ももの血脈   作:marre

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第25話 地上と魔界、抗う者たちの戦場

地上—

その頃、カノンたちも異変を察知していた。

「おかしい……空羅道の近くで、気配が乱れてる。」

カノンが八尺瓊勾玉を握りしめる。

誠道、慧明、タケルの3人も臨戦態勢をとる。

「敵か?」

「……わからない。でも、羅刹からの警告を考えれば——」

その時。

——カツン。カツン。

地を鳴らす、規則的な音。

霧の中から現れたのは、一人の“仮面の男”だった。

漆黒の衣を纏い、顔には能面のような無表情の仮面。

「……お前たちが、災禍神に抗う者たちか。」

低く響く声。

まるで、人間ではないかのような冷たい響き。

タケルがゼウスの雷霆を構え、一歩踏み出した。

「アンタ、何者だ?」

仮面の男は、静かに首を傾げた。

「“僕”か……。」

その瞬間——

——ズバッ!!

何もない空間を“裂く”ように、黒い爪がカノンの顔を掠めた。

「——ッ!」

カノンは瞬時に身を引く。

(今の……動き、見えなかった!?)

誠道が法剣を抜き、慧明が九鈷杵を構える。

「問答無用か……ならば、応じるまで!」

仮面の男は、静かに手をかざした。

——ゴゴゴゴ……

その背後から、複数の影が浮かび上がる。

羅刹が戦った亡者たちと同じ、“仮面の眷属”——

タケルが目を細めた。

「……やっぱり、来ると思ってたよ。」

カノンは、胸の奥に渦巻く感覚を押し込めた。

(この男……何かが、違う……)

単なる眷属ではない。

もっと……“深い”何かが、この仮面の下にある。

「来るよ……みんな、気をつけて!」

次の瞬間——

戦闘が、始まった。

戦場となった増上寺は、異様な静寂に包まれていた。

仮面の男は一歩ずつ近づきながら、カノンをじっと見つめる。

「……お前は、どこまで抗えるかな?」

「試してみる?」

カノンは八尺瓊勾玉を握りしめ、霊力を高めた。

その瞬間、仮面の男が動く——音もなく、カノンの目前に現れ、鋭い掌打を繰り出した。

(速い——!)

ギリギリで躱すが、仮面の男は間髪入れずに連撃を叩き込んでくる。

カノンは結界を張って防御するも、そのたびに力が削がれていく。

「!」

一瞬の隙をつき、カノンは勾玉から雷撃を放つ。

しかし、仮面の男は空間を歪めるような動きで回避し、カノンの背後に回り込んだ。

「——遅い。」

鋭い一撃がカノンの肩を抉る。

それと同時に、カノンの意識の奥に何かが囁いた。

(……これは、私の力?)

赤い光が、カノンの視界を覆った——。

 

魔界 —— 羅刹 vs 災禍神の侵食

魔界の北部では、羅刹が災禍神の眷属と激闘を繰り広げていた。

『しつこい……!』

槍と光剣を振るい、次々と亡者たちを斬り払う。

しかし、大地は黒く変色し、空気はどんどん重くなっていく。

「魔王様! 裂け目が広がっています!」

魔族の戦士が叫ぶ。羅刹は鋭く目を細めた。

『……ここを抑えきれなければ、魔界が奴のものになる。』

その時——

「——手遅れだ。」

災禍神の声が響いた。

大地の裂け目から、黒い霧が噴き出し、羅刹の周囲を包み込む。

『クソッ……!』

黒い霧はただの瘴気ではなかった。

それは、魂を侵食し、意識を奪う“呪い”だった。

羅刹の視界が揺らぐ。

意識の奥底に、封じていた記憶が浮かび上がる——

(あの日……私は……)

だが、彼はすぐに歯を食いしばり、己を奮い立たせた。

『貴様に従うくらいなら、私は何度でも抗う!』

再びティールの槍に力を込め、光を放つ。

災禍神の黒霧と、羅刹の光。

二つの力がぶつかり合い、魔界全体を揺るがす衝撃が走った——。

 

地上 —— カノンの異変

(——力が……溢れてくる)

カノンの中で、何かが目覚めようとしていた。

仮面の男は、その様子をじっと観察していた。

「……お前の中にある力、それは……」

仮面の男が何かを言いかけた瞬間——

カノンの左額から、かすかに角が浮かび上がった。

仮面の男が鋭い視線を向ける。

「……やはり、お前も“あちら側”なのか。」

その言葉の意味を問いかける間もなく、戦いは再開される——。

 

仮面の男が空を見上げ、静かに呟いた。

「……“門”が開く。」

その言葉と同時に、空羅道が軋みを上げた。

「まさか……!」

カノンが息を呑む。

空羅道は、魔界と地上を繋ぐ唯一の道。

それが、今——

崩壊しようとしている。

「羅刹が戻れなくなる……!」

タケルが叫ぶ。

カノンは決断しなければならなかった。

(このまま戦うか、それとも——)

選択の時は、迫っていた——。

 

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