ももの血脈   作:marre

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第7話 解放と絆の力

「桃太郎は宇宙人だったんだよ」

タケルの父は、まるで昔話でもするように語った。

タケルは目を丸くした。カノンも驚いた表情を浮かべ、父親を見つめる。

「そうなの?」タケルが確認するように言うと、父はゆっくりと頷いた。

「そうだ。およそ1000年前、私たちの先祖は偵察のために地球に来た。その中のひとりが、桃太郎だ。最初はただの観察だったんだが、人類の温かさに触れ、地球に残ることを決めた。そして、桃の中に姿を変えて人間として生きることになったんだ。」

「それじゃあ、僕たちの血は、宇宙人の血なんだ?」タケルは小さく呟く。

父親は優しく笑った。「そうだよ、タケル。君が持っているあの力、あれはその血筋から来ているんだ。だから、君だけじゃなく、カノンちゃんにも同じ力が流れているはずだ。」

カノンは驚きと興奮が入り混じった表情で父親を見た。「私にも……その力が使えるんですか?」

父は静かにうなずいた。「もちろんだ。ただし、君がそれを使えるようになるには、少し訓練が必要だろうね。」

父は手を振り、立ち上がる。

「さて、食後の腹ごなしに少しだけ手ほどきをしよう。カノンちゃんも一緒にやってみるか?」

カノンは躊躇いながらも立ち上がった。「でも、どうやって……?」

「簡単だ。」父はにっこりと笑った。「まずはリラックスして、心を落ち着けるんだ。その力は、感情と深く結びついている。心の中で静かな空間を作ることから始めるんだよ。」

タケルは手のひらを広げ、少し集中してみせた。「最初は僕もそうだった。最初に感じたのは、なんだか温かいエネルギーが体の中に広がる感じだった。でも、冷静に心を整えることができたら、それをコントロールできるようになったよ。」

カノンはその言葉を胸に、目を閉じた。しばらくの沈黙の後、ほんのりと体の中に温かさが広がるのを感じた。

「うん、少し感じる……」カノンは声を震わせながら言った。

「それが君の力だ。今度は、その力を外に出す方法を覚えるんだ。」父はさらに詳しく説明を始めた。「最初は小さな動きからだ。例えば、物を少し浮かせてみるとかね。」

タケルはそれを見守りながら、自分が最初に力を使えたときのことを思い出していた。あの時も、最初はまったくコントロールできなかったけれど、心を落ち着けることで、だんだんと力を自分のものにしていった。

カノンはじっと目を閉じ、静かに集中を始める。すると、少しだけ、手のひらから微かな光が漏れ出した。それはほんの瞬間の出来事だったが、その瞬間、カノンは確かに自分の中に眠っていた力を感じ取ることができた。

「すごい!」カノンは目を開けて、驚きと喜びが混じった表情を浮かべた。「できた!?」

「素晴らしい!」父は微笑みながら頷いた。「君の中にも、しっかりとその力が宿っている。あとはそれをもっと深く理解して、強くしていくことが大切だ。」

タケルはカノンに向かって軽く微笑んだ。「初めてでもちゃんとできたね。これから一緒に、もっと訓練しよう。」

カノンは力強く頷いた。「うん、絶対にできるようになる!」

(ラーちゃんが前に言ってた私とタケル君が似てるってのはこれ?)

『そうだ。桃太郎の血筋だ。』

この日から、タケルとカノンは父の指導のもと、力の使い方を学んでいくことになった。宇宙から来た血筋の力を、彼らは少しずつ、そして確実に自分のものにしていくのだった。

 

2週間ほどが過ぎ、カノンとタケルの実力は、もはやタケルの父と変わらないほどに成長していた。彼らは日々の修練を通じて強さを増し、互いに頼もしい存在となっていた。ある日、学校の屋上でふたりは立ち止まった。タケルはふと、カノンにこう言った。

「カノンちゃん、羅刹が君の中にいるって話、もうちょっと実感してみたいんだ。羅刹の姿を見てみたいな。」

カノンは少し驚いたが、興味津々に応じた。

「本当に?でも、見せるって言っても…どうやったらいいの?」

その時、カノンの中に眠る羅刹が口を開いた。

『不可能ではない。だが、カノンの内にいる私が外に出るには、桃太郎の血筋の生命エネルギーを分けてもらう必要がある。それがあれば、時間に制限はあるものの、私がカノンから離れることもできるだろう。』

タケルはその話を聞き、目を輝かせた。

「それなら試してみよう。君が羅刹の姿を見せてくれれば、きっと何か新しい発見があるかもしれない。」

カノンは少し躊躇したが、タケルの意気込みを感じて、決心を固めた。

「じゃあ、やってみようか。けど、どうなるか分からないよ?」

タケルは頷き、二人はその実験に向けて準備を始めた。

カノンは深呼吸を一つし、タケルを見つめた。彼女の体内にいる羅刹の存在が、少しずつ目覚めていくのを感じた。彼女は手のひらを広げ、桃太郎の血筋に伝わる生命エネルギーを集めるように意識を集中させた。その瞬間、タケルはカノンの周りの空気が微かに変化するのを感じ取った。

「準備はできた」とカノンが言うと、羅刹の声が再び響いた。

『行くぞ。』

カノンの体内に封じられていた羅刹の気配が、一気に外へと解放された。

その瞬間、カノンの全身が激しく震え、まるで内側から何かが押し出されるような感覚に襲われる。彼女の指先がわずかに痙攣し、足元がふらついた。タケルはその様子をじっと見守る。彼の目には、カノンの異変が明確に映っていた。

カノンの瞳が一瞬、深い赤に染まる。そして、彼女の肩がふっと持ち上がった刹那、背後に異形の影がゆらりと浮かび上がる。

それは、カノンの体に宿る羅刹の姿だった。

身の丈はカノンの倍以上もあり、全身は漆黒の鎧に覆われている。その甲冑は重厚な鋲と裂け目が刻まれ、長い年月を経たかのような風格を醸し出していた。無数の傷跡がその体を飾り、特に左の角が根元から失われていることが異様さを際立たせている。

赤く光る双眸が闇の中で鋭く煌めき、まるで獲物を見据える獣のような冷徹さを帯びていた。羅刹の気配は周囲の空気を重く淀ませ、その場にいるだけで圧倒的な威圧感を放っている。

タケルは、目の前の光景に思わず息をのんだ。

しかし、一瞬の動揺を見せた後、彼はすぐに冷静さを取り戻した。今、目の前で起きていることが何を意味するのかを理解しようとするように、鋭い視線で羅刹の姿を見つめる。

カノンの体から解き放たれたこの存在が、敵か味方か——その答えを、タケルは慎重に見極めようとしていた。

「すごい…本当に羅刹が出てきた。」

羅刹はタケルを一瞥し、低く響く声で答えた。

『お前が見たいという、これが私の姿だ。だが、これがどれほどの時間持つかは分からない。カノンの生命力が持つ限りだ。』

タケルはその言葉に頷き、少し後ろに退いた。これがカノンと羅刹の力が繋がる瞬間であり、同時にそのバランスが崩れかけるリスクでもあった。しかし、タケルは今、目の前に現れた羅刹の姿をしっかりと見つめ、何かを感じ取ろうとしていた。

「カノンちゃん、君の中の羅刹って…こんなに強力なんだ。」

カノンの体から外れた羅刹は、タケルの言葉に短く答えた。

『これが私の力だ。しかし、この力が永遠に保たれるわけではない。お前が試したいのは、私が完全に解放された状態がどれほどのものかであろう?』

タケルはしばらく黙って考え込んだ後、カノンに向かって言った。

「うん、でも、無理をしないでね。僕たちは君を守るために力を合わせるんだから。」

カノンはほんの少し微笑み、そして羅刹の姿を見た。

「ラーちゃん、おっきいねー。あれ?角?」

『カノン、左の角はお前のものだ。好きに使うがいい。』

「ありがとう、ラーちゃん」

その言葉が終わると、突然、カノンの体が激しく震え始めた。彼女の目は赤い光を帯び、羅刹の力が限界に達しそうな気配を感じ取った。タケルはすぐに駆け寄り、カノンの肩を支えた。

「カノンちゃん!大丈夫?」

「ちょっと…無理かも…」

カノンの体から、羅刹の姿が徐々に薄れていくのを見て、タケルは急いで桃太郎のエネルギーを再度集中させるよう促した。そのエネルギーがカノンの体内に戻り、やがて羅刹の影は完全に消え去った。

カノンは息を整えながら、ふっと微笑んだ。

「ごめんね、ちょっとだけ無理しちゃった。」

タケルは安堵の表情を浮かべ、軽く笑いながら言った。

「いいんだ、見れたから。でも、これからは無理しないでね。」

カノンは少し照れくさそうに頷き、その場の空気が穏やかに戻っていった。

『無理をするな、カノン。』

「ありがとう。ラーちゃんの気分はどお?」

『お前の中は居心地がいいが、外はまた格別だな。』

「そうだよねー。自由に動けるもんねー。」

「私もラーちゃんのおかげで楽しいんだー。」

「よし!決めた!がんばる。」

カノンは力強く拳を握りしめ、タケルに向かって笑った。

「これからもっと鍛えて、ちゃんとラーちゃんと一緒に戦えるようになる!」

タケルも頷き、彼女の決意を受け止めるように拳を軽く突き出した。

「うん、一緒に頑張ろう。僕たちはチームだもんね。」

カノンも拳を合わせ、二人は笑い合った。その時、学校のチャイムが鳴り響く。

「やばっ!次の授業始まる!」

二人は急いで屋上を後にし、教室へと駆け出した。心の中では、さっきの出来事の余韻がまだ残っていた。

 

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