ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…!   作:よく酔うエンジン

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 毎日投稿…無理でした…ガハッ

 そういえばなんですが、アンケートを集計した結果、基本朝に投稿できるように設定はしておきますが、出来次第投稿!みたいなケースもあるという認識でいただければ…!!

 お気に入り700件…!?す…すごい勢いで伸びている…!あ、ありがとうございます!頑張ってみんなに楽しんでもらえるように頑張らなくては…!ひとまず赤バー維持目指してがんばります!

 実はなんですが…頑張って毎日投稿をし続けようとしていた影響か、小説を書きながら過去のお話を読んでいたのですが…なんというか…描写不足の所が多い…!って感じまして、気がついたら修正するかもです!

 大まかな流れは変わらないので、もし読み返すような機会などがあれば、”あ、ここ変えたのね”って思っていただけたら幸いです!

 …はい、1回目で完璧に書き上げろよって話ですよねハイ。申し訳ありません。

 今回は、赤峰の視点がメインではないので、若干つまらないかも…というより、原作知ってる人はあまり楽しめないかも…ごめんなさい!スマプリ知らずに読んでくれている人もいるだろうから必要なんです!何卒許してください!

 ちなみになんですが、夜モードで読むことはやめた方がいいかもです。多分、色が…変になってます(読めはする)


爆誕!キュアハッピー!

「うわぁぁぁぁああ!!!」

 

 

 星空みゆきは、今不思議な七色のトンネルの中にいた。

 遅刻しそうな自分を自転車に乗せてくれた赤峰に、学校を案内してもらっていたというのに…図書館で謎の光を追いかけて本を動かしたことで、気がついたらここに引っ張り込まれてしまっていたのだ。

 

 

「アイタッ!!」

 

 

 と思っていたら、そのトンネルの終着点に来たのだろうか。今度は乱暴にその異空間から弾き飛ばされて、顔面から着地した。

 

 

「うっ…いったーい……!………え?」

 

 

 顔面をぶつけるのは今日で2度目である。

 1度目は、今朝に起きた。

 

 彼女は、赤峰と邂逅する前に、とある不思議な出会いをしていたのだ。

 

 

『こっちに向かってくる…!!』

 

『クル!!』

 

ベチーン

 

 

 絵本のような不思議な出会いが起きるかも!と遅刻しそうにも関わらずるんるんとスキップしていたら、空から絵本が降ってきた。そして、その本の中から見たこともない可愛い生き物が飛び出してきたのだ。

 

 

『あなたはイヌさん?ネコさん?タヌキさん?お名前は?』

 

『名前は"キャンディ"クル!』

 

「キャンディは…絵本の国『メルヘンランド』の妖精さんクル!」

 

『絵本の国…?妖精さん…?』

 

 

 そして、その絵本の中から、"メルヘンランド"の妖精さんを名乗る可愛い生物、"キャンディ"と出会っていたのだ。

 

 落っこちてくる本から飛び出てきた形となるので思いっきり互いに顔面衝突をかましたものの、彼女にとっては夢にまで見た"絵本の様な素敵な出会い"。

 

 

『キャー!絵本好きの私にやってきたよ素敵な出会い!!妖精さんだって妖精さーん!!』

 

 

 あまりの嬉しさにトリップしてしまい、後に心配して話しかけてくれた赤峰をドン引きさせるほどだった。

 

 しかし、キャンディは急いだ様子でどこかへ行ってしまった。もっと妖精さんを名乗ったキャンディとはお話ししてみたかったし、友達にもなりたかったみゆきはずっと気がかりだった。

 

 

『キャンディ!!キャンディだよ!ほら!』

 

 

 だから、教室の窓からキャンディを見つけた時は、授業中だというのに興奮してしまった。

 

 

「すごい…!」

 

 

 だが、今はそんなこと忘れ去ってしまうくらい神秘的な景色に目を奪われていた。

 

 彼女がついた場所は、不思議な自然あふれる図書館だったのだ。

 明るい日差しが差し込み、ポカポカした空気が身を包み、水が流れ、木々が生い茂り、ふさふさな草の絨毯が彼女の顔面を出迎えてくれていたのだ。

 

 

「何処だろうここ…綺麗…!」

 

 

 当然、彼女はこんな景色など見たことがない。幼い頃から絵本を読んでメルヘンなものが好きな彼女にとって、たまらない空間であるのは想像に難くなかった。

 

 

「周りの壁、全部に本が並んでるんだ…!すごーい!」

 

 

 しかも、その豊かな自然あふれるその施設の壁は全て本と来た。

 絵本好きの彼女にとって、まるで夢の様なパラダイスだろう。目のキラキラが止まっていなかった。

 

 

「わぁ…これも…これも…!これ…も?これは…」

 

 

 すると、彼女は並んでいる本が()()()()()()()()()()()()()()()()だなと感じた。

 

 

「これって…さっきの本と同じ…!」

 

 

 なぜそう思ったのか。それは、先程言ったキャンディが飛び出て来た本の表紙と同じだったからだ。

 それを思い出したみゆきは、キャンディと出会うきっかけとなったピンク色の本を取り出し、その本棚にはめた。

 その瞬間、彼女が図書室で見た光と同じピンク色の眩い光が彼女を包み込んだ。

 

 

「あっ…!また光った…!」

 

 

 そして、その光の先に、彼女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()が映し出されていることに気がついた。

 

 

『ク〜ル〜!!!クル〜!!クル〜!!』

 

「きゃ…キャンディ!?」

 

『クル〜プリキュアはどこクル〜!!』

 

 

 本棚の向こうには…なんと、キャンディがいたのだ。

 

 

「どっどどど、どうなってんの!?本の向こう側にキャンディ!?むうぅぅ…!」

 

 

 慌てて本の隙間に顔を入れ込むが、全くもってよく見えない。

 

 

「見えない!ちょっとこれどうなってるの!」

 

 

 慌てて、本を()()()()()()

 

 

 カチッ

 

「キャンディが見えないよ!」

 

 

 そして()()()()()

 

 

 カチッ

 

「もう!」

 

 

 そして()()()()()()()()

 

 

 ガチャリ

 

 ピカッ

 ピカッ

 ピカッ

 

「うわっ!?」

 

 

 すると、またぽつりぽつりと本達が光り始め、ついには本棚全体が光り出す。

 

 

「ま…また…?」

 

 

 彼女は、この光景を見たことがある。つい数分前に。

 

 

「うわっ…うわあぁぁぁぁ!!

 

 

 そして、彼女は再度その桃色の光が生み出した扉の中に広がる七色のトンネルへと放り出されてしまった。

 

 

***

 

 

「っとっと…え?ここって…?」

 

 

 今度は顔面からはいかなかった。二度目だからであろうか。

 慌てて振り返ると、そこには"本"と書かれたお店の前に鎮座している本棚の前に自分がいることに気がついた。

 

 

「商店街の…本屋さん…?」

 

 

 周りを見渡してみると、見慣れた…というわけでもないが、見覚えのある場所だということに気がついた。それは、この街の商店街の一角であると、引っ越したばかりでこの辺りの土地勘が薄い彼女でもすぐ気がついた。

 

 

「ど…どうなってるの!?てか…赤峰君っ…!」

 

 

 幻想的な景色を見てキャンディを思い出したりして忘れていたが…自分は本来は赤峰と学校を回っていたはずだ。だというのに、不可抗力とはいえ彼女はその約束をすっぽかしてしまったに等しい。

 

 

「ど…どうしよう!思い出したはいいけどっ…電話番号も知らないしっ…はっ!とにかくキャンディ!えーと…こっちだ!」

 

 

 一先ず、赤峰にこのことは絶対に謝るとして、ここまで来てしまった以上、先ずはこの先出会えるかもわからないキャンディに会いにいくことを優先した様だ。

 記憶を頼りに、慌ててキャンディが向かっていった方向へと走り出す。何故自分がここにいるかは気になるが…それよりも、彼女はキャンディに会いたかった。

 

 

「キャンディ、キャンディ、キャンディ…!」

 

 

 お話ししたいことがいっぱいある。

 キャンディのことについて。絵本の国ことについて。そして、友達になってくれるかについて。

 

 そう思いながら、無我夢中で走っていた時だった。

 

 

「あ…!みーつけたっ!」

 

 

 屋根上をぴょんぴょん飛び回っているキャンディを見つけられた。

 

 

オオカミがっ…!オオカミがっ…!クルッ!?ク〜ル〜〜!!」

 

「あっ!キャンディ!」

 

 

 慌てた様子のキャンディが道を踏み外して屋根上から落下しているの見たみゆきは、咄嗟にキャンディの下へと向かい、そのふわふわな体をキャッチした。

 

 

「クル…?」

 

「はあっ…!キャンディ!」

 

「クールゥゥゥ!!??」

 

 

 落下した…と思い込んだら、みゆきにキャッチされていたので、キャンディは驚いてしまった様である。

 

 

「ク〜ル〜!!!」

 

「あ、ちょっと待ってよ!!」

 

 

 慌てて逃げ出そうとするが、友達になりたいみゆきが逃すはずがなかった。

 ガッチリとそのもふもふな体をホールドしてしまった。

 

 

「クルッ!空からオオカミが来たクル!!」

 

 

 だが、キャンディは別に彼女から逃げようとしたわけではなかった。というのも、"もっと別の恐ろしいもの"が彼女に近づいていたからだ。

 

 

「え…?」

 

 

 何を言っているのだろうか。オオカミ…と聞いて彼女が真っ先に思い浮かんだのは、童話『三匹の子豚』のオオカミだ。他にも、『赤ずきん』やら『七匹の仔山羊』やらに出てくるオオカミもパッと思い浮かんだ。

 

 いずれも物語の悪役である。

 

 だが…たとえ絵本でも、空からオオカミが来るなんてまずない。ましてや現実だ。そんなことあるわけないだろう…と思って空を見てみる。

 

 

「そんなの来るわけ…って!本当に何かいるし!!

 

 

 しかし、その予想は大きく外れた。

 

 空には確かに()()()()がいた。

 

 

 

「ウルッフフ…」

 

 

 特徴的な笑い声を上げながら、街を見下ろす存在が確かにそこにいた。

 

 長い白髪をたなびかせながら、青い服に身を包んだ狼男とでもいうべき様な風貌の存在が、大胆不敵にも空を飛んでいたのだ。

 

 

「…早速この街からおっ始めてやる」

 

 

 まもなくオオカミが笑みを浮かべると、どこからともなく"()()の本"を取り出した。

 

 

「世界よ…!最悪の結末…"()()()()()()"に染まれ…!」

 

 

ぐしゃり…と真っ黒な禍々しい絵の具の様なものが押し潰され、狼男の手を黒く染める。

 

 

「白紙の未来を黒く塗り潰すのだ…!」

 

ベシャリ!

 

 

染まった手をそのまま振るって、開いた白紙のページを黒く染め上げる。その瞬間であった。

 

 

ゴゴゴゴゴ…

 

 

 邪悪で悍ましい黒い気体が空へ一瞬にして集まる。

 そして、そのまま街を黒い空気で覆ってしまい、昼にも関わらずまるで夜中の様な空の色へと変わった。

 

 そして、やけに大きな満月が空に鎮座し、その場にいるだけでも気分が沈んでしまうほどの空気に世界が"染まった"

 

 

「何…?」

 

 

 みゆきは慌てて周囲を振り向く。

 突如として活気あふれていたはずの街が真っ暗闇の空間へと変わってしまったからだ。

 そして、その疑問にキャンディが慌てた様子で答える。

 

 

「ウルフルンが世界を()()()()()()にしようとしるクル…!」

 

()()()()()()って…?」

 

 

 慌ててみゆきは聞き返す。

 

 ハッピーエンドを好み、ハッピーを追い求める彼女にとって、最も聞きたくないであろう言葉が、キャンディの口から飛び出たからだ。

 

 

「悪い未来のことクル…!」

 

「悪い…未来…?」

 

 

 想像もしたくない様な言葉が飛び出る。

 悲しみ、苦しみ、恐怖、絶望、様々な負の感情が入り乱れ、なんの希望も見えない最悪の結末に染まった人間たちは、それぞれ視界の中に各々の”最悪の未来”を見てしまっていた。

 

 

「え…なんなの…これ…」

 

 

「もう…おしまいだ…」

「頑張っても無駄…」

「全然…楽しくない…」

「なんでこんなことしてるんだろう…無駄なのに…」

「今日で50連勤…ほとんど会社で寝泊まり…理不尽に契約も打ち切られて…上司になんて報告すればっ…また詰められるっ……」

 

 

ふと街を見渡してみれば、そこに先ほどまで人通りが多かった活気ある景色などどこにもなかった。

道端にいた人間達が項垂れて、各々絶望の言葉をまるで取り憑かれたかのように口にしていたのだ。

 

 

「大変クル!みんなから()()()()()()()が出てるクル!」

 

()()()()()()()…?」

 

 

「ウルッフッフッフ…!人間どもの発したバッドエナジーが…悪の皇帝"ピエーロ"様を…蘇らせていくのだ!!」

 

 

 人々から溢れ出ている黒いオーラが、ウルフルンが空高く掲げた真っ黒く染まった白紙の本へと集まっていく。

 

 みゆきは、目の前の状況が何が起こっているのかまるで理解できていなかった。しかし、急にうわごとの様にネガティブな発言を繰り返し、漏れ出始めた黒いオーラの様なモヤが、少なくともいいものではないのは肌で理解できていた。

 

 

「ウフッフッフッフ…!」

 

「止めるクル〜!!」

 

「あん…?」

 

 

 狼男は絶望させた街の方から聞き覚えのある声がしたと街の方を見下ろす。

 

 

「ちょっ…ちょっ…ちょっと!キャンディ!」

 

 

 みゆきは慌ててキャンディを制止する。

 

 目の前で何が起こっているのかいまいち理解できていないが、少なくとも空高く浮遊していたオオカミ男に自分達の存在はバレない方がいい。と彼女の本能が警告していた。

 

 少なくとも、あの狼男が何かをした瞬間街の景色が変わったのだ。明らかに普通の人間が関わっていい存在ではないのは明らかだった。

 

 が、もうすでにガッツリキャンディと狼男は目が合ってしまっていた。

 瞬間、とてつもない勢いで狼男が自分達の前へと着地する。

 

 

「ひっ…!」

 

「お前もこの世界に来ていたのか…?」

 

 

 肉食獣が草食獣を狩る時に行う様な鋭い目つきがキャンディに向けられる。その視線上にいるみゆきにもその視線は突き刺さり、本能的な恐怖が湧き出てきてしまっていた。

 

 

「世界をバッドエンドにしちゃ駄目クル!!」

 

「何それどういうこと…?」

 

 

 しかし、キャンディは違った。やけっぱちになっているのだろうか、先程までの逃げ腰だった姿勢と打って変わり、真っ正面からその狼男と対峙していた。

 

 

「ウルフフフ…未来は全てバッドエンドになる…!頑張っても無駄なだけだ…」

 

「え…?」

 

「違うクル!!無駄なんて絶対にないクル!頑張ったらきっとハッピーになれるクル!!」

 

「っ…!」

 

 

 

 

『ハッピー』

 

 自身が追い求めているもの。

 その言葉を聞いた時。みゆきの心の中で、何かが固まった様な音がした。

 

 

「フン…ほざいてろ」

 

 

いかにも興味ないと言った風に鼻を鳴らして、カツカツとみゆき達の方へと狼男が近づいていく。

 

 

「ク…クッルゥ…!」

 

 

啖呵を切ったはいいが、近づいてくる狼男に対抗する手段などキャンディには持ち合わせていなかった。

思わず涙目になって後退りしてしまう。

 

が、その瞬間、キャンディの体が浮いた。

 

 

「ァン…?」

 

「クル…?」

 

 

なぜならば、みゆきがキャンディを自分の胸元まで持ち上げたからだ。

みゆきは反射的に、キャンディをまるで守るかの様に抱き抱えていた。そして、恐怖に体を震わせながらも、彼女も啖呵を切ったのだ。

 

 

「キャ…キャンディの言う通りだよ…!私だって今日自己紹介上手くいかなかったけど…めげずに頑張ったら、クラスのみんなが助けてくれてなんとかできた…!」

 

 

そう言って思い浮かぶのは、緊張を解くために空気を馴染ませてくれた"日野あかね"。緊張した自分に話しかけてくれた"黄瀬やよい"。そして、遅刻しそうになって助けてくれたり、故意ではないかもしれないが笑いものになって笑わせてくれた"赤峰とうご"。

 

 

「どんなことも最後まで頑張り抜くの…!そしたら…いつか絶対!"ハッピー"になれるんだから!!」

 

 

バッドエンドについて、目の前の狼男の目的、手に抱えているキャンディが背負っているもの、何一つ知らないけど、彼女には聞き逃せない言葉が一つだけあった。

 

 

(未来が全てバッドエンドなんて…そんなこと…絶対にありえない!絶対にイヤ!!)

 

 

彼女は、"ハッピー"を追い求めていた。

それは自分でも言語化が難しい。

 

けど、少なくとも"バッドエンド"がそれに該当するはずなどない。

 

ハッピーを願い、ハッピーでありたい彼女にとって、悲しみや絶望に暮れる"バッドエンド"にみんなが染まることなど…例え力が無くても、例え弱くても到底許せるものじゃなかった。

 

 

「なんだ?オマエ…グダグダ言ってねぇでそいつを寄越せ。喰ってやる…!」

 

「クル〜!!」

 

「っ…!!」

 

 

しかし、星空みゆきは引かなかった。泣き叫ぶキャンディをやさしく抱きしめて、目の前の怪物を見据え、キッと睨んだ。

 

 

「私…決めた…!」

 

 

彼女の覚悟は決まった。

 

例え戦う力が無くても

 

目の前にいるこの子を

 

みんなのハッピーを守りたいと

 

 

 

「あァン…?お前、俺様が怖くないのか…?」

 

「怖いに決まってるでしょ…!」

 

 

今の彼女に戦う力なんてない。あの狼男の爪など掠るだけでひとたまりもないだろう。

 

 

「じゃあなんでソイツを庇うんだよ?」

 

 

ウルフルンは最もな疑問を吐く。

だが、少女は言葉を止めない。

 

 

「わかんない…でも…こんなちっちゃな子がいじめられてたら…!誰だって守ろうと思うよ…!」

 

「クルゥ…?」

 

 

もし、"誰かを守る存在"をヒーローとするのなら。彼女の心はまさしくヒーローであった。

 

だが、彼女の本質は…世界を救いたいだとか、正義を貫くだとかそんな大層なものではない。

 

 あくまでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そういった決意であった。

 

あの時、友達が襲われかけていた時に啖呵を切った、赤い戦士の力を持つ少年の様に。

 

 だが、彼女の足…いや、体は震えていた。

 決意は固くても…はいそうですかと体はついてこないものだ。

 

 

「震えてんじゃねぇか…!だったらお前から喰ってやるよ…!」

 

 

 そう言って、ウルフルンは獲物を狩る肉食獣の様な凄まじいオーラを放ちながらみゆきの方へと走り出した!

 

 

「う゛わぁぁぁぁ!!!」

 

「逃げるクルーー!!!」

 

 

 とはいえ、今の彼女にできることなど、キャンディを抱き抱えて逃げることのみだった。

 気がついたら足が動いていた。勿論オオカミとは逆方向にである。

 

 

「逃すかぁ!!」

 

 

 星空みゆきという少女は、そこまで運動神経は悪くない。足も遅くはない。だが、目の前にいる存在はオオカミである。

 

 日々平野を駆け抜けて生きるために獲物を狩るオオカミの足と、平和に生きて来た少女の足。どちらが速いかなど一目瞭然だった。

 

 

「キャンディを置いて逃げるクル!」

 

「そんなのできないでも怖いぃ〜!!」

 

 

 泣き叫びながらも、彼女の意思は固かった。意地でもキャンディをあの狼男に渡してたまるかと、強く抱きしめていた。

 

 

「走れ走れ〜追いつくぞ〜?」

 

 

 しかし、現実は無常である。もうすでに狼男はすぐそこまで追いついていた。

 方や泣き叫んで必死なみゆきだったが、向こうは顔色をひとつも変えずにケロッと彼女のすぐ後ろまで到達していた。

 

 

「このままじゃ…チミも食べられちゃうクルー!!」

 

「でっ…でも決めたんだもん!私!頑張る!私も!キャンディの言ったこと!正しいと!思うからぁ!!」

 

 

 目に涙を浮かべながらも、息が切れ始めて来ても、必死で足を動かす。キャンディを守るために。

 

 

「テメェらのやる事…全部無駄なんだよ…!」

 

「キャッ…!?」

 

「クルッ!?」

 

 

 しかし、恐怖に震え、なんとか必死で動かしていた足もついに限界を迎えてしまった。

 彼女は、そのまま転んでしまったのだ。

 

 

「ウルッフッフッフ!」

 

「っ…!」

 

 

 特徴的な笑みが聞こえ振り返ると、そこにはもうすでにオオカミが追いついて立っていた。

 

 疲れなど一切感じない表情で自分とキャンディを見下ろしていたのだ。

 

 

「さ…諦めてソイツを寄越しな?」

 

 

 オオカミにも追いつかれ、躓いて思う様に動けない。絶望的に危険な状況。

 絵本だとこのまま食べられてバッドエンドでもおかしくない。

 

 それでも彼女の心は折れなかった。

 

 

「諦めないよ…!私…!頑張るって決めたことは絶対に…!最後までやるんだもん!!それが私の…それが私の…!」

 

「……うっぜぇなぁ…」

 

 

 目の前に立つ狼男は、無駄な足掻きを繰り返す目の前の少女にうんざりとしていた。

 

 

「だったら…二人で仲良く…オネンネしなぁ!!」

 

 

 そう、爪が振り下ろされ、万事休すと思われた瞬間だった。

 

 

 

「"ハッピー"なんだからぁぁ!!」

 

 

 

 

パキーン

 

 

「っ!?うおっ!?」

 

 

 瞬間、覚悟を決めた少女をまるで守るかの様に現れた光に、狼男は吹き飛ばされてしまう。

 

 

「なっ…なんだぁ…!?」

 

 

 くるりと華麗に宙返りを行って着地するも、目の前の状況を理解できなかった。

 

 

「なんなの…これ…!」

 

 

 それは、光を生み出した本人であるみゆきもそうだった。

 柱の如く天まで貫いた神々しい光に身を包まれるも、何が起きたのか彼女自身も理解できていなかった。

 

 

「もしかしてチミが…!」

 

 

 すると目の前に、"友達を守る"覚悟を示した彼女を称賛するかの如く、円形の桃色のかわいらしい物体が現れる。

 

 

 字は"スマイルパクト"。大切なものを守るための力を戦う少女に与えるアイテム。

 

 

「なに…これ…?」

 

「"スマイルパクト"クル…!」

 

「え…?」

 

「君は伝説の戦士プリキュアだったクル…!」

 

 

 伝説の戦士『プリキュア』。聞いたことのない言葉に、彼女は困惑してしまう。

 

 

「な…何それ…!?」

 

「"キュアデコル"を"スマイルパクト"にセットして…『プリキュア!スマイルチャージ!』って叫ぶクル!」

 

「な…なんだか…よ、よくわかんないけど…やってみる!!」

 

 

 だが、彼女はなんとなく感じていた。

 今目の前にあるこの道具が、大切なもの…キャンディ、ハッピー、そして明るい未来を守るための力になってくれるということを。

 

 そして、手に持っていたピンク色のリボンの様な"キュアデコル"をスマイルパクトに装填する。

 

 

『Ready…?』

 

 

「プリキュア…スマイルチャージ!!」

 

『GO!!』

 

 

瞬間、スマイルパクトから光が溢れ出し、一直線に天へと射出された。

 

 

『GO! GO! Let's Go Happy!!

 

 

 その光が一箇所に集中し出し。化粧用具に扱うポンポンと軽く叩いて扱う”パフ”が現れた。

 それを手に取り、スマイルパクトにつけることで桃色の光を集約させる。

 

 

PON!

 

PON!PON!

 

PON!PON!PON!

 

 

左手、両足、両肩に胸…ポンポンとお化粧する感覚で叩いていく度に、彼女に纏っていた光が、伝説の戦士の装束を形成していく。

 

 

 ピンク色の綺麗な可愛い洋服。

 

 羽の様な肩の装飾。

 

 そして、大きなピンクのリボン。

 

 

 そして、最後と言わんばかりに、まるで大空に羽ばたく鳥の翼かの如く、髪が光り出して、より大きな明るい桃色の髪が形成された。

 

 

PON!PON!

 

 

「キラキラ輝く未来の光!」

 

 

そして、身を包んでいた桃色の光が消えて、輝く笑顔溢れる未来を守り、大切なものを傷つけさせないと心に決めた”戦うヒロイン(伝説の戦士)”が誕生した…!

 

 

「キュアハッピー!!」

 

 

 

 

 

「うぇ…?うぇ?えっえっ!?えっ!?えっ!?なっ…なんなのこれ…?かっ…かわいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「なんだアイツは……!」

 

 

 狼男は目の前の状況についていけなかった。

 

 さっきまでなんの力も持っていなかったガキが、何やら不思議な光を見に纏い、姿が変わった。そして、底知れない何かを感じてしまっていた。

 

 

「落ち着くクル!今チミは"伝説の戦士プリキュア"になったクル!」

 

「でんせつのせんし…ぷり…きゅあ…?」

 

「そうクル!」

 

「戦士ってことはまさかあの狼さんと…」

 

「戦うクル!」

 

 

 こうして…伝説の戦士プリキュア、星空みゆきこと"キュアハッピー"は勇猛果敢に光を見に纏い、悪いオオカミさんと対峙し、友達を、世界を守るために戦うのだった…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇ…ええええ!!!無理無理だって怖いもん!」

 

「えぇーっ!?プリキュアなのにクルー!!?」

 

 

 なんてことなどなかった。

 星空みゆきは、どこかの頭のおかしい妖怪縁結びと違って荒事など経験したことのない絵本大好き女子中学生。いきなり戦えなんて言われても無理に決まっていた。

 首をブンブン横に張って、全力で拒否の姿勢を示した。キャンディはその態度に驚きのあまり目が膨張して飛び出てしまっていた。

 

 

「プリキュアってなんなの…?」

「伝説の戦士クル」

「だからそれ何…?」

「だーかーらー…」

 

「なんだか知らねぇが…返り討ちにしてやるぜ!」

 

「「えっ?みゃぁぁあああ!!!!」」

 

 

 よくわからないが、あいつが何かする前に潰す。そう考えた狼男が、先ほどと同じ様に力強く走り出し、キュアハッピー達の元へと走り出して来た…!

 そして、話していて完全に無防備だったキャンディとハッピーは大きな悲鳴をあげる。

 

 

(どうしよう…!どうしよう…!はっ…!)

 

「あっ!そうだオオカミといえば!」

 

「うぇぇ!!?どこいくクル!?」

 

「いいからいいから!!」

 

 

 そう言って真後ろではなく、今度は真横に足を動かして走る。逃げ込んだのは、とある一軒家だった。

 しかし、ハッピーには秘策がある様だった。

 

 

「なんだぁ…?」

 

(ここの家の壁…レンガの壁…!なら!)

 

「『三匹の子豚』じゃ、オオカミさんはレンガのおウチを吹き飛ばせなくって、ハッピーエンドよ!」

 

「成程クル!!」

 

 

 自信満々にズビシと指を刺す。

 

 童話『三匹の子豚』では、三匹の家を建てている豚を食おうと、オオカミがそれぞれが建てていた家を吹き飛ばして子豚を追い詰めていく。

 

 が、最後の家であるレンガの家は吹き飛ばすことができず、仕方なく煙突からオオカミは侵入しようとする…が、そのまま鍋へと転落。食べられてしまってハッピーエンドだ。

 

 

(オオカミさんなら…レンガの壁は壊せない…!)

 

 

 と思っていたのだが…相手の狼は、予想の何倍も()()()()()()()()()()()()を持っていたのだ。

 

 

 

 

「ウルッフッフッフ…馬鹿め!俺様はこんなこともできるんだよ!」

 

 

 そう言って、狼男は、()()()()()()()()()()()()を取り出し、天に掲げた!

 

 

「いでよ!アカンベェ!!」

 

 

 すると、黒い禍々しいオーラがそのボールから溢れ出した。そのオーラは、ハッピー達が逃げ込んでいたレンガの壁を覆い出した!

 

 

「うわっ!わっ!わぁっ!?何!?何!?」

 

「逃げるクルー!!」

 

「きゃああぁぁぁっ!!」「クルー!!」

 

 

ドクン…!

 

 

 心臓の鼓動音の様なものと共に、レンガの壁を取り込んだ化け物の産声が街に響いた…!

 

 

『アカンベェ!!』

 

 

 ピエロのような赤っ鼻。巨大なたらこ唇。メルヘンチックな手足。しかし顔には傷が入った、巨大なレンガの家の化け物がハッピー達の前に立ちはだかったのだ…!

 

 

「うぇぇえええ!!レンガのお化けぇぇ!!」

 

 

「コイツの名は"アカンベェ"!ピエーロ様の力で"キュアデコル"のパワーを"バッドエンド"に変えて生み出した怪物だ!!」

 

「"キュアデコル"…!」

 

 

 悔しそうにキャンディが呟く。

 

 

「な…何言ってるの…?」

 

「本当はこっちの()()()()()()の方で生み出してもよかったが…お前にはコイツで十分だ!行けぇ!!アカンベェ!!」

 

 

「びゃあぁぁぁああああ!!」

 

 

万事休す。秘策も通じなかった。もう逃げるしか方法はない。

 

そう、彼女の頭によぎってしまった…

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハ!!!」

 

 

ドキュン!ドキュン!

 

 

『アカンベェッ!!?』

 

「ッ…!?なんだぁ!!?」

 

 

 アカンベェと呼ばれた化け物の、レンガの壁の様な肉体に火花が散り、狼男の足元からも火煙が上がった。

 

 

「え……?何…?」

 

「クル………?」

 

 

「やあやあやあ!祭りだ祭りだ!」

 

 

「えっ…なっ…何!?」

 

「あん…?まだバッドエンドに染まってねぇ奴が…ってうぉ!?なんだぁ!?ありゃぁ!?」

 

「えっ…うえぇぇぇぇ!!!?

 

 

ウルフルンが驚愕した表情で自身の後方を指さしたの見て、慌てて星空みゆきも振り返る。

 

 

バサッ…!バサッ…!

 

 

 そこには、天女たちが舞い踊り、紙吹雪を舞い散らせながらキュアハッピー達の方へと行進してくるのが見えた。何かを歓迎するかの如く、派手に、華麗に、道を作っていた。

 

 

「ハーッハッハッハ!!」

 

 

 大きな笑い声が聞こえたと思えば、天女達の後方に、一つ大きな集団が行進していた。

 

 

 6人ほどの男が、まるで"祭り"かのように笑顔で神輿を担いできている。

 

 バッドエンドに染まってしまった悪夢の中だというのにも関わらず、まるでここは極楽浄土なのかと錯覚してしまうほど派手で綺麗な空間がそこに形成されていた。

 

 そしてそのお神輿だが…自分達が知るお神輿と明らかに違う点が二つあった。

 

 

 一つは、"真っ赤な鳥の様なバイク"が担がれているという事。そしてもう一つが…

 

 

 

「袖振り合うも他生の縁…つまづく石も縁の端くれ…共に踊れば繋がる縁…!」

 

 

 

 真っ赤な丁髷。大きなサングラス。

 

 手に持った桃のマークが刻まれた扇子。

 

 そして何よりも目立つ額の桃のエンブレム。

 

 

 真っ赤な戦士がそのバイクに跨り、黄色いド派手な拳銃を持って担がれていたという事だ。

 

 

「この世は楽園!」

 

「悩みなんざ吹っ飛ばせ!」

 

「笑え笑え!ハーハッハッハ!!」

 

 

「も……もしかして……桃…!!桃太郎さん…!?」

 

「すっごいキラキラしてるクル〜!!」

 

 

 彼女たちは、思わずその赤い桃太郎に釘付けになってしまっていた。

 

 

「……なんだぁ…?アイツは…バッドエンドのバの字もねぇじゃねぇか…」

 

『ベェ…???』

 

 

 そして、背後にて相対していたはずの狼男やアカンベェと呼ばれた怪物も、目の前に広がる光景に困惑していた。

 

 

「すごーい…ほ、本物…!本物の桃太郎さんだぁぁ!」

 

「クル〜!お祭りクル〜!…けど、なんで桃太郎さんがここにいるクル?」

 

「わからないけど…きっと私たちを助けに来てくれたんだよ!」

 

 

 対して、キュアハッピーとキャンディの二人は、そのド派手な雰囲気とオーラによって、今まで溜まっていた緊張や恐怖といった感情が抜け落ちてしまっていた。

 キュアハッピーに関しては、憧れの絵本の戦士が現れたことで目がキラキラしていた。

 

 

「そこの女!悪いことは言わないからさっさと逃げな!」

 

 

 すると、急にその赤い戦士が前に屈み、バイクのアクセルグリップを握る。その瞬間、お神輿から勢いよくそのバイクが射出された。

 

 

「って…うぉぁああ!こっちに来るぅ!!?」

 

 

 と思いきや、その巨大な赤いバイクが丸ごとキュアハッピーに向けて突っ込んできたのだ…!

 

 

「どぉぉけぇぇぇ!!」

 

「きゃぁぁああっ!!?」

 

「クルゥ!!?」

 

 

 間一髪でキャンディを抱き抱えたままハッピーが慌てて回避する。

 すると、その戦士は刀を持ちながらバイクから飛び降りて、その"アカンベェ"と呼ばれた怪物へと勇猛果敢に突っ込んでいったのだ…!

 

 

「うおおっ!?アカンベェ!俺を守れ!」

 

『アカンベェ!!』

 

「さあさあ!楽しもうぜ!勝負勝負!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(え…女の子の悲鳴を聞いて駆けつけて、勢いのまま斬りかかったのはいいが…ヒトツ鬼でもない…でも化け物…だよな!?狼男に…なんだこの可愛らしい化け物!!え?え?なんだコイツらは!!?全く知らないのだが!?)

 

 

 なお、その斬りかかったその赤い戦士ことドンモモタロウは、状況が飲み込めていない様だった。




 さあさあ…ついに邂逅しましたね…!変身後の姿で…!

 ていうか…他の子の目線結構きつい…私がスマプリキャラ達を把握しきれてないからと言うのもあるけど…!

 一貫して名前を呼ばれない狼男に涙…()

 Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?

 A.(その13)バッドエンド空間で神輿は尚更ドチャクソ目立つと思ったから。

 感想!お待ちしております!

単純に興味で聞くのですが、この中で誰が一番好きですか?

  • 星空みゆき
  • 日野あかね
  • 黄瀬やよい
  • 緑川なお
  • 青木れいか
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