ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…!   作:よく酔うエンジン

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今回の話、今までに比べてエグい展開が発生します。
苦手な方は心の準備をお願いしたいです…

10000字を超えないように頑張ったせいで変な部分がなければいいが…

雪森さん。結城藍人さん。誤字報告ありがとうございます!


現れし異物の少女!

 

「えっ…ええっ…な、何これ…どうなってるの…?"キュアマーチ"って…?」

 

 

 4人目の伝説の戦士となったはいいが、可愛らしい緑の服に、大きくなって特徴的な形になったその髪など、あまりにも非現実的な状況になおは驚きを隠せない。

 

 

「"キュアマーチ"!やっぱり4人目は緑川さんだったんだ!」

 

「プリキュア見つけたクル〜!!」

 

 

 一方、プリキュアに誘おうと思っていたみゆきや、一刻も早く故郷を救ってもらうべくプリキュアを見つけたかったキャンディは大はしゃぎである。

 

 

「かっこいい〜!!」

 

「じゃんけんと大違いやな」

 

「ぶ〜!じゃんけんだって可愛いもん!」

 

 

 サニーの揶揄いに対し、顔を膨らませながらピースがそう答えた。

 プリキュア達は、新たな戦士が見つかったことに対し、すっかりお祝いムードである。

 

 が、無論アカンベェやアカオーニにとっては好ましい状況ではなかった。

 

 

「また新しいのが出てきやがった…アカンベェ!」

 

『アカーンベェェッ!!』

 

バサッ!

 

「「「「っ…!」」」」

 

 

 アカオーニが大声でアカンベェに指示を出す。

 主人の声を聞いたアカンベェは翼を広げて、再度空に飛び上がる。

 

 それに相対するは緑川なおこと、"キュアマーチ"であった。

 

 

ズサッ…!

 

「大切な家族の絆…守ってみせるっ!!」

 

ドォン!!!

 

 

 そう言って、彼女はアカンベェに向かって力強く駆け出した…のだが

 

 

「速っ!!?」

 

ブワァァッ!

 

「きゃぁっ!」

 

 

 目で追うのがやっとくらいのスピードで、自分たちの横を走りすぎていったマーチに驚く3人。

 

 そのスピードは、走った後にその余波で突風が吹き荒れてしまうほどだった。

 

 

「なにこれ…!こんなに速く走れるなんて!」

 

『ベェッ?』

 

 

 本人も、自分の足の速さに驚愕を隠せない。

 感情のまま走り出してしまったせいで、制御がうまくできず、頭上にいたアカンベェと思わず、思いっきりすれ違ってしまうほどだった。

 

 

「うわあっ!ちょっと待ってっ!!」

 

 

 倒すべき敵の下を潜り抜けてしまったので、慌てて急ブレーキをかけるが…早く動いたものが急に止まることはできない。

 

 

「えっ…!?うわぁぁっ!!!

 

ドォォォン!!

 

「オニぃぁぁっ!?おおおおっ!?」

 

 

 スピードを制御しきれず、思いっきりアカオーニが鎮座していた橋の柱に激突してしまう。

 とんでもないスピードで激突したため、大きな音を鳴らして土煙が舞い、余裕な態度で橋の上に立っていたアカオーニにもその衝撃が伝わり、バランスを崩して思わず尻餅をついてしまう。

 

 

「あっ…だ、大丈夫!?」

 

 

 ハッピーが慌てて遠方から声をかける。そして、土煙の中からマーチの人影が見えた。

 

 

「ふあー…びっくりしたー…」

 

「タフやなー…」

 

 

 ほんのちょっぴり砂で汚れたとはいえ、その立ち姿に目立った外傷はなかった。それどころか、本人的には少しびっくりした程度で、特に何も問題なさそうだ。

 

 

『アーカッカッカッカッ!!』

 

ドドドドッ!

 

「っ!」

 

 

 アカンベェは、好奇と言わんばかりに、土煙の中から出てきたマーチに向けて、再度頭の砲台から弾を連射して攻撃を仕掛ける。

 

 それに対し、なんとなくではあるが自身の身体機能を把握したマーチは、負けじとすぐに駆け出した。

 

 

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!

 

「ふんっ!!」

 

 

 今度は、しっかりと自身のスピードを制御下に置き、普段サッカーで鍛えたその走る能力を存分に発揮する。

 

 空からのアカンベェの爆撃が降り注ぎ、そこらじゅうから火煙が上がるが、お構いなしと言わんばかりにただ真っ直ぐ。直球勝負と言わんばかりに彼女はアカンベェへと突っ込んでいく。

 

 

ドォン!ドォン!ドドッ!ドドッ!

 

『ベェッ!?』

 

 

 そして、その勢いのまま、なんと柱を脚力のみで登り出したのだ。

 

 弾丸の雨も一切臆さず、壁を登るほどの脅威的なスピードにアカンベェも驚きを隠せない。

 

 マーチは、そのまま柱を駆け上がり、大きく跳躍。アカンベェの頭上へと飛び出した!

 

 

「はあぁーーっ!!!!」

 

ドォッ!

 

『アカッ…!?ベェッ!?』

 

 

 落下の勢いを活かして、強烈な蹴りを叩き込み、アカンベェを地上へと叩き落とした!

 

 

「ひゃー…!すごいパワー…!」

 

「すごーい!」

 

「鮮やかっ!」

 

 

 ハッピーやサニーがマーチの強さに興奮していると、ピースに抱き抱えられていたキャンディが大声を上げる。

 

 

「"マーチシュート"でアカンベェを浄化するクル!」

 

「"マーチシュート"?」

 

「スマイルパクトに力を込めるクル!」

 

 

 マーチは、いつの間にか自身の腰についていたスマイルパクトに触れる。

 

 

「えっ…これのこと?」

 

「そ!」

 

「力って…こう?」

 

「そ!!!」

 

シュワン!

 

「ひゃああっ!?な、何これ…!力が抜ける…!」

 

「止めちゃ駄目クル!もっと力を込めるクル〜!」

 

「えっ…?わ、わかった!」

 

 

 言われた通りに、目一杯力を込めるマーチ。

 

 

「アカンベェ何やってるオニ!今オニ!」

 

『アカンベェッ…!』

 

 

 アカンベェもその隙を狙おうと立ち上がるが…時すでに遅し。

 溜まった力が、一気に解放される!

 

 

「ぬぅぅぅん…!えいっ!!」

 

ブワァッ!

 

 

 風が吹き荒れ、マーチが空高くその風に乗って飛び上がる。

 

 

「プリキュアッ…!!」

 

 

 込めた力が、まるで"サッカーボール"のような球状になって彼女の目の前に現れる。

 

 緑の浄化の光が、勢いよく蹴り出された…!

 

 

「マーチシュートォッッ!!」

 

 

 サッカーの要領で打ち出された浄化の光は一直線にアカンベェの元に向かい、隙を狙おうと攻撃体勢に入っていたアカンベェに思い切り直撃した!

 

 

『アカンベェ…///』

 

キュワァァァッ!!!!

 

 

 そして、アカンベェが浄化されて、アカンベェの核となっていたキュアデコルが姿を現した。

 

 

「「「「やったー!!!」」」」

 

「はぁっ…はぁっ…なにこれ…パワー…全部使い果たしちゃった感じ…」

 

 

 大はしゃぎするキャンディ含めた4人と打って変わり、キメ技後の初めて感じる脱力感に、肩で息をするマーチであった。

 

 

「尻餅ついたからパンツ破れちゃったオニ…」

 

「「「「え?」」」」

 

「プリキュア!覚えてろオニ!!」

 

 

 捨て台詞を吐いて、アカオーニがどこかへと消えてしまった。

 すると、空から先ほど浄化したキュアデコルの一つ"ちょうちょデコル"がハッピーの元へと降ってきた。

 

 

「わー!ちょうちょデコルクル!」

 

「やったー!これで四つ目!!」

 

「わぁ…可愛い!」

 

「ふぃー…今日ウチらほぼなんもしてへんな…でも、ナイスやったで!なお!」

 

「う、うん…!はぁ…はぁ…あ!そうだ!げんき!みんな!」

 

 

 疲れている体だというのに、マーチはすぐさまバッドエンド状態になってしまっていたげんき達弟妹の元へと駆け出した。

 

 

「うひゃー…元気やなぁ…ウチなら初めてキメ技使った時、当分動けなかったで…」

 

「私もー…」

 

「あはは…でも!これで、みんなもバッドエンド状態から戻って…って?あれ…?」

 

「ん?どないしたんや?ピース?」

 

 

 ピースが素っ頓狂な声を上げたことに対し、サニーが声をかける。

 

 

「なんで…()()()()()()()()()()って…」

 

「えっ?あ、ほんまや…!いつもならアカンベェ倒したら晴れてたのに!」

 

 

 空を見上げてみれば、空の色はまだ悍ましい赤色の空だった。

 

 見えるはずの太陽がどこにも見えない。

 

 

「ど、どうしちゃったんだろう…?」

 

「変クル…バッドエンド王国の人がいなくなったら、バッドエンド空間は解除されるクル…何か変クル…」

 

 

 アカンベェを倒し、ウルフルンやアカオーニといった敵幹部達が撤退すると、バッドエンド空間は消え去り、空は元の色に戻る。

 

 今までもそうだった…というのに、()()()()()()

 

 いつもとは違う状況に、ハッピー達は困惑を隠せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンッ…パンッ…パンッ…

 

 

「「「「っ!!?」」」」

 

 

 乾いた拍手の音が、自分たちの背後から聞こえた。反射的に振り返ると、そこには1人の女の子がいた。

 

 

「いやー…すごいすごい…本当にすごいや…プリキュアのみんな♪まさか、今度はマーチの誕生の瞬間が見れちゃうだなんて♪」

 

「だ……誰…?」

 

 

 真っ黒なドレスに身を包み、貴族がよく被るようなつば広帽子を着けた、不思議な少女が拍手をしながら笑っている()()()口調でそう述べた。

 

 なぜ、ようなと言ったのか。それは、彼女が笑っているのかどうか、判断できなかったからである。

 

 

「ひっ……!!?」

 

「か、顔が…!」

 

 

 なにせ、その少女には、()()()()()()のだから。

 

 

***

 

 

 キュアマーチが生まれる少し前の街の一角…

 

 

「次〜!二名でお待ちのお客様〜!」

 

「…そろそろだな」

 

 

 太陽サンサンと照る正午。なお達と別れてから一時間くらい経っただろうか。

 

 俺は件の飲食店の前に並んでいた。

 俺の背後にはかなり長蛇の列ができており、皆汗をかきながらも携帯をいじったり本を読んだりで時間を潰しながら首を長くして待っている。

 

 そして、俺は今列の最前にいる。つまり、次になればようやくご飯にありつける。

 

 

(んー…やっぱ、なお達と一緒に食べた方が良かったかもなぁ…)

 

 

 俺の予想では、並んで30分くらいかなーと思っていたのだが、それの2.3倍くらい立たされることになった。

 

 なんでそんなことになったのかというと、急いで店に向かっていると、迷子の男の子を見つけてしまい、その子を交番に届けていたのだ。

 

 ほかにも、風船が木に引っかかった子供のために木を登ったり、お金を自販機の下におっことしちゃった人のために自販機を持ち上げたりだとかして…かなり時間を食ってしまった。

 

 それで、やっと店に着いたら、とんでもない長蛇の列が出来上がっていたわけである。

 

 普段鍛えてるので別に立っているのは何も問題ないのだが…

 ここまで時間がかかるなら、後日にくればよかったと思ってしまう自分もいる。

 

 いやでも、やっぱり同年代の女子2人と食事は、いくら片方が幼馴染とはいえ流石に…

 

 

(まあそれはいいや…兎に角、待てたのは前評判のおかげだな…いやーたのしみたのしみ!)

 

 

 人間、我慢した先に、美味い料理があると言うのならばいくらでも待てると言うものだ。

 

 そういえば店の詳細を言っていなかったので説明させてもらおう。

 

 ここは、焼売や小籠包といった点心で有名な、超人気中華料理店の第二号店なのである。中華…と聞くと、俺の変身先の元ネタも相まって、あの龍虎のヒーロー志望のあやつを思い出すが…まあそれは置いといてだ。

 

 確か…"おいしーなタウン"と言う街にある繁盛店の第二号店なのである。

 

 街の名前を聞いた時はやけにストレートな名前だなと感じたが、この世界じゃ食のテーマパークと言っても良いレベルで食の聖地としてかなり有名な場所なのだ。

 

 で、そんなところで人気だった店が第二号店を開いたというのだから…そりゃまあお客も殺到するわけである。

 

 

(にしても…"おいしーなタウン"って…)

 

 

 食にこだわる俺としては是非とも一度行ってみたい街ではあるのだが…今考えても安直すぎるネーミングすぎやしないだろうか。

 いやわかりやすいけど…なんかもっと、こう…他の◯◯街とか◯◯町とか、そう言う感じにできなかったのだろうか…

 

 

(……もしや、プリキュア関連の街だったり…いや無いか。考えすぎだな…この世界じゃこう言う名前の街も普通なんだろう)

 

 

 地図帳を漁っていた時も、他に色々かなりストレートな名前の街を見かけたし…"アニマルタウン"だとか、"のびのび町"だとか…だから、多分考えすぎだろう。最近プリキュアのことばかり考えてたからな…うんうん。

 

 いくら前世の知識と比べて不思議な名前だからって、その街がプリキュア関連だと決めつけるのも早計というものだろう。*1

 

 

(そもそも、プリキュアは星空さん達で、それ以上でも以下でもない…って、待てよ?)

 

 

 俺は、ふとこんな疑問が思い浮かんだ。

 

 

(……他にもプリキュアっているのか?

 

 

 今現在、俺が知るプリキュアは3人だ。

 

 

 星空みゆきこと"キュアハッピー"

 

 日野あかねこと"キュアサニー"

 

 黄瀬やよいこと"キュアピース"

 

 

 だが、初めてプリキュアと出会った時には、キュアハッピーしかおらず、次に会った時にサニーとピースが増えていた。

 

 そう、増えてる。

 

 

(この世界にプリキュアって何人いるんだ…?)

 

 

 朧げな前世の知識を思い浮かべてみれば、プリキュアは複数人で戦ってることが多い。そうなると、彼女達にさらに追加メンバーが増えるなんてこともあるだろう。

 

 戦隊みたいに5人くらいで戦う可能性もある。

 

 まあ、今は別にそれはいい、新しく増えるのなら増えるでそれで終わりの話だ。問題は、もう一つ気になったことがあるのだ。

 

 

あいつらのチーム以外のプリキュアもいるんじゃないのか…?

 

 

 仮面ライダーやスーパー戦隊が、毎年世界を守る戦士を輩出するように、プリキュアも一年毎に新しい戦士達が輩出される。

 

 つまり…星空さん達がプリキュアになる前に…この世界を守ってきた"先輩プリキュア"、もしくは"後輩プリキュア"がいるのではなかろうか。

 

 現に、俺が知ってるプリキュアである、犬が変身するプリキュアとか…あと…えーと…なんか、青い髪のプリキュアとかいなかったっけ?まあいいや、色々種類があるはず。

 

 そのプリキュア達は先輩…もしくは、後輩のプリキュアに違いない。

 

 で、この街以外にもそういう他のプリキュアがいるのではないか…という疑問が浮かんだのだ。

 

 

「次の方ー!どうぞー!!」

 

(あっ…順番だ…まあいいや、飯でも食いながらあとで考えよう)

 

 

 遅めになった昼食を取るべく、俺は店の中へと入った。

 

 店のドアを開けると、大きな招き猫の置物に出迎えられる。

 なにやら、おいしーなタウンのシンボルらしく、一号店にも飾ってることから、こっちでも飾ってるらしい。

 

 

「席をご用意しますので、こちらで座ってお待ちくださーい」

 

「はーい」

 

 

 そう言って、俺がレジ前のドアにポツンと座ると、店員さんが忙しなく店の奥の方へと戻っていった。

 

 さてよーやく飯にありつける…そう思った時だった。

 

 

『ドン!ブラスター!!』

 

「…………あー…はいはいそうですか…」

 

 

 ポンっと黄色い派手な銃が目の前に現れて、俺は悟った。

 

 この瞬間俺が今まで待った時間は無駄になるのが確定したと言うことを。

 

 いや別に、転送を拒否することもできる。原作でもやってた。

 けど…どこかにいる、ヒトツ鬼が現れて困っている人達を優先するか、いつでも理論上来れる目の前のご飯を優先するか…

 

 天秤にかけた時、ヒーローとしてどちらを優先するかなど明白。それに対し文句を言う筋合いはないが…こうなるなら、マジでなお達とご飯を食べてた方が時間を有意義に使えていた気がする。

 

 

ガチャリ!

 

「ですよねぇぇぇぇ!!!」

 

 

 俺の真下でワープドアがパカリと開いて、俺はそのまま叫びながら垂直落下していった。

 

 

「えっと、おひとり様ですね…って?あれ?お客様?どこに…」

 

 

 戻ってきた店員が辺りを見回しても、さっきまでいた少年の姿はどこにもない。

 

 

「うーん…急用で出て行ったのかな…?まあ、しょうがない。次の方ー!!」

 

 

***

 

 何故か晴れない空の下で、少女達4人が、1人の不気味な少女と向き合う。

 

 のっぺらぼうと言わんばかりのなにもないその顔は、彼女達にとっては不思議を飛び越えて不気味そのものでしかない。

 

 だというのに、さっきも含め彼女から声が聞こえて、明白に話しかけられた事実が、彼女達が不気味に思う心をより一層煽る。

 

 

「だ…誰やアンタ…!な、何者や!」

 

「何があったの…?って…え?だ、誰?」

 

 

 声を聞きつけ、マーチも戻ってきた所で、目の前に現れた不気味な雰囲気の少女に対して、サニーが声を荒げる。

 

 

「あれ?あぁ…自己紹介してなかったね…今しちゃうねっ!」

 

「そ…それよりも…か、顔!顔が…!」

 

「顔…?あぁ、ごめんなさい。()()()()()()()()()()()()()()♪」

 

 

 少女はどこかから"ギア"が付いた羽ペンのようなものを取り出し、自分の方に筆先を向けて、スラスラと手を動かす。

 

 すると、彼女ののっぺらぼうの何もない顔に表情が浮かび上がった。

 

 張り付いたような、ニヤリと綺麗な眉毛が生えた笑みの顔である。

 

 ただし、目と鼻だけが現れて、口だけがその顔にはまだなかった。

 

 

「嘘…か、顔が…!」

 

「驚かせてしまってごめんなさいませ…興奮のあまり、描き忘れてしまったのでございます…」

 

「な、なんや自分…急に変な口調になったな…」

 

 

 驚くハッピーを他所にして、不思議な敬語の口調になって、彼女はスッと頭を下げる。

 

 

「クルーッ!!?」

 

「きゃ、キャンディ!?ど、どうしたの!?」

 

 

 ピースの頭の上にいたキャンディが、何かを思い出したかのような大声を上げる。そして、ズビッと目の前の不気味な少女に指を差した。

 

 

「この人…!バッドエンド王国の幹部クル!!

 

「「「「ええっ!!?」」」」

 

「おや?知っていたのでございますか?でしたらば話は早いでしょう」

 

 

 そう言って、彼女はまるでお姫様が挨拶するように、ドレスをクイッと持ち上げて、軽くお辞儀をした。

 

 

「初めまして皆様…バッドエンド王国の幹部、いえ、厳密に言えば()()()()()()()()()()()()()()()…まあそれはいいでございますでしょう」

 

 

 そうして、一切動かない描いた表情を向けながら、微笑んだかのように首をくいっと傾けて、彼女はこう名乗った。

 

 

「私の名前は"ソノゼロ"と申します」

 

「ソノ…ゼロ?」

 

「バッドエンド…王国の…幹部!?」

 

「てことは…オオカミさんや…赤鬼さんと…同じ!」

 

「以後、お見知り置きをおいてくれると恐縮なのです故」

 

 

 "ソノゼロ"。そのまま読めば"その0"だろうか。あまり名前とは思えない安直な名前に呆気に取られる少女達。

 だが、バッドエンド王国の幹部ということは…オオカミさん達と同じ、みんなの笑顔を奪ってしまう人たちに違いないと。ハッピーは思った。

 そして、声を上げたのはサニーだった。

 

 

「な、なんや急に現れて!だか"ソノイ"だか"ソノニ"だか"ソノザ"だか知らんけど、戦おうっつう話なら、ウチが相手になるで!」

 

「あぁ…ごめんなさい。名前も不思議でしょう?私は()()()()()()からこんな名前なのです。あ、いえ、今は関係ないでございますね」

 

「い、一体…なんなの?」

 

「あぁ、気にせず。用件を話します。お疲れのところ申し訳です。貴方達には私と遊んで欲しいのです!」

 

「あ、遊ぶ?どういうこと?」

 

 

 独特な敬語…否、敬語と言っていいのかわからない口調で応答しつつ、彼女は"桃色"のボールを取り出した。

 

 

「そ、それは!」

 

 

 キャンディが、その玉を見た瞬間、恐ろしいものを見るような目になって、乗っかっているピースの上で大慌てな顔を浮かべる。

 

 

「大変クル!あの玉を使わせちゃダメクル!」

 

「え、ど、どういうことキャンディ!?」

 

「みんな!は、早く止めるクル!あれを使われたら…プリキュアはっ…プリキュアはっ!!」

 

「もう遅いのです」

 

 

 その瞬間。彼女が、天高くその玉を掲げた。

 

 

「いでよ!ヒトツ鬼!!」

 

 

 瞬間、アカンベェ達が生まれる時とはまた違う禍々しいオーラが飛び出た。その瞬間、あまり良い色でなかったバッドエンド空間の空が、大きく変化した。

 

 

ビビビッ

 

「こ、これって…!」

 

「桃太郎さんが…ロボで戦った時みたいな…!」

 

 

 草木が電脳空間の一角と勘違いしてしまうような、電子基盤のような模様が辺りを這い出し、不思議なドアのようなものが宙を浮き始める。

 

 橋にあった看板の"止まれ"の文字が"豁「縺セ繧"という文字へと変わり、世界が再度変容を遂げた。

 

 そして、プリキュア達の背後から少年の悲鳴が聞こえた。

 

 

「うっ…わァあアァあッっ!!?』

 

「っ!?け、けいた!!?」

 

 

 その禍々しい光は、なんと、なおの弟…先ほどからバッドエンド状態にされていた、緑川家の長男である"緑川けいた"に集まっていた。

 

 その様子を見て、ただ事ではないと悟ったなおが慌ててけいたの元に駆け寄った。

 

 

「どうしたの!?けいた!しっかりして!」

 

「お姉ちャン…なオねえチャン…!どこ、ドコ…!ドこにいルノ…!!』

 

「私はここ!ここにいる!けいた!大丈夫!?」

 

「な、なんやこれ…なにがどないなっとるんや…!?」

 

「けいた君!!」

 

 

 他のプリキュア達も慌てて駆け寄るが、様子がおかしい。周囲には光の粒子のようなものが漂い始め、明らかに不穏な気配がげんきから漏れ出ている。

 

 

「ふふ…ヒトツ鬼とバッドエンド空間はとっても相性が良いのでございます」

 

「ぃッ…!ァァァァァァああッッ!姉ちャン!みんナ!ドこ!どこニイルノ!』

 

「けいたっ!?けいたっ!!きゃぁっ!」

 

 

 すると、けいたの周りに侵入禁止の看板のようなものが現れて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が浮かび上がった。

 

 

「無駄ですよキュアマーチ…なにせ、今のこの子に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のですから…」

 

「マーチ!危ない!!」

 

 

 吹き飛ばされたマーチをハッピーが受け止める。

 慌ててけいたの方を見ると、そこにもうあの明るい少年の姿はどこにもなかった。

 

 

「欲望を持った人間の強いストレスに反応して実体化するその生態…その人にとっての強いストレス…最悪の結末(バッドエンド)という幻想を見せるバッドエンド空間によって…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…」

 

「雜?眠譏」

 

 

 金色にキラキラ光る星の塊のような鎧。

 

 グラデーションが利いた広がるプリズム。

 

 大きく光る太陽のような胸の塊。

 

 

 悍ましくもどこかまとまったようなデザインをした、人を襲う悪しき鬼が、母なる地球を汚すようにその足を地につけた。

 

 

「嘘…けいたが…けいたがっ………!」

 

ヒトツ鬼に……!!」

 

『家族ニ会イタイヨォォ !!』

 

 

 その名は『超新星鬼』

 

 地球から攫われ、家族と離れ離れにされるも、故郷を守るべく星へと帰還し戦ったスーパー戦隊シリーズ第10作目『超新星フラッシュマン』の力を受け継ぐヒトツ鬼であった。

 

 

『オ姉チャン!ハル!ミンナ!!オ母サン!オ父サン!ドコォォォ!!』

 

「そんな…嫌っ…嫌ぁっ…けいた!けいたぁっ!!」

 

 

 ただでさえキメ技も使ったばかりで疲労困憊のマーチは、目の前の状況のショックの大きさに、ヘロヘロと膝をついてしまった。

 

 

「けいた君をヒトツ鬼にするなんて…許さない!」

 

 

 その様子を受けてハッピーがいつもの雰囲気と一転し、強い目線でソノゼロと名乗った少女に目を向ける。

 その目には明確な怒りがあった。

 

 

「おや?言ったでございましょう?遊びましょうって…あら?よそ見して良いのでござんす?」

 

「…え?」

 

 

 指を刺された方向…背後を見てみれば、自分に向けて超新星鬼がその腕を大きく振りかぶっていた。

 

 

『会イタイィィッッ!!!』

 

「きゃあっ!!」

 

「ハッピー!!」

 

 

 ハッピーは、その攻撃をモロに受けてしまい、先ほどまで遊んでいたサッカーゴールに思いっきり激突した。

 

 

「あいたたた…ううっ…」

 

「くっそー…ウチもカンカンや…!人を化け物にするなんて…」

 

「おや?」

 

 

 サニーが、徐に立ち上がり、暴走する超新星鬼の前に立ち塞がる。

 

 

「ウチは今日まだ決め技使っとらへん!ここはうちに任せとき!マーチ!みんな!」

 

「あ、あかね…」

 

「うぉぉぉっ!!」

 

 

 友達の弟をこんなふうにさせて。絶対に思い通りにさせてたまるか。

 サニーは、握り拳を作って気合を込め始める。

 アカンベェと同じように浄化して、げんき君を助け出して見せる。そう思い、真っ赤な火がボウッと現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目クルッ!!!!」

 

「えっ…!?おわっ!?キャンディ!?」

 

 

 キメ技"サニーファイヤー"を叩き込もうと飛びあがろうとした矢先、今まで聞いてきた中でいちばんの大声をあげて、涙目のキャンディが腰に飛びついてきた。

 

 

「駄目クル…!普通のヒトツ鬼には撃たなきゃダメクル…けど、そのヒトツ鬼には撃っちゃ駄目クル…!!!」

 

「ど、どう言うことや!?キャンディ!?」

 

「キャンディ!?あぁっ…どうしよう、キメ技、私たち今の所一回しか使えないのに…!」

 

 

 キャンディが涙目ながらにしがみついて訴える。

 ピースの言うように、現時点では1日1回しか使えないキメ技が不発に終わってしまったが、そんなことがどうでも良くなるくらい、キャンディの様子は異常だった。

 

 

「プリキュアがっ…プリキュアがっ…プリキュアが人が変身したヒトツ鬼を倒しちゃダメクル!!」

 

「えっ…ど、どういうことや?な、なんでや!?」

 

「キャンディ…?なんで…?」

 

「プリキュアの…プリキュアの光でヒトツ鬼を浄化したら…!浄化したら…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けいた君は死んじゃうクル!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ……?」

 

 

 瞬間、ただでさえ、怒りとショックに溢れていたその場が凍りついた。

 

 

"死ぬ"

 

 

 キャンディは確かにそう言った。

 浄化でも、気絶でもなく…"死ぬ"とキャンディは言った。

 

 

『家族ニ…会イタイヨォォォ!!!』

 

 

 凍りつく戦士達などお構いなしに、怪物の叫びが、その場に響くのだった。

*1
ちなみにどこも思いっきり関連してます




なんか…とんでもない展開になってきましたね…(誰のせい)

タグの"曇らせ"が働き始めてまいりました…

なんでプリキュアがヒトツ鬼を浄化すると死ぬか云々は、6話あたりでポップ君に解説させる予定です。(あと、作者がなんでそんな設定にしたかとかも言うつもりです)
キャンディが詳細を話すのは…なんかキャラ違いかなと思いまして()

Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?

A.(その26)
ジョーカー関連やらお別れやらどんなに辛いことになっても、笑顔で絶対諦めずにハッピーエンドを勝ち取ってくれたスマプリのみんななら、特撮の大人でも引くような設定や不穏さにも負けずに打ち勝ってくれると思ったから。

感想お待ちしております!

サルブラザーって見た目だけならかっこいいと思いますか?

  • 思う!
  • かっこいい…とは思わんかな()
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