ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…!   作:よく酔うエンジン

6 / 37
さてさて、後編でございます!

くそぅ…なんか話を書くたびにシリアスになっていく…確かにシリアスも書きたいけど…スマプリって基本ギャグだからギャグもっとしっかり書きたい…すなわち本編に早く行きたい…!



みどりのヒーロー

 

「本当にありがとう桃冴」

 

「桃冴君ありがとうねぇ…娘の命を救ってくれて…」

 

 

 なおや、なおの家族が深々と頭を下げてくる。

 結局、あの後警察が来て事情聴取やら何やら色々あって、解放されたのは午後になってからだった。

 どうやら、あのトラックはブレーキが途中でぶっ壊れてしまったらしく、制御が利かなくなってしまい事故に至ったらしい。運転手側の命に別状はなかったが、前面から思いっきりはるちゃんを轢きかけた後に建物へと突っ込んだわけなので、今病院にいるらしい。トラックの所有者の会社のお偉いさんと先ほど会って、後日改めて謝罪や今後どうするかを決めるという段取りだ。

 

 で、今事情聴取を終えて俺やなお、はるちゃんを互いに迎えに来た親と共に、警察署の前で集結している形になっている。

 

 

「別に大丈夫ですよ!これくらい!ヒーローを目指す者として当然のことですから!」

 

「てやんでぇ!桃冴君がしてくれたことは、俺たちにとってそれでも感謝しても仕切れないことなんだよぉ!俺たちのプレゼントの為に二人っきりで外出したせいで、はるがお天道様のところに行くってなってたら…俺はもう…ダメだったかもしれない!本当に君は娘の命…いや、家族の命は俺の命も同然だから俺の命の恩人だ!桃冴君!!ありがとなぁ!」

 

 

 そう言って、なおのお父さんの源次さんが俺に抱きついて感謝を述べてくる。おお、勢いがすごい。そして苦しい。

 

 

「むぐぅ…あ…えっと…」

 

「おいおい、源次やめてやれって。気持ちはわかるが、桃冴が困ってるっての」

 

「そうよ。桃冴君ただでさえお疲れだろうから、困らせちゃダメでしょう?」

 

「うううっ…すまねえっ……感極まっちまってよぉ…!」

 

 

 抱きつかれてどうすればいいかわからない俺にとも子さんと親父さんからフォローが入る。

 

 

「とうごにいちゃん…ごめんなさい…私のせいでお膝が…それに、アイスも…約束…」

 

「ん?ああ、気にするなこれくらい。数日すれば治ってるさ。アイスも命に比べりゃ軽いもんさ。それより、はるちゃんの方こそ大丈夫か?怪我とかはない?」

 

「うん!大丈夫!」

 

 

 良かった、みたところはるちゃんもいつも通りっぽい。あの事件のことを引きずってなさそうで安心した。

 

 

「あら?はる、もしかして桃冴お兄ちゃんにアイス買ってもらったのかい?」

 

「うん!買ってくれた!」

 

「あらあら…本当、何から何まで…ありがとねぇ…」

 

「いえいえ!気にしないでください!好きでやったことなんで!」

 

「本当に、桃冴君がいてくれて助かったよ…感謝してもしきれないねぇ…なにか、お礼をさせておくれよ」

 

「あ、だったら一つ…頼み事を聞いてもらえないでしょうか、なおにひとつ頼みたいことがあって…」

 

「…え?あ、あたし?」

 

 

 俺は、なおに名指しで一つ頼みたいことがあるのだ。

 

 

「このぬいぐるみ買うの手伝ってくれない?」

 

 

 そう言って、俺は姉から手渡されてたお使いリストを見せる。

 

 

「おん?お前まだ買い物終わらせてなかったのか?」

 

「いやー…買い物の途中ではるちゃんに会ったわけだし…」

 

「あー…なら、しょーがねぇなぁ」

 

 

 こちとら、なお探しとか事情聴取とかもあってそれどころじゃなかったからなマジで。

 

 

「これ…確か新発売の私が好きなシリーズのやつ…にしても、桃冴ってこんな趣味あったっけ?もっとこう、けいたみたいなヒーローモノとかそっち系のもの好きじゃなかった?」

 

「いやー…それ、姉から買ってこいって頼まれてるんだけど、俺、こういうのわからなくってさ…厄介なことに写真の一枚すらないから名前だけ言われてもパッとしなくて…なおって昔っから可愛いものとかよく好きだったから分かるかなーって」

 

「あー…そういうことね。いいよ!任せて!」

 

 

 なおは快く快諾してくれた。

 と言うわけで、俺たちは事情聴取という疲れる出来事の後にも元気に買い物に行くことになった。前世ならありえなかっただろうが、今の俺は小学生。元気が溢れてしょうがないから無問題である。

 

 

***

 

 

「すまんな、色々付き合わせて」

 

 

 なおが色々教えてくれたおかげで、何とかして姉のお使いに頼まれた品物は全て買うことができた。

 

 今、俺ら二人、近所のぬいぐるみ屋さんの前にいた。緑川一家ははるを家に送ってくるといい、親父さんは"若い子たちのデートにおっさんが水を差すわけにはいかない"と勝手に一人帰って行った。

 気遣いはありがたいけど余計なお世話である。デートじゃなくてお手伝いしてもらってるんだっつーの。こちとら前世では彼女すらいたことないんだぞ。

 

 

「平気平気、これくらい、桃冴がやってくれたことに比べたらお安い御用だよ」

 

「そう言ってもらえると助かる。にしても、こんなふにゃふにゃしたぬいぐるみで良かったのか…」

 

「ふにゃふにゃって、ほら!この子のこの顔見て!とっても可愛いじゃん!」

 

「………?」

 

 

 女の子の感性というものはよくわからん。まあ、とりあえず姉からのミッションも達成できたしよしとしよう。俺らは、横に並んで雑談しながら帰り道を辿る。

 

 

「そういえば、そっちの両親へのプレゼントは買えたのか?」

 

「え?なんで知って…あ、はるから聞いた?」

 

「ああ、相変わらず家族が大好きなんだなってなったよ」

 

 

 この緑川なおという子は、昔っから家族愛が強い。弟や妹の面倒を見るのがたとえ大変でも、家族が好きだからと辛い顔ひとつしない、立派な人である。

 

 

「まあ、買えたけど、渡すのは今度になるかなぁ…本当はサプライズで渡したかったけど、こんなことになっちゃったし。ばれちゃったから」

 

「…それは残念だったな…にしても…まさか、なおが俺に抱きついてくるとは…驚いたよ」

 

「ち、ちょっと!そのことは普通に恥ずかしいから口に出さないでよ!///」

 

 

 顔を真っ赤にして俺の口を塞ごうとしてくる。やっぱ揶揄うと面白いなぁなおは。やはりその反応を見るあたり、無意識でやっていた様だな。

 

 

「まぁまぁ、いいじゃないの。そういえば、なおの泣き顔すら昔虫がボールについて泣きついてきた時以来だってのに、あの時は抱きつきながら泣いてくれて…それはもう懐かしく感じちゃってぇ」

 

「だからぁ!!それも言わないでよ!!てか、なんで若干オネェ口調なのさ!」

 

「はは、悪い悪い」

 

 

 まあ、誰も死ななかったとはいえ、曲がりなりにも人が死にかけた事件関連のことで揶揄うのは不謹慎だしやめておいた方がいいか。

 

 

「にしても…よくあの時飛び出せたね、桃冴は。一歩間違えたら自分も…」

 

「…まあな、俺はヒーローを目指している。これくらい当然さ」

 

「すごいな…相変わらずかっこいいね、桃冴は」

 

「なんだ急に褒めて…お前らしくないぞ」

 

「そう…?それは…ごめんね…?」

 

 

 …なんというか、返事に覇気がないな。

 いつもなら、こんなしんみりした反応見せずに、もうちょいつっかかってくると思うのだが…俺が揶揄ってる時以外、なんか反応に元気がない気がする。

 

 てか、さっきから一緒に歩いている時も感じていたが、なんか…いつもよりも…暗い。と言えばいいだろうか。ひどく落ち込んでいる様な様子を見せている気がする。

 

 いや、あんなことがあったからそりゃ疲れるだろといえばそうなのだが…それにしてもだ。少し気になったので聞いてみるか。

 

 

「なお、お前なんか悩んでたりするか?」

 

「え?き、急に何!?」

 

「あ、いやなんか…すまん。いつものなおらしくないなと思ってな」

 

「…はぁ、やっぱり付き合い長いとそういうのわかっちゃうのかな」

 

 

 そう言うと、なおがはあっと一つため息を吐く。その顔は、どこか辛そうな顔だった。やはり、何かあったということか。

 

 

「あたしさ、トラックにはるが轢かれそうになった時、足が動かなくってさ…桃冴と話してると、なんかそのことを思い出しちゃってさ、もう過ぎたことだから隠そうとしてたんだけど…」

 

「…無理もないだろう。何年経っても忘れることがないだろうあんなこと」

 

 

 俺にとっても、なおにとっても、衝撃的なことだっただろう。

 実質的な精神年齢は30代を超えている俺ならまだしも、なおはまだまだ小学生。ここまで落ち着けている方がむしろ凄いことだ。

 

 

「あの時、動けなかった自分がさ…許せなくってさ」

 

 

 …それでさっきからしんみりしていたのか。

 

 

「……それは単純にお前の足が疲れていたのだろう。はるちゃんの為に走り回ってたんだろう?それに、あそこにはガードレールがあって、動けても飛び出せなかっただけだろう。お前は悪くない」

 

 

 おそらく、俺でもあの場所ならはるちゃんのところまで辿り着けなかった筈だ。

 なおが自分を責めないといけない理由にはならないだろう。

 

 

「だとしても…今日あの場に桃冴がいなかったら、はるは…」

 

「いや、元はなおを見つけた時に握っていた手を離した俺が悪い。むしろ、俺がしっかりしていればあんな危険なことにはならなかった」

 

「関係ないよ。たとえそうだったとしても、動けなかったのは事実だし。それに、それを言うならあたしがはるをもっとしっかり見ていれば迷子になることもなかっただろうし」

 

「…それは」

 

 

 俺はその言葉を聞いて何も言い返せなくなる。

 

 

「…知ってると思うけどさ。アタシ、ずっとサッカーやってきたから、足の速さには自信あったんだ。なのに、はるが危ない時、咄嗟に駆け出せなくてさ」

 

 

 横で一緒に歩いていたなおの顔が下に向く。

 

 

「アタシっ…家族のことが大好きなの…大好きなのにっ…」

 

「…………」

 

「なのにっ…叫ぶことしかできなかった自分が…許せなくって…走れなかったことがっ…許せなくって…!」

 

「………なお…」

 

「一番得意な事がっ…一番必要な時…大事な家族が危ない時に…出来なかったことがっ…悔しくてっ……」

 

 

 なおの目がキッとなるのが横から見える。彼女の目は、横から見てもわかるほどいつもより潤んでいるように感じた。動けなかった自分への怒りが抑えられないのだろう。それが、目頭に現れているのかもしれない。

 

 …気持ちはわかる。

 やろうと思えば手を伸ばせる距離にいたのに、咄嗟に手を伸ばせなかったのだから。

 

 しかし彼女が、はるちゃんに向けて走り出せなかった…つまり、手を伸ばせなかったのはある意味で仕方のないことだ。

 

 場所やら足の疲労やら色々な問題があったせいであり、本人はなんら悪くない。

 

 けど、じゃあしょうがないね言って踏ん切りが付くかと言われればそんなことはない。

 

 

「私…どうすれば良かったのかな…ていうより…最悪だよね、姉として…」

 

 

 理屈では無理だとわかってても、感情は静まってはくれないだろう。

 大好きな家族を助けにいけなかった彼女の気持ちは、俺には推し量れるものではない。

 

 家族が命の危険に晒されている。そんな状況で、動けなかった自分を、彼女は卑下することでしか、行き場のない悔しさをぶつけることができないのだろう。

 

 別に、こうして愚痴を吐いてくれることでスッキリしてくれるのなら構わないのだが。

 

 

「っ…!ごめん、こんな急に重い話しちゃって…はは、ちょっとおかしくなっちゃってたかも」

 

「……」

 

 

 俺には、なおの心がずっとそれを引きずり続け、ずっと後悔し続けるのでは。と感じてしまった。その根拠は、桃井タロウから受け継いだ嘘を見抜くほどの優れた洞察力…だけでなく、なんやかんやで小さい頃から遊んできた幼馴染としての直感だ。

 

 こいつは、さっきから何回か言ってると思うが、本当に家族のことが好きだ。だからこそ、引きずりかねない。今日のこと、今彼女が抱えている悔しさをずっと。

 

 悔しさを忘れろとは言わない。悔しさは、成長の糧だからだ。悔しいから人は成長できる。

 けど、悔しいとずっと思い続けるだけで、後悔するだけだというのなら話は別だ。もしそうなったら、きっと罪悪感で心が壊れてしまう。

 

 なぜそう思うかというと、俺がずっとそうだったからだ。

 

 例を挙げるとするならば、俺は、れいかに指摘されて初めて自分の道が間違えていると感じた。その時はとても恥ずかしく、自分の行いを後悔した。だが、俺はその後悔から路線を切り替える決意をしたことで一歩成長できた…と思ってる。真偽は別として。

 

 そのようにして、俺は何回も悩んで、失敗を重ねて、後悔しながら自分なりに強くなってきたつもりだ。

 

 だが、今のなおには、その後悔を元手に成長する心の余裕がない様に感じる。半ばしっかりしているせいで、大切なことに気がつけていない。そんな気がする。

 

 家族愛が強すぎるからこそ、自分が走れなかったことへの後悔や、その罪悪感に悩まされてしまっている。そして、それに悩まされているせいで脳のリソースが裂かれてしまい、自分の成長の糧にする意識が消えてしまっている。

 このままじゃ…潰れてしまうのではないか。そう感じてしまった。

 

 そう思った時、俺は前に聞いたれいかの言葉が頭をよぎった。

 

 ”ヒーローとは他者に道を照らすもの”

 

 厳密に言うと違うが、まとめるとこうだ。

 ……気がついたら、俺は口を開いていた。

 

 

「じゃあ、なればいいじゃないか」

 

「…え?」

 

 

 俺はまだ、誰かに道を示すような大層な人間ではないのかもしれない。だが、俺は自分の為にも。目の前にいるなおのためにも言葉を繋ぐ。

 

 今のなおは、自身の行いに後悔している。

 後悔することは辛いけどいいことだ。

 自身の成長につながるのだから。でも、今のなおは後悔を糧に出来ることを気付けるほどの余裕はない。

 

 俺はなんやかんやで実質30年くらい、精神は子供のままだけど生きてきたわけだから、後悔を糧にすることを学べているが、なおはしっかり者だけどその内訳は小学生である。

 

 だからこそ、教えなくては。立ち直ることの大切さを。

 

 

「たとえどんな状況でも家族の為なら走れる様な、強い人間に」

 

「っ…そういう問題じゃなくって!」

 

「じゃあどういう問題だ?今は今、これからはこれから。今さっき起きたことをいくら悔やんだって仕方ないだろう。言うとしたら、俺との縁があって良かった。それで終わりだ」

 

 

 強い口調かもしれない。偉そうかもしれない。余計なお節介なだけかもしれない。だけど、俺なりに、彼女の為になるように、言葉を紡ぎ続ける。

 幼馴染として、人として、伝えておかないと後悔する。そんな意識と共に。

 

 

「人は後悔をバネに強くなる。俺だってそうだ。大切なのは、これからどうするか、どうなるか、どうなっていくかじゃあないのか?」

 

「っ………」

 

「後悔するな、とは言わない。クヨクヨするな、とも言わない。が、そろそろ切り替えたらどうだ?一家の長女としてみんなを引っ張っていくいつものお前らしくないぞ」

 

 

 それに、気に食わない。なおがこんな風に悩んでいるのが。俺と縁を結んだ奴が笑顔じゃないことが。傲慢なことを言っている自覚はある。けど…やっぱり嫌だ。

 

 

「姉として最悪なんて、お前が言うな。今までお前が守ってきた家族に失礼だ。確かに今回は守れなかったのかもしれない。だけど、俺らは人間だ。失敗しない人生なんてありはしない。中には、取り返しのつかない失敗をして一生後悔する人間だっている。お前はどうだ?確かにとんでもない失敗だ。だが、何か失ったか?はるちゃんは生きてるだろう?まだまだ全然取り返しがつく」

 

 

 再度、なおは俯いてしまった。

 

 

「…家族が大好きなんだろう?」

 

「……うん」

 

「だったら、そろそろ気を変えろ。もうこんなことで悩まなくていいくらい強くなってやれ。速くなってやれ。お前のそんな姿、家族は誰も見たくないだろうからな。俺も見たくない」

 

「……」

 

「俺の知ってる緑川なおは、もう少し真っ直ぐで、面倒見が良くて、男らしくて、竹を割ったような性格で、大食いで、虫が怖くて、おばけ嫌いな可愛い女の子だ。そんな風に悩んでる姿はまるでお前には不似合いだ!」

 

 

 単純に、あんな辛そうな顔してるなおの姿を見たくない。縁がある人間が悲しんでいるところを見たくない。という俺のエゴなだけかもしれない。

 でも、アイスを買ってあげた時のはるちゃんの顔を見た時に思ったことがある。

 

 

 (やっぱり、俺が縁を結んだ人たちには”笑顔”であってほしい)

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そう思っていると、パンッとなおが自身の両頬を叩く音が響いた。

 

 

「……ほんっと…アタシ、今日は桃冴に助けられてばっかりだな……ていうか、最後の方余計でしょ!」

 

「どうだかな」

 

 

 全部俺が見てきた事実だ。別にそこを訂正する気はない。そう思っていると、なおが深いため息を吐く。でも、先ほどため息をした時の深い辛そうな顔とは違う。すっきりとした、いつものなおらしい凛とした顔だった。

 

 どうやら、本調子に戻ったみたいだな。

 

 

「ごめん、アタシらしくなかった。本当にありがと桃冴。何から何まで」

 

「別に、俺となおの縁が良縁だった。それだけだ」

 

「ぷっ…もう、いつの間にそんな縁縁言うようになったんだか…まあでも、その言葉を借りるなら、本当に、桃冴と私に縁があって良かったよ」

 

「そう言ってもらえると何よりだ。じゃ、俺はこっちだから行かせてもらうぞ。じゃ!」

 

 

 俺は、そそくさとその場を立ち去った。

 別にもう少し一緒にいても良かったのだが、俺にはこの場を早急に離れたい理由があったのだ。

 家がこっちだからと言うのもそうだが、もう一つ理由がある。それは…

 

 

(一丁前にそれっぽいことを言ってしまった…なんか…恥ずかしい…)

 

 

 いや、人に道を示すって…なんか、この…うん、すっごいこそばゆい!なんか、偉そうなこと言っている感じがしてすっげえムズムズする…!俺も別に大それた人間じゃないと言うのに…!しかも、反射で桃井タロウの様な口調で喋ってしまった…なんかそのせいで更に偉そうに感じてしまう…!

 

 

(……ありゃ、多分自分で言った言葉に照れてるな…照れ隠しで逃げたなこりゃ。まあ、何はともあれ色々すっきりしたよ。ありがとね…桃冴)

 

 

 ああぁ……かゆかゆ……もう…さっさと家帰ろ。

 

 

***

 

 

 自室にて、俺は自分がやったことを思い出す。

 

 

「はあ…道を示すって難しいな…」

 

 

 ていうか、今さっき気がついたが、スイッチが入ると俺の口調は桃井タロウの様になるらしい。だからこそ…なんというか…偉そうな態度になる分、自分が一丁前に語るのが恥ずかしく感じてくる。自分も大層な人間ではないのに。あれでよかったのだろうか、本当に。道を示す、と言うのはあの様な感じでいいのだろうか。

 

 わからない、あれでいいのかどうか…ぶっちゃけ、悩むのなんかやめてほしいという俺のエゴをぶつけただけな気がする。まあ、道を示す行為というのは一旦置いておいて、それとは別に、確かなことが一つある。

 

 

「初めて…救えたな…」

 

 

 それは、はるちゃんの命を救えたことだ。

 

 前世では、同じような行いをして、親子の命は救えたものの、自分自身の命は落としてしまった。だからこうしてここにいるわけだが。それは、失うはずの命を救えた。とは俺は言えないと思う。

 

 その親子の代わりに俺が命を失っただけだから。いやまあ、失われるはずの二人分の命が一人分の命で済んだと考えれば救えたと言えるのかもしれないが…そんな自己犠牲では、救ってもらった側的にも助けてもらったとは思えないだろう。

 

 だが、今回は救えた。自分の命を散らすこともなくだ。

 

 

 

「…やっぱ、人を救うっていい事だな」

 

 

 緑川一家に"ありがとう"と言われた時。俺の胸の中で何か込み上げてくるものがあった。

 

 

「俺は…初めて…俺が思う、人を救うヒーローになれたのかもな…」

 

 

 世界を救うとか、世界を守るとか、俺が憧れてきたヒーローがやってきたことに比べればちっぽけなものなのかもしれない。

 

 でも、人の命を救えたことには代わりない。

 

 結局、俺の目指す厳密なヒーローとは何かまだ定まってない。けど、ヒーローとして大切な"救う"ことはできた。

 

 困ったことを解決してあげるだとかそういう小さなヒーローとしてではなく、人の命を救う本当の意味でのヒーローとして。

 

 

「一歩前進…かもな」

 

 

 そう思った時だった。

 

 

「アツっ!?なんだ!?ポケットが…」

 

 

 ズボンのポケットが急に赤色に光り出した。

 しかも、なんか熱い。

 そして、右ポケットから不思議な感触がする。これ、もしかしてなんか入ってる…?恐る恐ると手を突っ込んでみると…

 

 

(この感触…待てよ!まさか!)

 

 

 俺は慌ててポケットからそれを取り出す。

 

 

「こっ…これ…これはぁ!!」

 

 

 俺は、その手にあるものに目を輝かせる。

 

 それは、赤い歯車のようなアイテム。

 金色のラインが入った赤い歯車の正面には、俺が憧れた赤い戦士が刻印されていた。

 

 

「あっ…あっ…”アバタロウギア”だぁぁぁ!!」

 

 

 遂にだ!遂に手に入れた!!

 

 俺が今手に入れたこのアイテムは、”アバタロウギア”と呼ばれるアイテムだ。

 

 原作暴太郎戦隊ドンブラザーズにて、戦士へと変身する時に使う必須アイテムである。

 

 そして、俺の手の中にあるギアには、"ドンモモタロウ"の顔が刻印されていた。間違いない。俺の変身能力が覚醒したんだ!神様は嘘をついていなかったんだ!

 

 このギアの中には、様々な戦隊や戦士達のデータが込められており、"ドンブラスター"を通じてその込められたデータを実体化させて、変身する…ん?待って?

 

 

「あれ?ドンブラスターは?」

 

 

 今、確かに俺の手元にはアバタロウギアがある。しかし、肝心なもう一つの必須アイテムであるドンブラスターがない。それがなければ俺は変身できない。

 

 

「来い!ドンブラスター!」

 

 

 俺は、天高く叫んでみるが、うんともすんとも言わない。

 

 自室の窓の外からカァーカァーとカラスが鳴く声と、車の音がが聞こえるだけである。

 

 

「まさか…これ…」

 

 

 ドンモモタロウのギアは解放できても、ドンブラスターは解放していないから、変身できない…とか言わないよな…?

 

 

「………………………」

 

 

 アホーアホーと、カラスが鳴いたような気がする。

 

 

「ちく…しょう…変身はお預けかよ…」

 

 

 俺は、膝をついてその場で項垂れてしまう。いやだって仕方ないじゃないか。変身できると思ったのに…

 

 

「だが…やっと…一歩進めれたんだ」

 

 

 確かに、変身に必要なドンブラスターはまだ無い。けど、俺の手元にあるこのアバタロウギアはしっかり俺の前に現れてくれた。

 

 俺は、着実にヒーローになれているということだろう。

 

 俺のヒーローとしての道は、まだまだ始まったばかりである。

 

 

「よっしゃ!待ってろこの世界のヒーロー!俺は絶対あんたらみたいになってみせるからなー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇ…ふぇくしょい!!」

 

「わぁ!なお姉ちゃんすごい大きなくしゃみ!」

 

「うう…なんか鼻がむずむずする…」

 

「こりゃ、もしかしたら誰かになおが噂されてるのかもな!もしかしたら桃冴君だったりしてな!」

 

「えぇ?そんなことあるかなぁ…」




 なおちゃん、本当はもっとしっかりものなんだけど、こう言う一面もあるんじゃないかな…と思って書いてみました。なんかイメージと違う!と言われたら謝りますすみません。

 なんか、主人公もなおも確かに強い子だけど、年齢や経験的に色々と未熟な所はある訳なので、それを示すのが難しいな…早く脳死で本編書きたい(おい)

 それにしても…ようやく…!変身能力覚醒の兆しが…!?

Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?

A.(その6)ドンブラザーズもスマイルプリキュアも、互いに名乗りの四番手が足の速さNo. 1
(逃げ足No. 1の犬と、OPでも高速移動を披露するモフモフ)

感想お待ちしています!

追加:最後の方のなおがくしゃみする前の主人公のセリフ、"ヒーローの先輩方"を"ヒーロー!"に訂正しました。微細な部分なのであまり気にしないでいただいて大丈夫です!

いつ頃最新話投稿してほしいとかありますか?(現在迷走中)

  • 朝で頼む!
  • 昼にお願いしたい!
  • 夕方かなぁ…
  • いや、夜っしょ
  • ここは深夜で!
  • いつでもいいから早く投稿してくれぃ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。