違う、そうじゃない。

どこかがそうじゃない。

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息抜きに。


どこか想像と違う

「えっへへ。これでやっと、ずっと一緒に居られますね…先輩…♡」

 

 俺の目の前でそう笑っている後輩は、その光が無い目で俺を愛おしそうに見ている。

 

 学校から帰宅し、一日の疲れを癒す為に少し仮眠を取り、目が覚めると見知らぬ部屋の椅子に縛られていた。ご丁寧に手錠まで掛けられている。

 

 そして、目が覚めた少し後に、後輩がこの部屋に入ってきて今に至る、という訳だ。

 

「先輩…先輩…先輩…。これからはずっと私の、私だけの先輩…アハッ♡」

 

 入ってきてからずっとこの調子で、正直本当に怖い。これから何をされるのか、俺はどうなってしまうのか想像するだけで漏らしそうなくらい。

 

 俺がビビっている事に気付いたのか、後輩がその口をニヤケさせながら話す。

 

「そんなに怖がらないでくださいよ、先輩。私な〜んにもしませんよ?…本当に。ただ、先輩にはこれから、この部屋で一生を過ごして貰うだけです。安心してください、私が『お世話』しますから…♡」

 

 それが苦痛である事には気付いて居ないらしい。

 これからこの後輩にずっと見張られながら、二度と日光を浴びる事もなく、俺の人生は終わってしまうのだろうか。

 

「あ〜、先輩、もしかして嫌な想像しちゃいました?例えば〜、部屋から出られないなんて苦痛だ〜だとか、もう日の目を見る事は無いのか〜とか♡」

 

 何故分かるんだこの後輩は。

 怖すぎて鳥肌が立ってきたぞ。チビりそう。

 

「そりゃあ分かりますよ〜、先輩の事ならなんでも♡」

 

「でも、安心してください、先輩♡ 愛してる人にそんな酷い事、私しませんよ♡」

 

 監禁の時点で酷いだろ!

 

「ですから、最後まで聞いてくださいってば」

 

 頬を膨らませた後輩が、部屋の脇に置いてあった脚立を持ってくる。

 …脚立?なんの為に?

 

「良いですか?先輩。人間というのは、日光に当たらないと不健康になってしまうんです。私の先輩に、そんな思いはさせたくありません」

 

 ならこの部屋から出られなくなる俺の思いも考えて?

 

「それは駄目です♡ それでですね。私、考えたんですよ。どうしたら、先輩が不健康にならないように監禁出来るのか」

 

 設置した脚立に登りながら、後輩がなにやら自慢げに語り出す。

 そこまで考えられるのに、何故監禁の方に考えが寄ってしまったのか。

 

「結論はすぐに出ました。こうすればいいんですよ!」

 

 天井に手が着く高さまで行くと、何故か天井に付いている取っ手を、後輩は勢いよくスライドした。

 その瞬間、部屋に温かみのある光がそこから差し込んできた。

 …これってもしかして…

 

「はい、先輩の予想通りです。天窓ですよ、天窓♡ これで、いつでもお日様に当たる事が出来ますね♡」

 

 …いや、あの…

 そういう感じなの?

 

「先輩?どこか不服そうですね…。どうかしましたか?これで健康的に生活出来ますよ♡ 私といっぱい幸せに生きれますよ?♡」

 

 なんか、想像と違うなって…

 こういうのって、ずっと薄暗い部屋で縛られて生きてくとか、そういう感じじゃないの?

 

「えっ?先輩がそうしたいのなら、そうしますけど…」

 

 違う違う違うから!閉めないで!

 愛するお天道様の光が無くなるのは勘弁!

 

「…先輩が愛していいのは私だけですよ?先輩に愛されるのは私一人で良いんです。それで十分なんです。ですので、今の発言は撤回してください。何しちゃうか分からないので」

 

 …撤回します。お天道様を俺は愛してません。

 …部屋が明るくても、怖いものは怖いんだな。

 

「今後、そんな事言わないでくださいね…?」

 

 分かったから、目に光戻して…

 

「なら良いんですよ♡ …あぁ、すみません先輩。縛られてで思い出しました。そのままだと苦しいでしょうし、今縄を解きますね♡ …逃げようとしたら、ダメですよ?」

 

 そんな事しません!はい!

 

 縄を解かれて、少しだけ落ち着いた。

 落ち着いた状態で改めて部屋をグルっと見回すと、ある事に気付く。

 

 なんか、生活しやすそうと言うか。普通に暮らせそうな位広いし、ある程度の設備も揃ってるし、漫画やゲームといった娯楽もそこそこ置いてある。

 部屋はコンクリートなどではなく、一般的な木造建築で、安心感すら覚えるような雰囲気になっている。

 

「ですから、そんなに私は酷くありません。愛する先輩に不便な思いはさせたくないんですよ」

 

 いやあの、だからね?なんかさ…

 …やっぱりどこか、違う…!

 

「さっきまでは、其方の四脚の木造椅子でしたが…アレは、私が来るまで先輩を拘束する為の物なので。これからはアチラのソファやクッションに座ってくださいね♡」

 

 え、えぇ…

 いや、まぁ、うん。どうせこの部屋からは出られないし、その事実自体が苦しい物ではあるんだけど…

 

「…その事ですが、先輩。先輩は、そもそもどうして私に監禁されているのか、分かっていますか?」

 

 え?それはまぁ…

 後輩が、俺を好きだから…だよな?

 

「はい、そうです。それが大部分です。ですが、まだあるんですよ」

 

 …それ以外に、理由…?

 思い付かない、な…。

 

「まぁ、ですよね。私が勝手に思ってるだけの、ただの嫉妬ですし…」

 

 後輩が、再び目のハイライトを消して、話す。

 

「…先輩、女の子の知り合いが多いですよね。私以外にも、沢山の女の子とお話してますよね」

 

 あっはい。その通りです…

 

「私、ずっとずっと、我慢してきたんです。中学一年の頃から、貴方を追いかけて入った高校である今に至るまで。貴方が私以外のメスと楽しそうに話すのを、ずっと、ずーっと。」

 

「私が一生懸命アピールしても、先輩は私の事を女の子として全然見てくれなくて。それで、私気付いたんです。先輩が私だけを見るように、私しか見られないようにすれば、女の子として見て貰えるんじゃないかって」

 

「ですから、先輩には、私を愛してくれるまで、ずっとこの部屋に居てもらう、という事です。理解出来ましたか?」

 

 …よーく分かった。理解したよ。

 

「それは良かったです♡ 裏を返せば、今後私だけを愛してくれると、そう誓ってくれるならお部屋から出ても良いという事です。先輩が、私を…エヘ、先輩♡先輩♡先輩♡ 想像してるだけで、私溶けちゃいそうです♡」

 

 …忙しい所申し訳ないんだけど、良いか?

 

「どうかしましたか?先輩♡ お手洗いならソチラですよ♡私がご一緒しましょうか?♡」

 

 いやあの、それは大丈夫。

 …お手洗いも自由なのね。

 

 まぁ、それは置いといて。後輩よ、君は何か勘違いをしていないか?

 

「…? どういう事ですか?先輩。」

 

 女の子として意識してくれない、と。君はそう言っていたな?

 

「えぇ、はい。だって先輩、私が好き好きアピールしても全く取り合ってくれなかったじゃないですか。撫でてくれるのは高評価でしたけど…♡ でも、曖昧に笑って流してたじゃないですか、先輩。」

 

 …やっぱり勘違いをしているな。

 

 後輩よ。こうなってしまってはもうヤケだ。

 君に伝える事がある。

 

 ……アレは、ただの照れ隠し、だったんだ。

 

「…はい?」

 

 いやだから、ね?アレは、ただの、照れ隠し、だったんだ。

 今まで隠してた事を素直に伝えようとしている為に、顔が赤くなってしまう。耳まで赤くなってると思う。

 

「…いや、でも…先輩、私なんて全くタイプじゃないって…」

 

 …それは、あの。

 年頃の男子特有の強がり、と言いますか。

 ぶっちゃけ、バリバリに女の子として見てた、と言うか。

 

「…え?」

 

 ていうか、普通に好きというか…

 最初の方の、後輩が中学二年生位の頃は好きまでは行ってなかったんだけど…。

 中学三年生に上がった後の、学校が違うのにも関わらず、一生懸命にアピールしてきてた後輩が段々と好きになっていったと言いますか…

 

「じゃ、じゃあ、曖昧に笑って流してたのは…?」

 

 アレは、それ以上アピールされると心のキャパがオーバーするって時に、一旦落ち着く為の行動と言うか…。

 後輩の頭を撫でてると落ち着くからです…。

 それでも内心照れはしてたから、目は逸らしてたりしてました…

 

「じゃ、じゃあじゃあ。私の事を好きなのに、何で別のメ…女の子と、仲良くお話したり?」

 

 それは、流石に学校だから。人付き合いとかもあるし…。

 それに、あの人達には、後輩と健全な付き合いをする為のアドバイスを貰ったりしてたから…。

 

「ア、アドバイス…?」

 

 昨年の君の誕生日、君が好きなキャラクターのぬいぐるみをプレゼントしただろ?

 

「は、はい…」

 

 あれ、あの人達のアドバイスの元、俺が頑張って考えた結果のプレゼントだったんだ。

 貰ったアドバイスは「君の心が籠っていて、あの子の事を想ったプレゼントならOK!」なんてアドバイスだったから、自分で頑張って考えたプレゼントだったり。

 

「せ、先輩…」

 

 あー、えーと、つまりだ。

 …女の子として見てないっていうのは勘違いで、俺は君をめちゃめちゃ女の子として見てるし、なんなら好きです結婚を前提に付き合ってください!

 

「…よ、よろしく、お願いしますぅ♡」

 

 …もう少し、ムードがある時に告白したかった…

 

 

 

 

 

「そういえば先輩、私の事好きなのに、どうして最初の方は怖がってたんですか?」

 

 それは普通に怖かったから…。

 好きな子相手でも、外に出れなくて監視されながら生活するのは怖いでしょ…。

 それに、目のハイライトが無いのも雰囲気的に怖い。アレは本能的に恐怖する。

 

「こんな感じですか?」

 

 何で実演出来るの?!怖いからやめてくれ!

 

「先輩の事を心から想うとこうなっちゃうんです♡」

 

 人体って不思議だなぁ!

 

 

「あ、先輩。私達、結婚を前提に付き合ったんですよね?」

 

 え?あ、うん。そうだね。

 

「なら、今日からは毎日私が、先輩のご飯を作りますね♡ 将来の為に練習です♡」

 

 それはとても有難いし、俺としても楽しみなんだけど…。

 …俺の家で作るの?

 

「はい♡」

 

 なら、合鍵後で渡しとくね。

 あると楽だろうし。

 

「あ、もうあるのでそれは結構ですよ」

 

 ……いつの間に…?

 どこか違うと思ってたけど、違くないヤンデレかも知れない。

 いや、もう付き合えたし、ヤンデレ度合いもそこまで深くなかったから、うん。すぐに治るだろう。…多分。

 

 

 

 

 

「あ、先輩のえっちぃ本、全部私の写真集に変えておきますね♡」

 

 やっぱどこかが違う!!!




主人公(先輩):最後の鍵の所で「いつの間に…?」だけで済む辺り、主人公の感性もどこか違う所がある。
 出会って最初の方は、後輩ちゃんを異性として見てはいたが、好きでは無かった。しかし、主人公が高校に行ってもなお、学校が違うのにも関わらず健気にアピールする後輩ちゃんに次第に好かれていった。

後輩ちゃん:殆どの人が想像するようなヤンデレでは無く、愛する先輩の事を想って、どこか違うような監禁の仕方を思い付いた子。
 家がお金持ちであり、今回出てきた部屋も家の力を使って建てた。
 自分が中学一年の時に先輩に親との不仲を解決してもらい、それから先輩に心底惚れている。

アドバイスをしていた女の子達:8名ほど居り、二人を応援している。それはもう心の底から。主人公の事は普通に男友達として見ている。
 健気に主人公にアピールしていた後輩ちゃんが可愛くて仕方なく、二人が上手くいくように「二人を応援し隊」を結成、皆で陰ながらサポートしていた。
 二人が付き合ったと報告を受けた時は、それはもう狂喜乱舞した。その後、授業が手につかなくなって注意もされた。
 三名ほど、少し胸が痛んだ。


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