ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…!   作:よく酔うエンジン

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えーと、活動報告にも書いたのですが…この場でも謝罪させてください…実は重大な誤差を見つけまして…

緑川家の長男、緑川"けいた"君のことを"げんき"君とかいていました!本当にごめんなさい!

あらかた修正したとは思いますが…もしファンの人がいたら大変申し訳ございませんでした…

雪森さん。暉祐さん。誤字報告ありがとうございます!



急げ!家族を救え!

「"死ぬ"…?そ、それって…」

 

「キャンディ…ど、どういうこと…?」

 

 

 今まで聴くことなどなかった、"死ぬ"という重い言葉に対して、サニーとピースがキャンディに対して聞き返す。

 

 

「ただのヒトツ鬼なら大丈夫クル…だけど、誰かが変身したヒトツ鬼は…浄化したら駄目クル…!中にいる変身した人も…死んじゃうクル…!!」

 

 

 キャンディは、涙目になりながらそう告げる。

 

 

「ど、どういうことや!?今までヒトツ鬼と出会った時はそんなことなかったやん!!なんでそんな…!」

 

「それは…キャンディ達が出会ったのはきっと()()()()()()()()ヒトツ鬼だったからクル…」

 

「だ、だからって!じゃあ、あのヒトツ鬼にキメ技使ってもうたら!」

 

「けいた君は…死んじゃう…クル」

 

「そ、そんな…!」

 

 

 その言葉を受けて、その言葉を聞いていたサニー、ピース、そしてマーチは固まってしまった。

 

 キャンディはこうは言っているが、直接出会ってない騎士竜鬼は除いたとしても、キャンディが直接見た爆上鬼、魔進鬼といい、いずれも人が憑依したヒトツ鬼である。

 

 一歩間違えていれば、プリキュア達に悲惨な結末が待ち構えていたことなど、彼女たちはつゆ知らずであった。

 

 

「で、でも!そんなこと…急に言われても!」

 

「キャ、キャンディ!なんで今までそんな大事なこと言うてくれなかったんや!?」

 

「クル…今までのヒトツ鬼が人が取り付いてないなら…まだ言わなくていいって思ったクル。言ったらきっと…みんなが困っちゃうと思ったからクル…」

 

 

 人を取り込んだヒトツ鬼にキメ技を使えばその中にいる人は死ぬと言う情報。

 

 キャンディの言う通り、確かにそんなことを聞けば中学生であるプリキュアたちのショックは、多感な時期であることも相まって凄まじく大きいものとなるだろう。

 

 そう言う面で言えばキャンディの言っていることは正しい。

 

 しかし、もし知っていなければ…いま、キャンディが止めるのが間に合っていなければ死人が出ていたのは間違いなかった。

 

 

「じゃ、じゃあ」

 

 

 しかも、よりによって、自身の大切な、何よりも大事な家族であるけいたを失うことになっていた。そんな結末を迎える可能性があったマーチの体が震える。

 

 

「じゃあ!!どうすればいいの!!」

 

 

 必死な形相でキャンディに問いかける。

 

 キメ技を使ってしまった今の自分に十分な体力はない。正直、全速力で走れるかどうかも怪しい。それでも、何もしないわけにはいかない。

 

 

「キャンディ…だったよね?さっきの必殺技が効かないのはわかったよ…なら!他に何か手段はあるんだよね!?」

 

「クルゥ…………」

 

「けいたはっ…元に戻るんだよねっ!?なにか、何かあるんだよね!?」

 

「……………」

 

 

 キャンディは涙目になって、何も言わない。

 

 

「お願いっ…キャンディ…!何をすればいいの…?何をすればけいたは元に戻るの…?」

 

 

 だが、キャンディから飛び出た言葉は、希望を打ち砕く言葉であった。

 

 

「キャンディも…わからないクル…」

 

「っ………!!」

 

 

 キャンディが、今にも泣きそうな顔で首を横に振る。

 

 キャンディが知らないのならば…尚更今日プリキュアになったばかりの自分にはどうしようもないということ。

 

 あまり頭がいい方とは自分で思ってないなおも、それはわかる。だからこそ…その顔が、一瞬で絶望に染まった。

 

 

「じゃ…じゃあどないすればいいんや!?あのまま、放っておくわけにはいかんやろ!?」

 

「キャンディ!!なんでもいい、なにか…なにかないの…?」

 

「クル……今は…一旦逃げるしかないクル…!」

 

「お願い…キャンディ!なんでもいい!何か…!何かないの!?」

 

 

 しかし、キャンディは何も答えない。いや、答えられなかった。

 

 

「嫌…嘘…そんな…嫌だ…!!!」

 

 

 取り込まれた家族を助けられず、ヒトツ鬼が暴走するのを。弟が暴れ狂うのを見ていることしかできない。もし浄化しようとすれば…弟は死ぬ。その事実がなおの気持ちを刺激する。

 

 どうしようもない現実に対して、視界がクラクラ揺れ始める。

 

 

「嫌だぁぁっ!!けいたっ!!けいたぁっ!!」

 

 

 そして、マーチが絶望の声を上げた。

 

 

***

 

 プリキュア達が絶望する最中、その様子を橋の上から眺める存在がいた

 

 

「……なぁんだ…あのキャンディとかいう小生物、知っていたのですか

 

 

 キャンディがサニーの決め技を止めたことに対して、はあとため息を吐くソノゼロがそこにいた。ギアのついた羽ペンをヒラヒラさせながらプリキュアたちを眺めている。

 

 

「折角…お仲間がお仲間の家族を勘違いの上殺すという、素晴らしいシナリオで面白い結末を拝めると思ったのに…残念でございます…うっうっ…」

 

 

 ペンからインクを出して、のっぺらぼうの顔にわざとらしい泣き顔を描きながら、そんなことを述べる。

 

 

「ですが…素晴らしいです…あぁ、家族を救えない悲しみ…とても素晴らしいです…ふふ…うふふふ…」

 

 

 そういう彼女の片手には、白紙の本が握られていた。しかし、その本はアカオーニやウルフルンが使っていたものではなかった。表紙はまるで宇宙の様に真っ暗な()()()()だった。

 

 

「プリキュア達は気がついていないでしょう…自分がバッドエナジーを生み出していることを…この本は()()()()ですから…まあ、それは置いておいて…」

 

 

 バサっと本を閉じて彼女は立ち上がる。

 

 

「プリキュアと遊ぶのはそうですが…別の目的に()()()()()()とやらを知ることにあるのですし故、私も少しお手伝いしましょう」

 

 

 そう言って、羽ペンをまるで"指揮棒"の様に振るう。すると、羽ペンから光の粉の様なものが大量に飛び出て、辺りを覆い始める。

 

 

ピガァァッ…

 

『ゥッ…オ姉チャン…!ドゴォッ…!』

 

 

 その光は、先ほどハッピーを突き飛ばした、その場で蹲りながら姉に助けを求める様な声をあげる、なおの弟けいた君こと超新星鬼を包み込んだ。

 

 

『ゥッ…ァァァァァッ!!!?』

 

「ふふ…いつまでも暴走してないで…プリキュア達を襲いに行きなさい…そうしたらお姉ちゃんに会わせてあげますよ…なんてね」

 

 

 すると、超新星鬼はまるで()()()()()()()()()()かの様に立ち上がり、キャンディ達と話し続けるプリキュア達の方へと振り向いた。

 

 

『ガァァァァッ!!!!』

 

「そうだ。操るついでに、"お姉ちゃん痛いよー"なんて言わせる様にしたら、もっと絶望してくれるのでは…?アリかもしれません!ふふ♪」

 

 

 何やら悪巧みをするソノゼロを置いて、超新星鬼はそのままそちらの方へと勢いよく駆け出した。

 

 

「ふふ…グラサン野郎とやらが来てくれると嬉しいのですが…来ないなら来ないで、プリキュア達はどうするのか…見ものでございますでしょうなぁ…♪」

 

 

 そう言って微笑む顔を描いたソノゼロの表情は、えらく不気味なものだった。

 

 

***

 

 

「ううっ…みんな…どうしたのっ…!?」

 

「ハッピー!!それがやな…」

 

 

 マーチの悲鳴を聞き、先ほど超新星鬼に吹き飛ばされたハッピーその場にやってきて、その驚愕の事実をサニー達の口から知る。

 

 

「そ、そんな…じゃあ、あのヒトツ鬼に対して…私たち、何もできないの…!?」

 

 

 全くハッピーじゃない結末が彼女の頭によぎる。その思考を抱きながら、超新星鬼の方を見てみると…

 

 

『ァァァァァァァァッ!!!!?』

 

 

 先ほどとは打って変わり、暴走しているというよりも、明確な殺意を持って襲いかかって来る超新星鬼がいた。

 

 

「くっ…来るでっ!!」

 

「きゃぁっ!!くうっ…!」

 

 

 サニーとピースが慌てて超新星鬼が振り回す腕を受け止める。

 勢いは凄まじいが、プリキュアの身体能力を持ってすれば、止められない勢いではない。

 

 

「っ…!ごめんけいた君っ!!はぁぁぁっ!!」

 

「っ!やぁぁぁっ!!」

 

ドゴォッ!

 

 

 そうだ、中に取り込まれているけいた君のためにも戦わなくては。

 そう考えたハッピーとマーチの2人が押さえつけている超新星鬼に向けて飛び蹴りを放つ。プリキュアの凄まじい身体能力を活かしたその飛び蹴りは、たとえヒトツ鬼であってもまともに喰らえばひとたまりもないだろう。

 

 サニーとピースの腕から離れた超新星鬼は大きく吹き飛ばされて、そのまま地面に仰向けになって倒れる。

 

 

『痛イ…痛イヨォ…ナオ姉チャン…痛イィッ…』

 

「っ……!けいたっ!!?」

 

 

 ヒトツ鬼が、まるで弟であるけいたが痛がる時に出す様な声をあげる。

 その様子を受けて、プリキュア達の目がかっと見開かれる。

 

 

「おやおや酷いんですね…家族に手をあげるなんて」

 

 

 その状況に対して、嘲笑う様にそう問いかけるのは橋の上にいるソノゼロだ。

 

 

「そ、ソノゼロ!?」

 

「あぁ…可哀想に…プリキュアの攻撃一つ一つは、ヒトツ鬼の中にいる人にまで反映されるのです…今、お腹を蹴られたけいた君はきっと、お腹を痛めているでしょう…」

 

「なっ……!?嘘っ……!?」

 

 

 わざとらしく、ソノゼロはそんなことを述べる。

 

 

「あぁ…可哀想に、お姉ちゃんだけでなく、友達のお姉ちゃんに傷つけられて…まだ子供でしょうに…あんまりにも可哀想ですなあ…」

 

「そ、そんな…!!」

 

 

 文字通りどの口が言っているのだと言わんばかりの哀れみの言葉がソノゼロから飛び出はじめる。だが、その言葉は、プリキュア達の絶望を煽るのにはちょうどいいものだった。

 

 

「そんなのっ…っ!こんなことして!何が楽しいの!けいた君をヒトツ鬼にしてっ…!」

 

「ん?きゃあ…こわいこわい…そんなに怖い顔しないでくださまし…」

 

「こ、こんにゃろ…!」

 

(まあ、中の人にもダメージがいくというのは嘘なんですけどね…浄化したら死んでしまいますが…ただ殴る蹴るだけなら別に支障はありません…が、こう言ってしまえばあなた方はどうすることもできないでしょう?)

 

 

 ソノゼロは、ニヤリと笑いながらプリキュア達の方を眺める。

 今の言葉で、殴る蹴るで鎮圧することもできないと彼女達は思うだろう。つまり、状況的には八方塞がり。待つのは無限の絶望でしか無いはずだ。

 

 

「ど、どないすんや…さっきの言葉が本当なら…」

 

「浄化技もそうだし…私たち、戦えないよ…!」

 

(さあ、もっと深い絶望に陥りなさい…プリキュア達…その絶望が…"私の目的"の達成につながるのです…!)

 

 

 ソノゼロは、愉悦の表情を浮かべながらキュアマーチを眺める。何故キュアマーチだけなのか。それは、キュアマーチはこの絶望の度合いが間違いなく大きいからだ。

 

 

「私たち…どうしたらいいの…?どうしたら…けいた君を…」

 

「クル…わからないクル…!」

 

「どうしようもあらへん…うちらじゃ…何も…!」

 

 

 他のプリキュア達も絶望してくれているがまだ足りない。

 他のプリキュアにとっては友人の弟がヒトツ鬼化されたという話だが、彼女にとっては大切な家族だ。その家族に対してどうしようもできない現実をどう諦め、挫け、泣き喚くのか。どんな深い絶望に陥ってくれるのか。先程の悲鳴よりも数倍素晴らしい絶望の声を上げてくれるだろう。

 

 彼女は嘲笑う様な表情を浮かべながら、空からマーチの次の言葉を伺う。

 

 一体、どんな言葉が来るのか。どんな絶望を見せてくれるのか、そう思いながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、結果は彼女の思惑とは少し違うものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い…星空さん、あかね、やよいちゃん…力を貸して」

 

「……ん?」

 

 

 顔はよく見えないが、強い決意がこもったような口調で、先ほどまで絶望していた彼女が立ち上がる。

 ソノゼロは、その様子を受けて首を傾げる。

 

 

「みんなには…けいたを押さえてて欲しいの」

 

「え?」

 

「マーチ…?」

 

(なんです…?これは…絶望…していない?)

 

 

 マーチは、キッと強い目線で超新星鬼を睨む。ソノゼロは、その様子を受けて、顔には出ないが不思議に思う。

 

 

「今の言葉…けいたの意識はきっと残ってるはず」

 

 

 すうっと息を吸う。

 彼女の中で、一つ"希望"が生まれた。可能性を感じた。それが彼女を絶望から立ち直らせたのだ。それは…

 

 

「あたしが説得して…けいたを元に戻す」

 

 

 マーチは、みんなにそう告げた。

 

 

「無理クル!ヒトツ鬼は一度暴走したら、基本何も言葉が聞こえないクル!ずっと押さえるのも危険クル!みんなが危ないクル!」

 

「あかんでマーチ!もうキメ技使ったし、初めて変身したんやからクタクタやろ!?ウチらがなんとかするからマーチは下がって…」

 

「そうだよ…!今は諦めて、逃げた方が…!」

 

「ふふ…お仲間はご懸命ですね…何もしないのが正解では…」

 

「ふざけるなっ!!」

 

 

 なおの力強い声に、みんながハッとなる。

 

 

「やる前から諦めるなんて…絶対に嫌だ!!危険?疲れ?そんなのどうだっていい!」

 

「なお…」

 

「それに、家族の命がかかってるなら…止まってなんていられない!!あたし以外には任せられない!何もできなくても…何もやれないなんてことはない!少しでも可能性があるなら…私はやるっ!!」

 

「マーチ…」

 

「だってあたしは…お姉ちゃんだから…!」

 

 

 マーチことなおは、そう言い切った。

 その言葉は、どうしようもないと絶望に染まりかけていた他のみんなの心に強い衝撃を与えた。

 

 

「緑川さんの言うとおりだよ…!」

 

 

 どうしようもないのではと。そう心のどこかで思っていた心を捨てて、それに便乗するのはハッピーだ。

 

 

「何もしなかったら…きっと…けいた君も元に戻らなくて…私たちも全然ハッピーじゃ無くて…緑川さんなんてきっともっとハッピーじゃなくなっちゃう…!」

 

 

 みんなのハッピーを願う彼女も、キメ技を使い、1番ダメージを受けて傷ついているであろう体に鞭を打って気持ちを奮い立たせる。

 

 

「せやな…!2人の言う通りや!絶対うちらで助けんで!」

 

「うん…!あきらめたらそこで試合終了って言葉もあるもんね!」

 

 

 サニーとピースも、その言葉を受けて心が奮い立つ。そして、マーチの横に並んだ。

 

 

「みんな…ごめん。私のワガママみたいなものなのに…」

 

「ううん!そんなことないよ!むしろごめん…ネガティブになっちゃって!」

 

「せや!うちらは今後プリキュアとして一緒に頑張ってく仲や!こんなところでへこたれてる場合じゃあらへん!うちも悪かった!」

 

「うん…!絶対に諦めちゃダメ…!ヒーローさんもきっとそう言う!」

 

「そうクル…!キャンディも諦めないクル!!」

 

「みんな…ありがとう」

 

「よし!みんな!いくよっ!!」

 

 

 そう言って、4人のプリキュア達は、暗いオーラを跳ね飛ばして、超新星鬼の前に並び立つ。

 

 少しでも希望があると言うのなら、足掻いてみせると言わんばかりに、全員の顔は晴れきっていた。

 

 

(……面倒くさいですね)

 

 

 それにいい顔をしないのはソノゼロだった。

 

 

(折角いい絶望に染まると思ったのに…プリキュア達も絶望しやすい様にセッティングしてあるというのに…ここまで煽ったのは逆効果だったですなり…にしても…ここまでキュアマーチの心が強いとは思っていませんでした…まさか、一抹の希望に賭けれるほどこの時点で心が強いとは…)

 

 

 彼女の言うとおり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ならば、この時点で心は砕けていたかもしれない。

 

 ()()()()では、彼女は一度家族を失いかけている。そして、その後とうごの言葉を聞き、なおの心持ちはソノゼロの予想よりも強いものとなっていたのだ。

 

 ()()()()()()()であれば、その様な出来事はなかったため、この時点での彼女の心の強度はそこまでではなく、彼女の望む通りの結果になったのかもしれない。しかし、異物が紡いだ縁が、少し結果を変えていたのだ。

 

 

(ふん…まあいいです…暴走状態のヒトツ鬼にはどんな言葉も通じないですし…私の手のひらで、本来なら無い希望をあると思い込んで、せいぜいあがけばいいでしょう…その後にきっと絶望は待ち受けているのだから…あぁ、楽しみです!)

 

 

 ソノゼロは、再度橋の上に戻り、プリキュア達の様子を観察するのだった。

 

 

***

 

 

「私たちでけいた君をおさえる!サニー!ピース!準備はいい?」

 

「「「うん!」」」

 

「いくよっ!!」

 

 

 ハッピーの掛け声を聞き、サニーとピースが超新星鬼の周りを取り囲む。

 

 

『ギィッ!!?』

 

「やぁっ!!」

 

「せいやぁっ!」

 

 

 そして、そのまま2人して腰に抱きついて、超新星鬼の動きを止める。

 

 

『ギィィィァァァッ!!!』

 

 

 プリキュア2人がかりに押さえられてはヒトツ鬼でも脱出は難しい。

 なので、邪魔だと言わんばかりに、拳を振り下ろしてサニーとピースを退かそうとする…が

 

 

「駄目っ!!」

 

『ァァッ!!?』

 

「もうこれ以上…誰も傷つけさせないっ!!!」

 

 

 すかさずハッピーが背後から回り込んで羽交締めにして、腕を使わせまいと拘束する。こうして、3人がかりのパワーで超新星鬼は動けなくなった。

 

 

「へへっ…!そういえば、けいた君にはサッカーしようと思ったらこうなって見せとらんかったな…!うちらのチームワーク!」

 

「ごめんね…ちょっと痛いと思うけど…我慢して!」

 

「なおちゃん!今!!」

 

「うん!!」

 

 

 マーチは駆け出して、変わり果てた弟の前に立ち、肩を掴みながら弟が自分の方をしっかり見る様にして、姉として話しかける。

 

 先ほどまでの暴走状態なら聞く耳は持たないだろうが…こうしてしっかり自分の声を聞かせれば…!そう希望を抱きながら。

 

 

『オ姉チャン…ドコォォォッ!!』

 

「けいたっ!!お願い!あたしの声を聞いてっ!!私はここにいる!だから元に戻って!!」

 

 

 雄叫びの様にあげるその声に対して、なおはけいたに届く様に話しかける…が、その様子は変わらない。

 

 

『オ姉チャン!ドコォォォ!!!!』

 

「けいたっ!けいたっ!!私のことがわかるっ…?そうだ!変身を解除すれば…!」

 

「ダメクル!それこそ本当に危ないクル!!」

 

「っ…!そう…だね。うっ…なら!けいた!覚えてない?ほら、私の声!私の声が聞こえる?」

 

『オ姉チャァァァン!!』

 

ドゴォッ!!

 

「きゃぁっ!!」

 

 

 しかし、けいたこと超新星鬼の暴走は止まらない。

 しがみついて必死に言葉を投げかけるマーチなど知らんと言わんばかりに、唯一押さえきれていなかった足を使って蹴り飛ばす。

 

 

「マーチ!!?」

 

『家族ニ…会イタイ…ミンナ…ドゴォ…!!!』

 

「きゃぁっ!!?」

 

「うわっ!!?何てパワーやっ!?」

 

ブンッ!ブンッ!

 

「「「きゃぁぁっ!!?」」」

 

 何とか羽交締めにしていた3人も、マーチが蹴飛ばされたのを見て力が緩んでしまったのだろう。好機と言わんばかりに超新星鬼が腕を振り回し、プリキュアを吹き飛ばす。

 

 

「うっ…ぐうっ…」

 

「どうしよう…もう力が入らない…!」

 

「う…うちも…限界や…」

 

「ハッピー!サニー!マーチ!」

 

 

 先ほどから何度も攻撃を受けたり、キメ技を使った後のハッピー、サニー、マーチは正直、なんとか奮い立ったはいいが体力は限界に近かった。ピースが慌てて駆け寄るが、ピースもピースで、そこまで顔色がいいわけではなかった。

 

 説得は失敗した。もう一度やろうにも…ヒトツ鬼を押さえるどころか、まともに戦える体力が、まだ変身して日が浅い彼女達には残っていなかった。

 

 だが、それでも諦めるものかと立ちあがろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「家族なんて…みんなばらばらになる…」

 

「楽しくないよ…」

 

「今の声っ…!?」

 

 その時、超新星鬼の注意が別方向に向いた。

 

 

 引き続きバッドエンド状態にされている緑川家の弟妹達。ぐいっと、超新星鬼の首がそちらの方に向いた。

 

 

『家族ハ…ミンナハ…ドコ……ナノニ…オマエラウルサイ……』

 

「おや…これは良い方向に予想外なことに…♪」

 

 

 そう言って、超新星鬼がテクテクとそちらの方に歩き出す。それに対して愉悦の表情を浮かべるのはソノゼロだ。

 

 

(っ…!まさかっ!!)

 

「駄目ぇっ!!」

 

 

 マーチが力を振り絞って慌てて立ち上がろうとする。が、先ほどの蹴られた場所が悪かったのだろう。ダメージと疲れのせいで上手く立ち上がれない。

 

 

「駄目っ!けいたっ!!それはあなたの家族!私たちの家族だよっ!!お姉ちゃんのことはいくらでも殴っていいから…みんなだけはやめてっ!!」

 

「け、けいた君!だめや!!」

 

「弟さんだよ!けいた君!お願い!気づいてっ!!」

 

 

 動けないハッピーやサニーも叫ぶが、聞こえている様子ではない。ピースが慌てて止めようとするが…間に合わない。

 

 すでに、超新星鬼は、次女であるはるの前に来て、その腕を振りかぶっていた。

 

 

『死ネェェェッ!!』

 

「お願い!やめてぇぇぇっ!!」

 

 

 そして、その無慈悲な一撃が、動けなくなった弟妹たちへと迫り、なおの悲鳴がこだまする。

 

 

(ああ…素晴らしい悲鳴なのです…)

 

 

 結局、彼女達が行き着く先はバッドエンドでしかなかった。この状況を表すらならばそうなるだろう。

 ソノゼロはそんなことを思いながら、自分が見たかった景色を見れて満足する。

 

 

(折角…走れる力を手に入れたのにっ…また…私はっ…私はっ…!!)

 

 

 なおは、想像したくない未来を想像してしまう。そして、そうなるかもしれないことに対し、悔しさが滲み溢れる。

 

 みんなに協力を頼んででも、けいたを助けることはできなかった。それどころか、動けなくなって…家族を危険に晒している。

 家族を守りたいと思って変身して…速くなったのに…どうしていつも自分は大事な時にはしれないのだと思いながら。

 

 ただ、やめてと叫ぶことしかできない自分に対し腹が立つ。どうしようもないのだと本能が感じてしまう。

 

 

 

 

 

 もう駄目だと。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーッハッハッハ!!!」

 

 

ドキュン!ドキュン!

 

 

『ギィィィァァァッ!!?』

 

「えっ……!?」

 

「なっ…なんです…!?一体…!」

 

 

 超新星鬼の外装から火花が飛び散り、超新星鬼がよろめく。

 予想外の出来事に、ソノゼロ含め全員が驚く。

 

 

「な、なんや…?」

 

「今の…爆発は…?」

 

 

 目の前で起きている状況に、4人は驚きを隠せない。すると、背後から声が聞こえる。

 

 

「やあやあやあ!祭りだ祭りだ!」

 

「この声は…」

 

「誰…?」

 

「まさか……!!あっ、あの人達は…!!」

 

「え、な、な…なんやあれぇぇぇ!!!??

 

 

 背後を振り返った少女たちの前には、異様な光景が広がっており、サニーの絶叫がこだまする。

 

 幻想的で、荒々しくも神々しく、どこか派手で心地いい。

 

 ハッピーにとっては一度見たことある景色がそこにはあった。

 

 

バサッ…!バサッ…!

 

「あれはっ…あれはっ…!!」

 

 

 天女たちが舞い踊り、紙吹雪を舞い散らせ、派手に、華麗に、彼女たちは舞い、主人の入場をド派手に祝う。

 

 

「ハーッハッハッハ!!」

 

 

 何度か聞いたことのある大きな笑い声が聞こえた。天女達の背後に、一つ大きな集団がド派手についてきている。

 

 

 神輿を担ぐ6人ほどの男だ。()()を乗せて、その集団がこちらへゆっくり。かと言って派手にむかってくる。

 

 そしてそのお神輿には、見たことある影が一つ乗っていた。

 

 

「袖振り合うも他生の縁…つまづく石も縁の端くれ…共に踊れば繋がる縁…!」

 

 

 真っ赤な丁髷。大きなサングラス。

 

 手に持った桃のマークが刻まれた扇子。

 

 そして何よりも目立つ額の桃のエンブレム。

 

 

 バッドエンド空間になると現れて、自分たちと共に浄化を手伝ってくれる謎の存在。敵ではないだろうが、何者なのかよくわからない、不思議なヒーロー。

 

 

「この世は楽園!」

 

「悩みなんざ吹っ飛ばせ!」

 

「笑え笑え!ハーハッハッハ!!」

 

 

「もっ…桃太郎さんだぁぁぁっ!!!」

 

「クルー!!お祭りクルー!!」

 

「ヒーローさんだっ!ヒーローさんが来てくれたよ!!」

 

 

 その様子を見て、ハッピーやピースは大はしゃぎである。

 今1番、この状況を打破する希望があるかもしれない存在。何度も助けてくれた憧れのヒーローが目の前に来たのだから。

 

 

「えっと…だ、誰………?も、桃太郎…?あれが?」

 

「なんやあれ…お神輿…?」

 

 

 しかし、サニーとマーチは完全に状況についていけずにいた。

 

 マーチに至っては、全く知らないサングラスの真っ赤な不審者が神輿に乗って目の前に現れた状況となんら変わらない。見た目に関しても、確かに頭に桃みたいなものはくっついているが、桃太郎と言い切っていいのかわからない存在の前に、脳の処理が勿論追いついていなかった。

 

 サニーも一応見たことあるが、絶望しきっていた状況で急にお祭りみたいな雰囲気で桃太郎が現れた。いつもならツッこむところだが、サニーもサニーで、疲れ切っていてそんな元気などなかった。

 

 

「……あれが…」

 

 

 いい感じにまたプリキュア達の絶望を邪魔され、怒りのこもった声でドンモモタロウの方を振り向く。

 そう、彼こそが、ウルフルンが言っていたグラサン野郎ことドンモモタロウだった。

 

 

「いや温度差……一体何なんです…絶望とは対極みたいな雰囲気出してて…何ですかあの人…」

 

 

 しかし、嫌悪感とか怒りよりも、よくよく状況を鑑みれば急すぎるその登場に困惑の方が勝る様だった。

 

 

「プリキュア…助太刀してやるぜ!!」

 

 

 そして、彼女達の様子などお構いなしに持っていた扇子を放り投げて、1人の暴太郎がエンヤライドンのエンジンを蒸して飛び降りる!!

 

 

「…あっ!待って!桃太郎さん!!そのヒトツ鬼はっ…きゃぁっ!?」

 

「せや!ちょい待ち!あのヒトツ鬼に攻撃したら…!うわぁっ!?」

 

 

 あのヒトツ鬼を浄化すると死んでしまう。そのことを伝えようとした2人だが、ドンモモタロウは気づかず、エンヤライドンで通過してしまった。そして、そのまま超新星鬼に飛び掛かる!!

 

 

「さあさあ!楽しもうぜ!勝負勝負!」

 

(こいつだけは…今すぐに…早急に倒す…そうすれば!ワンチャンまだ店に戻ってご飯食べれるかもっ…!)

 

 

 その気迫が、後に良くない事態を巻き起こすことになるとはつゆ知らずに。




 ちなみに、なおちゃん吹っ切れたみたいな感じになってますが、まだまだ曇らせは続きます(???)

 にしても…もっと曇らせ描写勉強しないとだな…

 本当は、もっととうごに早めに登場させてがっつりしゃべらせるつもりだったんですが…書いてるうちに15000字越えそうだったんで、話数を分けることにします(おい)

 なんか、ソノゼロの会話が違和感あるんだよな…上手くプリキュア達と会話のキャッチボールできてない気がするけど…まあいいか。初登場補正ということで。

 ソノゼロの武器は、アバレキラーのウイングペンダクトを想像してくれるとありがたいです。

Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?

A.(その27)
どちらも笑顔を大事にする主人公がいるから。

感想お待ちしております!

サルブラザーって見た目だけならかっこいいと思いますか?

  • 思う!
  • かっこいい…とは思わんかな()
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