ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…! 作:よく酔うエンジン
SIGSEGVさん。雪森さん。トリアーエズBRT2さん。誤字報告ありがとうございます!
「そんなの、負け惜しみだよ」
…あん?
何か、気に食わない言葉が後ろから飛び出たので振り返ってみると、男子数名が俺たちの後ろにいた。
ドヤ顔で腕を組んでいる爆発頭の美術部部長である蘇我さんと、4人くらいのおそらく美術部であろう取り巻きがそこに居た。
「誰がどう見ても、蘇我部長のポスターが、一番芸術的で優れているさ」
「そんな
………今なんつった?
「えっ……あっ……」
「ちょっとアンタらなんやねん…!」
「そうだよ!黄瀬さんだって頑張って描いたんだから…!」
急に絵を馬鹿にしてきた男子のグループに対して、星空さんと日野も言い返す。
勝手に現れて人の絵を酷評で、自分の絵を持ち上げるとは…一体どういう了見してやがる。
俺も一言二言言ってやりたくなり、口を開こうとした瞬間、涙ぐんだ声が俺の隣から飛び出た。
「もうやめて二人とも…!」
「っ…?」
しかし、絵を酷評された張本人である黄瀬さんは、泣きそうな声を振り絞りながら星空さんと日野にそう告げた。
「もう…もういいの…」
そして、コンクールの掲示板の前に行き…
ビリッ
「あっ…!?黄瀬さん!?」
「やよい!どこ行くんや…!」
自分の描いた努力の結晶であるポスターを破って、何処かへと言ってしまった。
「ま、まって!」
「や、やよい!」
「っ…!」
悲しそうな表情でどこかへと去ってしまったやよいを、慌てて日野と星空さんが追いかける。
俺もそれに続こうとした時、耳に嫌な言葉が入ってきた。
「あーれ…部長、どうします?」
「放っておけ。僕の描いた絵の前じゃどんな絵も無価値だ…
(…………コイツら……黙っておけばいけしゃあしゃあと…!)
俺は、ポケットに突っ込んだ手で思わず握り拳を作ってしまっていた。
確かに、俺はよくわからないがこの結果を見る限り、黄瀬さんの絵よりもこの蘇我とか言う男の絵の方が優れているのだろう。それは認めようのない事実だ。だが…
(だからって……ここまでこけ下ろしにする権利なんて…あるわけないだろうが…!)
俺が憧れるようなヒーローならば、こう言った場面で、そう言う悪口はよくないとさっきの星空さんや日野さんみたいに注意をするのだろう。だが…注意しようとする高潔な意志よりも先に俺の頭の中には明確な
黄瀬さんの友達だから。黄瀬さんの努力を、みんなのためにと頑張った彼女の姿を知っているから。俺はブチギレ寸前にまで頭に血が昇りそうになっていた。
「先輩の言うとおりですね!そもそもあんなヒーローもののような
「違いない…
「「「「あっはっはっは!!」」」」
(っ……!
前から何度も言っていると思うが、俺は縁を結んだ人たちの笑顔が好きだ。
だが、俺の好きな笑顔は、星空さん風にいうなら誰も傷つくことなく心の底から”ハッピー”な気持ちになってつい出来てしまう様な笑顔だ。
……こんな、誰かを嘲笑うような笑顔は、寧ろ俺が最も嫌う”笑顔”だった。
「まあ、下手な絵が僕の作品の下にあるのは気に食わなかったからな…こうして消えてくれて助かったよ」
「ですね!蘇我先輩と雰囲気もうまさも違いすぎて…目に入れるだけ毒でしたから!」
……プッツーン
……すごいな、怒りって、極限まで研ぎ澄まされると逆に冷静になるって…ガチだったんだ。
数々の黄瀬さんの絵への言葉を受けて、俺の堪忍袋の尾は、たった今この瞬間切れてしまった。
「………成程、女子を悲しませて他人の絵を蔑む…画家の隅にも置けん低俗な人間だな」
そのせいか、つい思ったことを口走ってしまった。
瞬間、ピシャリと場が静まり返った。
「………お前…今何つった?」
「ん?」
なにやら、奴ら一派がこちらを睨みつけている。
こめかみに青筋が立っており、側から見てもキレているのは一目瞭然だった。
「なんだ?事実を述べたまでだろう?そこの取り巻きどもも含めてだ。女子を悲しませて人の作品に悪口…低俗に違いないだろう?低俗どころか人として最低の行為だ」
「ハン!僕の作品の前じゃ皆愚劣な作品に過ぎん!評価して何が悪いと言うのだね?」
自分が他人の絵を蔑むのは当然の権利とでも言いたいのか…?
飛んだクソ野郎だな。俺も俺で頭にさらに血が上りそうになる。
「つまり…人よりも優れていればどんなに人を馬鹿にしてもいい…と?」
「その通りだ!いいか?僕は天才だ!天才が凡人どもと同列に扱われるなど馬鹿げているにも程があるだろう?僕ノ才能ハ…世界一なんだ!それに…人より優れた才を持つ僕が親切に無駄だと言うことを丁寧に教えてあげたんだ!むしろ感謝してほしいね!」
「そうだそうだ!お前!何様のつもりだ!大した絵も描けないくせに!」
「蘇我先輩に口答えして…調子乗ってんじゃねぇぞ!」
取り巻きまでこちらを非難してくる。なるほど、この下っ端の様な奴らもみんな似たもの同士クソ野郎ってことか。
良いだろう。黄瀬さんが公衆の面前で傷つけられたんだ。こいつらまとめてみんなの前で赤っ恥かかせてやる。そんでわからせてやる。黄瀬さんの痛みや人としての色々をな…!
「え…け、喧嘩…?」
「ば…バチバチじゃん…え?え?」
「あれって…赤峰先輩だよね…2年の縁結びの…」
「あっちって美術部部長の蘇我先輩のグループ…?…え…こ、怖い…」
「あ、あれって…と、とうご!?何があったかわからないけど…ああなると止めれないし…ああもう!えっと、どこにやったっけ!」
コンクールの結果を見にきていたギャラリーもざわざわとし出して、野次馬として俺たちの方を見つめながら距離を取り始め、いつの間にか俺と蘇我達のグループを中心に円形の空間ができていた。
コイツらにわからせるのにちょうどいいギャラリーがいてくれて助かる。
「はん…じゃあ、つまり貴方以上の芸術家なら貴方の絵を酷評していいと…」
「フン!そんな存在この世にいないだろうがね!それよりも!この僕に対して舐めた口を聞いたんだ!謝罪の言葉ひとつでも言ったらどうだ?土下座するなら許してやるぞ?」
ほう、まあ、この男の言うことは無視して…じゃあそうだな…
俺は、頭の中で奴に赤っ恥をかかせるプランを練りながら携帯を操作しながら蘇我の絵の前に立つ。
多分だが、ただ人に悪口を言ってはいけないと注意しても、奴は今の会話を聞く限り聞く耳を持たなそうだ。なので色々考える。
そして、とりあえず思いついたプランを実行するべくマジマジとその絵を観察する。
「……へー…じゃあ、
「……はん?」
「そんなに自慢するなら先輩の絵ってどんなもんかと見てみましたが…随分とこの絵センスないですね」
「……何?」
「確かに塗り方や色の使い方は素晴らしいと思いますけど…デザインとか全然大衆向けじゃないですね。なにこれ、気持ち悪くて怖いですし。学校の雰囲気に似合わないんじゃないです?」
「なっ…!?」
「こっ…こいつ…!」
「………」
「確かに色の使い方とか見れば学校の基準なら全然金賞物ですけど…へー、これで天才を名乗るのか…ポイ捨ての手に…ありふれたデザイン…ぷっ」
「……ふん…なんだい?情けないね…僕に威勢良く喧嘩を売ったは良いけど、何も計画がないからとりあえず僕の絵に悪口を言ったのかい?滑稽だねぇ…例え君がどんなに酷評しようと僕の絵はこのコンクールでは一位なんだ。有象無象がいくらいったってその結果は変わらないさ。これ以上恥ずかしくなる前にさっさと君のためにも僕にさっきの言葉を訂正して謝ると良いと思うよ」
ふむ…まあ、ぶっちゃけそうとしか聞こえないし見えないだろう。
今の俺は、悪口をこの蘇我に向けて言ったは良いが、特に反論できずにまるで逃げるかの如く論点をずらして絵を批評し出したよくわからない存在にしか見えないだろう。これじゃ確かに俺の方が滑稽だ。
だが、別に絵の批評がしたいんじゃない。俺の目的は…
「貴様!蘇我先輩の絵をバカにするとは…どう言う了見だ!」
「何様のつもりだ!」
お、食いついた食いついた…さっきから脳死で蘇我先輩すごい的な感じの発言してたように見えたから、徐に馬鹿にしたら食いついてくれるかなと思ってたが…俺の言葉にキレて食いついてくれて何よりだ。
俺の目的はこの取り巻きどもをより興奮させることだ。
というのも多分この蘇我とかいう男、さっきの言葉を見るあたり、多分こっちの言葉が悪い意味で通じない頭のおかしい奴だ。そんな奴と口喧嘩となると、口喧嘩において最強の武器である”正論”が通じにくい。というか、多分自分の世界や価値観に閉じこもってまず会話や口喧嘩の土俵に上がってこない気がする。
だから、まずは取り巻きの方から会話を弾ませて、蘇我も会話に巻き込ませてやる。
そして、良い感じに煽って赤っ恥をかかせてこいつらに黄瀬さんと同じ気持ちをわからせてやる。今のところ順調…このまま頭の中のプラン通りいこう。
「何様って…こういう様ですかね?」
とりあえずそう言って、俺は先程いじっていた携帯である写真を奴らに見せる。
それは、子供の頃の俺が絵のコンクールで勝ち取った
「なっ…き、金賞?」
「しかも全国……!?」
実は昔絵を描くのにハマってコンクールに絵を出して金賞を取ったことがある。風景画系統でいかに正確に模写できるかのコンクールだったので芸術がわからない俺でも取れた。
まあ、なんのコンクールで取ったかとかの詳細はコイツらの前じゃ伏せとこう。そんなコンクールの金賞なんて無価値とかなんとか言われたらこっちの立場が弱まるし。
今大事なのは、俺が金賞を取ったことあるという事実を見せつけることである。取り巻きが噛み付いてくれたおかげで示すことができた。
これで蘇我の考え方…"自分が優れてるなら劣ってるものに対して何言ってもいい"的な思考を持つ蘇我の土俵で奴に色々物が言える。
「え…すご…」
「赤峰先輩絵も描けるんだ…」
「わぁ…ちゃんと蘇我先輩の揚げ足とってる…」
「絵の能力が優れてればいくら酷評してもいいんでしょう?さっきそこの蘇我先輩が言ってた理論をそのまま使っただけですよ」
「…ハン!貴様!そんな金賞一つで何になるというんだ!その写真…見るかぎり君が子供の時の写真じゃないか。過去の栄光に縋るなんてやはり可哀想だ…そもそも、僕の方が絵の才能は優れているに決まっているだろう!!」
「ん?銅賞までしか取ったことない人が何言ってるんです?」
その言葉を放った瞬間、蘇我の方からブチンと何かがキレるような音がした。先ほどまで俺の発言を鼻で笑っていて冷静だった蘇我の顔が真っ赤に染まった。どうやら、今の言葉は地雷だったようである。まあ、意図的に踏んだけどな。
「…ふっ……ふっふっ…!ふざけるなよ!銅賞がなんだというんだ!僕だって金賞なんて子供の頃何度も取ったことがある!!どうせ一回しか取ったことないお前よりも僕は優れているんだ!君なんかが僕と同列…?そして僕の絵を評価だとぉ…?烏滸がましいにも程があるぞ!!」
「へぇ〜…でも、先輩の理論で言うなら、実質金賞しか取ってない俺と、一度でも銅賞を取った先輩。人や観点によっては俺の方が優れてるんじゃないです?」
お、良い感じに論点がずれた。悪口云々っていう論点から銅賞やら実力云々の論点に変わった。計画通りだ(ゲスな笑み)。
そして、俺はその流れに乗っかって屁理屈を吐く。そしてその言葉は奴の頭にさらに血を送り込むには丁度よかったようである。
しのぶから銅賞に関してコンプレックス云々を聞いておいてよかった。銅賞という言葉を強調していうだけで蘇我の顔はどんどん酷い顔になっていっている。
良い感じにキレてくれてありがたい。このまま口喧嘩の土俵に上がってくれればもうこっちのもんだ。
「あ、俺先輩より優れてるからわかりましたわ。女子を悲しませて他人の絵を蔑むような人間だから、銅賞に値するような絵しか描けないんですよきっと。学校のコンクールという名の猿山での大将として威張ってないと、広い日本全国のコンクールで負けた己が惨めに見えて許せないんじゃないですか?くだらないプライドですね。わざわざ人の絵をバカにしないといけないあたり、相当小さなプライドと見受けられますが」
「ッ……!!!!」
盛大に煽りを喋る。おお、いい顔してるね蘇我先輩。
冷静になって今思い返してみてもここまでいう必要はなかっただろう。ぶっちゃけ、ヒーロー志望とは思えないガキっぽい行為だ。
でも、俺には我慢ならなかった。
なぜなら、さっきも軽く触れたと思うが、
黄瀬さんが一生懸命にクラスの為にと頑張って描いた絵…確かに結果は努力賞だ。この蘇我という男の絵の方が優れているのだろう。
この男の絵が一位なのだ、黄瀬さんの絵は確かに下の位の絵である。別に内心いくらでも馬鹿にされても仕方ないのかもしれない。ある意味でそれは一位の特権だ。
だが、絵ではなくその努力を、心の中でならまだしも口にしてまでバカにするのは…気に食わなかった。
そして、その努力を口に出して嘲笑うのは…もっと気に食わなかった。
だが、それをただ指摘するだけではこいつの心には多分響かない。またどこかで人を傷つける発言をするに決まってる。
だから赤っ恥かかせて公衆の面前で馬鹿にされた黄瀬さんと同じ気持ちにさせてわからせてやる。
ヒーローとしてあるべき行為だとか、人としてこうすべきとかそう言うのなどお構いなしに、
「キサマ…!下等な絵描きの分際で…!」
「怒るんだったらお前もするなよ。お前がさっき黄瀬さんにやった事は今みたいに人を怒らせ悲しませる最低な行為だ…あっ…そうか。俺もたった今まるで幼児がやるように人の絵を馬鹿にしてしまったな…これじゃ幼稚園のお子様どころかお猿さんと一緒になってしまう。小学校で習ったもんな、こう言う時はしっかり謝らないと。ごめんなさい。」
「キッ…サマ……!!」
「ほら、あなたも謝ったらどうです?俺じゃなくて黄瀬さんに向けて。てか、そもそも学校で習いませんでした?人の悪口は言うなって。銅賞取り続けるよりもまず道徳の勉強しなおした方がいいんじゃないです?それも小学校レベルから」
「うわぁ…煽りまくってる赤峰くん…」
「てか、禁止品の携帯使ってるし…」
「でも、赤峰君の言ってること合ってるでしょ」
「ぶっちゃけ蘇我先輩女の敵だよね…」
「最初に絵をバカにしたの蘇我先輩だし…」
「黄瀬さんあんな風にしたし…」
「最低だよね」
「蘇我、あいつプライド高くて嫌いなんだよね…ぶっちゃけいい気味かも」
「しっかり自分で語った理屈で言い負かされてて…マジ滑稽じゃん蘇我のやつ」
「うっ…そ、蘇我先輩…これ、謝った方が…」
「部長…!」
「……っ!………ッッッ…!!」
皮肉の心たっぷりに頭を下げると、さらに煽られた様に感じてどうやらさらに頭に血が上ったみたいだ。
ギャラリーもいい感じに俺の味方をしてくれている。
そんな状況下かつ、更に煽りの言葉を投げかけたのでどんどん顔がひどくなる。
良い感じに赤っ恥はかかせれたな…いい感じに痛い目に遭ってくれただろう。これで人をバカにすることの愚かさが少しでも伝わって反省してくれるといいのだg
「ふざけるなよ!!」
バシィ!!
「っ……」
「きゃぁっ!!」
「おいヤバいってあれ…!」
「せ、先生誰か呼んでこいよ!!」
「あっ…まずい。ああなると…蘇我先輩、怪我しないといいけど…」
俺は、蘇我に胸ぐらを掴まれて壁に思いっきり押し付けられた。
しまった、流石に煽りすぎたようだ。
かなり煽ったから発狂の一つはするかと思ったが、暴力行為に走るだなんて考えてすらなかったので警戒すらしてなかった。とはいえちょっとバカにしただけですぐ暴力行為に走るとは…どうやら、この男相当人間性が終わっているらしい。
「お前のような男には、僕の絵の素晴らしさなど一生わからんだろうな…!」
「ああわからん。芸術は難しいものだからな…絵なんて特にそうだ、一つの絵に対して評価が極端に割れることも珍しくない。だが、俺が話しているのは人の悪口を言うのはやめろと言う話だ。論点がずれているぞ」
まあ、あえて一度論点をずらすよう仕向けた俺が言えた言葉じゃないが、指摘されなきゃ口喧嘩じゃ勝ちだ。俺にとって都合の悪い論点ずらしはしっかり指摘させてもらうがな。
「なんだとぉ…!?貴様の連れの女よりも上手いと僕は評価されているんだ!調子に乗るんじゃないぞ!」
「だからって、人の絵を口に出してバカにしていい理由などどこにもないだろう。それに、俺はちゃんとあんたの理屈に乗って
「なにをぉ…!!」
「情けないな。ちょっとでも気に食わないことがあればすぐ乱暴に走る…そんなんだから持ち前の自称世界一の才能も活かせず評価されずで銅賞しか取れないんだな」
「黙れえぇぇ!!」
バゴッ!
瞬間、頬にじぃんと痛みの感覚が襲ってきた。
「きゃぁぁぁあっ!!」
「な、殴ったって!ヤバいって!」
「せ、先生!誰か先生呼んでこいって!!」
「そ、蘇我先輩!やばいですって!」
「あーあ…ここまでなるならやっぱり止めるべきだったかな…」
「僕ノ絵はすごい!凄いンだ…!バカにするなぁぁぁ!!!!」
そして、再度その我欲と傲慢さにまみれ暴走した拳が俺に振り下ろされようとする。
バシィ!
「野郎……!!」
だが、その拳が俺の頬に再度突き刺さることはなかった。その拳は俺の掌で受け止められ、ガッチリと掴まれていた。
この程度、受け止めるなんざ造作もない。
それよりも、俺の頭は怒りで溢れていて痛みなんざどうでもよくなっていた。
「自分勝手も……いい加減にしやがれ!!!!」
バサッ!!
「アガァっ!?!?」
「きゃぁっ!!」
「うわぁぁっ!?」
「やべぇって!ガチ喧嘩じゃん!」
「あー…まあしょうがないか…」
俺は、その握った手を離さず、蘇我のシャツをもう片方の手で握り、足払いをしてそのまま蘇我を押し倒す。
こちとら柔道経験もあってこういう体術には自信がある。
あっという間に蘇我は動けなり、俺の手によりその場から動けなくなった。
「あっ…タァっ……!!」
「人より優れているか否か気になる気持ちもわかる…誰かより上の立場にいたいと思う気持ちもわかる…人間たるもの、そういった欲望を持つななんて無理な話だと言うのもわかる…!だが!胸の内で思うならまだしも!それで誰かを悲しませるような言葉を口にして!誰かを傷つけていいはずなどないだろう!!」
「っ……ガ……」
「確かにお前の絵の方が優れてるかもしれない…俺も芸術から逃げた身…人のことを言えないのはわかってる…だが、彼女も含め、この場所にそれぞれの作品を連ねた全員、皆必死に一位を取ろうと!クラスのためにと!目的は違えど努力して来たんだ…!その努力まで口にして馬鹿にする権利など…お前や俺は勿論、誰にもそんなものないんだよ!!」
俺の言っていることは、頭が怒りによって興奮していることもあって、どこか辻褄が合わないものになっているかもしれない。
でも言わずにはいられなかった。
色々とやりすぎだろうし、無茶苦茶かもしれない。けど、悲しんだ黄瀬さんの顔を見て、何もしない、何も言わないなんてできなかった。
今までの過程、決して良い方法ではないとわかってる。俺も暴力を使ってしまったし。けれど、少しでもこの男に今の言葉が響いてくれたらなと思って彼の顔を覗きこんだ。
「う…っ…ゥゥゥヴヴヴ…!!』
「っ…!?」
(なんだ…この感覚…?)
しかし、予想と違って何か状況がおかしい。
俺が抑えた蘇我は、何やらとても苦しそうにしており、何か
(この感じ…まさか…!?)
俺は、この感覚を何度も感じたことがある。我欲に塗れた人間、不思議なオーラ…そしてまるで暴走したかのように暴れ出す人間…空間が捻じ曲がるような感覚…
(ヒトツ鬼が…現れる時の……!)
『ガァアァァァァァァァァ!!!!」
瞬間、蘇我口から黒いモヤのようなものが溢れ出し、俺の周り…いや、ここら一体を包み込んだ。
そして、どんよりとした空気が流れて、周りにいた野次馬の生徒達が次々と膝を突き始める。
「私の絵なんて…誰にも…」
「絵なんて描いても無駄だよ……」
「もうやだ…何もやる気出ない…」
「絵を描いてネットに投稿しても胸が小さいだとか胸が大きいだとか尻が小さいだとか尻が大きいだとか…私は神様じゃないんだよ…お前らの要望全部叶えれるわけないだろ…それにそもそもお前らの為に描いてるんじゃねえよ…絵のこともよく知らないくせにぺちゃくちゃぺちゃくちゃぺちゃくちゃぺちゃくちゃ…」
『うるサイ…!!僕の…ボクノ絵はスゴいんだ…!僕は天才ダ……!みんナわかってナイ…バカどもバカども馬鹿共ばかどもバカドモ…!!!」
「っ……!こいつ…!」
挑発的な言葉にすぐに乗っかったり、すぐ暴力行為に走ったりだとか、やけに短気だなと思ってはいたが…まさか…
(
ヒトツ鬼は、取り憑く依代になった人間が秘めた願望や負の感情を振り撒いて暴走する存在である。
この様子を見る限り、おそらく、どこかで既にこの蘇我という男、ヒトツ鬼に取り憑かれてしまっていたのだろう。
あくまで予想ではあるが、元から傲慢だった性格や日頃の絵やコンクール等諸々のストレスによって、ヒトツ鬼の凶暴な性質が実体化するまではいかなくても、日常生活でも体に滲み出てしまっていたのだろう。
言ってしまえば、『半暴走状態』だ。
そのヒトツ鬼の影響によってあんな短気な性格になっていたというのなら納得できる。言ってしまえば常時ヒトツ鬼の凶暴な性格になっていたな等しいからだ。
『何デ誰もわからないわかラナイ解らナイ!!!!」
「くっ…この野郎!!向こうに行け!」
そして、案の定とでも言わんばかりに周囲の空気が歪みだし、歪な肉体が実体化し始める。
俺は慌てて蘇我を人のいない方へと突き飛ばす。ここにはネガティブになって動けなくなっている生徒たちが沢山いる。
ここで実体化されたら、その余波でその子たちに影響が及びかねない。
変身前の人間体だと言うのに、乱暴で申し訳ないが、緊急事態なので手段は選べなかった。
『ゥゥあアあ…ア…あ…」
そして、突き飛ばされた衝撃で悶えながらも、その悍ましい肉体が肉眼でもはっきり捉えられるまで実体化した。
その体は、やけに
鬲秘?イ謌ヲ髫
『ヒラメキィィィィング!!!!』
豪華絢爛な禍々しい宝石の衣。
僧侶の頭巾の様な兜。
水色の宝石の様な仮面。
想像力豊かに、己のキラキラを持って輝いてきた煌めく若者達の心を踏み躙る、宝石の悍ましいメイジが目の前に顕現した。
その名は『魔進鬼』。
キラキラあふれる才能を持って宝石やマシンモチーフの輝くスーパー戦隊シリーズ第44作目『魔進戦隊キラメイジャー』にて描かれた物語での力を
「大方…元々半分実体化仕掛けていたようなもんだったが…俺の言葉や、この空間の影響によるストレスで…さらに負の感情が溜まりに溜まって暴走、そして挙げ句の果てには完璧に実体化というところか…」
そう考えれば、ヒーロー志望として相応しくない煽りをしまくった俺への罰なのかもしれない。ぶっちゃけ、さっきも言ったが色々言いすぎたし…
ともかく、俺の予想が正しければ俺にもコイツを実体化させてしまった責任はあるな…
「原作タロウも自分が原因でヒトツ鬼を誕生させたことがあったが…まさか俺もこうなるとは…とにかく、責任は取らせてもらう」
『ドン!ブラスター!!』
サングラスを取り付けて、ドンブラスターを手元に呼び出す。そしてそのままいつもの様に真っ赤なアバタロウギアをギアテーブルに差し込み、顔の横に構えて大きく叫んだ。
「アバターチェンジ!」
『いよぉ〜!!』
『どん!』『どん!』『どん!』
『どんぶらこー!!!』
合いの手をバックにスクラッチギアを回し終え、サングラスが光りだす。
『アバタロウ!!』
いなせなBGMをバックに、赤く光出したサングラスは空へと飛んでいき、形を変えて俺の周りを勢いよく飛び回っている。
その様子を確認した俺は、天高くドンブラスターを持ち上げ、トリガーを引く。
「はぁっ!!」
ワープドアから巨大なアバタロウギアが出現し、データ通りの真っ赤な桃の戦士のスキンを形成していく。
肩にはアーマーがつき、羽織のような衣装を着て、赤い桃のエンブレムが刻まれたベルトが腰に装着され、飛んでいたサングラスが俺の顔に張り付いて真っ赤な頭部やドンまげも形成され、変身が完了した。
『ドン!モモタロウ!!』
『いよっ!日本一!!』
「さぁ…鬼退治だ…!」
『ァァァァアアアア!!!!』
コイツのせいで黄瀬さんが傷ついたというのなら…黄瀬さんの努力を踏み躙った分、このヒトツ鬼はボコボコにしないと気が済まなかった。
絶対元に戻して黄瀬さんに謝らせてやるからな…!
***
ヒトツ鬼が出現する少し前…
「うっ……ううっ……」
破ったポスターを抱えて、黄瀬やよいは学校の外へ出ていた。
やっぱり、自分は何をやってもダメなんだ。そんな暗い思考が頭の中を支配して、元々生じていた手伝ってくれたみゆきやあかね、しのぶにかなぎ、そしてとうごへの申し訳なさで心が締め付けられてしまっていた。
美術部員の放った言葉は、元々みんなへの申し訳なさを感じていた彼女をさらに落ち込ませるのには十分すぎるものだったのだ。
「………泣く子がいたオニ…!」
そんな少女を眺める存在がいた。
それはバッドエンド王国の幹部が1人、アカオーニであった。
「俺様がもっともーっとバッドエンドにしてやるオニ…!」
やよいの心が沈んでいることを見抜いたアカオーニは、彼女の近くへ力強く着地した。
「やっぱり…私の絵なんて…」
ズシン!
「…え?」
その音に、やよいも思わず顔を傾けてしまう。
「はっは!泣き虫!弱虫!」
「っ…誰!?」
「お前なんか努力したって無駄オニ!」
「っ…!そんなこと…わかってるよ…!でも…絵を描くのが好きだったから…」
やよいは咄嗟にそう口にする。しかし、弱りきった彼女の心には、アカオーニの言葉は強く響いてしまうものがあった。
初めて自分が好きなことを素直に褒められ認められ頼られて、みんなのために頑張った。けど、結果は実らなかった。
その現実があるせいで、アカオーニの言葉が余計に深々と突き刺さる。
目の前にいる鬼の事など知らないが、みんなの期待に応えられなかったと落ち込む彼女には、誰からの言葉だろうが関係なく更に心がネガティブな方へと落ちていく。
アカオーニは、その彼女の様子を見て満足気な様子だ。
「クック…ん?クンクン…この匂い…俺の仲間が現れる匂いオニ…なら!」
鼻をクンクンとして何かを嗅いだらしいアカオーニは、徐にウルフルンのように白紙の本を取り出した。
「ハッハ…!世界よ…!最悪の結末…"
ぐしゃり…と真っ黒な禍々しい絵の具の様なものが押し潰され、アカオーニの手を黒く染める。
「白紙の未来を黒く塗り潰すオニ…!」
ベシャリ!
染まった手をそのまま振るって、開いた白紙のページを黒く染め上げる。その瞬間であった。
ゴゴゴゴゴ…
邪悪で悍ましい黒い気体が空へ一瞬にして集まる。
そして、そのまま街を黒い空気で覆ってしまい、昼にも関わらずまるで夜中の様な空の色へと変わった。
そして、まだ朝だと言うのに空が他のように赤く染まり、その場にいるだけでも気分が沈んでしまうほどの空気に世界が"染まった"
「もうおしまいだ…」
「夢も希望もないわ…」
「最悪だ…」
「私…もう絵を描くのなんてやめる…」
そして、既にボロボロだったやよいの心は、バッドエンド状態にされたことで、更に傷ついてしまい、大量のバットエナジーが体から溢れ出した。
「ハッハ…!人間どもの発したバッドエナジーが…悪の皇帝"ピエーロ"様を…蘇らせていくオニ!!」
ガコンッ…!
どこかで
「黄瀬さーん!」
「っ…!?なんや!?」
ポスターを持って去ってしまったやよいを追いかけ外に出たみゆきとあかねも異変を察知した。
そして、驚愕する2人の前にアカオーニが姿を現す。
ズシン!ズシン!
「な…なんなん…?」
「ハッハッハ!」
「あれっ…オオカミさんじゃない…!?」
「お前らも…バッドエンドに染めてやるオニ!!」
そう言って、アカオーニは大きく金棒を振りかぶった。
「「あわぁぁぁぁ!!」」
「クルッ!"アカオーニ"クル!」
「あ、赤鬼さん!?」
「アカオーニだ!オニ!オニ!」
ブンッ!ブンッ!ビュオオオッ!
名前を間違えるなと言わんばかりにブンブン金棒を振り回し、その場に立っているのがやっとなほどの強風がみゆきたちを襲った。
「「うわぁぁぁぁっ!!?」」
「クルー!!?」
少女たちはその風の強さに一歩も動くことができなくなり、思わずカバンの外に出てしまったキャンディが吹き飛ばされてしまった。
「フッハッハッハ! バサッ! うおっ!?」
吹き飛ばされる様子を観察して笑っているアカオーニの顔に何かが張り付いた。
それは、やよいの手から強風のあまり弾かれて飛んでしまったコンクールのポスターだった。
「『クリーンピースマン』?くだらんオニ…!」
クシャッ!
「っ…!」
なんと、アカオーニはやよいの努力の結晶を丸め、ゴミ屑のように地面へと投げ捨てたのだ。
「なんてことを…!」
「そのポスターは…やよいの努力の結晶なんやで!」
単純に知らずに紙屑だと思って丸めて捨ててしまったのならまだ許せたのかもしれない。それならばまだ仕方のないことと言える。
しかし、アカオーニは尚更そのことを知っていれば嬉々としてこの紙をクシャッと丸めるどころか破っていただろう。
「努力だと…?そんなもんぶっ壊してやるオニ!」
「クルゥ…」
その言葉を吐くアカオーニは恐ろしいオーラを放っていた。その怖さに思わず吹き飛ばされたキャンディも涙目になっている。
そしてアカオーニは有言実行と言わんばかりに、
「いでよ!アカンベェ!!」
ドクン…!
心臓の鼓動音の様なものと共に、転がったポスターの紙を取り込んだ化け物が彼女たちの前に姿を現した…!
『アカンベェ!!』
ピエロのような赤っ鼻。巨大なたらこ唇。メルヘンチックな手足。今度はレンガやバレーボールではなく、掃除器具を持ち、マントをつけたピエロの清掃員のような化け物がハッピー達の前に立ち塞がった!
「みゆき!あかね!変身クル!」
「うん!黄瀬さんのポスターをこんな姿にして…許せない!」
「せや!ここは一発ガツンとやったろか!」
そう言って、ふたりはスマイルパクトを取り出し、互いにキュアデコルをセットした。
『Ready…?』
「「プリキュア…スマイルチャージ!!」」
『GO!!』
瞬間、スマイルパクトから光が溢れ出し、一直線に天へと射出された。そして、変身用のポンポンが射出される。
『GO! GO! Let's Go!』
方や光を集約させて軽々と、方や真っ赤に燃やして轟々と、
伝説の戦士の衣装を纏っていく。
PON!PON!PON!
PON!PON!PON!
そして、戦士の装束へと着替え終えた2人は、顔をポンポンで軽く触れ、変身を完了させた。
PON!PON!
スチャッ!
「キラキラ輝く未来の光!キュアハッピー!」
「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」
大切なものを取り戻すため。再度2人の戦士がこの世界に現れたのだった。
「お前らがプリキュアか…捻り潰してくれるオニ…!行け!アカンベェ!」
『アカンベェ!!』
そして、アカオーニは怯えずにアカンベェに指示を出す。
こうして、二つの場所にて少女の心を踏み躙った者達を退治するための戦いの火蓋が切って落とされた!
タイトルは『暴走パニック大激闘』という日本の映画をモチーフにとってみました。
理由は、キラメイジャーの予告の法則にあてがう為です。本当は原作キラメイジャーでモチーフになってない作品の名前から撮りたかったけど…東映の昔の名作邦画全然知らないので諦めました()
ちなみに前話も『男はつらいよ』から取ってみました。
なんか、頑張って口喧嘩書いてみたんですけど…蘇我先輩一応しっかり一位自体取ってるせいでまあ書きにくい!なんか変になってそうで怖い!後日修正するかもしれません!!ごめんなさい!
ちなみに、ゴーバス要素を匂わせてたのは、ヒトツ鬼の予想を絞らせないようにするためです(?)
ぶっちゃけ、原作でも黄瀬さんをバカにした蘇我達、戦闘が終わった後でも、謝罪の言葉ひとつすらなくて、個人的になんか気に食わなかったのでこんな展開にしてみました。(ただの私情)
ヤケに短期で暴力的な思考だったのはヒトツ鬼のせいってことにして…よし、これで合法的に怒れるし成敗して反省させれるな()ヒトツ鬼って便利(?)
蘇我のセリフに所々カタカナがあるのは、ヒトツ鬼が出現しかけていることを示すためにわざとしてみました。
ちなみに、バッドエンド空間はアカオーニとヒトツ鬼で同時に作られた感じです。
Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?
A.(その21)プリキュアも戦隊も携帯タイプの変身アイテムが存在して縁を感じたから。
感想お待ちしております!
読者層調査です。この小説を読んでいる皆様に質問なのですが、どの作品を見た上でこの小説をお読みになっていますか?
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ドンブラもスマプリも見たことあるよ!
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ドンブラは見たことあるけどスマプリはない
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スマプリは見たことあるけどドンブラはない
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実は両方とも見たことない