蛇足   作:勉強サボ浪

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一度捨てたもの全て 取り戻すためにここに来た
守りたいものばかりだ すべて失ってたまるか



Technophobia
輪廻


「問題はない。すべては計画通り、綱渡り」

 

 極月学園の所有する車は郊外の幹線道路を走っていく。運転席の焦は大きくため息をついた。

 

「計画……ですか」

「デマの流布と動画の作成、あと新曲の紹介ページも作った。公開は四音のパフォーマンスと同時に」

「……大丈夫なんですか? 時間、ぜったいにスケジュール通りに行きませんよ?」

「むろん公開は手動」

 

 暢気そうに彼は言う。

 

「楽しみだね~、明日の初星のクリスマスライブ。ケータリング、何が食べれるのかな?」

「あなたは食べちゃいけませんし、演目前に食えるほど私たちも頑丈じゃないです」

 

 軽口に雑な返答をしながら四音は車窓を眺める。

 今日はライブのリハーサルである。もっともシングルローズの2人は対バンかつ四音が新曲を披露することもありほとんど意味のない行為だが……まぁステージのライトや音響などのセッティングもするのだろう。

 

「一応対バンのルール説明しとくか。えっと――」

「3本勝負で初戦は撫子さんと藤田ことね。2戦目が元SyngUP!の寄り合いで最終戦が私と花海咲季。先攻後攻は各戦でコイントスで決定。制限時間は6分でその間何してもOK。ただし会場やステージの損壊、激しいヘイト発言や政治的意図を匂わせる衣装の禁止。ほかにも色々ありましたけど、まぁそんな感じですね」

「……歌わなくてもいいの?」

「まぁルール上は良いですが……。作戦、変えますか?」

「いや結構。花海咲季を潰すんだ。負け方は計画通りやらんとうまく潰せない」

「あの……本当に『負ける』んですの?」

 

 撫子の言葉に四音は「……ボクは負けたくはなかったんですけどね」と呟いた。嫌そうな一言から彼女の心情が察せられる。後部座席の言葉に運転席の彼が答える。

 

「今回のライブ自体はチケット持ちの現地とライブビューイングの観客しか見れないけど、対バンだけは動画サイトで世界中に配信される。たった半月で白草と同等のアイドルランクの人間をアイドルから引きずり落とすには今しかない。……そして勝っただけじゃ花海咲季の心は折れない。花海佑芽を絶望させられない。だから大掛かりな舞台装置を仕掛けた」

「……それは四音お姉さまのWINGに繋がるのですの?」

「WING出場には直接つながらないけど、ここで花海姉妹を潰さないとWING決勝で彼女たちとぶつかる。……まぁ一番の理由は花海姉妹を潰したいという俺のエゴだけど」

「それは……良いんですか? 四音お姉さま」

「……まぁ私としましても、作戦は成功すればきっとスッキリするので構いはしません」

 

 言葉はそう言っているが、そのあとすぐに舌打ちをするあたり四音も面倒と感じているのだろう。

 

「しかしあの負け方で四音お姉さまのランクが上がるでしょうか……?」

「そこはやってみてからじゃないと何とも言えないね」

 

 車窓は郊外から少しの街の賑わいを見せ始めた。アクセス悪そうな場所だがどうやって万人規模の客を輸送するのだろう、と四音は無意味な思考をし始めた。

 

 

104:名無しさんは死んだ、って

さてライブも明日ですね……

 

105:名無しさんは死んだ、って

今回の初星クリスマス、魔境じゃない?

 

106:名無しさんは死んだ、って

極月がゲスト参加、リーリスと対バン

対バンの中将戦は燐羽様とまりちゃん

美鈴様も全体曲で参加。よって元シングアップが集結。

もしかして→シークレットでシングアップ復活

ちょっと泣いてくる

 

107: 名無しさんは死んだ、って

Re;IRISもことねっちと咲季ちゃんも初ソロ! MVは何度も見たけど、ライブは初めてで楽しみ

 

108: 名無しさんは死んだ、って

極月の奴らは、帰れよ

2軍3軍のくせによ

 

109: 名無しさんは死んだ、って

あいつらマジでなんなん? よその事務所の曲を勝手に使ったり、客をバカにしたり、アイドルに人生かけてる?

 

110: 名無しさんは死んだ、って

ベグラジア、初公演&ユニ曲初披露か。星南会長推しには無視できない

 

112: 名無しさんは死んだ、って

……まぁ白草四音はNIAも決闘でもいろんな事してたから、どうして初星が参加を認めたのかなぁ

 

113: 名無しさんは死んだ、って

URL:******

なんか今回の対バンで四音は新曲を披露するらしい

 

114: 名無しさんは死んだ、って

マ?

でもタイトル以外出てないな……

 

 

 

 ライブ会場はかなり大きかった。が、交通アクセスは悪い。初星の資金力が察せられる。賀陽燐羽はどうやら自分たちとは違う方法で現地入りするらしい。

 

「そういえば」

 

 駐車場を回っているときに四音は焦に聞いた。

 

「うん?」

「新サーバー条約って施行されましたよね?」

「あ~……うん」

「それでどうしてアイドル活動――未成年のアイドル活動が認められるんですか?」

 

 新サイバー条約。簡単に言えば230年にアジア圏に施行された条約。日本では未成年の登場人物が犯行に巻き込まれる創作が規制されると疑念が残っていたもの。無論、創作でさえも規制されるのであれば現実の問題――例えば学生アイドルも規制されるのは自明だ。

 なのに現在でもライブビューイングがネットで見られるのは……。

 

「簡単に言えば、条約の中身が一切意味のないものになったんだよ」

「というと?」

「俺も詳しいことはよく知らないんだけど……映像カメラが日本にあっても、配信サイトのサーバーが非加盟国やその国の犯罪に係わらないと判断されたら規制されないんだって」

「……意味あるんですか。それ?」

「条約の上納金と、途上国のデーターサーバーの建設に伴う――この話、続ける?」

「……………いいえ」

 

 車がピーピーと鳴りながら駐車した。車を降りてトランクからトートバッグを取り出す。キャリーバックの中身は明日の衣装だから今日は必要ない。

 四音は地図を取り出すと用意された控室に向かって歩き始めた。

 

「えーっと……って、ちょ、待ってくれ」

 

 早速迷いそうになった焦を無視して歩く。

 関係者駐車場から会話もなく歩いて5分。かなり大きい会場を用意したなと思いながら四音は控室の扉の前でノックした。

 

「どうぞ、開いてるわよ」

 

 反応を聞くとドアを開ける。中にはラフな格好の賀陽燐羽がいた。

 

「えらく荷物が少ないじゃない」

「大体車に入れたままですからね」

「皴にならないの?」

「そこまで分厚い生地を使ってるわけじゃないので」

 

 四音の言葉に訝しげな表情を見せた燐羽だが、すぐに興味を失ったのか3人に紙の資料を配り始めた。ライブの詳細を記したものだ。30年代にも関わらず紙にこだわるのはスマホやタブレットの重さや価格がそこまで変動していないことも、情報漏洩の問題も解決していないこともある。

 

「確定版、ですか」

「極月専用の、ね。あなたたちにはシークレットの内容は潰されてるわ。ちなみに私も完全には知らない」

 

 ページをめくる。出演者情報、協賛・協力・設営企業、音楽のスタッフのメンバーに……まぁ色々。

 焦の「ケータリングの種類とか書いてないのかなぁ」というすっとぼけた言葉を完全に無視して燐羽は続けた。

 

「あなたたちの資料には載っていないけど、シークレットにはSyngUp!が出るのは確定している。そして花海佑芽と美鈴と星南会長がいることからこれまで”お下がり”しか歌ってこなかったBegraziaが新曲をしょって参加する――ぐらいは誰だって予想ついてるわよね?」

「えぇ。まぁ」

「それで……まぁ言う必要ないのかもだけど、あなた達の対バン相手の曲は私も知らない。……でも対バンだからね、白草四音みたく初披露なんてありえない話よ」

「そうですね。それが今回の作戦らしいので」

 

 対バンの勝ち負けというのは基本的に「観客がどれだけ曲にノれるか」である。バンドとかならタオルを振り回したりラッパーなら歓声やクラップなのだろうが、アイドルはコールである。

 コールをする、ということはつまり客は「アイドルがいま歌っている歌のどこが盛り上がる場所か」というのを把握するする必要がある。ユニットや曲のコンセプト的に「センターだけが許されたフレーズ」というのは存在するのだ。

 逆に言うならコールしにくい曲というのは――バラード調などゆったりとした曲を除くなら――客が知らない曲であり、それを選んできた四音はふざけていると評価されてもおかしくない。

 

「勝敗の判定は……各勝負終了後に4分の投票時間が設けられ投票をする、か。現地は20点、ビューイングは15点、立ち見勢は1点……メアドかチケットQRコードにてアカウントを判別……ね」

 

 資料をめくりながら焦はつぶやいた。開いてページには投票ページの詳細が記されている。おそらく実験的な意味合いもあるのだろう。セキュリティの仕組みなど様々なことが記されていたが「よう分からん」の一言でつぶされた。

 

「不正し放題じゃありません?」

「どうだろう。……点数にひどく傾斜があるし、投票ページもアカウント登録にログイン時の2段階認証、ロボットじゃありませんテスト、アクセスが集中することを考えて”敢えて”アクセスを遅くすることも考えると……1端末に3回が限界なんじゃない?」

 

 専門家じゃないけど、と言い逃れして四音の質問に雑に返した。

 

「それでなんだけど……賀陽さん」

「……何かしら」

「姫崎莉波と紫雲清夏と月村手毬のコンタクトって可能ですか?」

「え? あー……」

 

 焦が出した名前に法則性を見出したのかしばらく考え込む。そして「ちょっとそこで待っててちょうだい」と言い残して燐羽はスマホ片手に部屋から出た。

 今出た3人の名前は白草四音がNIAの時に迷惑をかけたアイドルである。

 

「本当に謝りに行かなければいけません?」

「ま、一応ね。後ろから刺されたくないし。前回の決闘みたく、妨害工作を張られた時のアフターケアのやり易さを考えると……なぁ」

 

 四音の言い草は面倒だと訴えていたが、焦のほうがさらに面倒な表情をしていた。理由はさておき、正当性は焦のほうに分があるため四音は黙る。

 

「それで……コート脱いだら?」

 

 特に話題がなかったのだろう。彼がしばらく考えて、ややあってそんなことを言った。「わかってますよ」と2人はコートを脱ぐ。中身は冬用の長袖のトレーニングウェアだ。

 

「白草も藍井さんもこの大きさのハコは経験ある?」

「子役時代にいくつか。あとはNIAの決勝とか」

「あ、あたくしは……あまり」

「まぁ、万人規模の会場が必要になることなんて相当な知名度じゃないといかんしなぁ。嵐の時代で叩き潰したアイドルの社会的信用度もすぐに回復したか」

 

 彼の言葉はひどく諦観に塗れた言葉はすぐに雲散霧消する。

 

「俺はステージに立ったことはないから分からないけど、暑いの?」

「熱い? 観客の熱気が?」

「まぁそれも含めるとしても……汗は出る? 今は冬だけど」

「ステージライトがLEDになってある程度緩和したらしいですけど、十分。ライブ前はアップもしますし、そんな短時間で乾きませんよ」

「ま、そのあたりは追々……。実際にステージに立って汗がかけるかどうか……」

 

 燐羽がドアを開けて戻ってくる。

 

「連絡ついたわ。通しリハの前の1時間なら大丈夫だって、姫崎さんと紫雲さんのプロデューサーが。手毬はプロデューサー含め忙しいらしい」

「うん……ちょっと困ったなぁ」

 

 彼の両手には紙袋。その中身を勝手に推測したのか、燐羽が嫌な表情をする。

 

「……また山吹色?」

「いや、さすがに……。福岡と北海道と京都土産を中身を開けずに買ってきただけ。3人に袖の下渡しても意味ないでしょう?」

「……それもそうですね」

 

 関わりたくもない、と言わんばかりの燐羽の表情。2か月前までの彼女が焦への態度は真っ当なものだったが、どうしてこんなに険悪になってしまっているのだ?

 そう思って四音は肘で彼の胴を突っついた。

 

「……何がどうなってるんですか。ここまで険悪ではなかったはずでは?」

「ん……。賀陽さんの中学時代の誹謗中傷があったじゃん?」

「常識のように確認しないでください。まぁ知ってはいますが……」

「強引に刑事裁判に持っていくために担当弁護士にお金あげた。本人の意思を無視してね」

「それは………!」

 

 そばで聞いていた撫子が何かを言いかけて、やめる。正気を疑う行為ではあったが、アイドル的には特に懐も痛まないし賠償金ももらえる話だ。せいぜいの被害といえばスラップ訴訟と言われる程度で、そんなことをいう奴なんてどういう人間かは今更明言するべくもない。

 だが……おぞましい行為である。他人の裁判に首を突っ込むのは恐ろしい。

 その話に肯定も否定もせずに燐羽は続けた。

 

「リハ後に美鈴――もといBegraziaの3人が話したいことがあるらしい。そのあとに美鈴が手毬の部屋に案内するって」

「ふぅん……何を企んでるの?」

「私は何にも関与していないわ。十王会長と手毬のプロデューサーは考えてるかもしれないけど」

 

 2人の言葉に四音が少し思考を回す。

 月村手毬のプロデューサー。プロデューサーというのは言ってしまえばただの企業人であり、アイドルの企画や運営方針を定める人間である。やってることはチームリーダーみたいなもので、専門的な免許が必要なものではない。マネージャーも特別必要な技能があるわけではない。

 だから極月にはプロデューサー科に類するものはないし、初星のそれに関してもアイドル科と比較してもずっと低い募集人数だったはずだ。

 だから「プロデューサー持ち」は初星においてかなりのステータスのはずだが……。

 

「月村手毬は“P持ち”なのは知っています。……ですが、彼女のプロデューサーがどうして十王星南と?」

 

 四音の言葉に焦は「さぁ?」と言ったし実際に興味もなさそうだったから燐羽が答えた。

 

「あのプロデューサー……名前は何だったかしら……。ともかく、手毬のプロデューサーはRe;IRISのプロデューサーと兼任していて、十王会長が藤田ことねさんのプロデューサーだから」

「藤田ことね、十王星南の指導をうけてるんですの!?」

 

 撫子の言葉に「マズかったかしら……」と燐羽がつぶやく。

 正確にはただ指導しているだけであり、初星のプロデューサー科が高校卒業しないと入れないため正確には「指導者見習い」でしかないのだが……まぁあまり外部に持ち出していい情報ではない気がする。

 誰にも言わないでね、と燐羽は言ったが同じ部屋に情報機密を守りそうな人間が1人もいないことにひどく後悔した。

 

「……待ってください」

 

 話を終わらせようとした燐羽を引き留めたのは四音だ。

 

「……何?」

「つまりRe;IRISのプロデューサーは月村手毬のプロデューサーで、それとは別に十王星南が藤田ことねの指導をしていて……では花海咲季は?」

「フリーよ。ソロの時はセルフプロデュース。……まぁ手毬のプロデューサーが近くにいるからアドバイスはもらってるかもね」

 

 その言葉に四音は少し考えて「……わかりました」と答えた。

 

「あなた、咲季お姉ちゃんとやり合うのよね?」

「…………………えぇ、まぁ」

 

 お姉ちゃん? と思ったのは置いといて。

 なんとか肯定した四音に燐羽は小動物をねぶる猫のように笑った。おそらく嘲笑っているのは、四音とここにいない咲季の両方。

 

「あの子の必死で取り繕ったメッキ、あなたごときでどうにかできるとは思えないわ」

「……それはどうでしょう?」

 

 その嘲笑に四音は挑戦的笑みで、しかしいくつかの諦観を混ぜて答えた。

 

「荒らして見せましょう。数人の少女を人柱にして出来た虚構と幻想のメッキを、真偽の区別もつかないファンたちの目の前で」

 

 

 姫崎莉波。みんなのお姉さん、というなんとも使い古されたタレント設定――完全に余談なのだが現在でも「うたのおねえさん」は存在する――を本気で振り回して成果が出るという現実に四音が納得していないのは事実だ。

 ……もっとも、あの時の「姉というのは恐怖の象徴」というのは紛うことなき本心だが。

 

「NIAの一件は申し訳ありませんでした」

 

 四音と、一応の責任者である焦と、完全に巻き込まれただけの撫子が頭を下げる。

 

「………プロデューサーくん、どうしよう」

 

 莉波の戸惑いの言葉は聞こえたが頭を下げている四音たちにはわからない。

 息を鋭く吐く莉波の担当プロデューサーがしばらく深く考え込むように唸った後「顔を上げてください」と言った。

 

「……まぁあの一件は流しましょう。結果論りなぽよの件はあんまり炎上しませんでしたし、恋愛スキャンダルをでっちあげられたことも……まぁ、構いません。現代アイドルで恋愛スキャンダルは…………まぁ、一昔前よりかは注目されにくいトピックですから」

「えっ」

 

 驚いたのは当のデマをぶち上げた四音だ。

 

「恋愛スキャンダルって、今はそんな効果ないんですか……!?」

 

 その場違いな言葉に莉波のプロデューサーも焦も反応に窮する。

 

「白草、さ」

 

 何とか先に焦が言葉を絞り出した。

 

「はい」

「………今、そんなこと言う……? 反省していないように思われるじゃん……」

「あ………。――はい、すみません」

 

 そんなやり取りの裏で莉波も同じ質問を彼女のプロデューサーに似たような質問をしていた。

 

「え、今のアイドル業界って恋愛OKなの?」

「いやそういうわけでは………」

 

 言葉に窮する莉波のプロデューサー。……まぁそうだろう。実際、恋愛に寛容になったわけではないのだ。これに関してはプロデューサーの言い方が悪い。

 助け舟を出すように焦は言った。

 

「えー……姫崎さんは勘違いをしていらっしゃるようですが……。実際に日本においてアイドルの恋愛が認められた訳ではありません」

「……? どういうことなんですか?」

「まぁ理由はいくつかありますし、別に結婚しているアイドルなんて20年代からいたという前提で話すんですが」

 

 と、焦はどう説明しようかと少し頭を悩ませながら答えた。

 

「まぁアイドル業界で『恋するアイドル』が認められつつあるというのは事実です。というのもアイドル嵐の時代において346プロが嵐脱却のためにぶち上げた『アイドル結婚報告多発テロ』が良くも悪くも劇薬の効果をもたらしたことですね」

 

 そこで焦はアイコンタクトでプロデューサーに会話をバトンタッチ。その意思を組んだのか彼は説明を引き継いだ。

 

「――そうですね。もともと『アイドル嵐の時代』はアイドルの労働環境――というよりもアイドルになることでプライベートが制限され基本的人権さえも奪われる、という外国報道機関のフレーズで発生しました。恋を歌うアイドルが、一番恋ができない。なんて矛盾だらけの固定観念をぶち破るための策として『多くの346プロ所属アイドルが結婚する』というものを繰り出しました。……姫崎さんも、高垣楓さんの結婚報告には面食らったのでは?」

「あー! うん、そうだね」

「あれで、一般の方にはアイドルの『恋愛禁止』のイメージは緩和しました。……しかし、姫崎さんや白草さんのようにアイドル業界にはまだ固定観念は残っています。これは……あの時に結婚発表をしたアイドルの方々が、どんなに若くても20代後半だからというもの、当時のメディアが女性の妊娠の晩年化による胎児の影響を報道し始めたことが大きな理由です」

「…………ファンの声でアイドルが結婚できず、妊娠もうまくいかず、その結果としてそのアイドルが不幸になるなら――ということかな?」

「そうですね。……一応の特例はありましたが、アイドルの結婚が認められたのは『高年齢化』が最大の要因です。……まだ学生の姫崎さんには無関係です」

(ん………?)

 

 最後の補足に四音も違和感を感じたが、とりあえずは無視。

 一通り説明を終えたところで、アイドル嵐の時代を引き起こした当の本人が補足説明を行った。

 

「あとは……まぁ、そもそも会社が決めていた恋愛禁止のルールに反したところで裁判で認められませんし賠償金なんて認められません。それに会社としても週刊誌にすっぱ抜かれるよりかはさっさと報告したほうが良い、といのが裏にあります。……さすがに恋人がいて、不倫するというケースまで会社が面倒を見る気はないでしょう」

 

 最後の余談はいったいどういう理由で付け加えたのだろう。四音は思ったが「納得しましたか、お二人」と焦がたずねたところで思考を戻す。

 

「とはいえ、学生アイドルが恋愛スキャンダルを喰らったらアイドル人生が死にます。ですので今回に関してはお二方が寛大な心で許していただき、深く感謝いたします。――あ、これ、お詫びの品です」

 

 そういって焦が莉波に紙袋を手渡す。中身を見て彼女が「わぁ……!」と目を輝かせた。

 

「ビネガーサイダーに玉露饅頭だよ! 家に帰ったら一緒に食べよう!」

「え……あー……………はい」

 

 その言葉にプロデューサーも、ほかの全員もなんとも微妙な表情をしている。

 よくも恋愛スキャンダルの話の後にこんなやり取りができるものである。

 

 

 

 




ついに初星クリスマスライブ編です。
まぁ伏線回なのですが……。伏線張るたびに暗雨焦のスペックおかしいな?と思ってます

この話のまとめ
・今話から初星のライブやるよ! いまからリハね!
・とりあえずNIAのとき迷惑かけたアイドル達に謝りにいこう!
・新サーバー条約はいろいろあって、あんまり日本にとっては効力が薄くなったよ! 未成年アイドルを規制できなくって残念!
・恋愛スキャンダルは先輩方の尽力でスキャンダルとして扱われなくなり始めたよ! でも君たち学生は恋愛しないほうがいいんじゃない?
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