ももの血脈   作:marre

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第22話 新たな戦の幕開け

魔界に降り立った羅刹は、かつて自らが守った大地を静かに見渡した。

焦げたような大地にも、かすかに緑が芽吹き始めている。

災禍神の眷属との戦いを繰り広げた爪痕は深い。だが、確かに再生の兆しがあった。

その夜——カノンの元に、羅刹からの連絡が入った。

『カノン、こちらは無事に着いた。災禍神の気配は、今のところ確認できない。』

「よかった……! でも油断はできないよね。」

『ああ。しばらくは、先の戦で傷ついた者たちの治療に専念する。癒しの力を教えることで、魔界全体の底上げにもなるはずだ。』

『それと、今後は定期的に連絡を取り合おう。災禍神がどちらに現れても、すぐに動けるように。』

「うん、了解。こっちも準備を進めてる。空羅道も、ちゃんと維持しておくからね。」

いつもと同じ羅刹の声、だがその奥には、王としての強い決意が宿っていた。

『カノン。お前も無理はするなよ。……ママさんにも、よろしく伝えてくれ。』

「ふふっ、また“ラーちゃん小さくなったの?”って聞かれるかもね。」

『二度とならんと言ったはずだ!』

「ほんとに〜?」

羅刹との会話の後も、カノンの頬には微笑が残っていた。

その夜、カノンは空を見上げた。

星々が瞬くその向こうに、魔界がある——そう思うと、どこか近く感じられた。

——それぞれの場所で、彼らは備えを進めていく。

災禍神がどちらに姿を現そうと、迷いなく立ち向かえるように。

 

魔界 —— 再建の始まり

羅刹は魔界の大地に降り立つと、すぐに傷ついた民たちの治療に取りかかった。

彼が癒しの力を学んだのは、ただ戦うためではない。

魔族を導く王として、この力を必要としている者たちに分け与えるためだった。

「魔王様……!」

病床に伏していた老魔が、驚いたように目を見開く。

「まさか……直接、治療をしてくださるとは……。」

『私だけが力を持っていても意味がない。お前たち自身が、この力を扱えるようになれば、魔界はもっと強くなる。』

そう言って、羅刹は手を翳した。

淡い金色の光が、老魔の体を包み込む。

痛みが和らぎ、呼吸が楽になるのを感じると、老魔は目を潤ませた。

「ありがとうございます……!」

周囲で見守っていた魔族たちが、信じられないというように顔を見合わせる。

魔界の王が、これほどまでに民を気にかけ、救おうとするとは——

かつての魔界には、なかった光景だった。

『これから、お前たちにも癒しの術を教える。』

『自らの力で、傷ついた仲間を助けられるようになれ。』

羅刹の言葉に、魔族たちは静かに頷いた。

戦う力だけではなく、癒しの力もまた、生き延びるための武器となる。

魔界の新たな時代が、確かに始まろうとしていた。

 

地上 —— それぞれの戦支度

翌朝、カノンは誠道、慧明、タケルと共に修行場に集まっていた。

「それでは、改めて戦いの準備を進めるとしましょう。」

誠道が法剣を握りしめる。

「まずは私たちの武器の鍛錬ですね。」

慧明が九鈷杵を回しながら応じる。

「戦いは2週間後か……正直、時間が足りないね。」

タケルは天を仰ぎながら呟いた。

「足りない時間は、工夫で補えばいいよ。」

カノンは八尺瓊勾玉を握りしめる。

「ラーちゃんみたいに、新しい力を学んで、できることを増やす!」

彼らはすぐに訓練を開始した。

誠道は法剣を使った結界術をさらに強化し、慧明は九鈷杵を用いた雷撃をより鋭く研ぎ澄ませる。

タケルは神話の武具の研究を進め、新たな戦術を考案する。

そしてカノンは、癒しの力と攻撃の力を組み合わせる方法を模索していた。

羅刹の戦い方を思い出しながら、彼女もまた、新たな境地を目指していた。

「カノンちゃん、準備は着々と進んでるね。」

修行の合間、タケルが息を整えながら言う。

「あとは、災禍神がどのタイミングで動くか……。」

慧明の表情が険しくなる。

「羅刹殿の魔界からの報告がカギになりそうですね。」

誠道が冷静に言った。

カノンは、ふと夜空を見上げる。

魔界の向こうにいる羅刹も、同じように空を見ているのだろうか——

(ラーちゃん……そっちは大丈夫?)

カノンは胸の奥で、そっと呟いた。

 

魔界 —— 新たな不穏な兆し

数日後。

羅刹のもとに、新たな報告が届いた。

「魔王様、魔界の北部にて、奇妙な現象が確認されました。」

魔族の戦士が緊張した面持ちで続ける。

「大地の亀裂から、禍々しい黒煙が立ち昇り、空気が重くなっているとのことです。」

羅刹は眉をひそめた。

『災禍神の眷属か……?』

「それが……まだ、正体は不明ですが……。」

それがただの余波なのか、あるいは災禍神の本格的な侵攻の前兆なのか——

羅刹は、すぐにカノンに連絡を取ることにした。

(そろそろ、決戦の時が近づいているのかもしれない……。)

彼は、再び戦いの覚悟を胸に刻んだ。

 

地上 —— 羅刹からの警告

カノンたちが修行を終えた夜。

澄んだ空気が漂う中、カノンに羅刹からの連絡が入った。

『カノン、魔界の北部で異変が起きている。』

「異変……?」

カノンの表情が強張る。

『大地の亀裂から黒煙が立ち昇り、空気が異様に重くなっている。何者かが、魔界の奥深くで蠢いているのは確実だ。』

「まさか、災禍神が……?」

『まだ確定はできないが、その眷属か、あるいは災禍神自身の影響によるものかもしれん。警戒を怠るな。』

カノンは唇を噛んだ。

「こっちも準備を加速させる……ラーちゃんも、無理しないでね。」

『ああ、無理はしない。』

しかし、その声にはどこか深刻さが滲んでいた。

「タケルくんたちにも伝える。ありがとう、ラーちゃん。」

『……たのむ。』

普段通りの羅刹だったが、カノンはその背後に漂う緊張感を感じ取っていた。

会話の後、カノンはすぐに誠道、慧明、タケルを呼び出した。

 

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