ニチアサの世界に転生とは聞いていたが…!   作:よく酔うエンジン

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 どうしよう…気がついたら7000字くらい書くのが普通になってきてしまった…多分ですが、本編に突入したら一気に平均文字数が下がると思います…!

 阿騎兜さん。誤字報告ありがとうございます!同じワードを繰り返していました…助かりました!

 えっ…気がついたら、加点式の透明ランキングとはいえ…5位…!?ありがたや…!
 お気に入り登録、評価をしてくださった皆様!感想をいつもくださる皆様!ありがとうございます!励みになります!このまませめて序章だけでも毎日投稿で突っ走るつもりなので、温かい目で見守ってくれると嬉しいです!


きいろのかいこう

 うはぁ〜…よく寝たぁ

 

 部屋のカーテンをばっと開けて、日の光を浴びる。今は朝8時半である。

 

 そして、今日は日曜日。

 

 顔を洗って、朝食を食べて、歯を磨いて…時間は9時前になった。

 俺は、リモコン片手にテレビの前のソファに居座る。

 

 日曜日の朝9時前…テレビで見るものといえば…もうわかるだろう?

 

 

『ジャスティスヒーロー!!太陽マン!!』

 

 

 テレビの向こう側に、太陽の様なマスクをつけ、マフラーを取り付けたヒーロー番組が始まる。

 

 

 日曜日の朝…俺がみるもの即ちニチアサ作品だ。

 

 

 いや、まあ俺がよく知る仮面ライダーとかスーパー戦隊とかではない。が、この世界でも日曜日の朝にはヒーロー番組を流す習慣がある様で、それが今テレビに映し出されている太陽マンだ。

 言ってしまえば、俺らの世界でのニチアサがこれなのである。

 

 

「うっほー…最初は何だこのデザインとはなったが、動くとやはりかっこいいな…」

 

 

 特撮ヒーローの見た目、最初は敬遠しがちだが、慣れてくるとカッコよく見える現象はあるあるだと思っている。

 

 俺自身、前世からヒーローに憧れており、子供の頃から日曜日の朝はこうして必ず特撮ヒーローものを見ていたので、この世界にもこういう作品があるのはありがたい。

 

 他にも"機動戦隊バトルレンジャー"やら、転生した後でも俺の様な特撮ファンが喜べる作品が色々あった。本当に良かった。やはりどの世界でもヒーロー番組は流して当たり前のものなのだろう。

 

 転生した今でも、格闘面やらドラマから、人として大切なこと。ヒーローとして大切なことが学ぶことができるからな…

 

 

『ジャスティスヒーロー!太陽マン!次回は…』

 

「おっと…もう終わりか…」

 

 

 やはり、好きなものに熱中していると、30分経つのは早いな。

 

 今の所、新しい敵幹部が登場して、敵ながら凄まじい作戦を行なってきて、太陽マンのヒーローとしての覚悟を試される厳しい展開が続いている。

 

 こういうハードな展開は子供にはウケないところもあるだろうが、俺はこういうのも好きだ。ヒーローとは何か悩み、そして自分なりに答えを見つけ、成長し、戦いに身を投じる…うーん、これも一個のヒーロー作品の醍醐味だと思う。

 

 ヒーローだって人間だ。悩み、成長して本物のヒーローへと覚醒するものだ。

 

 にしても、来週も気になるなぁ…早く来週にならないかな…と考えていると…

 

 

『太陽マン限定ヒーローショーツアー開催!君の街で太陽マンに会うことができるかも?』

 

「なんだと!?」

 

『詳しくはホームページからっ!』

 

 

 限定ヒーローショーだとっ!?

 

 俺は次回予告の後に流れてきたCMに釘付けになる。すぐさま家のパソコンを起動し、ホームページを開き情報収集を行う。

 

 

「いつものヒーローショーとは違う、特別なエピソード…!?しかも、オリジナルキャストが出演、それに、入場者限定で変身アイテムおもちゃの一つがもらえるだとぉ…!?」

 

 

 嫌いじゃないわっ!!むしろ大好きっ!こんなの行くしかないじゃないのぉ!!

 ファイナルライブツアークラスに大盤振る舞いじゃないか!ファンとして行かないわけないだろう!

 

 

「場所は…名古屋、福岡、えーと、ここから一番近いのは…えぇ!?七色ヶ丘市!?」

 

 

 うちの街で開催だと!?こんなの行くしかないじゃないか!?

 

 

「開催日は…来週土曜!?待て待て待て!急いでチケットを…」

 

 

 こういうのは思い立ったが吉。急いでチケットを購入しなくては…!いい席で見られなくなってしまう!

 何はともあれ、俺の来週の予定はこうして決まったのだった。

 

 

***

 

 

「ふう、なんとか取れてよかった。」

 

 

 時間は流れ、今はもう土曜である。

 俺は、太陽マンTシャツとお気に入りの赤い上着を腰に巻いて、会場に向けて歩いていた。

 

 あの後、すぐにチケットを取ったので、そこそこいい席でショーを観れることになった。

 

 チケットはすでに売り切れており、もし気付くのが数日遅れていたら、いい席を取るどころか観ることすら不可能だっただろう。プログラムは一日で全て終わることになっており、ヒーローショー以外にも、歌手さんがオープニングテーマをライブ形式で歌ってくれたり、俳優さん達のエピソードトークなどもあるらしい。

 

 え、まじで戦隊のファイナルライブツアーみたいなもんじゃん。太っ腹すぎる。

 

 

 まあ、それはそうとて…

 

 

「うーむ、結局一人で見ることになったか…まあ、仕方あるまい」

 

 

 本当は友人や家族と行きたかったが、家族全員今日は忙しく、俺と仲のいい友人達は全員軒並み”太陽マンをすでに卒業している”と言って、もう作品自体見ていない人ばかりなので、誘おうにも誘えなかった。

 

 あくまで俺個人としての意見だが、こういったショーや旅行など、特別なイベントというのはやはり二人でもいいから、誰かと一緒に行きたいものである。

 

 というのも、誰かと一緒に観に行けば、特別なイベントが例え終わった後でも、感動を分かち合えたりして、別の楽しみ方でまた楽しい思いができるからである。

 

 

 前世ではネットで感想を呟くなどして、似たようなこともできたのだが、この世界はそこまでネットが普及していない。

 ネット普及率は、前世で言うなら…年代としては…2012年くらいのイメージだろうか?

 

 まあ、つまり、ネットで感想を言い合って共感すると言ったこともしにくいので、尚更誰かと見に行きたかったのだが…仕方がない。

 

 

「ふぅー…まあ、贅沢を言うのもあれか…ん?」

 

 

 独り言を呟きながら交差点を渡ると、何やら見覚えのある人間がいることに気がついた。

 

 

(あれは…確か…同じクラスの…)

 

 

 交差点を渡った先のところ。俺の目的地の方角に、一人黄色のふわふわした髪の毛の女の子が歩いているのが目に留まった。この世界、割と特徴的な髪色をしている人間はちらほらいる。なおやれいかもそのうちに入る。目の前にいる女の子もそのうちの一人であり、クラスではあまり話したことはなかったが、前々から少し気になってはいた。

 俺は小走りして、その女の子の後ろから話しかける。

 

 

「よう、確か黄瀬だよな?何やってるんだ?」

 

「ひゃあっ!?あ、赤峰君!?」

 

 

 おっと…後ろから急に話しかけて驚かせてしまっただろうか。

 

 俺が話しかけた少女は若干驚いた様子でこちらを見てくる。

 

 彼女の名前は黄瀬やよい。同じクラスに所属してる女の子のうちの一人だ。クラスの中ではぶっちゃけあまり目立っておらず、言っちゃなんだがよく泣いてるイメージがある。

 

 

 

「えっと…確か、赤峰君だよね?同じクラスの」

 

「そうだ。すまん、驚かせたようだな。ここで会ったのも何かの縁かと思ってな…こうして話しかけた次第だ」

 

 

 縁ってもう素で口走る様になってしまったが、俺はもう特段気にしなくなっていた。

 

 

「そ、そうだったんだ…にしても、なんで赤峰君こんなところにいるの…って、待って赤峰くん。そのTシャツ…」

 

「ん?」

 

「もしかして…太陽マンの限定Tシャツ…?だよね?」

 

「そうだが、よくわかったな…いや待て、黄瀬さんが今首にかけてるそのタオル。確か太陽マンのヒーローショーで買える限定タオルじゃないか?」

 

 

………………………

 

 

 一瞬の間、沈黙が流れた。俺は、すかさずズボンのポケットから今日のヒーローショーのチケットを取り出す。

 

 それと同時に、黄瀬もカバンの中のポーチから同じチケットを取り出した。

 

 

「「っ〜〜〜!!!!」」

 

 

 お互いが持っているチケットを視認した瞬間、一気に俺らの物理的距離が縮まって目をキラキラさせながら、お互いの顔を見合う。なるほど…このチケットを持っているということは…つまり…!

 

 

「黄瀬さん!お前も太陽マンファンだったのか!」

 

「赤峰君も!太陽マン好きなの?」

 

 

 今まで全く話したことのなかった俺たちだったが、共通の趣味を持っていることが発覚し、俺たちの心は通じ合い、暖かな空気が流れ出した。

 こんな縁が黄瀬さんにあるとは…思いもよらなかった…!

 

 

***

 

 

「わあ…赤峰君もルナーマンが好きなんだね!」

 

「あぁ、太陽マンのライバルとして、デザインやキャラも完璧だからな、何よりかっこいい。も、ということは黄瀬さんも…?」

 

「うん!やっぱり、28話との決着シーンとか、初登場シーンとか色々かっこいいところがいっぱいあって、あんなの嫌いになるわけないもん!光に対する闇のキャラとして、太陽と月っていう対比もかっこいいし!あーでも、これ太陽マン好きあるあるだと思うんだけど、どんなにルナーマンが活躍しても結局は太陽マン好きに戻っちゃうってのがあるって思ってて…!」

 

「わかる、わかるぞ!」

 

 

 心がすっかり通じ合った俺たちは、会場に行くまでの間、太陽マン談義に花を咲かせていた。

 

 ちなみにだが、この数分のうちで俺と黄瀬さんは大分打ち解けた。

 この子、おとなしいイメージがあったけど、好きなものになるとすっごい饒舌に楽しそうに今は喋っている。こう言う面もあったんだな…やはり、縁を作るだけでなく、深めないとわからないこともあるのだな。

 

 それはそうとて…いやまさか、太陽マン好きが俺のクラスに俺以外に他にいたとは…なんと素晴らしいことだろうか…。

 

 

「にしても、赤峰君も特撮好きだって思ってなかったから、びっくりしたよ」

 

「まあ、日常的によく話すやつくらいだからな、俺が特撮好きだと知ってるのは…逆に俺は黄瀬さんが特撮好きだった事実に驚いている」

 

「うん…子供っぽいかなって思って…赤峰君とこうして話すまで誰にも話す気がなくって…」

 

「…そうか」

 

 

 気持ちはわかる。俺も前世は、子供っぽいと馬鹿にされたこともあったからだ。とはいえ、今は、別に好きなことだしいいやと堂々と特撮好きを公言している。

 

 ……こう言う時、ヒーローは「好きなことなんだから自信を持っていい!」と言って彼女を励ましでもするのだろうか…

 

 前のなおの時は、付き合いが長いからこそ言えたけど……わからんな、彼女の心の問題に、いくらかなり打ち解けたとはいえ、まともに知り合って数分の俺が踏み込んでいいものなのか…本来のヒーローならば、こういう時にお節介をかけたりするのだろうか…いや、いいや今は考えなくていいや。これから太陽マンを楽しみに行くのだ。ヒーロー云々は今は忘れよう。

 

 

(アバタロウギアも手に入れて、一歩前進したことだしな…今くらい忘れてもいいだろう)

 

「そういえば、黄瀬さんの席はどこだ?俺は最前列のここなんだが…」

 

「え?私そこの隣だよ!?」

 

「本当か!?やっぱり俺とお前は縁があるみたいだな!」

 

 

 話題を変えるために席の話を持ち出してみたが…まさか、隣の席だとは…本当、縁というものも侮れないな。これで感動を共有できる仲間を確保できたぞ…!

 

 

「共通の趣味があるだけでこんなに盛り上がれちゃうんだね。こんなに興奮しちゃったの久しぶりかも」

 

「失礼なことを言うが、結構おとなしいイメージがあったが…今日でその評価は変わったな」

 

「それを言うなら、私も赤峰君のこと、学校内の有名人且つ変人ってイメージだったけど、がっつり変わっちゃったなあ…」

 

「ほう…?俺ってそんな有名人と言われるほどの人間なのか?」

 

 

 変人なのは否定しない。縁ができたななんて普通は言わないだろうし。

 

 

「知らなかったの?運動もすごいできるし、勉強もできるし…前、剣道地区大会優勝で表彰までされてて、縁結び云々以外でも学校だと結構有名だよ?でもまあ、もしかしたらその出会い頭に縁縁言って来る変人ってことで有名かも」

 

「……やはり、そういう扱いになるか」

 

 

 まあ、俺は学校のほぼ全ての人間と縁を結んでいると言っても過言ではない。そう考えると、そっちで有名になっていてもおかしくないだろう。

 

 だが、それはそうとて自分の能力によっても有名になっているのは普通に嬉しいことだ。

 

 剣道や勉強に関しては、桃井タロウの才能やら転生特典が絡んでない日々の鍛錬の賜物だし、それがきっかけでクラスメートからすごいやつ認定されているのは素直に嬉しい。

 

 なぜ転生特典が絡んでないかわかるかというと…バイト中に色々試してみたのだ。前の新聞配達ついでの人助けである。で、色々お節介を焼いて実験してみた結果、料理や裁縫といった手先の技術系統は桃井タロウの才能を受け継いでいるようだが、勉学や体全体を使うスポーツには影響がないらしい。判断基準は、直感的に"こうした方がいい"と閃くか否かである。前の調理実習の時には、そう言ったひらめきが湧いたものの、勉強している時や、運動している時にはそれがなかった。

 

 転生特典であるタロウの才能が絡む事項なら、なんか自分の力で成し遂げている感がなくてズルをしている感覚がどうしても湧いてしまう。しかし、勉強も運動も俺がしっかり積み上げてきた、転生特典とは何も関係ないものだ。だから、こうやって評価されるのは普通に俺にとっては喜ばしいことなのだ。

 

 

(まあ、勉強は前世でやったことあるから分かるってだけの二番煎じだし、剣道も前世から鍛錬積んできてるだけだから、ズルと言ったらズルかもしれんが…)

 

「あ、照れてる」

 

「照れてない」

 

「む〜!絶対嘘だよ!顔少し赤くなってるもん!」

 

 

 …嘘つけないと言うタロウの性質が受け継がれていなくて良かった。

 

 にしても…本当に俺はこの世界に来てから縁に恵まれてる。こうして趣味の合う友達まで出来ることとなるとは…

 

 

***

 

 

(ん…?あれ?まだ朝だよな…?)

 

 

 楽しく雑談を重ねながら、もうそろそろ会場が見える頃。ふと空を見上げてみると、やけに空が暗い様に感じた。夜…?にしてはおかしい。時間帯的に今はまだ朝のはずである。さっきまで日は昇ってたし、雲で太陽の光が隠れたにしてはいささか暗すぎる。

 それに、空の色が、夜に広がる紺碧の空とはまた違う。どこかドス黒い空の様に感じた。

 

 

「なあ黄瀬さん。なんか、やけに空暗くないか?」

 

 

 俺は、そうくるっと振り返って黄瀬さんに問いかけた。しかし、予想してなかった光景がそこにはあった。

 

 

 

 

 

「う………あ………」

 

 振り返った先には、へにゃへにゃと座り込んで俯いている黄瀬やよいの姿があった。

 

 

「っ!?黄瀬さん!?おい!?どうした!?」

 

 

 慌てて駆け寄るが、側から見ても様子がおかしい。

 

 

「どうせ…私なんか…」

 

「っ!?おい、どうした!おい!!黄瀬やよい!しっかりしろ!」

 

「私なんて人間に…友達なんて…」

 

 

 饒舌に好きなものを輝かしい目で語る少女の姿はどこにもなかった。目が真っ黒に染まり、先ほどとは打って変わってネガティブな発言を繰り返している。

 

 こちらの声は聞こえていない…のか…?

 

 

(っ!?これはっ…)

 

「誰も…評価…してくれない…」

「嫌だ…もう帰りたい…」

「俺は…もっと…できるのに…」

「今日も残業…サービス残業…残業は月に300時間…飲み会は強制参加…朝の四時まで飲まされて…今日は6時起き…」

 

 

 周りを見渡してみても同じだ、道を歩いていた人間が全員床にへたり込むなり、壁に寄りかかるなりして、うわ言を呟いている。まるで何かに取り憑かれたかの様に。

 なんか、すっげえ生々しいやつが一つ聞こえた気がするけど、今はそれにつっこんでいる場合では無い。

 

 活気に溢れていたはずの街の景色が、一瞬にしておどろおどろしい暗い空間へと為り変わっていた。

 

 

(何が起きてる…?明らかに状況がおかしい…もしかして!)

 

 

 俺は、慌てて転生特典で貰った赤いサングラスを取り付ける。

 

 

「これはっ……!?」

 

 

 サングラスを通じて街を見てみると、街は総じて暗いオーラの様なものが漂っており、看板が文字化けを起こして読めなくなっている。

 

 地面を見てみると、さっきまでなかったはずのサイバー風の大きな扉や、マンホールがあったはずの場所が、まるでトランポリンの様な円形の板へと移り変わっていた…

 

 これは…まるで…

 

 

("()()()()()()"…!?)

 

 

 前に説明しただろうから、説明は省くが、俺が知っている脳人レイヤーの景色に近かった。

 

 いや待て…だが様子がおかしい。

 

 原作の脳人レイヤーは、確かにこんな世界だが、人をこんな放心状態に追い込んだりする性質はないし、こんなに空は暗くならなかったはず…俺が知ってる脳人レイヤーと何かが違う。

 

 

(何かの原作が始まったのか…?いや、だとしてもおかしい。脳人レイヤーが存在するのは暴太郎戦隊ドンブラザーズの世界だけ…だけど、こんな状況になど原作では起きていなかったはず…第一ここは七色ヶ丘市…原作の舞台である王苦市ではない!)

 

 

 そして、俺が知っている特撮作品でもこんな状況になるような作品はなかったはずだ。おかしい。何がどうなっている。一つ言えることは、普段じゃありえないことが起きている。それだけだった。

 

 一体何事かとキョロキョロしていると、サングラス越しにここら一帯が不思議な黒いモヤに覆われていることに気がついた。

 

 

(なんだ…あの黒いモヤは…)

 

 

 黄瀬さん…と言うより、ここら一帯にいる人間全員から、黒いオーラの様なものが湧き出ているのがサングラス越しに視認出来た。そして、それが空高くにまで伸び、一箇所に集積している様に見える。

 

 

(あの家の先…あそこに黒いオーラが集結してる…なんだ?調べてみるか…?)

 

 

 そう考えていた瞬間だった。

 

 

ボガァァン!

 

 

(っ…?)

 

 

 俺が見ていた、黒いオーラの終着点。そこにあったはずの家の壁が急な爆発を起こし、大きな音を起こしてガラガラと崩れ出した。普通に生活していたらまず聞くことのない、コンクリートがぶっ壊れる音に、耳がビクッとなる。

 

 

『舐メテル…!俺ヲ…ミンナ舐メテル…!』

 

 

 額から嫌な汗が滲み出て、頬を伝う。

 人間にしてはどこか無機質で上っ面…だけど、どこか感情的。そんな声がする方向に顔を傾ける。コンクリートの壁にぶち開けられた穴の中から、大柄な人影が見えてしまった。実際にどの様な形状をしているかは遠目では判断できなかったが、それでも、異常な存在が目の前にいることが直感で理解できてしまった。

 

 

「誰カ!俺ヲ理解シテクレェェェェェェ!!」

 

 

 大口を開けたサメの口内に、ワシを咥えたライオンがマトリョーシカの様に飛び出た不気味な頭部。

 

 ゾウの牙がまるでトラの目から飛び出ている様な気色悪い胴体。

 

 そう形容できる鎧を真っ赤な鬼が被ったような、一眼見てわかる、我々の世界にはまずいない怪物。

 

 多くの人から漏れ出ているであろう黒いオーラを身に纏い、恐ろしい雰囲気を醸し出している、人間の形をした化け物がそこに立っていた。

 

 

(ウソ…だろ…)

 

 

 俺は、こいつを知っている。

 

 「動物戦隊ジュウオウジャー」と呼ばれる、地球の力を借りて宇宙の侵略者たちと戦ったスーパー戦隊。 その皮を被った、欲望のまま暴れ回り、人々を襲う目の前のこいつの存在を。

 

 

「どうして…ここに…"ヒトツ鬼"が…!」

 

 

 強い欲望を持つ人間が変貌した、人間を襲う邪なる悪鬼.

 人間がそれぞれ持っている内に秘めた欲望に取り憑き、取り憑いた人間の肉体を元に実体化。そしてその欲望を更に満たすべく暴れ回る、脳人レイヤーに潜む危険な魔物。

 原作ドンブラザーズに出てくる怪人として暴れ回った”ヒトツ鬼”と呼ばれる存在がそこにはいた。

 

 

「っ…?いや…あれは…ヒトツ鬼…なのか…!?」

 

 

 俺の頭の中でのやつの姿と明らかに違う点が一つあった。腰の中央部、仮面ライダーで言うベルトの部分。そこにまるで()()()()()()()の様な球体が無理やり埋め込まれたかのようにくっついていた。

 

 その球体は桃色に染まっており、やけにツルツルして変な光を帯びている。シンプルなボールだと言うはずなのに、どこか禍々しい雰囲気があった。

 

 なんやかんや和風な鬼の肉体に、まるで石像の様なスキンを身に纏っている中で、明らかにその球体だけが浮いていた。だが、その分不気味さに拍車がかかっていた。

 

 

 

「俺ヲ…舐メルナァァァァァァ!!!!」

 

 

 そんな中、目の前の怪物…ヒトツ鬼の一種である"動物鬼"は、俺の驚愕など知ったことかと、大きな雄叫びを上げたのだった。




え?2話構成は前回で終わりじゃないかって?いやいやぁ、嘘はついてないので大丈夫です。安心してください。次回のお話になればわかりますので(??)

やよいちゃんと妖怪縁結び擬きなら、共通の大好きな趣味があればこれくらいには打ち解けるんじゃ無いかな…という勝手な妄想の元で

ちなみに、劇中で彼が言及していた2012年というやつは、スマプリの放送年代でございます。

ん?ルナーマンって誰だ?だって?えーっと……なんか、こういうキャラいそうだなって勝手に作りました(おい)

Q.なんでドンモモタロウとスマプリ掛け合わせたの?

A.(その7)ドンモモタロウにはドンまげという髪型の様なパーツがあり、基本変身体でも髪の毛が見えるプリキュアと並べるのにうってつけだと感じたから。

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