「────へェ?ほうほうほう、ふむふむ。何だァコイツはたまげたなァ」
「あっ。現在日本列島をあっ、占拠したオルフェノク軍とあっ、戦あっ争中あっであっあっあ゛っ」
「オーケーもう良いぞ。ご苦労だったな」
ヌプリという音と共に耳孔から引き抜かれる触手。激しく痙攣する兵士の心臓を、人生お疲れ様とでも言いたげな光弾が貫いた。
その下手人である仮面ライダーエボルは、自らが薙ぎ倒してきた亡骸たちを見遣る。
「しっかしトンデモな世界に来ちまったモンだ。時空はどうなってんだ時空は……っと、
エボルイヤーは地獄耳。ここで警備兵の接近を感知し、しかも幾らかは目覚めたばかりのカイザ部隊人員も混じっているようだ。どうせどれだけ集まってこようと鎧袖一触なのだが、それでは芸が無いなと思案するエボル。
ここで閃いた。どうせロクな考えではない。
「どうせ一緒くたに火葬されるんだ。その前に
言うやいなや、横たわる死体たちに向けて手の平からのガスを噴射。それを浴びた彼らは見る見るうちに姿を変え、やがて全身を
そこへ更にもうひと手間、エボルは自身の細胞の一部を放ち偽オルフェノク達へ寄生させる。フラリ、起き上がる亡者共。
「ここまで小さい分身じゃ精密操作は出来ねェが、今回に限っちゃ雰囲気づくりにも繋がるだろ。っと、来たか」
「現着!交戦を開s……オルフェノク!?貴様アークの手の者か!」
「そうとも言えるしそうでないとも言える……かもなァ?」
「問答無用だ!
フォトンブラッド混じりの実弾の雨を、エボルは偽オルフェノク軍団の陰に隠れて回避。やがて軍団は走り出し、人類軍の兵士達へ襲い掛かる。
「「「豁サ縺ュ豁サ縺ュ豁サ縺ュ豁サ縺ュ豁サ縺ュ」」」
「来るな、来るな化け物っ」
「死にぞこないがぁ!」
それがかつての同僚だったとも誓いを交わした同志だったとも知らず、響く銃声、裂かれる肉体、轟く怒号と悲鳴。それを眺めて、エボルは満足げに呟いていた。
「良いねェ。やっぱり
「来て早々名言飛び出したぁ」
「全くです。身に沁みますよ」
つーワケで、来てくれたエボルト君の活躍をハッキング下監視カメラから覗いてるんだけど、いやもうすんごい大暴れ。隣の南阪と、揃って感嘆の溜め息を吐いちまうほどだ。流石は火星から来た侵略者と褒めてやりたい所だ。
ベルナージュ?*1知らんなぁ。
「名言……だと?」
そんな俺達の様子が心底気に入らない方々が若干三名。そのうちの一人、クウガ=小野寺ユウスケが喚き始めやがった、
「ふざけるな!人が死んでいってんだぞッ」
「ええ。だからこそこうやって落ち着いて見てるんですが」
「南阪さん、アンタはどっちなんだよ!?このまま見過ごすっていうのか!!」
「私は貴方がたに個人的に敬意を払ってるだけで、立場としては凱歌さんの共犯者に過ぎませんよ。それが不満なら、じゃあ貴方が行ってきて下さい」
「ああ行ってくるよ!そもそもアンタらに呼び止められなきゃすぐ行ってたっつーの!」
そして始まる口論。イカンな、こんな語気を荒げる南阪は初めて見たぞ。なんか地雷踏まれたのか?
「落ち着け。お前らしくもない」
「……凱歌さんがそう仰るなら」
「なんで一々そう
「…………」
「お~いお茶」
「そろそろ俺からも発言良いか」
「良いよディケイド」
黙っちまった相棒はさておき、お次は世界の破壊者から。どうやら向こうも血気に逸るクウガを抑えるのに大変そうだ。
「質問がある。エボルトの危険性は把握しているようだが、ならなぜ召喚を看過し、剰え迎撃に行かない?10分前にワームの隕石を破壊した行動と矛盾してるぞ」
「まさか、危険性を分かってるからさ。本気出したら片手間でブラックホール作れるような奴に正面から挑んでどうすんだよ」
「だったら猶更、召喚は阻止すべきだっただろ」
「スケイブからの誘因信号はとっくの昔に発信されちまってんだ。阻止してようがいずれ来たさね、だったらタイミングをこっちでコントロールできる召喚の方がまだ良い」
この言葉に引っ掛かる物があったようで、傍に控える夏海を庇いながらズイと詰め寄って来るディケイド。距離2mで制止、そして対峙。
「つまり……今この頃合いが、呼ぶのにちょうど良かったと?」
「
仮面ライダーは敵と同じ力を使う。1号2号はショッカーと同じ改造人間の肉体を、クウガはグロンギと同じ封印パワーを宿す
ディケイドにとっての“敵”とはライダーだ。だから他のライダーに変身してその力を使える、つまり全ライダーに対して絶対の勝ち筋を持つという事に他ならない。尤も、その力で各ライダーの敵にも特効出せるのがコイツのバグ染みた強みなんだが。
ならもし、億が一、何か間違って俺がエボルトに負けたとしても……ディケイドという“保険”があれば、まぁなんとかなるやろ。知らんけど。
「ってのが俺の目論見」
「なるほど。大体わかったかもな」
「どの辺を疑ってる感じ?100%信じたって語調じゃねぇけど」
「お前の存在そのものだからどう弁解しても無意味だぞ」
「酷ぇや」
ま、お喋りは切り上げてそろそろ動いても良い頃合いだろ。そう考えて手を叩けば、転移用のワームホールがディケイド達の後ろに出現した。
「話はここまでだ。助けに行きたいんならお好きにどうぞ」
「私達を逃がすんですか?」
「お前らに逃げる気があるんならな。あっコレ別に挑発じゃないから」
「何だとォ?!」
「だから挑発じゃねぇって!」
「戻るなユウスケ!ここは乗るぞ」
「「士(君)!?」」
意図しない売り言葉を思いっきり買い叩いてきたクウガを、すんでの所でディケイドが止めてくれた。あー良かった、此処から話題が逸れちゃ敵わん。原因の半分は俺だけど。
「ユウスケ、お前はエボルトを頼む。奴がどの
「っ……おう!士はどうするんだ?」
「
「わ、私だって戦えますよ!」
「キバーラになれないんじゃどうしようもないだろ」
「むぅ……」
「話は纏まったようだな」
班分けが定まったのを見計らって声を掛ければ、帰って来た視線は鋭い。敵なんだから当然ではある、異論も無いし。
「ああ。だがお前のゲートは使わん」
「は?」
「行ってこいユウスケ!人類軍は任せた!」
「任された!!超変身ッ」
「あぁ~……」
でもまさかお膳立てに用意したワームホールをガン無視してオーロラ使われるとは思わなんだ。何か細工してると思われた?信用無ぇなぁ、ちゃんとエボルトの真後ろに出れるよう調節してたのにな。グスン。
「実際細工してたんでしょう?バレバレですよ」
「言うなよ。あっでもその調子で揶揄ってくれるのは非常にヨシ」
「何を見てヨシと思ったのやら……」
ここで謎の不調から復帰してくれた南阪からのツッコミ。そうだよそれだよ、コレが無いと調子狂うぜ全く。
そんな俺達をひとしきり眺めてから、光夏海から一言。
「お二人って、その……本当に仲が良いんですね」
「「え?
「その情の一欠片でも人類に向けてやれば良かったのにな」
「「それは無理」」
更にディケイドからの小言with銃口も向けられてから、俺達はモニターへ視線を戻した。死者の軍勢の後ろでふんぞり返るエボルト、その横っ面へ瞬間移動タイタンパンチを喰らわせたクウガが映った瞬間が、克明に映されていた。
さぁて、小野寺クウガでも相手に不足はない筈だ。一定以上のフォームが出れば、
となれば……あるなら使うだろ?破滅の引き金。
使わないなら、無いって事だろ?
「どう出る、エボルト」
ある意味ここで全てが決まる。
これはそういう賭けだった。
「えっ何っ何だァッ!?」
「えーっと棒棒棒──あった、借りるぞ!」
奇襲の連打でエボルを床に転がし、その隙に落ちてた
「その手は食うかッ」
「なっ……ぐあっ?!」
ありったけの封印エネルギーを込めた
(痛いな、タイタンの装甲を貫くほどの衝撃……いや、防御無視か!)
「お前も仮面ライダーかァ?見た所、ライダーシステムとは無関係な生体装甲らしいが……」
「超変身っ!」
「……んんっ!?」
硬さは意味を為さない、速度もドラゴンフォームでは不安が残ると判断。だから切り札その1を早めに使う事にした。
瞬間、心に重くのしかかる粘ついた感情……とすら呼べない破壊衝動。視界が漆黒へ染まり、自分以外に人間がいないようにさえ感じる孤独感。
アマダムが呼んでる。その先に行くなと、丹田から叫んでいるのを──
「────ハァッ!!!」
「ぐおおおおお!?!」
黒い眼で見据えた敵へ掌を翳す。すると相手は死ぬ。超自然発火とはそういう力だ。アルティメットフォームを説明するのにこれ以上相応しい能力も無いだろう。
……見栄を張った。相手は死ぬと言ったけど、例外もある。
「っっっっっ
「ふんッ」
「加えて溜め無しと来たか!」
目の前の相手は例外側だったようで、早々に鎮火・再生しやがった。でも聞いてたのは事実だし、追撃に掌を向けようとすると回避に徹されて狙いが定まらない。くそ、ペガサスフォーム以上の探知能力で動き自体は追えてるのに……!
(コイツ、動き方が巧い!動線が読めないなんて……)
「狙いを定めないと発動出来ないようだなァ、どうやら性根は放火魔じゃないらしい!」
「しまった!」
攻めあぐねてるうちに煙幕を張られてしまい、余計に動きを読み辛くなった!落ち着け、こんな時こそ冷静に見極めろ……視界が利かなくとも音さえ拾えればどうにだって……ッ!!
「──ま。敵地ではコレが効く」
「卑怯だぞ……!」
「ラッキョウも無ぇよ。あぁ、Nascitaに在庫置いてたっけな?」
煙が晴れた先で、エボルは倒れてた兵士を肉盾にしていた。くそっ、このまま発火させたら彼も巻き込まれてしまう。
何か、何か手を……!
「お前にも興味はあるが、生憎やられる訳にもいかねェんだ。ちょっくらここで寝込んで……」
「……これしか無い」
「オイ待て何sがァっ!??」
超変身。ライジングアルティメットの純粋なスペックで、瞬時に回り込んで殴り飛ばした。人質も奪還。
相手は星を滅ぼして回る怪物だ。これで、決める!
「畜生!この俺がまさか、また!」
「おぉりゃああぁぁあああッ!!!」
脚力120tから放たれる必殺キック。当たれば確実に倒せるという確信と、それを証明するような相手の断末魔が響く。ぐんぐん迫る足が、とうとう奴の胸を捉えたと思った、その刹那。
「人間共がぁ~~~~!!────なんてなァ?」
地面が砕ける。その衝撃と瓦礫の衝突で、僅かに逸れた軌道を縫うように避けられた。
何だ、今のは!?
「
着地した俺の背後で、何かが床の大穴から出てくる。あれは確か、エボルが出してたスライム状の分身?死体を操る時に密かに地下へ忍び込ませてたのか!?
そして、それが今運んで来たのは……
「わざわざ人間の軍施設で暴れてたのは、
「いや知らん、何だそれ」
「ハザードトリガー。
何かする。それを阻止すべく手を翳すけれど、多分間に合わない。
それでも、人々から笑顔を奪うコイツはここで倒す。その決意と胸に秘め、視線を逸らす事だけはしなかった。
次の瞬間、事態が急転直下を迎える事なんて知らないまま。
……
「よし。ハイお疲れ、解散解散」
「は?」
「……やるんですか」
問うてくるディケイドと南阪に、俺は肩を竦めて返すのみ。そりゃあ、やるだろここまで来たら。
「オイ待て。お前は一体何を企んでいる……?」
「止めたいんならどーぞ。今すぐそのライドブッカーで蜂の巣にすりゃあ良い」
「質問に答えろッ」
銃声。衝撃。胸骨及び肋骨もろともに内臓が吹っ飛ばされた。軽く10mは吹っ飛んで地に転がる。こいつマジで容赦なさ過ぎじゃね?
「士君っ!!」
「夏海、止めるな!」
「あっいえ止めるつもりは……」
「仮面ライダーが敵とはいえ人間の姿をした相手を躊躇無く撃ったんですから、驚いて呼び止めてしまうのも当然でしょう。深く知り合った友人なら猶更です」
「貴方は貴方で動揺しなさ過ぎでは?!?」
ま、ディケイドとしてはそれだけ俺の行動を危険視してたって事だろう。実際俺が今から仕掛けるのは“王手”だ、その判断は間違っちゃいない。
ディケイドがこの世界にいて。
エボルトの手にエボルトリガーが無く。
月には侵略者の死骸の山。
「南阪を虐めんなよ。望み通りに教えてやっから」
「え……生きてる?!」
「死んでるさ。死んだこの身で──」
「ッ!!!」
条件は揃った。
“収穫”だ……!
「今からそれを教えてやるっつってんだよ!」
【Open your eyes for the next...】
「士君に何をっ!?」
「嘘だろ……こんな事、がっ……」
「ブラッド族から情報提供されてましたからね、貴方は」
「じゃ──勝利の宴と洒落込もうか」
「……近付いて来てね?」
「ああ……月が……」
《第8話 星喰い》