何とか凌ぎつつ、ディケイドは上階を見上げる。その頂上へ逃げた敵を睨みつけて。

 

「牧路、凱歌……ッ!!」

 

友に何をした。そんな有りっ丈の怒りを瞳に込めながら。

 

 


 

 

「くっそ~、マジでアイツ容赦無ぇの。もっとこう……手心とかあるだろ普通」

 

風穴の空いた脇腹を(さす)りつつ、野晒しの最上階から眼下を見下ろし告げる。その傷も徐々に塞がり、晴れて五体満足となってから牧路は世界を見渡した。

ここは成層圏。地球が青く、良く見える。

 

「うん、全基地で電力落ちてんな。ブラッドの連中も焦りを募らせながら何も出来てない。()()()も上手くやったもんだぜ、褒めてやりたいところだ

 

途中、唐突に島田●に声帯を変えながら彼は呟く。先程「他人の顔で他人の声を出すな」とディケイドを咎めたのは何だったのか。

しかし一転、真剣な表情で見上げた上方。そこに青空は無く、広がるのは広大な宇宙と輝く太陽────

 

「さぁ、て」

 

────を背にして、迫る巨影。

東京は渋谷。そこへ向けて大気圏に突入しようとする、()()があった。

 

中に(ひし)めく悪意、悪意、悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意。

 

全部、彼には見えている。

 

「……してやる」

 

暗い闇の宇宙から、遠くこの星を狙ってきた不埒者。“呼び声”にまんまと吸い寄せられてきた愚か者ども。

その総てを殲滅する為にこそ、彼は此処にいた。

 

\Standing-by/

「虫ケラ共が……ッ」

 

地球を狙う全てを(コロ)せ。

地球に仇為す総てを滅ぼせ。

 

内より嘯くその声を微塵も疑う事は無く。

 

\COMPLETE/

 

金色の閃光を纏い、彼は飛ぶ。地を蹴り空を駆けていく。

 

見据えた“敵”を殺し尽くすまで。




【Open your eyes for the next...】

\FINAL-FORM-RIDE──KU・KU・KU・KUUGA!/
「この程度でやられるかァッ!!」
「士君!無事だったんですねっ」
「おのれディケイドォォォ!!」

「お前、本当に何者なんだ?」
「貴方が聞きますか?──ただの人間ですよ」

《第5話 この青空を守っているのは誰なのか》

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